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求人詐欺は「最初のメッセージ」からすでに始まっている! LinkedInの調査が示す、求職活動で注意すべきポイント

ビジネスSNS「LinkedIn」が、求職活動における安全性について調査したレポート「The LinkedIn Job Search Safety Pulse: 2026」を公開しました

 ビジネスSNSの「LinkedIn」が5月6日、求職活動における安全性について調査したレポート「The LinkedIn Job Search Safety Pulse: 2026」を公開しました。同レポートによれば、調査対象者の62%が詐欺と疑われる求人を見たことがあり、21%は実際に被害に遭い、30%は危うく被害に遭いかけたと答えています。

 また、米連邦取引委員会(FTC)によれば、求人詐欺の被害報告額は、2020年の9000万ドルから2024年には5億100万ドルへと、4年で5倍を超える規模に拡大しました。報告件数も同期間に3倍に増えており、近年、被害が急速に広がっている詐欺類型の1つとなっています。

 今回は、LinkedInの調査レポートをもとに、求人詐欺の手口と注意すべきポイントを解説します。同調査では、詐欺の接触がやり取りのかなり早い段階で起きていることも判明しました。じつは求人詐欺で危ないのは、内定直前だけではなく、最初の連絡の段階から詐欺への導線が始まっているのです。

「本当に存在する会社なのか」確かめるのが当たり前に

 調査は、米国・英国・ドイツ・インド・ブラジルの18歳以上の専門職8512人を対象に、今年3月に行われました。これによると、応募前に「この求人は本物か」と確認する人が72%に上り、そのうち29%は毎回確認していると答えています。さらに、1年前よりも警戒を強めた人は57%で、警戒が弱まった人の11%を大きく上回りました。

 求職者が確認する材料として最も多かったのは「企業の評判」で29%、次いで「求人を見つけた場所」が28%でした。求人票に書かれた条件だけでなく、どこに掲載されている求人情報なのか、誰が投稿しているのか、会社の公式採用ページにも同じ情報があるのかなどの周辺情報を見ているようです。

 以前は、求人票を見て条件が合えば応募する、という流れが自然でした。しかし、今では、応募する前に「本当に存在する会社なのか」「本当に募集しているのか」を確かめるのが当たり前になっているのです。

 求人を出す企業側にも影響は出ています。採用担当者の49%が、求職者から「この求人は本物か」と確認された経験があると答えました。怪しい求人情報が増えれば、正規に募集している企業まで疑われます。求人詐欺は、求職者個人の被害にとどまらず、採用市場全体の信頼を削る問題になっています。

求職者の多くは、企業の情報を検索したり、企業の公式サイトの採用ページで求人情報が実在することを確認したりしています(画像は、調査レポート「The LinkedIn Job Search Safety Pulse: 2026」より)

「外部チャットアプリへの誘導」は危険信号

 求職者が詐欺への不安を最も強く感じる場面としては、求人情報を閲覧しているときが22%、企業側から最初に連絡を受けたときが21%でした。

 特に注意したいのは、LinkedInのようなプラットフォーム上でのやり取りから、WhatsAppやTelegramといった外部のチャットアプリ(日本で言えば、LINEがこれにあたるかもしれません)へ誘導する手口です。LinkedInでは、報告された詐欺メッセージの90%において、外部アプリへ誘導する手口が確認され、しかも、その半数以上が「最初のメッセージ」で起きているというのです。

 相手の素性も選考の流れもよく分からないうちに、「詳しくは別のチャットアプリで話しましょう」「(チャットアプリの)IDを教えてください」などと言われるのです。ここが詐欺被害に遭うかどうかの分岐点となります。外部アプリでのプライベートなやり取りへ移ってしまうと、LinkedInのようなプラットフォーム上であれば用意されている検知や通報の仕組みが働きにくくなります。詐欺師にとっては、そうした監視の及ばないプラットフォーム外へ連れ出すことが目的なのです。

