清水理史の「イニシャルB」

「10Gbps化」でギガビットNASの限界突破! 後から拡張できるQNAP「TS-453Be」を拡張してみた

4ベイで実売6万円強、M.2 SSDも搭載可能

 NASの10GbE化とSSD化が本格化しそうだ。QNAPから、実売6万5000円前後ながら、PCIeを搭載した4ベイNAS「TS-453Be」が登場した。オプションの拡張カードにより、10GbEの追加もSSDの活用も可能で、大容量なだけでない、より高速なストレージ環境を構築できるのが特徴だ。その魅力に迫ってみた。

10GBASE-TとM.2 SSD×2を拡張できる「QM2-2S10G1T」(実売価格3万4000円前後)を「TS-453Be」に装着したところ
CrystalDiskMarkの結果を見ても、10GBASE-T接続時は非常に高速だ

NAS選びの決め手は10GbEに

 これからNASを購入するとしたら、今すぐ使うかどうかは別にしても、10GbEに対応できるかどうかが大きなポイントになりそうだ。

 今はまだ高価な10GBASE-T対応LANカードも、PCでも次第に標準的なインターフェースになっていくことは確実だろう。有線LANに限らず、ギガビット越えの無線LANも、すでにPCや通信機器で採用され始めている。

 現状、いくら高性能なNASを利用したとしても、ネットワークが1Gbps止まりでは、110MB/s(880Mbps)前後が速度の限界となる。これを測定した環境は後述の通りだが、例えば4GBほどのファイルコピーをPCからNASにコピーしようとすると、PCの前で40秒ほども待たされることになる。これが10Gbps環境なら、わずか9秒だ。

10Gbpsと1Gbpsの違い
4GBファイルコピー(秒)
10Gbps9
1Gbps40

 ストレージの性能が関係するので、さすがに10倍とはいかないが、3~4倍の速さでデータの読み書きが完了する。数百枚のスライドがあるPowerPointなどは言うに及ばす、4Kのビデオ映像だろうが、OSなどのインストール用ISOファイルだろうが、「待つ」なんて感覚はなく、PCとNASの間でサクサクと読み書きできるわけだ。

 もちろん、10Gbpsのネットワークと言っても、ここで使っているのは光ファイバーを使うようなエンタープライズ向けのケーブルではなく、今使っているLANと同じ形状の(10Gbpsでの通信にはCAT6Aが必要)10GBASE-Tのことだ。

 10GBASE-T対応のNASは、ここ1年ほどで製品が増え、標準で10GBASE-Tポートを搭載したものや、PCIe拡張スロットだけを用意し、後から必要に応じて拡張できるものがある。

 今回、QNAPから登場した新型の4ベイNAS「TS-453Be」は、このうちの後者だ。CPUにCeleron J3455(クアッドコア、1.5GHz)を搭載したミドルレンジのNASだが、内部にPCIeスロットを搭載している。

 このため、当面は1Gbpsで使いつつ、将来的に10GBASE-Tへ拡張するもよし、今すぐ使うもよしと、ニーズに応じて高速化を図れる製品となっている。

オプションのPCIeカードを装着して10GBASE-T化できるQNAPの4ベイNAS「TS-453Be」

SSD+10GBASE-Tのコンボカードを使える!

 それでは、実際の製品をチェックしていこう。

 見た目は、角の取れた優しい印象を持つ新世代のデザインが採用されており、10Gbps対応NASとは言っても、無用な「凄み」は感じない。どちらかというと、エントリーモデルのような親しみやすい印象だ。

 インターフェースは、前面にUSB 3.0×1があるが、ほかは背面に集中している。USB 3.0が4ポートと豊富だが、1000BASE-T対応のLAN、HDMI出力も、それぞれ2つずつ搭載されており、オーディオ出力やマイク入力(これも2つ!)も搭載されている。

 面白い機能として、背面右上に内蔵スピーカーから音を出すための穴が空いていて、「ピン、ポン」という音に続けて、女性っぽい声で「System boot completed!」や「Shutting down」などとしゃべるようになっている。予備知識なく声が聞こえたので、筆者は「おぉ!?」と、かなり驚いた。

正面
側面
背面

 注目は、上部にあるカバーの部分だ。これが、TS-453Be最大の特徴でもあるPCIeスロット用となっている。

 ケースを開けるには、フロントカバーを取り外し(サイドのロックを外してスライドさせる)、背面にある3カ所のネジを取り外す。これで、PCのケースと同じような要領で、本体カバーを少しスライドさせて外すと、PCIeスロットへアクセスできるようになる。

