中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」

ニュースキュレーション[2021/2/18~2/25]

大手IT企業により「オンラインコンテンツを追跡可能にする技術」標準化へ ほか

eHrach/Shutterstock.com

1. 大手IT企業により「オンラインコンテンツを追跡可能にする技術」標準化へ

 アドビ、インテル、マイクロソフトらが「Content Provenance and Authenticity」(C2PA:コンテンツの来歴と真正性のための連合)を立ち上げたと現地専門メディアが報じている(CNET Japan)。

 この記事によれば「C2PAは、メディアコンテンツの出所や経緯、来歴を認証する技術規格が開発することで、偽情報、誤情報、オンラインコンテンツ詐欺のまん延に対処することを目指す」としている。より具体的には「共通のアセットタイプとフォーマット向けのコンテンツ来歴仕様を開発する。パブリッシャー、クリエイター、消費者が、画像、動画、音声、文書などのメディアの出所や展開を追跡できるようにする。こうした技術仕様には、アセットの各タイプに関連付けられる情報、その情報の提示と保存の方法、改ざんの証拠を特定する方法などを定義することも含まれる」という。

 これは大変に興味深い動きである。日本でもコミック作品の海賊版がまん延したことが大問題となっているし、多くのインターネット上の作品が同じような被害に遭ったり、リスクにさらされたりしていることはいうまでもない。こうした技術が標準化されることにより、コンテンツホルダーは対応がしやすくなるし、作品をトレースするためのソリューションやサービスの開発にも参入しやすくなるとみられる。何よりも、大手のIT企業が名前を連ねていることから、今後の動向に注目しておきたい。

ニュースソース

  • マイクロソフトやアドビら、オンラインコンテンツの信頼構築に向け連合立ち上げ[CNET Japan

2. 新型マルウェア「Silver Sparrow」に警戒

 米国のセキュリティ企業であるRed Canaryによると、新たなマルウェア「Silver Sparrow」が猛威をふるっているという(ITmedia)。すでに世界で少なくとも約3万台のM1プロセッサを搭載したモデルを含むmacOSで感染が確認されているという。特にアメリカ、イギリス、カナダ、フランス、ドイツでの感染例が多いとしている。この記事によれば「今のところランサムウェア(データを人質に身代金を要求するマルウェア)のような動作はなく、目的は不明」とのことだが、今後の被害を最小限にとどめるための注意が必要だ。

 また、すでに警戒体制にあるマルウェア「Emotet」の国内感染数も推定で500台とされていて、引き続きJPCERT/CCが提供するツールなどで積極的な検知と駆除という対応が必要だ(ZDnet Japan)。

ニュースソース

  • M1端末を含む3万台が感染 目的不明のMacマルウェア「Silver Sparrow」[ITmedia
  • マルウェア「Emotet」の国内感染は推定約500台--駆除活動が本格化[ZDnet Japan

3. モビリティと情報通信技術で新たなフェーズに

 自動車分野における情報通信技術を利用した新たなアプリケーションが報じられている。

 1つはGoogle マップにおいて「路上の駐車スペースの使用料や交通機関の運賃をアプリから直接支払える新機能」が追加されたという話題だ(CNET Japan)。米国の一部地域からサービスが開始されるとしている。これはぜひとも日本でもサービスを提供してほしい。キャッシュレス化の流れのなかで、かつてほど現金を持たないか、持っていても細かいお金で持っていないケースが増えているのではないか。また、財布からそれを取り出すこともかなり負担に感じるにようになってしまっているからだ。

 また、日本ではウェザーニューズ社とトヨタが「路面凍結推定マップ」を開発した(トラベルWatch)。記事によれば「クルマのブレーキの稼働状況や走行データなどを用いて、車輪がスリップしたとみられる箇所を検出し、その場所の気温や降雪・降雨などの気象データと合成することで、道路の凍結箇所を推定する」という技術のようだ。地図やGPSの高度化によって、自動運転がかなり現実的になってきたとはいえ、刻々と変わる路面状態は地図のように静的には把握できない。当面はドライバーのための情報サービスだろうが、将来的には自動運転でも路面状態によって速度やハンドリングの制御を変えることへの応用も可能か。

