中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」

ニュースキュレーション[2024/3/14~3/20]

EU議会が「AI規制法」を可決 ほか

eHrach/Shutterstock.com

1. 今年の大手IT企業のプライベートカンファレンス情報

 毎年、この時期になると米国大手IT企業のプライベートカンファレンスの予定が発表になる。

 まず、今週はグーグルが「Google I/O」を5月14日から開催すると発表している(ケータイWatch)。位置付けとしては開発者カンファレンスであるが、一般利用者向けの新サービスやデバイス、Androidの新機能なども発表されることから、世界中の注目を集める。

 また、エヌビディアの「GTC 2024」(The Bridge)が3月18日から21日まで開催(本記事の公開時点では終了している)。生成AIの基盤となる半導体を開発していることから、こちらも注目を集める。その詳細については、さまざまなメディアで取り上げられることになるだろう。

 今後、アップルの「WWDC」、マイクロソフトの「Microsoft Build」、メタの「CONNECT」などの開催予定も発表されることになるだろう。

 当然のことながら、各社とも生成AIに対しての技術開発や製品化について発表されることが予想される。

ニュースソース

  • 2024年の「Google I/O」は5月14日~、登録受付がスタート[ケータイWatch
  • NVIDIAの年次カンファレンス「GTC」が来週開幕、現地参加1.6万人&オンライン参加30万人規模に[The Bridge

2. 「ポートレート写真が話す」技術

 グーグルがまた新たな技術を発表した(ITmedia)。グーグルの研究部門であるグーグルリサーチは、ポートレート写真を使って、与えられたテキストに従って発音しているように動くシステム「VLOGGER」の論文を発表している。文章の説明ではイメージができない人はデモ画像を見るとよい(VLOGGER: Multimodal Diffusion for Embodied Avatar Synthesis)。口だけではなく、表情全体も動く。ただ、肩から下は動かないようだし、手の身振りもないので、なんとなく不自然には感じるが、その解決も時間の問題だろう。テレカンファレンスやプレゼンテーションなど、もはや本人はその場にいなくてもよくなる。

ニュースソース

  • Google Research、1枚の人物画像からその人物が話す動画を生成するAI「VLOGGER」発表[ITmedia

3. 生成AIに注力するアップル

 先週、アップルは車の開発から撤退するという情報が流れ、それとともに生成AIに注力するのではないかという観測もなされた。そして、今週に入って現地メディアは新たな情報を報じている。それはiPhoneにグーグルの生成AIであるGeminiを搭載する方向で交渉をしているという話だ(CNET Japan)。すでに、アップルはグーグルの検索サービスをSafariで利用しているので、こうした交渉がなされていてもおかしくはない。

 この記事によれば、この生成AIは「オンデバイス」で実行できるものではないかという。当然、うわさの領域を出ない話ではあるが、これから春の新製品や新技術の発表で、各社がスマートフォン環境での生成AIについての発表をすることは想定されるので、アップルもそれに乗り遅れるわけにはいかないということだろう。

ニュースソース

  • アップル、「iPhone」へのグーグル「Gemini」搭載に向け交渉か[CNET Japan

4. EU議会が「AI規制法」を可決

 欧州連合(EU)の欧州議会は「Artificial Intelligence Act(AI規制法)」を可決した(Impress Watch)。

 この法律の目的は、「リスクの高いAIから基本的権利、民主主義、法の支配、環境の持続可能性を守るとともに、イノベーションを促進し、欧州をこの分野のリーダーとして確立すること」としている。その内容は、「AIの潜在的なリスクと影響度に基づき、AIの義務を定めている」とし、禁止するアプリケーションや用途、リスク評価、市民の権利の確保、透明性の確保などを求めている。

 具体的には、バイオメトリクスや顔認識情報などの無制限なスクレイピング、感情認識、ソーシャルスコアリング、予測取り締まりなどの禁止をしている。また、基本的権利に対してリスクの高いAIの例として、重要インフラ、教育・職業訓練、雇用、不可欠な民間・公共サービス(医療、銀行など)、法執行、移民・国境管理、司法、民主的プロセス(選挙への影響など)における特定のシステムを挙げ、リスクを評価・軽減し、使用ログを管理し、透明性と正確性を確保し、人間の監視を保証しなければならないとしている。さらに、市民はAIシステムに関する苦情を提出したり、AIシステムに基づく決定について説明を受けたりする権利があるとしている。また、AIによるディープフェイクなどについては、明確なラベル付を求めている。

 これまで、生成AIによって起こされる懸念について、明確なルールを定めているように読める。欧州でのこうした決定は、これから日本はもとより、各国でも参照されながら、それぞれの国でのルール策定が進むのではないかと思われる。

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5. インターネットの高額課金や犯罪から子どもを守るには

 国民生活センターによれば、「契約当事者が小中高生であるオンラインゲームの2022年度の相談件数は4024件で、契約購入金額の平均は約33万円」であり、無断課金が発生すると、最終的には高額の支払いになるという。こうした事態を受け、子どもが親に無断でオンラインゲームのアイテムなどに課金してしまう事例、および、その対策のためのアドバイスを公開している(INTERNET Watch)。具体的な対策としては、子どもが勝手に課金できないような「ペアレンタルコントロールの利用」などを呼び掛けている。

 また、警察庁は「SNSがきっかけで昨年に犯罪被害にあった18歳未満の子どもは1665人」で、前年から3.9%減少したものの、10年前との比較では5倍になっていると発表している(朝日新聞デジタル)。事案の内容として「略取誘拐」や「不同意性交」、「不同意わいせつ」などを挙げている。急増するこうしたSNSをきっかけとした事案についても、今後の対策強化が必要だ。

ニュースソース

  • 注意していたのに子どもがゲームで無断課金…トラブル事例と対策を国民生活センターが発表 2022年度の事例では平均「約33万円」と高額に[INTERNET Watch
  • SNSから犯罪被害、昨年子ども1665人 小学生、10年前の5倍[朝日新聞デジタル
中島 由弘

フリーランスエディター/元インターネットマガジン編集長。情報通信分野、およびデジタルメディア分野における技術とビジネスに関する調査研究や企画プロデュースなどに従事。