中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」

ニュースキュレーション[2023/1/26~2/1]

「ChatGPT」の生成を見破れ ほか

eHrach/Shutterstock.com

1. 「ChatGPT」の生成を見破れ

 今週もIT系のメディアでは「ChatGPT」に関する話題が多い。どのような質の回答が得られるかを試行錯誤をしたり、それを実際に利用したりした事例も出てきている。

 その1つとして、早くも米国スタンフォード大学の期末試験で使われていたという話題が報じられている(Gizmode)。これはスタンフォード大学生新聞が実施したアンケートで判明したようだ。もちろん、デバイスの利用は禁じられていると大学側は注意喚起をしている。同じ記事によれば「ペンシルベニア大学ウォートンビジネススクールのMBA課程の期末試験で一丁前にBをとってパスできるほどのレベルにChat GPTは到達しちゃっている」レベルだそうだ。いずれ人のアシスタントにはなるだろうが、それに依存して資格を取るのは今のところは倫理的に合意を得られていない。

 一方で、スタンフォード大学は「ChatGPTのようなチャットAIの作った文章を検出する『DetectGPT』を開発」したことも報じられている(Gigazine)。また、「論文内の盗用や剽窃、コピー&ペーストを検出するサービスを提供しているTurnitinがChatGPTで書かれたテキストを検出するツールの開発を進めている」とも報じられている。そして、ChatGPTを生み出したOpenAIも「テキストが人間が書いたものかAIが書いたものかを判定するツールを無料公開」している(ITmedia)。自分で生成したものは自分で判定できるというところが興味深い。

ニュースソース

  • Chat GPT、スタンフォード大期末試験で使われまくる[Gizmode
  • ChatGPT生成の文章を検出する「DetectGPT」をスタンフォード大学が開発[Gigazine
  • OpenAI、テキストが人間によるものかどうか判定するツールを無料公開[ITmedia

2. 「ChatGPT」で試行錯誤

 「ChatGPT」を使って試行錯誤をする人が増加している。ITmediaでは「札幌市のおすすめラーメン店を教えてください」(ITmedia)と「ログイン、ログオン、サインインの違いは?」(ITmedia)と尋ねた結果を記事にしている。話のオチはあえてここでは紹介しないので、オリジナルの記事を参照してほしいが、残っている問題も学習するデータが増えれば解決されることになるのだろう。

 一方、INTERNET Watchでは「Windowsの『vcruntime140.dllエラー』を解決する方法」を聞いてみている。この記事も試行錯誤のプロセスが興味深い記事になっている(INTERNET Watch)。

 こうしたツールで遊びながら、その能力の限界が分かれば徐々にアシストツールとして利用できるようになる可能性がある。今は「お笑い」な回答でも、これから急速にChatGPTの持つ情報量が増え、フィードバックも増えれば、正しい答えに即座に近づくことができる可能性も感じることができ、これからの進展から目が離せなくなる。

ニュースソース

  • ChatGPTに“おすすめラーメン店”を聞いたら幻の名店を教えてくれる その正体とは……?[ITmedia
  • ChatGPTに「ログイン、ログオン、サインインの違いは?」と尋ねたら……[ITmedia
  • ChatGPTにWindowsの「vcruntime140.dllエラー」を解決する方法を聞く、そして最終的に反省させる[INTERNET Watch

3. 楽天経済圏のなかで「楽天モバイル」が“最も高い城壁”

 楽天グループが楽天市場の加盟店向けに「楽天新春カンファレンス2023」を開催した。この場で三木谷浩史社長が講演を行ったことが報じられている(ケータイWatch)。

 講演は楽天モバイルへ注力する姿勢を強く印象づけるものだったようだ。いわゆる「楽天経済圏」構想のなかで重要な事業というわけだ。つまり「楽天市場」というコマースが“ど真ん中”に位置して、その周囲を守る“城壁”が「楽天カード」「楽天銀行」などのサービス。「楽天モバイル」が“最も高い城壁”だと説明している。「楽天モバイル利用による(楽天への)帰属意識は大きい」というのがその理由だ。「楽天のエコシステムを10兆円という目標に近づけていく」ことがこれからの具体的な数値目標である。

 さらに、今後の通信サービスとしては「スマートフォンと衛星の直接通信に関する構想」について触れ、「2024年末~2025年をめどにプロジェクトが進んでいる」と述べた(ケータイWatch)。

ニュースソース

  • モバイルへの注力姿勢くっきり、楽天・三木谷氏が「新春カンファレンス2023」で語ったこと[ケータイWatch
  • 楽天モバイル三木谷氏「スマホと衛星の直接通信、2024年末~2025年めどに」[ケータイWatch

4. IPAが「情報セキュリティ10大脅威 2023」を発表

 独立行政法人情報処理推進機構(IPA)は2022年に発生した社会的に影響の大きかったセキュリティ脅威をまとめた「情報セキュリティ10大脅威 2023」を発表した(INTERNET Watch)。日々報じられるニュースを見ているだけでもフィッシング、ランサムウェアの話題は多かった印象だ。しかも、その影響が事業の停止に結び付くなど、大きくなっているのも特徴だ。それを裏付けるように両者ともにトップにランクされた。また、ネット上の誹謗・中傷・デマも上位にある。いずれも人の心理的なスキを突いてくることから、技術的に抜本的な対策が難しい。しかし、リテラシーの問題として片付けることもできない。誰しもがそのリスクに直面をしていると、改めて認識すべきだ。

ニュースソース

  • IPA、「情報セキュリティ10大脅威 2023」発表。「ランサムウェア攻撃」が3年連続で組織の脅威1位に[INTERNET Watch

5. コンビニのカフェマシンで断水を検知?! 東京都とセブン-イレブン

 東京都とセブン-イレブンは、コンビニ店頭に設置してあるカフェマシンの給水タンクの空き状況から断水情報を検知する「断水情報収集」の実証実験を行うと発表した(Impress Watch)。

 そもそもセブン-イレブンは停電等の全店舗の状況、地区事務所や工場、配送トラック、サプライチェーンの状況、そのほか災害情報、交通情報、気象情報、避難情報などを集約できる災害対策システムの「セブンVIEW」を運用していることが大きい。この情報を水道局と共有するというわけだ。

 一般的に、こうしたことを実現しようとすると、あらためてセンサーを埋設するような大掛かりな話になるが、すでに運用されている情報を取得することで間接的に興味深い取り組みといえよう。こうしたアイデアはもっとあちこちにありそう。

ニュースソース

  • セブンカフェマシンを断水被害対応に活用 東京都水道局と連携[Impress Watch
中島 由弘

フリーランスエディター/元インターネットマガジン編集長。情報通信分野、およびデジタルメディア分野における技術とビジネスに関する調査研究や企画プロデュースなどに従事。