中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」
ニュースキュレーション[2021/1/14~1/21]
マイナンバーを軸とする「デジタル改革法案」、いよいよ審議入り ほか
2021年1月22日 14:00
1. マイナンバーを軸とする「デジタル改革法案」、いよいよ審議入り
政府が「デジタル改革関連法案」の概要を自民党のデジタル社会推進本部に示したことが伝えられている(ITmedia)。記事によれば、この法案では「デジタル庁設置法案」など関連する6つの法案で構成される。2月9日に閣議決定される予定だとし、いまの通常国会で審議されるとみられる。具体的には、本人の同意を前提に、マイナンバーと個人の預貯金口座をひも付けし、相続や給付金などを申請する際の手続きを簡略化できる「預貯金口座登録法案」、そして、2000年に制定されたIT基本法に代わる「デジタル社会形成基本法案」では、デジタル化推進の基本理念を規定し、行政サービス向上などの目標と達成時期を定めた重点計画が含まれるとしている。さらに、自治体ごとに異なる個人情報保護のルールや情報システムなどの共通化や標準化も含まれる。
そのマイナンバーカードの2020年の交付実績は前年の約3.8倍になる1184万7315枚で、1年間の交付枚数としては過去最多だという。ただし、普及率は24%にとどまるとされていて、今後のデジタル社会の基盤とするにはいましばらく時間が必要そうだ(ITmedia)。
また、平井デジタル改革大臣は、新型コロナウイルスのワクチン接種にマイナンバーを活用することを提案している。自治体をまたいだ転居などを想定すると、接種履歴の照会で手間がかかる恐れがあることや副作用などの管理のためにも「誰にいつ何を打ったかを確実に管理する方法はマイナンバーしかない」としている(朝日新聞デジタル)。
そのようななか、横浜市は一足先にマイナンバーカードによる転出届のオンライン手続を1月28日から開始するとしている(Impress Watch)。役所に出向かなくても、24時間オンラインでできることがメリットだとしている。こうした利用可能な場面が各所で増加することも、普及のためには必要なことだ。
ニュースソース
- 「デジタル改革法案」概要を提示 マイナンバーと口座ひも付け[ITmedia]
- マイナンバーカード交付最多 20年は前年比3.8倍 目標とは開き[ITmedia]
- 横浜市、マイナンバーカードによる転出届けのオンライン手続開始[Impress Watch]
- 平井改革相、ワクチン接種は「マイナンバーで管理を」[朝日新聞デジタル]
2.「CES 2021」まとめ:6つのテーマ
「CES 2021をまとめる記事が公開されている。記事によれば、CES主催団体であるCTAは今年のトレンドワードとして、次の6つを挙げている(JBPRESS)。それは「デジタルヘルス」「DX(デジタルトランスフォーメーション)」「ロボティクス&ドローン」「ビークル(車両)テクノロジー」「5Gコネクティビティ」「スマートシティ」である。いずれも昨今の技術や産業のトレンドではあるが、こうしてあらためて整理されると、非常に分かりやすい。また、別の記事では、新型コロナウイルスの国際的な問題と連動して「スマートホーム市場」「非接触技術」を挙げているものもある(ASCII.jp)。
いずれもしても、こうした地球規模での課題を前にして、デジタルテクノロジーが解決のための鍵となっていることをあらためて認識させられる。もちろん、われわれはそうしたテクノロジーを使いこなすための能力を持ち合わせなければならず、さらには社会的な仕組みとして定着がは図らなければならないが、アフターコロナの時代にまでつながっていくことになるに違いない。つまり、いま見ていることは、時代を変化点として、将来にわたり記憶されることになる。
3. インターネットインフラに対する政治的な影響と懸念
