中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」

ニュースキュレーション[2020/11/26~12/3]

フェイスブック社主導の仮想通貨「リブラ」、改称して1月にも発行か ほか

eHrach/Shutterstock.com

1. 行政のデジタル化動向まとめ

 霞が関ではデジタル庁発足に向け、来年度予算案に3000億円程度が計上される見込みとなった(NHK)。また、平井デジタル担当大臣は「デジタルの日」の創設を検討していると明かした(ITmedia)。祝日になるものではないが、社会として推進するうえでの象徴的な位置付けを意図するものと思われる。また、平井大臣は、国会議員と霞が関職員のミーティングにZoomを導入したと述べた(ITmedia)。

 今後、マイナンバーカードに運転免許証や健康保険証の機能を搭載することから、あらためてマイナンバーカード未取得者に対して、申請書を送付するという。申請書上のQRコードをスマートフォンで読み取ることで、オンライン申請も可能になるという(Impress Watch)。

 こうした動きとともに、東京都では都庁内のDX(デジタルトランスフォーメーション)化に向けて「デジタル局(仮称)」を設置すると表明したと報じられている(ITmedia)。年明けに条例改正案を提出し、2021年4月の設置を目指すとしている。

 いまも新型コロナウイルスの感染者の増加が続くなか、今春の自粛期間で得た教訓を忘れることなく、具体的にデジタル化を推進することで「新たな日常」での業務プロセス改善、効率化などが図られることを期待したい。

ニュースソース

  • 「デジタルの日」創設を検討 元旦や10月10日など4候補 平井デジタル相[ITmedia
  • デジタル庁発足へ来年度予算案に3000億円程度一括計上の方向[NHK
  • マイナンバーカード未取得者に申請書を発送。QRコードでスマホ申請可能[Impress Watch
  • 国会議員と霞が関職員のミーティングに「Zoom」を導入 Web会議を本格化[ITmedia
  • 東京都、「デジタル局」設置を正式表明 平井デジタル相「デジタル庁と連携していきたい」[ITmedia

2. フェイスブック社主導の仮想通貨「リブラ」、改称して1月にも発行か

 フェイスブック社が主導する仮想通貨「リブラ」が2021年1月にも発行される可能性があると報じられている(CNET Japan)。昨年、リブラは複数の通貨など、金融資産を裏付けとして発行される仮想通貨(ステーブルコイン)として大きな話題となったが、各国の金融当局らからは通貨制度に与える影響を懸念する声が高まり、その後は当初の計画からは方向性が変更されている。今回の各紙の報道によれば、その名称を「リブラ(Libra)」から「ディエム(Diem)」に改称されるという。そして、「米ドルと1対1で連動させる可能性が高いと同紙は報じた。ステーブルコインとは、市場価値をドルなど外部の基準に連動させる仮想通貨だ」としている(CNET Japan)。

ニュースソース

  • Facebook主導の仮想通貨「Libra」、「Diem」に改称[CNET Japan
  • Facebook主導の仮想通貨「Libra」、1月にも発行か[CNET Japan

3. セールスフォースがスラックを買収

 CRMソリューションベンダーの米セールスフォース社は、エンタープライズ向けメッセージサービスの米スラックテクノロジーズ社を約277億ドル(約2兆8920億円)という巨額で買収することに合意したと発表した(INTERNET Watch)。

 記事によると、「買収により、Salesforceが提供する統合CRMプラットフォームとSlackを組み合わせることで、企業に対し、信頼できる唯一の情報源と、既存のワークフローの中で使用できる統合されたプラットフォームを提供できる」としている。

ニュースソース

  • Salesforce、Slackを買収することで最終合意、買収総額は277億ドル[INTERNET Watch

4. 雑誌社が運営するウェブメディアの最新指標――ABC協会発表

 新聞や雑誌の発行部数の公査機関である一般社団法人日本ABC協会が、加盟社が運営するウェブメディアの2020年7月~9月の最新指標を公開した(ABC協会)。3カ月平均で自社PVが最も多かったのは文藝春秋社が運営する「文春オンライン」で、自社PVの3億2151万PV、外部PV(ヤフーやスマートニュースなどの配信先)の3億9870万PVと合わせて、合計7.2億PVとなり、日本最大のウェブメディアであるとも報じられている(Media Innovation)。そのほk、「日経ビジネス電子版」「ダイヤモンド・オンライン」「東洋経済オンライン」などの会員数やメルマガ会員数も公表されている。ここにリストされているメディアは従来のプリントメディアに加え、デジタルメディアにおいても突出したプレゼンスを獲得することに成功している。

ニュースソース

  • 雑誌社が運営するウェブメディアの最新指標が公開、3.2億PVの「文春オンライン」など7媒体が1億PV超え…ABC協会[Media Innovation
  • 特別公開_〈雑誌発行社会員〉Web指標一覧 2020年7-9月期[ABC協会

5. AIによる音声の記録と解析技術が実用領域に

 音声をAIによって処理する試みが実用化の域に達しているようだ。

 NTT東西は通話内容をAIで解析し、特殊詐欺を防ぐための固定電話向けサービスの提供を開始した(ASCII.jp)。いわゆる「オレオレ詐欺」のような特殊詐欺は巧妙化をしていることから、なかなか事件の数は減少に転じない。このサービスでは「特殊詐欺対策アダプタから、録音した通話内容をクラウド上に転送し、特殊詐欺解析AIが通話内容を解析。特殊詐欺であると疑われる場合には、契約者本人や親族等のあらかじめ登録された人に、注意喚起の電話やメールを送信する」というサービスのようである。価格も月額440円とリーズナブルな価格といえよう。

 また、トヨタ自動車はコールセンター業務において、通話内容をテキスト化し、自動的に要約するシステムを導入している(ZDnet Japan)。顧客とコミュニケーターの通話内容から不要な内容を除去して、重要な要素のみを簡潔に要約できるという。

 録音や映像から音声をテキストとして出力したり、それを翻訳したりするソリューションはすでに実用の領域にあるが、さらにその内容を理解するという方向性も実用化の領域に入りつつあるということのようだ。

ニュースソース

  • NTT東西、AIで通話内容を解析し特殊詐欺を防ぐ固定電話向けサービス[ASCII.jp
  • トヨタ、次世代コールセンターで日立の「テキスト要約システム」を採用[ZDnet Japan

中島 由弘

フリーランスエディター/元インターネットマガジン編集長。情報通信分野、およびデジタルメディア分野における技術とビジネスに関する調査研究や企画プロデュースなどに従事。