 求職者が怪しいとみなす「危険信号」として挙げた項目を見ると、「早すぎる個人情報の要求」が59%、「前払い金や手数料の請求」が56%、「返答を急かす言動」が45%、「プロフィールや求人内容の不自然さ」が42%でした。一方で、「プラットフォーム外の会話への誘導」を危険信号と見る人は38%にとどまっています。

 前払い金や身分証明書の提出をいきなり求められれば、多くの人は怪しいと感じますが、「続きはチャットアプリの〇〇〇で」などと言われるだけなら、つい応じてしまう人が一定数いるのです。普段からチャットアプリを使っている人ほど、違和感を持ちにくいかもしれません。ここでいったん立ち止まることが重要になります。

「プラットフォーム外の会話への誘導」を危険信号ととらえる人は38%にとどまりました(画像は、調査レポート「The LinkedIn Job Search Safety Pulse: 2026」より)

「少し怪しいけれど、チャンスだから」世代差も明らかに

 調査では、世代による差もはっきり出ています。求人詐欺の被害経験は、Z世代(18~28歳)が32%でした。X世代(45~60歳)の17%と比べると、ほぼ倍近い割合です。

 ただし、若い世代が単に注意不足だという話ではありません。Z世代では、世代的に好条件の採用機会が少ないという背景から、32%が「危険信号を無視した経験がある」と答えています。X世代では21%、ベビーブーマー世代(60代以上)では8%でした。就職や転職の競争が厳しいと感じている人ほど、「少し怪しいけれど、せっかくのチャンスだから」と判断してしまいやすいのです。

 危険信号への反応にも違いがあります。前払いを求められたときに疑う割合は、Z世代で40%、X世代で58%、即決を迫られたときに疑う割合は、Z世代で34%、X世代で47%でした。

 SNSやチャットを使ったやり取りに慣れている若い世代ほど、詐欺への導線が日常的なコミュニケーションの延長に見えてしまう面もあります。

警戒度には、はっきりと世代で差がありました(画像は、調査レポート「The LinkedIn Job Search Safety Pulse: 2026」より)

プラットフォーム側でも対策は進めているが……

 求人詐欺に巻き込まれると、被害は金銭だけにとどまりません。求人詐欺による影響として最も多かったのは時間の浪費で31%、次いでストレスや不安が27%、今後の応募に対する自信の低下が25%でした。詐欺はお金だけでなく、次に挑戦する気力まで奪ってしまうのです。

 転職活動は、ただでさえ精神的な負担が大きい作業です。期待して応募し、連絡を待ち、面談に備えます。その過程で詐欺に遭えば、「まただまされるのではないか」という不安が残り、その後の転職活動にも悪影響を残しかねません。

 もちろん、LinkedInも対策を進めています。検出した詐欺コンテンツの98.7%を会員の目に触れる前に削除し、偽アカウントの99.5%を通報前に止めているとのことです。企業のページや採用担当者に認証バッジを表示する仕組み、不審なリンクの表示抑制、怪しいメッセージを迷惑フォルダーへ振り分ける機能なども整備されています。

 とはいえ、プラットフォーム側の対策だけで完全に防ぐことはできません。だからこそ求職者側にも、相手と求人情報の実在性を確かめるリテラシーが求められます。

 マッチしそうな求人情報を見つけたら、まず企業名で検索し、企業の公式採用ページにも同じ情報が掲載されているかを確認します。LinkedIn上の情報であれば、採用担当者のプロフィールに不自然な点がないか、人脈が極端に少なくないか、写真が使い回しのように見えないかも見ておきたいところです。その企業のLinkedInのページに認証バッジがあるかどうかも参考になります。

 初期のやり取りは、できるだけLinkedInの中で完結させることも大切です。外部アプリへの移動を求められた場合は、その理由を確認し、少しでも違和感があれば応じないようにしましょう。急かされたときに、いったん立ち止まるだけでも、多くの被害は避けられます。

 求人情報を疑うことは、消極的な態度ではありません。自分のキャリアと個人情報、そして財産を守るための基本動作です。くれぐれもおろそかにしないようにしてください。

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