中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」
ニュースキュレーション[2021/3/11~3/18]
8000万超のユーザー数を持つLINEの個人情報管理問題の衝撃 ほか
2021年3月19日 18:30
1. 8000万超のユーザー数を持つLINEの個人情報管理問題の衝撃
LINEの個人情報管理について大きな波紋を呼んでいる。ユーザーがLINEに登録した名前、電話番号、メールアドレス、LINE IDについて、中国のスタッフがアクセス可能だったというものだが、当社によれば、業務上必要な場合のアクセス権限であったと説明している。また、データの管理体制としては、画像や動画などのデータは韓国のデータセンターで管理が行われているが、2021年半ば以降、段階的に国内への移転を行う計画を進めている過程にあるという(ケータイWatch)。直ちに深刻な情報漏えいがあったと断じる段階ではなさそうだが、同社でも「プライバシーポリシー上に記載されていたものの、わかりやすいアナウンスできていなかった」という点は認めているようだ。
LINEのユーザーは8000万人を超えるともされていて、さまざまな民間サービスはもとより、行政サービスも行われている地域や分野もあることから、このできごとは今後の広く利用されている情報流通プラットフォームとしてのLINEに大きな影響を与えることになるだろう(朝日新聞デジタル)。執筆時点においても、一部の行政機関や自治体では利用を控える動きが出てきている。
2. ウェブの誕生から32年――発明者のティム・バーナーズ=リー氏が書簡を発表
ワールドワイドウェブ(WWW)の誕生から32周年を迎えた3月12日、その発明者であるティム・バーナーズ=リー氏が恒例となっている書簡を公開した(CNET Japan)。今年は、記事によれば「デジタルディバイド(情報格差)が世界中の若い世代にどのような影響を及ぼしているかについて」述べている。「今の子供たちはデジタルネイティブとして育っていると思われているかもしれないが、(中略)世界の若者の3分の1がインターネットにアクセスできていない」とし、「どれほど多くの素晴らしい若者がデジタルディバイドの誤った側に陥っているだろうか。将来リーダーとなるかもしれない人々の声が、有害なインターネットによってどれほど多くふさがれてきただろうか」と述べている。そして、「万民が良好なインターネット接続環境を利用できるようにすること、また政府に対し、企業が責任ある製品やサービスを提供するよう管理する法律を制定すること」を提言している。
ティム・バーナーズ=リー氏は、これまでもウェブの仕組みに起因して、ユーザーのプライバシーが搾取されてきたと厳しい言葉で懸念を表明し、自らもその解決に結び付くような技術開発に関与をしてきた。この問題は徐々にではあるが変化の兆しが見え、昨今ではサードバーティークッキーの排除などの方向が出てきている。ただし、ビジネスモデル自体はまだ大きな変化をしているとはいえない。しかし、同氏のこれまでの提言がウェブの発明者として、またビジョナリストとして、社会的に大きな影響力を持っていることからも、ウェブに関わる人々は自らの課題として認識すべきだろう。
ニュースソース
- インターネット誕生32周年、若者の3分の1はアクセスできず--ウェブの父が問題提起[CNET Japan]
- ウェブの父ティム・バーナーズ=リーが「悪いことが起きにくいソーシャルネットワークが必要」だと主張[Gigazine]
3. ウェアラブルデバイスによるバイタル測定に続き、「スリープテック」へ向かう
グーグルがスマートディスプレイ「Nest Hub」の第2世代を発表した(CNET Japan)。このデバイスは枕元近くのテーブルに設置するとユーザーの睡眠状態を感知する。感知の方法はカメラではなく、小型レーダーを使うという。記事によれば「ディスプレイに最も近い人の動きと呼吸から睡眠状態を分析する。さらに、内蔵されたマイク、光センサー、温度センサーを使って、咳やいびき、室温や明るさの変化も検知できる」としている。
また、日本でもNTT東日本がブレインスリープ社と共同で、睡眠に関する技術「スリープテック」の開発を進めると発表した(日経XTECH)。今後、睡眠データの分析基盤の構築、ブレインスリープなどが開発する睡眠障害のAI診断予測システムの実証実験などに取り組むとしている。
ここのところスマートウォッチの機能向上はめざましく、バイタルの測定についてはかなりの水準にまできているようだが、これから睡眠状態を分析することで、さらにヘルスケアの分野は技術が充実していくことになりそうだ。
ニュースソース
- グーグル、レーダーで睡眠を追跡する第2世代「Nest Hub」を発表[CNET Japan]
- NTT東が「スリープテック」、睡眠データで企業を支援[日経XTECH]
4. にわかに盛り上がる「NFT」とは?
