中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」

ニュースキュレーション[2021/2/11~2/18]

健康モニタリング市場拡大――ウェアラブルデバイスの普及が進み、競争も激化 ほか

eHrach/Shutterstock.com

1. 健康モニタリング市場拡大――ウェアラブルデバイスの普及が進み、競争も激化

 全世界でApple Watchを所有するユーザーの数が1億人を突破したと報じられている(Engadget日本版)。これまでも報じられてきているように、Apple Watchには健康をモニタリングする機能が付加されつつあり、先日も心電図アプリが実装されると報じられたところだ。他社のウェアラブルデバイスではすでに酸素飽和度が測定できるとして製品があり、Apple Watchでも近いうちに血糖値測定機能を搭載するのではないかと噂されている。こうしてみると、この分野での機能競争はさらに激化しそうな勢いがある。世の中はコロナ禍ということもあり、早期に健康状態の変化に気付いたり、突然に体調不良時にも通知が行われたりする機能への関心も高いとみられる。

 そのようななか、フェイスブック社もApple Watchに対抗する製品の開発を進めているようだと報じられている(INTERNET Watch)。健康モニタリングは成長分野であることから、同社の参入も当然と言えるが、既存のSNSサービスとどのような連携をするかなどで特徴を出すことになるか。

ニュースソース

  • 全世界のApple Watchユーザー数が1億人を突破したとの調査報告[Engadget日本版
  • FacebookがApple Watch対抗のスマートウォッチを開発中か、海外メディア報じる[INTERNET Watch

2. スペースX社の衛星インターネットサービス「Starlink」が予約受付を開始

 米国スペースX社の衛星インターネットサービスである「Starlink」が予約受付を開始したと報じられている。この記事連載では折に触れて話題にしてきているが、Starlinkは小型の低軌道衛星を利用したインターネット接続サービスだ。基地局の設置が地理的にも経済的にも難しいとされる地域に対して、インターネットのコネクティビティを提供することを目指している。また、衛星間でのルーティングを行うことで、各国の国境(領海)と深く関連をする海底ケーブルの敷設状況を超えた運用も可能になるとみられる。

 そして、同社では新たに60機を打ち上げ、都合1000機の衛星が活動中であるとしていて、その数は着々と増加をしている(TechCrunch日本版)。

 消費者の目に触れないことから、にわかには信じがたいようなインフラがすでに宇宙では構築されていて、サービスの申し込みも可能になったことで、衛星インフラは次のステップへと進みつつある。なお、価格は「サービス自体の料金は月額99ドル(約1万500円)で、機器の価格は499ドル(約5万2900円、初回1回限り)」と報じられている。

ニュースソース

  • SpaceXの衛星ネットサービス「Starlink」、予約受付を開始[CNET Japan
  • スペースXがStarlink衛星を新たに60機打ち上げ[TechCrunch日本版

3. 新型コロナウイルスに対するワクチン接種が始まる

 日本でも新型コロナウイルスのワクチン接種が始まった。しかし、多くの日本在住者を対象とする大規模な接種ということもあり、国でも自治体でも、具体的にどのような手順で接種が進めることができるのかということはいまだに模索段階にあるようだ。もちろん、何らかの情報通信技術を利用することにはなると思うが、マイナンバーの利用をはじめ、さまざまな検討や議論が進められているところのようだ。

 そのようななか、民間企業からいくつかのソリューションが提示され始めている。1つはJX通信社が、同社が運営するニュース速報アプリ「NewsDigest」で、新型コロナワクチン接種スケジュールをAIで予測する「新型コロナワクチン接種予測」機能の提供を開始した(CNET Japan)。年齢、居住地、基礎疾患の有無などを入力すると、各自治体から提供された予防接種会場の規模や医療関係者の数などをもとにして、いつごろ接種が可能になるかを予測するというもののようだ。

 また、サイボウズでは東京都との間で医療従事者等に対する新型コロナワクチン接種の管理業務での事業連携を発表した(ASCII.jp)。そして、トランスコスモスではワクチンに関する一般的な問い合わせに対応するチャットボットのサービスを構築し、全国の自治体向けに提供を開始したと発表した(ZDnet Japan)。

 こうした情報にアクセスできる人とできない人の格差などにも留意する必要があるが、行政任せではないこうした取り組みは今後も出てくるものと見られる。

ニュースソース

  • 自分のワクチン接種スケジュールをAIが予測してくれる機能--NewsDigest内で提供へ[CNET Japan
  • サイボウズ、東京都と新型コロナワクチン接種の管理業務における事業連携[ASCII.jp
  • トランスコスモス、新型コロナワクチンの問い合わせ専用チャットボットを構築[ZDnet Japan

4.「COCOA」の不具合問題:開発・維持管理の体制

 平井卓也デジタル改革担当大臣は、接触確認アプリ「COCOA」の不具合問題について会見で発言されたようだ。記事によれば「厚生労働省担当のCIO(最高情報責任者)からヒアリングを受けたことを明らかにした。会見では不具合の原因がアプリのAPI連携にあったことを説明した上で、今回の不具合から得た課題やデジタル庁を創設する意義などを改めて強調した」ということだ(ITmedia)。さらに、「アプリのアップデートという発注に国が不慣れだった」という点についても言及をしている。

 COCOAがリリースされた時点では、国民も感染を抑制したいという意識も高く、多くの人がインストールをした。ソフトウェアに不具合があることは致し方ないとしても、その対処があまりにも遅すぎたことが問題ではないか。「不慣れ」とは言っても、いまどきは多くの人が使っているスマホアプリでも頻繁なアップデートが行われていることを知らない人はいないだろう。かつての「納品=完成」という概念が支配をしている世界だったということか。

ニュースソース

  • COCOA不具合の原因は「APIの使い方を誤った」 平井デジタル相、改善を約束 開発の下請け構造改善も[ITmedia

5. イベントカレンダー:「モバイルフォーラム2021」が3月5日開催、秋の「CEATEC」も開催概要発表

 テレコムサービス協会MVNO委員会は「モバイルフォーラム2021」をオンラインで開催すると発表した(ITmedia)。開催日時は3月5日13時30分から16時30分まで。視聴料金は無料となっている。このイベントは「MVNO市場の発展や可能性について議論するイベント」だ。大手通信キャリアの安価な料金プランが登場したことで、これまでの産業構造にも大きな影響があるとみられていることから、ここでの議論は興味深い。

 また、CEATEC実施協議会は昨秋に開催された「CEATEC 2020 ONLINE」のアーカイブ期間中を含めた来場者数が、累計で15万6600人、ユニーク来場者数は9万6625人と発表した。また、コンファレンスの累計聴講者数は12万847人だとしている(INTERNET Watch)。さらに、2021年も10月19日~22日にハイブリッドでの開催が予定されているようだ。

ニュースソース

  • 「モバイルフォーラム2021」が3月5日に開催 MVNOの果たすべき役割を議論[ITmedia
  • 今年のCEATECはハイブリッド開催へ!「リアル会場とオンライン、それぞれの良さを生かしたい」 出展者説明会は3月に実施[INTERNET Watch
中島 由弘

フリーランスエディター/元インターネットマガジン編集長。情報通信分野、およびデジタルメディア分野における技術とビジネスに関する調査研究や企画プロデュースなどに従事。