中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」

ニュースキュレーション[2024/3/7~3/13]

ウェブ35回目の誕生日にティム・バーナーズ=リーが語ったこと ほか

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1. ウェブ35回目の誕生日にティム・バーナーズ=リーが語ったこと

 3月12日はウェブ(ワールド・ワイド・ウェブ)の誕生日、すなわちこの技術が発明された日である。発明したのはティム・バーナーズ=リー氏で、当時、欧州原子核研究機構(CERN)に所属していた。そもそもの開発意図は、組織に所属している研究者に情報を伝達するためのドキュメントシステムであった。それとともに、商用のインターネットが普及し、さらにはウィンドウシステムで動くウェブブラウザーが開発されたことで、一気に広まり、メディアとしての可能性を示し、今日では、ウェブの仕組みなしにはインターネットを語ることはできないほどにまでなった。

 ティム・バーナーズ=リー氏は、毎年、3月12日には公開書簡をワールド・ワイド・ウェブ・ファウンデーションのページに掲載している(World Wide Web Foundation)。

 その中では、開発の経緯を振り返り、「インフラ全体の根底には、コラボレーションを可能にし、思いやりを育み、創造性を生み出すという意図があった。それは、人類に力を与えるツールとなることだった。ウェブの最初の10年は、その約束を果たした。ウェブはコンテンツとオプションのロングテールで分散化され、小規模でよりローカルなコミュニティを作り、個人のエンパワーメントを提供し、巨大な価値を育んだ」と書いている。

 そのうえで、現在の問題を2つ指摘している。「ウェブの35回目の誕生日を迎えたいま、AIの急速な進歩がこれらの懸念をさらに悪化させ、ウェブ上の問題が孤立したものではなく、むしろ新たなテクノロジーと深く絡み合っていることを証明している」ということと、これまでも述べてきている「個人データ市場」の問題である。これについて「ターゲット広告を可能にする深いプロフィールの作成によって、人々の時間とデータを搾取し、最終的には人々に与える情報をコントロールしている」と指摘している。

 そのうえで、ティム・バーナーズ=リー氏は、解決策として、「ソリッド」というアーキテクチャを提示してきている。ソリッドとは、「個人のオンラインデータの保存領域」を各人に提供することで、ユーザーは自分のデータがどのように管理され、使用され、共有されるかを自身で決めることができるとされる。

 ウェブの理念と、現在のウェブメディアの根底にユーザーの行動履歴や属性などの情報に基づく広告やコマースなどの経済活動とどう折り合いをつけるかが今後の課題だ。

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2. 米国議会下院はTikTokの米国内事業売却を求める法案を可決

 米国議会下院は、半年以内に、TikTokの米国内の事業を売却しなければ、米国内での利用を禁止するという法案を可決している(NHK)。今後、法案は上院に送られ、そこで可決されると大統領の署名によって成立する。

 この法案の趣旨は「安全保障上の懸念がある」ということだ。TikTokは実質的に中国の企業バイトダンスが運営することから「敵対国からの安全保障上の脅威」だとしている。加えて、今年秋の大統領選挙に対して、TikTokを使って中国から干渉されること警戒しているという見方もあるようだ。

 これに対して、TikTokは「このプロセスは秘密裏に進められ、法案が強行採決された理由はただひとつ、禁止を目的とするからだ。上院が事実関係を審議し、有権者の声に耳を傾け、700万の中小企業と、1億7000万人のアメリカ人がこのサービスを使っているという経済への影響を理解してくれるものと期待している」と反論するコメントを出している。

ニュースソース

  • 米下院 TikTokの国内事業売却しなければ利用禁止する法案 可決[NHK

3. IDCが世界のPC出荷と国内のスマートフォンシェアを発表

 IDCが世界のPC市場に関する市場予測を公表した(CNET Japan)。それによると、2024年の出荷台数は2億6540万台で、前年比2.0%増になると見込んでいる。発表によれば「2023年は在庫を減らすことに注力していたPCメーカーだが、景気回復の影響もあり、2024年は出荷を増やしていくと見込む。PC需要の高まる要因の1つとして、IDCはAI対応PCを挙げた。この種のPCは、ゆっくりとしたペースであるものの年間を通して出荷増をもたらす」としている。AIの普及はPCのリプレースにも影響を与えるということだ。

