中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」
ニュースキュレーション[2020/12/3~12/10]
ついに携帯電話料金が値下げに動く――NTTドコモ「ahamo」発表と各社の動向 ほか
2020年12月11日 18:00
1. ついに携帯電話料金が値下げに動く――NTTドコモ「ahamo」発表と各社の動向
携帯電話料金値下げは菅内閣の看板政策の1つだ。こうした政策に応えるため、KDDIとソフトバンクはそれぞれ傘下のサブブランドを使って、安価なサービスを提供するとしてきた。しかし、メインブランドでの料金に変化が見られないことから、政府からは不十分であると不満を漏らす場面もあった。
ここにきて、NTTドコモが新料金プランの「ahamo」を発表した(ケータイWatch)。月間20GB利用できるプランで、料金は2980円となっている。ただし、申し込みやユーザーサポートの全てはオンラインで完結し、これまでのようなドコモショップや通話での対応はしないサービスだという。まさにセルフサービスプランである。つまり、これまでの携帯電話料金に含まれるコストの多くが人的なコストであったということを示している。さらに、NTTドコモが逃しているとされる、情報通信サービスに親和性が高く、「手のかからない」顧客である若年層の取り込みを強化する狙いがあるとみられる。また、既存プランについても、追って改訂を発表するとしている。
菅総理大臣も「本格的な競争に向けてひとつの節目を迎えたと思う」という所感を述べたと報じられている(ケータイWatch)。
一方、KDDIもメインブラドであるauの新料金プランを発表した(ケータイWatch)。しかし、ahamoに比べて評判が思わしくないようだ。一見、安価に見える料金プランも、その安価な料金を適用するためには、さまざまなサービスを利用するなどの条件が重なる必要があり、最低料金を享受できるのはごく一部のユーザーと思われる。
さらに、日本通信はドコモに対抗する料金プランを発表した(ケータイWatch)。
今後、春に向けて、他のキャリアにおいても、安価な料金プランが提示される可能性がある。すでに低価格で勝負をかけてきている楽天は戦略の立て直しが必要かもしれない。そして、消費者としては、オンラインだけのサービスでよいのかどうかということが判断の基準になるだろう
ニュースソース
- 菅首相、ahamoについて「ひとつの節目。本当の改革はこれから」[ケータイWatch]
- 「au」「UQ」の乗換手数料/解除料が0円に、来年2月[ケータイWatch]
- au、5Gの新料金プランや新サービスを発表[ケータイWatch]
- au、学割の適用可能プランを拡大、ピタットプランも対象に、12月11日から[ケータイWatch]
- au、既存周波数の3.5GHz帯で「5G」開始、12月中旬以降[ケータイWatch]
- auがDAZNと連携、5Gスマホユーザーには3カ月間無料で提供[ケータイWatch]
- auから「Amazonプライム」付き5G新料金プラン、月9350円~[ケータイWatch]
- auから「コンセントに挿すだけ」のルーター、Amazon Echoも販売[ケータイWatch]
- ソフトバンク、「ソフトバンク」と「ワイモバイル」間の乗換手数料・解除料を無料化へ[ケータイWatch]
- ドコモ、5Gも利用できる月20GB/2980円の新プラン「ahamo」発表[ケータイWatch]
- ドコモが5Gにおける「キャリアアグリゲーション(CA)」を世界初提供 「Xperia 5 II」など3機種が対応 通信速度は下り最大4.2Gbps[ITmedia]
- ドコモの「ギガライト」に1GB上限設定、「ギガプラン上限オプション」2021年3月から[ケータイWatch]
- ドコモ井伊社長、既存プラン見直しは「12月中に発表」[ケータイWatch]
- 日本通信がドコモ対抗プラン、16GB/70分無料通話で1980円、12月10日から[ケータイWatch]
2. 文藝春秋とnoteが資本業務提携へ
大手出版社文藝春秋と個人のコンテンツ発信、販売プラットフォームを提供するnoteが資本業務提携をしたと報じられている(日経XTECH)。具体的な業務提携の内容は、1)クリエーターの発掘と育成、2)新しいコミュニティーの創出、3)人材交流、4)両社による新規事業の4点だとしている。
文藝春秋は2019年11月に「文藝春秋digital」を創刊している。そのプラットフォームにnoteを利用したことは当時も大きく報じられたところだ。その「文藝春秋デジタル」は、先ごろ一般社団法人日本ABC協会が発表した「〈雑誌発行社会員〉Web指標一覧 2020年7-9月」によれば、自社ユニークユーザーが35,743,525、自社ページビューが321,514,469、外部ページビューが398,701,135、そしてメルマガ会員数が29,178となっていて、国内の出版社系デジタルメディアではトップの業績を記録している。
