中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」

ニュースキュレーション[2022/11/17~11/24]

アマゾンにもリストラの波 ほか

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1. アマゾンにもリストラの波

 盤石と思われた米国アマゾンドットコムにもリストラの波が押し寄せているようだ。同社デバイス&サービス担当上級副社長のデイブ・リンプ氏が現地時間11月17日に大規模リストラのうわさを認めるコメントを発表している。記事によれば「リストラ対象の総数は不明だ。報道によると約1万人という。影響を受けた従業員には前日個別に通知した。極力社内で別の部署に配置換えできるよう、サポートしていく」ということだ(ITmedia)。対象となる具体的な組織は「音声アシスタント『Alexa』やそれを搭載するスマートデバイス『Echo』シリーズ、スマートテレビの『Fire』シリーズ、電子書籍の『Kindle』などを担当する部門」だという。

 さらに、公開された「アンディ・ジャシーCEOからの職の削除に関するメモ」という全社向け書簡によれば、リストラは2023年にも続くとされている(ITmedia)。

 一方で、倉庫ロボットへの投資は続けられるようだ。報道によれば「重点分野への投資は今後も変わらず続けるようだ。同社が特に力を入れているのが、物流施設の自動化を支えるロボット技術だ」としている(JBPRESS)。機械化により効率を上げるのは当然ではあるが、アマゾンの動向はいよいよ物流産業の構造変革が激しくなる予兆ということかもしれない。

 また、為替やインフレの影響により、日本のプライム年会費の値上げも心配されていたが、11月19日の日本経済新聞のインタビューではアマゾン日本法人のジャスパー・チャン社長が「変更の予定はない」と答えたことが伝えられている(INTERNET Watch)。日本のユーザーとしては一安心か。

ニュースソース

  • Amazon、大規模リストラを正式発表 AlexaやLuna関連部門が中心[ITmedia
  • AmazonのジャシーCEO、大規模リストラは2023年も続くと説明[ITmedia
  • アマゾン、コスト削減も倉庫ロボットへの投資は続行[JBPRESS
  • Amazonプライム年会費の値上げ、現時点では「予定なし」。日本法人社長が明言[INTERNET Watch

2. スマホの通信障害に備えていますか?

 MMD研究所は「2022年通信障害に関する意識調査」の結果を公表した(ITmedia)。それによると、通信障害経験者のうち73.5%が「何かしらの対応をした」としたと回答した。具体的には「自宅のWi-Fi等でデータ通信した」「復旧するまでニュースで情報を得ながら待機した」「自宅のWi-Fi等で音声通話・ビデオ電話の通話アプリを使って通話した」となっている。

 さらに、こうした今後のリスクを踏まえて検討しているのは「メインと違う通信会社をサブ回線として契約する」「デュアルSIMやeSIM対応の端末を購入」「最寄りの無料でつながるWi-Fiスポットの確認」することなどだが、特に検討していない人も47.6%と半数くらいとなった。

 すでに、リスクに備えて「何かしら検討をした」と回答した人346人のうち、実際に実施したのは「メインと違う通信会社をサブ回線として契約した」と回答したのが30.6%(全回答者660人に対しておよそ16%)となっている。

 7月に発生したKDDIの長時間にわたる通信障害は通信網が100%保障されているわけではないということをユーザーが改めて認識させられた出来事であったとともに、緊急時を考えるとユーザー側でも何らかの対応をしておくべきという「防災」に対する意識も芽生えているといえよう。

ニュースソース

  • スマホ通信障害に備えてサブ回線を契約した人は16%、乗り換えたケースも MMD研究所が調査[ITmedia

3. グーグルが新たなセンシング技術を搭載か?

 報道によると、グーグルは「スマート機器が近くにいる人の動きをレーダー技術で検知することにより、ウェイクワードなどの音声やタップなどの操作なしで、自動的に対応できるようにする方法を検討している」と報じられている(CNET Japan)。この技術は「Soli」といい、およそ6年前から開発が始まっていたようだ。この技術を使うと「レシピ動画を見ながら料理をしている人が画面の前を離れると、動画が自動的に一時停止し、戻ると再生する」というようなことが実現する。これは便利なセンシング技術になるかもしれない。実際に、いつごろ実装された商品が発売されるかは分からないが、話が表に出てきたということは、早晩、利用できるようになるのではないだろうか。ここのところ、パフォーマンスの向上はあっても革新的な機能の実装はあまり見られなかったことからちょっと楽しみでもある。

ニュースソース

  • グーグル、人の動きをレーダーで検知して自動的に対応するスマート機器を目指す[CNET Japan

4. NTTの「IOWN」サービスの提供開始

 NTTはグループ全体で取り組む「IOWN(アイオン:Innovative Optical and Wireless Network)」サービスを2023年3月から提供することを発表した。当初提供されるIOWNは「ネットワークから端末までE2E(End To End)で光技術を活用するAPN(オールフォトニクス・ネットワーク)サービスとして提供される。100Gbps(ギガビット/秒)専用線のサービスの一部として組み込まれ、利用者はネットワークを既存サービスの200分の1の遅延で利用可能で、光ファイバー1本あたりの通信容量も従来の1.2倍になる」という通信サービスの基盤である(EE TIMES)。想定される用途として「医療用ロボットを手掛けるメディカロイドの手術支援ロボット『hinotori』と連携した低遅延かつ揺らぎ(ジッタ―)の少ない遠隔医療の実現や、化学プラント内のメンテナンス作業の効率化など」を想定しているという。

 将来的には「光回路と電気回路を融合させ、小型化や経済化に加え、高速化や低消費電力化などの性能向上を図る」とし、「2025年度にボード接続用のデバイスの商用化が計画され、2030年度以降にはIOWN4.0として“チップ内の光化”も図られる」という計画である(ケータイWatch)。

ニュースソース

  • NTT、2023年3月に「IOWN」サービスを提供開始[EE TIMES
  • NTTが掲げる「IOWN(アイオン)」って何? 技術展示を見てきた[ケータイWatch

5. 日本・米国・中国、三様のスマホ利用動向

 MMD研究所が「日米中3ヶ国都市部スマートフォンユーザー比較調査」の結果を発表している。日本(東京、大阪)在住者557人、米国(ニューヨーク州、カリフォルニア州ロサンゼルス、カリフォルニア州サンフランシスコ)在住者562人、中国(北京、上海)在住者552人を対象に調査をした。

 それぞれの国でスマートフォンの使い方に違いがある。週1回以上利用しているアプリのジャンルは、日本では「メッセージアプリ」が最も多いのに対し、米国や中国では「電話」が多いことと、米国や中国と比較し、日本でネットショッピングが少なめなのも意外な結果だ。日本の首都圏ではリアル店舗がそれなりに近くにあって、便利だということか。

 記事では有料動画アプリについて言及していて、「何らかの動画再生アプリを有料で利用している割合は、日本が57.7%、米国が95.4%、中国が90.8%となり、日本が特に低い」という点を紹介している(ITmedia)。逆にいうと、日本では有料動画コンテンツの市場にはまだ伸び代があるといえるだろう。

ニュースソース

  • 日米中のスマホアプリ利用比較 日本は有料動画アプリの利用が圧倒的に少ない結果に[ITmedia
中島 由弘

フリーランスエディター/元インターネットマガジン編集長。情報通信分野、およびデジタルメディア分野における技術とビジネスに関する調査研究や企画プロデュースなどに従事。