ケースを開けて、PCIeスロットにアクセスできるようにしたところ

 装着できるカードは、以下のように、なかなか豊富だ。

  • 10GBASE-T LAMカード「QXG-10G1T」
  • QM2デュアルM.2 SSD/10BASE-T LANカード「QM2-2S10G1T」
  • USB 3.1デュアルポートカード「USB-U31A2P01」
  • ワイヤレスアダプター「QWA-AC2600」
QM2デュアルポートM.2 SSD/10GbEカード「QM2-2S10G1T」

 このうち10GBASE-Tを増設できるのは、「QXG-10G1T」と「QM2-2S10G1T」だ。低予算で収めたいなら、シンプルなNICである「QXG-10G1T」がお勧めだが、今回は、より高度な使い方ができる「QM2-2S10G1T」を試してみた。

 カード上にはM.2スロットを2つ搭載しており、10GBASE-TのNICとしてだけでなく、2基のSATA SSD(M.2)をNASに追加することができる。

 なお、QM2カードには、同じくSSD+10GBASE-TのコンボながらNVMe SSDに対応する「QM2-2P10G1T」も存在する。ただし、こちらは上位モデル(TS-x77/TS-x82)のみに対応し、今回のTS-453Beには対応していない。

 装着は、PC用のPCI Expressカードとまったく同じで、スロットに装着するだけと簡単だ。ただ、TS-453Beに装着する場合は、標準のL型ブラケットでは形状が合わないため、カードに付属する平らなブラケットに交換する必要がある。

 続いて、ヒートシンク四隅のネジを取り外してSSDを装着する。PCにM.2 SSDを装着するのと同じ要領で、端子部分をスロットに差し込んでから、QM2カードに付属のネジで固定する。2スロットのうち1スロットのみでも利用可能だが、M.2のSSDも価格が安くなってきたので、できれば2スロットとも埋めておくといいだろう(どう使うかは後述)。

PCIeカードのブラケットを付属の平らなものに交換
ヒートシンクを取り外してSSDを装着。付属パッドでヒートシンクに密着させられる
SSDを装着したカードをNASのスロットへ装着
NAS背面の左上に10GBASE-Tポートを増設できた

 あとはケースを閉め、フロントベイにHDDを装着すればハードウェアの準備は完了だ。

 なお、HDDを装着するためのトレイも、ネジを使わないツールフリーのタイプになっており、側面にあるアダプターでHDDを固定するだけと非常に簡単だ。HDDの交換は、それほど頻度が高いわけでもないが、万が一の障害対応などは、大抵急かされるものなので、こうしたちょっとした工夫が実はうれしい。

HDDはネジ留め不要でトレイに固定できる

ソリューションとして10GBASE-Tを提供するQNAP

 さて、カードを装着するだけで手軽に10GbE化できるTS-453Beだが、NASだけではなく、そのほかの環境も10GbE化しなければ意味がない。

 具体的には、PCに10GBASE-T対応NICを装着したり、10GBASE-T対応スイッチを導入したりしなければならないわけだ。

 QNAPはNASベンダーであるが、こうした周辺環境の整備にも事業範囲を広げている。前述した10GBASE-T対応NIC「QXG-10G1T」は、同社のNASだけでなく、WindowsやLinuxを搭載したPCでも利用できるようになっている。

 さらに、スイッチも新たに製品ラインアップに加えている。「QSW-1208-8C(12ポート)」と「QSW-804-4C(8ポート)」という2つの10GbE対応アンマネージスイッチも、2018年6月から国内で販売されている。

 これにより、QNAPは、NAS、スイッチ、NICと、10GbE環境をトータルのソリューションとして提供できるベンダーとなったわけだ。

 中でも、QSW-804-4Cは、Amazon.co.jpでの実売価格が5万9000円前後(2018年8月16日時点)と、8ポートの10GBASE-Tスイッチとしては比較的入手しやすい価格になっている注目の製品だ。

10GbE対応の8ポートスイッチ「QSW-804-4C」
正面
背面

 8ポートとなっているが、実際のポートは12あり、1~4ポートがSFP+専用、5~8ポートがRJ45(銅線)とSFP+のいずれかの方式で接続できるコンボポートとなっている。

12あるポートのうち4つがSFP+とRJ45のいずれかで利用可能だ

 競合メーカーからは、もっと低価格なスイッチも販売されているが、SFP+を豊富に使えること、さらに帯域幅が160Gbpsと競合よりも高いなど、スイッチとしての基本性能に優れる点が特徴だ。予算に余裕があるなら、こちらを選ぶメリットがある。

 高性能な10GbE環境を低価格で手に入れられるのは、個人ユーザーにとってもメリットがあるが、単一ベンダーで済むというのは、サポートや保守などの面も含め、法人にとっても、とてもありがたいことだろう。

10Gbpsの実力は?

