中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」
ニュースキュレーション[2022/5/26~6/2]
総務省が「令和3年通信利用動向調査」の結果を公表 ほか
2022年6月6日 08:00
1.「デジタル前提社会」に向けた動き
5月25日、「消費者契約法及び消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律の一部を改正する法律案」が参議院で可決された(PC Watch)。このなかには「近年サブスクリプションなどで問題となっている『解約の方法が分かりにくい』『解約料が明記されていない』といった問題の解決に向けた改正など」が含まれている。
また、デジタル庁では、「地域でスマホやネットの使い方を教える『デジタル推進委員』」の募集を開始した(ケータイWatch)。当面は「青年経済団体や携帯電話会社の従事者から先行して、募集を開始している。今後、応募受付システムの準備が整い次第、一般受付の開始を予定」となっていて、幅広く地域でのサポートを行うことが計画されている。
そして、政府は経済財政運営の指針である、いわゆる「骨太の方針」に、「医療現場でのDXを加速する基盤となる『全国医療情報プラットフォーム』の創設」(ITmedia)と「ブロックチェーンを活用し新たな価値移転や決済の仕組みを生み出す次世代型インターネット『Web3.0』の推進に向け環境を整備する方針」(ITmedia)を盛り込むこととしていることが報じられている。
こうしたデジタル社会を取り巻く諸問題や今後の実現に向けた推進力を増すための施策が活発になっていくものとみられる。
2. デジタル化が進む国会図書館
5月19日、国立国会図書館が「個人向けデジタル化資料送信サービス」を開始した(ITmedia)。このサービスは「絶版などで入手が難しい本や資料のデータを自分のPCやタブレット、スマートフォンで閲覧できる」というもので、個人でも利用登録すれば図書や雑誌、論文など約152万点が新たに見放題になる。ただし、「絶版でも3カ月以内に復刊される予定があるものなどは対象外で、出版社など権利者の利益保護には気を配る」としている。
しかし、実際に利用をしてみたが、残念ながら検索の条件を設定する画面が使いにくい。「お宝」の資料もあると思われるが、それと出会うにはある程度の鍛錬が必要そうだ。
さらに、国会図書館では「関連する法改正を受けて、電子書籍の収集を本格的に開始する」と報じられている(Impress Watch)。関連する法改正を受け「商業出版の電子書籍も国立国会図書館への提供が義務付けられる」からである。なお、対応は2023年1月1日からとなっている。
ニュースソース
- デジタル化で利便性向上 国立国会図書館関西館・伊藤館長[ITmedia]
- 国会図書館、民間の電子書籍の収集開始 有償・DRM付きも[Impress Watch]
3. 総務省が「令和3年通信利用動向調査」の結果を公表
毎年この時期に発表される最新の「通信利用動向調査」の結果が公表された(総務省)。このデータなどを基に、今後、「情報通信白書」にも盛り込まれる。
なお、本年度の要点は次の4点である。
- スマートフォンの保有状況は、世帯の保有割合が88.6%、個人の保有割合が74.3%と堅調に伸びている。一方、携帯電話の保有状況は減少傾向が続いている。
- 個人のインターネット利用機器は、引き続きスマートフォンがパソコンを上回り、20~49歳の各年齢階層で約9割が利用している。SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)を利用する個人の割合は78.7%に達した。
- テレワークを導入している企業の割合は51.9%に達し、半数を超えた。導入目的は、「新型コロナウイルス感染症への対応(感染防止や事業継続)のため」の割合が9割を超えており、最も高い。
- クラウドコンピューティングサービスを導入している企業の割合は70.4%となり、7割を超えた。場所や機器を選ばない簡便さや、資産・保守体制のアウトソーシング化等がメリットとして認識されており、「非常に効果があった」または「ある程度効果があった」とする企業は、導入企業全体の88.2%に上った。
コロナ禍をきっかけとするテレワークの増加、クラウドコンピューティングの増加が特徴的といえる。また、スマートフォンやSNSが、多くの人のコミュニケーションの基盤となっていることがより鮮明となっている。詳細はニュースソースのリンクからダウンロードが可能である。
ニュースソース
- 令和3年通信利用動向調査の結果[総務省]
4. 海賊版対策は一定の成果を上げたが、抜本的な解決には至らず
海賊版対策を進める一般社団法人ABJは「出版物の海賊版サイト上位10サイトへの合計アクセス数は半年で半減した」という調査結果を発表している(ITmedia)。発表によると、2022年1月時点において、上位10の海賊版サイトのアクセス数は合算で4億を超えていたが、2022年4月には1億8349万にまで減少をしたという。一方で、「その後継に当たるサイトの月間アクセス数を比較すると、後継サイトのほうがアクセス数の伸びが急」であると指摘し、次々と新たな海賊版サイトが登場していると指摘をしている。訴訟をするなど、海賊版対策を強化したのち、出版業界における電子コミックがもたらす売上は増加したといわれているが、抜本的な課題解決には至っておらず、楽観視はできない。
一方、文化庁は「海賊版対策情報ポータルサイト」を公開した(CNET Japan)。これは「著作権の権利者が海賊版による権利侵害を受けた場合に、その対応を行う上で必要なノウハウなどを集約している」というサイトで、「インターネット上で自身のコンテンツの海賊版を見つけた際の対応、さらに削除要請の詳細やその他手段、方法など」をまとめている。文化庁では「日本の権利者は米国と比較して権利行使をしない傾向にあり、それが結果的に被害を拡大させているとの指摘がある」という。しかし、国外に対して法的な対応をするには多大なコストもかかるともいわれていることから、大手出版社以外では動きにくい面もありそうだ。
ニュースソース
- 海賊版に著作権侵害されたらどう対抗?--削除要請の手順まとめたサイト、文化庁が公開[CNET Japan]
- 違法漫画サイトへの月間アクセス数、半年で半減 ただし後継サイトは急成長中[ITmedia]
5. 「テレビよりスマホ」が鮮明に
NTTドコモのモバイル社会研究所では、10~70代のスマホユーザーを対象に「スマートフォンとテレビの利用状況」を調査し、その結果を公表している(ITmedia)。それによると、「30~40代を境にスマホとテレビの利用時間が逆転している」ことが明らかになったとしている。
これまでの他の調査でも、スマホでのSNS、YouTubeなどの動画サイト、ゲームなどがよく利用されていることは知られているが、こうしたメディア間の可処分時間の奪い合いにおいて、スマートフォンでのコンテンツ消費が優勢という状況のようだ。
もちろん、スマートフォンでオンデマンドでテレビ番組の見逃し放送を見ることができるようになったり、スポーツ中継がインターネット専門の配信メディアのみで行われたりという状況もあり、映像コンテンツの消費の減少というわけでもないと考えられる。
ニュースソース
- テレビよりスマホでしょ 30~40代を境に利用時間が逆転[ITmedia]