 また、IDC Japanが2023年第4四半期(10~12月)および2023年通年の国内のスマートフォンおよびフィーチャーフォン端末の出荷台数を公表した(ケータイWatch)。それによれば、「第4四半期のスマートフォンおよびフィーチャーフォン端末の出荷台数は3.5%減の830万台で、2023年通年のスマートフォンの出荷台数は前年比11.0%減の3001万台だった」という。その理由について「円安によるインフレやキャリアの在庫調整による影響が終息しつつある」という分析をしている。消費者の感覚でも、高機能なモデルは日本では割高感のある製品となってしまっている。

 そして、「2023年第4四半期のスマートフォン出荷数をベンダー別で見ると、シェア1位はアップルで55.0%の446万台となった」としている。

ニュースソース

  • 世界PC市場、2024年の出荷は2.0%増--AI対応PCや企業の更新サイクル到来で続く増加[CNET Japan
  • IDC調査、2023年の国内スマホ出荷台数は11.0%減、ベンダー別シェア1位は51.9%のアップル[ケータイWatch

4. OpenAIがイーロン・マスク氏に反論

 2月29日、イーロン・マスク氏はOpenAIを提訴した(Impress Watch)。イーロン・マスク氏はOpenAIの共同創業者であったが、その後は距離を置いていた。設立の経緯を知るイーロン・マスク氏は「OpenAIの設立は、公共の利益のためで、利益を目的としない人工一般知能AGI(Artificial General Intelligence、汎用人工知性)の開発を目指していたが、実際には営利企業となっている」と指摘し、「Microsoftの関与やGPT-4がオープンソースではなく、秘密にされていることが問題とする」として、提訴をしている。

 それに対して、OpeneAIは3月5日に、「OpenAIのミッションは、AGIが全人類に利益をもたらすようにすること。安全で有益なAGIを構築し、広く分散された利益を生み出す手助けをする」としたうえで、「2018年にマスク氏は、このミッションがAGIのオープンソース化を意味するものではないと理解していた」と反論する声明を出している。

 生成AIは、人類に大きな影響を与える技術で、他のシステムソフトウェアやアプリケーションとは異なる意味を持つ。こうした技術がどのように公開されるべきなのか、さらにはこうした技術を開発する企業がどのように経営されるべきなのかには世界の注目が集まっている。

ニュースソース

  • OpenAI、イーロンマスク氏に反論 「Openは誰もがAIの恩恵という意味」[Impress Watch

5. 「空飛ぶクルマ」はいよいよ実用化へ

 スズキとSkyDriveが「空飛ぶクルマ」の製造を開始した(Impress Watch)。「SKYDRIVE(SD-05型)」は、大阪・関西万博で利用される予定の機体で、その後、顧客に販売する製品を順次製造する予定だという。

 また、パソナグループ、兵庫県淡路市、MASCは、「操縦者は搭乗せずに検査員が乗り込み遠隔操作で飛行する空飛ぶクルマの有人飛行実証」を3月1日に実施した(ドローンジャーナル)。この機体は中国イーハン社製で、2人乗り、最高速度時速130kmという。今回の実験では地上から最高40mの高さまで上昇し、時速25kmで約4分間飛行したと報じられている(JIJI.COM)。

 「空飛ぶクルマ」は、いよいよ現実のものとなりつつあるようだ。

ニュースソース

  • スズキとスカイドライブ、「空飛ぶクルマ」の製造開始[Impress Watch
  • パソナグループ、空飛ぶクルマの無操縦者有人飛行実証を淡路市で実施[ドローンジャーナル
  • 「空飛ぶクルマ」、自動運転で有人飛行 淡路島で実験―パソナグループ[JIJI.COM
中島 由弘

フリーランスエディター/元インターネットマガジン編集長。情報通信分野、およびデジタルメディア分野における技術とビジネスに関する調査研究や企画プロデュースなどに従事。