中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」

ニュースキュレーション[2022/2/3~2/17]

「AirTag」による悪用を防ぐ仕組みを導入へ ほか

eHrach/Shutterstock.com

1. イベントカレンダー:注目テーマは「Trusted Web」

 これから開催されるオンライン/オフラインでのイベント情報を紹介しておく。

 まず、金融庁と日本経済新聞が主催する金融系のコンファレンス「FIN/SUM 2022」が3月29日~31日に開催される(INTERNET Watch)。行政・政策、金融業界、テクノロジー業界など、多様な専門的バックグラウンドを持つ人たちが集うことが特徴のイベント。

 また、3月15日には「Trusted Web」に関するコンファレンスが内閣官房デジタル市場競争本部事務局の主催で開催される(内閣官房)。Trusted Webとは、インターネット上で信頼できる自由なデータ流通(DFFT:Data Free Flow with Trust)を確保する枠組みを構築することを目指し、特定のサービスに依存せずに、個人・法人によるデータのコントロールを強化する仕組み、やり取りするデータや相手方を検証できる仕組みなどの新たな信頼の枠組みの構想を指す。社会インフラとしてのインターネットをより強固なものにしていくために重要な議論になると思われる。

 最後に、「CEATEC 2022」は今年の10月に幕張メッセとオンラインで開催すると発表された(INTERNET Watch)。もちろん新型コロナウイルス感染症のまん延状況にもよると思うが、そろそろ現地でのリアルな体験や事業者との出会いに期待をしたいと思う人も多いに違いない。

ニュースソース

  • 金融庁&日経新聞主催「FIN/SUM 2022」が3月29日~31日に開催、ピッチコンテストの参加企業も募集中 Intel、AWS、マイクロソフトらが協賛[INTERNET Watch
  • 「CEATEC 2022」、10月に幕張メッセとオンラインでの開催を発表 「共創」の場としてのリアル会場と実績あるオンラインプラットフォームで展開[INTERNET Watch
  • 信頼性を確保した新たなインターネットの実現に向けて、"Trusted Web"イベントを3月15日(火曜日)にオンライン形式で開催します[内閣官房

2. 積極的に進むインターネット上の著作権侵害に対する対処(続報)

 インターネットに漫画を無断掲載する海賊版サイトへの誘導をする“リーチサイト”と呼ばれる種類のウェブページである「漫画天国」の運営者が、警視庁東村山警察署により書類送検されたと報じられている(CNET Japan)。これは被害を受けている小学館が発表したもの。自らが著作物を直接アップロードしなくても、こうしたリンクを提供するリーチサイトを運営すると、2020年10月1日から施行されている「リーチサイト対策及び写り込みに係る権利制限規定の対象範囲の拡大など著作物利用の円滑化を図るための措置」により、刑事罰の対象となる。

 また、コンテンツ海外流通促進機構(CODA)によると、宮城県警察本部生活環境課と塩釜警察署により、「YouTubeに映画を無断でアップロードしていた男性1人を著作権法違反の疑いで逮捕した」ということだ(CNET Japan)。アップロードされていたのは、作品を短く編集した、いわゆる“ファスト映画”と言われている形態のもので、広告収入を得ていたとされる。

 海賊版などは古くから問題になってはいたが、とりわけ近年、法整備が進んだことや悪質なサイトに法的な対処がとられるようになってきている。

ニュースソース

  • 「漫画天国」運営者が書類送検--海賊版サイトに誘導する「リーチサイト」を運営[CNET Japan
  • 「ファスト映画」アップロード主を逮捕--毎月約10万の広告収入、家宅捜索状況を限定公開[CNET Japan

3.「Emotet」感染が急速に再拡大

 メールを介して広がるマルウェア「Emotet」について、JPCERT/CCが「感染が急速に再拡大している」として注意喚起をした(ITmedia)。Emotetは「メールの添付ファイルやリンクを開くことで感染するマルウェア」で、「感染すると、メールアドレスやメールの内容、Webブラウザに保存したID・パスワードなどを盗み取られたり、新たな感染につながるメールを勝手に送信し、被害を広げたりする」悪意のあるもの。2020年ごろに大きな問題となったが、その後、沈静化をしていたが、ここにきて再び再燃している状況のようだ(ITmedia)。大手企業でもクラシエグループ、ライオン、積水ハウスグループなどが感染したことを公表している。

 不審なメールは開かないということを徹底するとともに、別の意味で問題視されているPPAP(暗号化されたZIPファイルを添付し、パスワードをメールで送信すること)も見直す必要がますますあるのかもしれない。

ニュースソース

  • 「Emotet」感染が急速に再拡大 「大幅に拡散した2020年に迫る勢い」 JPCERT/CCが注意喚起[ITmedia
  • クラシエ、マルウェア「Emotet」に感染 ライオンや積水ハウスに続き[ITmedia

4.「AirTag」による悪用を防ぐ仕組みを導入へ

 アップルの「AirTag」は、コインサイズのデバイスをカバンや財布などに入れておくことで、ほかのユーザーのアップルデバイスで構成される「『探す』ネットワーク」を介して、その現在地が分かるようになっているという仕組みだ。しかし、これを利用したストーカー行為などの犯罪が発生していることも報じらてきている。アップルでは、新たに悪用を防ぐ仕組み導入することを表明している(ケータイWatch)。

 初期設定時には「他人の同意なしに追跡することは世界中の多くの地位で犯罪であること」や「被害者によってAirTagが検出される仕組みであること」などを表示することや、本来の目的ではなく、「不要な追跡」で悪用していることを見つけるためのロジックがアップデートされて、アラートで警告をするという計画のようだ。

 こうした仕組みはAndroidをはじめ、他のOSなどでもサポートするような標準化をしないとすぐに抜け道は作られそう。

ニュースソース

5. 今週のNFT:国内外で引き続きさまざまな利用が進む

 以下のニュースソースには、この2週間で報じられているNFTを使った国内外の事例を挙げている。

 日本での事例も多く、「鉄腕アトム」(ITmedia)、「広瀬すず」(coindesk)、「徳川家」(coindesk)、「DAZN」(CNET Japan)などの有名な“ブランド”による利用事例が相次いで発表されている。また、プラットフォーム事業への参入も活況だ(ITmedia)。

 ただ、一般的にはその価値について十分な認識がなされているとは言い難く、一時的なブームとして懐疑的な人も多い。今後、本格的に経済規模を拡大するためには今しばらくの時間がかかるかもしれない。しかし、こうした試行錯誤を通じて、一気にブレークする可能性もあることから、市場の動向については引き続き注目をしておくべき分野ということができる。

ニュースソース

  • WWF、絶滅危惧種のアートをNFTに--現存数と同じ数だけ限定販売[CNET Japan
  • 「鉄腕アトム」がNFTカードゲームに メタバース空間でデュエル可能[ITmedia
  • ミクシィとDAZN、スポーツ特化型NFTマーケットプレイスを開始[CNET Japan
  • 広瀬すずがNFT、写真集の未公開カットを販売[coindesk
  • 徳川家が江戸を舞台にメタバースを製作──NFTアートと小判トークン発行[coindesk
  • DAZNとミクシィが共同でNFT事業スタート 試合映像や名場面を販売[ITmedia
  • NFTを活用したマーケティングの支援へ MeycoとHARTiが業務提携[Markezine
中島 由弘

フリーランスエディター/元インターネットマガジン編集長。情報通信分野、およびデジタルメディア分野における技術とビジネスに関する調査研究や企画プロデュースなどに従事。