インターネットのコンセプトの1つとして「時間や空間の制約を縛られない国際的なコンピューターネットワークである」といわれる。しかし、ここにきてインターネットのインフラに対する政治的な影響が強まっていると感じざるを得ないできごとが報じられている。それは「SpaceXの衛星インターネット『Starlink』の使用者に対して最大140万円の罰金刑をロシアが検討」しているという記事だ。これは、ロシア政府が、米国の民間企業が宇宙空間に打ち上げた通信インフラ、つまり上空にある設備と電波で通信をするという国家による遮断が困難なシステムを使ってのインターネット利用について、法的に制限をしよういう検討が進んでいるという話のようだ。これまでも中国にはグレートファイアウォールという国家レベルでの通信規制のシステムがあるといわれてきたが、こうして各国における規制がエスカレートし続け、インターネット上での国際的な大きな分断へと拡大しないことを願うばかりだ。
ニュースソース
- SpaceXの衛星インターネット「Starlink」の使用者に対して最大140万円の罰金刑をロシアが検討[Gigazine]
4. 拡大基調が続くフィンテック市場
MMD研究所は「2021年1月スマートフォン決済(QRコード)利用動向調査」の結果を発表している(ITmedia)。それによると、「普段の支払い方法(複数回答)は『現金』が90.8%、『クレジットカード』が73.3%、『スマホ決済(タッチ式、QRコード式含む)』が41.2%」だとし、年での比較では、2020年7月に比べ「スマホ決済」が最も増加していると指摘している。また、最も利用しているのは「PayPay」で43.1%、2位の「d払い」が18.2%であることから、大きく引き離している。
一方、スマホ決済の話題に限らない総合的な国内金融IT市場の予測を調査会社のIDCが発表している(ITmedia)。そこでは金融機関以外のサービス参入が顕著になっていると指摘している。さまざまな異業種、ベンチャー企業らの参入が活発であるということだ。今後も技術の進歩はもちろんのこと、感染症拡大を予防するための非接触や非対面でのサービス開発が求められること、スマートフォンという共通基盤を前提にできること、信頼性や安全性の向上などにより、さらなる利用拡大が見込まれるとともに、開発や設備の投資も拡大していくだろう。
5. ついに「写研」のフォントがOpenTypeに――リリースは2024年ごろ
かつて(パーソナルコンピューターでの組版が一般的になる前の写真植字の時代)、出版や商業印刷などのプロの組版でよく使われてきたフォントが、組版の専用機の写真植字機の大手メーカーである写研という会社が出していたフォントだった。「石井明朝体」「ゴナ」「ナール」などのフォントは、当時、大変にメジャーな存在で、圧倒的なシェアを持っていた。しかし、パーソナルコンピューターという汎用機がマルチフォントに対応し、プロの道具として実用化されたときにも、写研のフォントがデスクトップ環境で利用されるようにはならなかった。もちろん、それを使いたいと思っていた人も多数いた。
写研と競争関係にあったモリサワをはじめとする、多くの他の写真植字機やフォントのメーカーはパーソナルコンピューター用にフォントをリリースし、今日の組版環境ができあがった。一方で、写研がこだわった写真植字機という専用機と写研フォントの市場は完全に失われてしまった。そして、写研フォントを目にする機会もなくなっていった。
しかし、ついに写研フォントがデスクトップで利用できることになりそうだ。「モリサワと写研の両社が、写研の所有する書体をOpenTypeフォントとして共同開発することで正式に合意した」というニュースが流れた。ただし、市場にリリースされるのは2024年ごろだという。これまでの経緯を見るにつけ、この製品がリリースされるまでには紆余曲折も予想されるわけだが、かつての人気フォントが再び利用できるということを心待ちにしているクリエイターも多いに違いない。
ニュースソース
- モリサワ、写研が保有する書体のOpenTypeフォント化を発表--2024年に順次提供へ[CNET Japan]
- 沈黙の巨人、「写研」が動いた “愛のあるユニークで豊かな書体”がわれらの手に届くまでの100年を考える[ITmedia]