中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」

ニュースキュレーション[2022/12/1~12/8]

東京国立博物館へはメタバースで。ミュージアムグッズはNFT ほか

eHrach/Shutterstock.com

1. 東京国立博物館へはメタバースで。ミュージアムグッズはNFT

 東京国立博物館は創立150年を迎え、現在、特別展「国宝 東京国立博物館のすべて」を開催し、多くの来場者が訪れているようだ。なかには希望する日時枠のチケットが手に入らないという声も聞かれる。そこで遠隔地の方はもちろん、希望する日時に訪問できなかった人は、「メタバース」での閲覧を試してみてはどうだろうか。

 東京国立博物館と文化財活用センター、凸版印刷は、東京国立博物館の所蔵するすべての国宝をメタバース空間で展示する取り組みを行う(CNET Japan)。これは「エウレカトーハク!◉89」という企画で、開催期間は2023年1月17日から3月31日まで、利用は無料となっている。東京国立博物館をメタバースで再現した「バーチャル東京国立博物館(バーチャルトーハク)」には、利用者がアバターで入館し、デジタル化された国宝を見学する。閲覧できるのは東京国立博物館が所蔵する全89点の国宝で、作品の画像のみならず、関連するVR映像も用意されるとしている。

 さらに、3月3日からは「国宝と『つながる』」と題して、「国宝をモチーフに現代アーティストたちが制作したNFTアート」の販売もするということだ。こちらもいまどきの技術を使った意欲的な取り組みだ。

ニュースソース

  • 東京国立博物館、所蔵する全89点の国宝をメタバース展示--国宝モチーフのNFTアート販売も[CNET Japan

2. iPhone 14の「衛星通信SOS」が遭難者救助に貢献

 iPhone 14には北米などで利用できる衛星通信SOSの機能が提供されている。この機能が早速、遭難者の救助に貢献したことが報じられている(CNET Japan)。記事によれば「アラスカ州西海岸のノールビクからコッツェビューに向けてスノーモービルで移動中に立ち往生し、米国時間12月1日未明にiPhoneの同機能を有効にした」という。「地元の捜索救助隊は、4人のボランティアからなる捜索隊をニミアック・ポイント地域に派遣し」「捜索隊はAppleの緊急対応センターから提供されたGPS座標を使って男性の位置を特定できた」としている。ユーザーがこの機能を知っていたかどうか、さらにとっさにそれを操作できるかどうかも重要な分かれ目だったのではないか。

 さらに、衛星通信の話題としては、イーロン・マスク氏が率いるスペースX社は衛星インターネット網の構築のためにStarlinkの第2世代衛星を7500基打ち上げる計画の承認を当局から受けたことが報じられている(CNET Japan)。先週は多数の衛星が天体の観測に影響を与えるという懸念も報じられていたことを紹介したが、ますます上空は衛星で混雑しそう。

 国内ではKDDIが「au通信網で衛星インターネット『Starlink』をバックホール回線として利用開始」したという発表もあった(INTERNET Watch)。

 こうした記事が増えているということは、地上基地局による人口カバーエリア拡大の競争は一段落し、上空の競争に入ったことを意味するか。

ニュースソース

  • 「iPhone 14」の衛星通信SOS、アラスカで遭難者救助に貢献[CNET Japan
  • SpaceX、「Starlink」の衛星7500基を追加配備する許可を取得[CNET Japan
  • KDDI、au通信網で衛星インターネット「Starlink」をバックホール回線として利用開始 同時に提供開始した衛星通信ソリューションを清水建設が北海道新幹線工事に採用[INTERNET Watch
  • KDDIスマートドローン、「Starlink連携」や「ドローンスクール開設」を発表[ケータイWatch

3. 全国の交通系サービスに広がる「クレジットカードのタッチ決済」

 SuicaやPASMOなどに代表される「交通系ICカード」との関係はどのようになるのだろうか。クレジットカードのタッチ決済による改札が広がりつつある。

 南海電気鉄道(南海電鉄)、泉北高速鉄道、南海りんかんバス、南海フェリー、三井住友カード、QUADRAC、ビザ・ワールドワイド・ジャパンはすでに実施をしてきた「Visaのタッチ決済による交通利用」と「QRコードを用いたデジタルきっぷの発売」の実証実験を12月11日に終了し、12月12日以降もサービスを継続すると発表した(ケータイWatch)。さらに「2025年大阪・関西万博に向けてエリアを順次拡大するなど、インバウンド旅客の受け入れ体制強化を目指す」としている。