ニュースソース

  • 「Googleマップ」に駐車や交通運賃の支払い機能--まず米都市で[CNET Japan
  • ウェザーニューズとトヨタ、「路面凍結推定マップ」の実証実験。道路の凍結箇所をWebサイトで明示[トラベルWatch

4. 5Gを利用する遠隔診断とリハビリ指導を実施

 NTTデータ経営研究所、NTTドコモ東海支社、新城市民病院、名古屋大学、新城市、理化学研究所、ニプロ、ソシオネクストは共同で、過疎化している地域の診療所で5Gを用いた遠隔診療・リハビリ指導の実証実験を行ったと発表した(ITmedia)。記事によれば「5Gや4Kなど高精細カメラを用いた映像伝送・診療システムを構築し、実証地域の診療所や集会所と中核病院の医師をつないで超音波画像検査(腹部エコー)などの遠隔診療や遠隔リハビリ指導を実行した。映像は良好な解像度であり、映像伝送やデータ転送の遅延時間も許容範囲内で問題なく、遠隔診療やリハビリ指導が可能になることを確認した」としている。

 ブロードバンドワイヤレスのインフラによって、遠隔診療やリハビリ指導が行えることが確認されたことは、いままで十分な医療サービスが届かなかった地域の方々にとっては朗報となりそうだ。ワイヤレスであれば、機動力も高まることから、災害時の避難所などでも活用可能か。

ニュースソース

  • NTT、過疎地域での遠隔診療・リハビリ指導に5Gを活用 医療従事者の不足や派遣の負担軽減に[ITmedia

5. コロナ禍でパソコンの出荷が堅調

 電子情報技術産業協会(JEITA)は1月のパーソナルコンピューター国内出荷実績を発表した。それによると、コロナ禍に伴うリモートワークなどを背景に、個人向け、法人向けともに好調で、2カ月連続で台数、金額とも前年を上回ったとしている。

 また、IDCは世界のPC出荷について発表している。それに関する記事によれば「何年間も不振で、高値止まりで、売上が落ち込んでいたPCとタブレットの売上が急騰した。2021年2月初めにIDCは、第4四半期におけるタブレットの売れ行きがほぼ20%増」としている。さらにChromebookの出荷が相当伸びたとも報告している。「Chromebookは2020年のPC市場で10.8%を占め、前年同期の6.4%からアップしている。この数字はまた、同年のmacOSの7.5%を抜いている」というのも驚きだ。

 さらに、ガートーナーは2020年第4四半期における全世界スマートフォン出荷台数の調査結果を発表した。それによると、アップルは同四半期に約8000万台のiPhoneを出荷し、サムスンの約6200万台を抜いて、2016年第4四半期から4年ぶりに市場トップに返り咲いたという。

 新型コロナウイルスの感染拡大でさまざまな産業が経済的な損失を被っているなか、情報通信機器の分野においては総じて堅調とういう特徴的な産業動向の傾向が見られた。一方で、さまざまな理由による半導体不足なども報じられていて、コロナ禍での急速な産業の変革が起こりつつあることを感じる。

ニュースソース

  • ノートPC出荷好調、前年比2.6倍 1月としては過去最高[ITmedia
  • 2020年、Chromebookは絶好調[TechCrunch日本版
  • 2020年Q4スマホ出荷台数、アップルがサムスンを抜いて世界トップに[Engadget日本版
中島 由弘

フリーランスエディター/元インターネットマガジン編集長。情報通信分野、およびデジタルメディア分野における技術とビジネスに関する調査研究や企画プロデュースなどに従事。