もはや伝統的な出版社はデジタル事業に弱いのではないかというイメージを覆している。これまでの資産の上で、noteとともに、どのように事業を展開してくのかは興味深い。
ニュースソース
- 文藝春秋とnoteが資本業務提携、老舗出版社にもDXへの危機感[日経XTECH]
3. 「Google ストリートビュー」はユーザーが補完する
ユーザーが記録した画像をGoogle マップの「ストリートビュー」で公開できるようになる(ケータイWatch)。ただし、当面はAndroid版ストリートビューアプリのみが対応し、地域もカナダのトロント、ニューヨーク州ニューヨーク、テキサス州オースティン、ナイジェリア、インドネシア、コスタリカに限られる。
しかし、これは大きな一歩かもしれない。「これまでストリートビュー画像を公開するためには、特殊な360度カメラが必要で、車の屋根に取り付けるなど約数千ドルの費用が必要だったが、同ツールではスマートフォンさえあればユーザーは簡単に画像を投稿できる」とされていて、開発などで変化が早い場所や季節ごとに大きな変化をする場所などの様子をユーザーの投稿を積み重ねることによって捕捉することができるようになる。また、ここに何らかのマーケティング的な仕組みが入るのかもしれない。
すでにストリートビューで多くの人の世界が広がったが、さらにリアルタイム性のある情報への更新に期待したい。
ニュースソース
- グーグル、ストリートビュー画像をスマホで投稿できるように[ケータイWatch]
4. さらに巧妙化する不正行為
今週も多数の不正アクセスが報じられている。いずれも有名ブランドを利用したフィッシング詐欺、そして有名ブランドのサイトからの情報流出だということが特徴的といえよう。
例えば、ライフカード(ITmedia)、オリコ(INTERNET Watch)など信販、クレジット会社などの金融機関を名乗るものは多くの人が心当たりを感じて、クリックをしてしまいたくなるという心理を利用してのことか。
また、EXILEの公式ECサイトからはカード情報4万4000件が流出(ITmedia)、PayPayのサーバーからは加盟店の営業情報など2007万6016件に不正アクセスされた可能性(INTERNET Watch)があるという。いずれも規模が大きな不正アクセス事案である。
そのほか、問い合わせフォームへの攻撃が急増しているとされ、詐欺メールの“送信元”にされてしまうという事案も報じられている(ITmedia)。
フィッシングは巧妙化している。人間が注意をして不審なメール開けない、クリックしないという行動をとる以外には決定的な対応方法はないものか。しかし、有名ブランドを名乗られるとなかなかそれも限度がある。今後、さらに大規模な被害を起こさないためにも、抜本的な対策を考えなければならないと思うが、技術開発や法的対応にも留意して動向を見ていきたい。
ニュースソース
- 「Vプリカ」アプリ一時停止 不正アクセスで[ITmedia]
- 「オリコ」をかたるフィッシングメールに注意、「eオリコサービス」ログインページを巧妙に偽装したサイトへ誘導 「カードの利用を一部制限」と偽り、カード・口座情報、個人情報を詐取[INTERNET Watch]
- EXILEの公式ECサイトに不正アクセス カード情報4万4000件が流出か[ITmedia]
- PayPayのサーバーに不正アクセス、加盟店の営業情報など2007万6016件に影響[INTERNET Watch]
- オリックス孫会社、個人情報21万件入りサーバを紛失 外部に持ち出された可能性も[ITmedia]
- 毎日放送で24人分の個人情報流出 前年度の採用受験者の情報を今年度の受験者に誤送信[ITmedia]
- 問い合わせフォームへの攻撃急増 詐欺メールの“送信元”に[ITmedia]
5. フィンテックサービスの不具合も相次ぐ
ゆうちょ銀行のモバイル決済サービス「ゆうちょPay」はシステムの不具合により、12月10日6時44分ごろから昼まで利用ができなくなっていたと報じられている(ITmedia)。また、SBI証券などネット証券3社で12月7日の深夜から8日未明にかけて、米国株式の取引が一時できない状態になっていたことも報じられている。原因は米国の取次先のシステム障害が原因だという(ITmedia)。
この1年、フィンテックのサービスは急速に拡大をしてきた。しかし、今週の2件以外でもフィンテック系のサービスの不具合は散発的に発生している。電子的な仕組みは災害時に利用できないという弱点が指摘されているが、平時であってもシステム不具合がそれなりにあるとすると、やはり現金もある程度は所持していないと不安に感じる人も多いのではないか。
2021年は、マーケティング戦略だけでなく、安定的に運用されるサービスに成長することを期待したい。