今週公開された各メディアの記事の中で、にわかに盛り上がりを見せているのが「NFT」という語だ。これはノンファンジブル・トークン=Non-Fungible Tokenの略語で、ブロックチェーンの仕組みを使って、対象となるもののオリジナルとしての真正性を担保する「デジタル鑑定書」に例えられるような意味があるとされる。
フィンテック関連コンファレンスの「FIN/SUM2021」でもこの技術が論じられたとともに(coindesk)、スクエア・エニックスなどもこの技術に関連する発表をしている(INTERNET Watch)。さらに、CryptoGames、株式会社スマートアプリ、double jump.tokyoの各社は業務提携によりNFT事業を推進することを発表している(ASCII.jp)。
海外ではツイッター共同創業者であるジャック・ドーシーCEOが2006年3月の創業時「Just setting up my twttr(僕のツィッター、準備中)」という最初のツイートがオークションにかけられたが、これもNFTが利用されている(現代ビジネス)。
デジタルデータは低コストで無限に複製ができてしまうことから、そのオリジナルの真正性を担保できれば、そこには新たな価値が創出される。こうした用途はデジタル経済の中でこれからさらに展開を広げていくことになるのではないだろう。
ニュースソース
- 金融機関は不要になるのか、NFTはバブルか──FIN/SUM2021が開幕 [coindesk]
- スクエニ、ブロックチェーンを活用した「NFTデジタルシール」を今夏発売、「ミリオンアーサーシリーズ」で展開[INTERNET Watch]
- 国内のNFT市場形成を促進するため、ブロックチェーンコンテンツ事業会社3社が業務提携を実施。コンテンツホルダー・クリエイターのNFT事業において、発行から販売までをワンストップで支援[ASCII.jp]
- インターネットの「無限の複製」能力を封じる可能性を秘めたコピー不可能なデジタルデータ「NFT」とは?[Gigazine]
- スクエニがミリオンアーサーで参入する「NFT」とは?ビットコインとは何が違うのか? ブロックチェーンで「デジタルコンテンツを唯一無二」にできる、その可能性とは[INTERNET Watch]
- ツイート1本が2億円以上に…!? デジタル錬金術「NFT」のカラクリ[現代ビジネス]
5. 楽天グループと日本郵政グループが資本業務提携
一般紙誌でも報じられているが、楽天グループと日本郵政グループは資本業務提携に合意したことを発表した。日本郵政から楽天には1500億円が出資され、物流はもとより、モバイルサービスやデジタルトランスフォーメーションへと多岐にわたる協力関係になる(ケータイWatch)。とりわけ、郵便局の施設への携帯電話基地局の設置は楽天モバイルの業容拡大には大きな意味がありそうだ。それに加え、テンセントグループ、ウォルマートからも資金を調達し、基地局の充実に充てるという発表もしている(ケータイWatch)。
そして、研究部門において、楽天モバイルは英ストラスクライド大学と完全自律ネットワークのための包括的な枠組みに関する構想の実現に向け連携することに合意したと発表した(ケータイWatch)。「自律ネットワークを構築することで、ネットワークのメンテナンスコストを削減するほか、新機能の搭載も計画」するという意味がある。こちらも技術的には興味深い取り組みであり、モバイルサービスの低価格か競争の中で、その成果が期待されるところだ。