 また、JR九州とJCB、三井住友カード、日本信号は「JR九州の一部区間において、自動改札機を利用したJCBとAmerican Expressのタッチ決済を追加する実証実験」を開始するとしている(Impress Watch)。

 さらに、東急電鉄、東急、三井住友カード、日本信号、QUADRACは2023年の夏から東急線において、Visaをはじめとする「『クレジットカードのタッチ決済』と『QRコード』を活用した企画乗車券の発売や改札機の入出場に関する実証実験」を開始する(Impress Watch)。2024年春には東急線全駅を対象に実施するということだ。

 背景には、交通系ICカードは物理カードやスマートフォン上でのカードを取得しなければならず、短期間だけ来日する外国人観光客などには使いにくいともいわれている。また、鉄道事業者側のシステム維持コストなどもありそうだ。今後、交通機関の決済システムは第二フェーズに入るとみられる。

ニュースソース

  • 「Visaタッチ/QRで南海電車に乗れる」サービスが継続へ、ほかのカードブランドへの拡大も[ケータイWatch
  • 国内初、JR九州でJCBとアメックスのタッチ決済開始[Impress Watch
  • 東急電鉄、首都圏初のクレカタッチ決済導入 '23年夏から[Impress Watch

4. 画像生成AIのイラスト、Adobe Stcokで販売可能に

 Stable Diffusionなどの画像生成AIの登場はグラフィッククリエイターにとって、さまざまな意味において大きなインパクトを与えた。新しいツールであると同時に、そもそもその来歴や権利などがどうなるのかということはさらに議論が必要になるのだろう。

 そのようななか、アドビはストックフォトサービスであるAdobe Stockで、画像生成AIによって作成された作品の投稿に関するガイドラインを制定した(Impress Watch)。それによれば「コンテンツ提供者(コントリビューター)が画像生成AIを使った投稿である旨を明示した上で、Adobe Stockへの投稿や販売を認める」方針である。

 また、アドビは設立から40周年、日本法人は30周年を迎えている。日本法人は「アドビ未来デジタルラボ」や、同社の事業戦略などについて説明を行ったと報じられている(PC Watch)。また、米国ではアドビのページ記述言語であるPostScriptの初期のソースコードがコンピューターヒストリーミュージアム(カリフォルニア州)に展示されるということだ(CNET Japan)。展示する理由は「PostScriptと『Adobe Type Library』は、印刷と出版に革命をもたらし、1980年代に始まったDTPの爆発的な成長のきっかけとなった」ということで、こうした歴史認識には誰も異論はないだろう。

ニュースソース

  • Adobe、デジタルの未来をみんなで考える「アドビ未来デジタルラボ」[PC Watch
  • アドビ、画像生成AIのイラストをAdobe Stcokで販売可能に[Impress Watch
  • アドビのページ記述言語「PostScript」、ソースコードが博物館で公開[CNET Japan

5. 期待されるアップルのAR/VRヘッドセットに関する観測

 アップルが発売するとみられるAR/VRヘッドセットに関する話題が増えている。しかし、必ずしも順調ではないようだ。CNETの記事によると「近く発表されるとみられるAppleの拡張現実(AR)/仮想現実(VR)ヘッドセットの大量出荷は、詳細は不明だが『ソフトウェアに関連する問題』のため、2023年第2四半期の予定が下半期に延期される可能性がある」ということだ(CNET Japan)。これまでも何度となくうわさが出ては消えていたが、発売までにはいましばらくかかりそう。なお、このデバイスに採用されるOSの名称が「『realityOS』と呼ばれていたが、現在は『xrOS』に変更された」ともしている(CNET Japan)。名は体を表すというだけに、コンセプトの変更などもあったのだろうか。

 また、自動運転車の遅れも報じられている。「Appleにとって初の電気自動車は、音声やジェスチャーによる自動運転システムを目指すものだが、提供開始は当初の予定より1年遅い2026年になる見込み」だと報じられている(CNET Japan)。こちらもうわさが先行しているが、期待を反映してのことか。

ニュースソース

  • アップルのAR/VRヘッドセット、大量出荷は2023年後半に延期か[CNET Japan
  • アップル、AR/VRヘッドセット向けOSの名称を「xrOS」に変更か[CNET Japan
  • アップル、自動運転車の発売を2026年に延期か--完全自動化も先送り[CNET Japan
中島 由弘

フリーランスエディター/元インターネットマガジン編集長。情報通信分野、およびデジタルメディア分野における技術とビジネスに関する調査研究や企画プロデュースなどに従事。