 ということで、実際にTS-453Beの10GBASE-T環境における実力を検証してみよう。今回は、テスト環境の関係で、PCのNICのみ「Intel X540-T1」を利用したが、スイッチには前述の「QSW-804-4C」、TS-453Beの拡張カードには「QM2-2S10G1T」を使用した。また、NASには4基のWD Red WD20EFRXをRAID 5構成で搭載している。

 まずは、定番と言えるCrystalDiskMarkから見てみよう。1Gbpsで接続した場合は、シーケンシャルリードで118.2MB/sと1Gbpsの壁で速度が頭打ちになるが、このボトルネックが取り除かれる10Gbpsでは、726.6MB/sの速度を実現できている。

1000BASE-T接続時の結果
10GBASE-T接続時の結果

※検証環境(NAS):WD Red WD20EFRX×4(RAID 5構成) 検証環境(PC) CPU:Intel Core i7 7700(3.6GHz)、マザーボード:ASUS STRIX Z270G(Intel Z270)、メモリ:ノーブランド(DDR3 SDRAM 8GB×2)、ビデオカード:GIGABYTE GV-N970WF3OC-4GD(NVIDIA GeForce GTX 970)、ストレージ:Crucial CT1000MX500(2.5インチSSD、Serial ATA 2.0)、NIC:Intel X540-T1、OS:Windows 10 Pro 64bit

 続いて、実際の使用環境での速度を見てみよう。下のグラフは、10GBのファイルをRobocopyを使って、PCとNASの間でコピーした際の転送速度だ(Robocopyの表示速度をMB/sに換算)。

 1Gbpsの環境では、やはり110MB/sが限界だが、10Gbpsでは、380~390MB/sで実際にファイルをコピーできている。1Gbpsの環境と比べると3~4倍の速度で、ファイルがコピーされるまでの待ち時間も、1/3~1/4といったところだ。ここまで明確に差が出ると、やはり1Gbpsではなく、10Gbpsの環境でNASを使いたいところだ。

 なお、SSDへのアクセスが集中すると、QM2-2S10G1Tに搭載されているファンが稼働する。やや小型なためか、少しばかり動作音が大きくなる。性能を重視する場合は、静音性はある程度あきらめざるを得ないだろう。

10Gファイルコピー(Robocopy)
NAS→PCPC→NAS
1Gbps111.57109.03
10Gbps390.77382.99

SSDの活用方法は3通り

 このように、10Gの高速な環境が手軽に手に入るTS-453Beだが、今回使った「QM2-2S10G1T」には、前述したようにM.2スロットが搭載されており、2基のSATA SSDを搭載可能になっている。

 こうして装着したSSDの利用方法は、3通りある。他社製のNASでは、HDDのキャッシュとしてしかSSDを利用できないことを考えると、QNAP NASでは、より幅広い活用が可能だ。

通常のボリュームとして使う

 M.2スロットに装着したSSDも、フロントベイのHDDと同様に、通常のボリュームとして設定可能だ。初期設定では、HDDを選択してウィザードを進めるため、通常はSSDを選択できないが、初期設定の完了後に「ストレージ&スナップショット」から新しいストレージプールを作成すれば、SSDをボリュームとして構成できる。

 2つのスロットの両方にSSDを装着した場合は、RAID 0またはRAID 1を選択できる。さすがにRAID 0で運用するのは勇気がいるので、通常はRAID 1で利用することになるだろう。

初期設定のウィザードではSSDを選択できないが、設定後に新しいプールを作成してボリュームとして利用できる

SSDキャッシュとして利用する

 続いての利用方法は、SSDをキャッシュとして使う方法だ。SSDを未使用の状態(ボリュームとして設定した場合は削除しておく)で、「キャッシュ加速」の設定から新しいSSDキャッシュを作成すると、HDDのキャッシュ領域としてSSDを構成できる。

 こちらもSSDが2台ある場合はRAID 0とRAID 1を選択できる。個人的にはデータの安全性を優先したいので、RAID 1での利用をお勧めするが、キャッシュの場合、あくまでも一時的にデータを蓄えるだけなので、RAID 0で利用するのも悪くないだろう。

 なお、標準では、キャッシュは読み込みのみに利用するが、書き込みに利用することもできる。また、キャッシュのアルゴリズムを「LRU」と「FIFO」のいずれかから選択したり、ランダムアクセスのみで利用するか、シーケンシャルアクセスでも利用するかも選択できる。

 このSSDキャッシュに関しては、NASを利用するユーザー数が多く、しかも、複数ユーザーが頻繁にアクセスするファイルが存在する場合に利用すると、特に効果が大きい。このため、主にバックアップなどにNASを使う個人ユーザーの場合は、SSDキャッシュを有効化しても、目に見えるような効果は、なかなか得られないかもしれない。

SSDをキャッシュとして利用可能。RAID、読み書き、アルゴリズムなど、さまざまな設定が可能

Qtierで階層化する

 ストレージ階層化技術は、これまでエンタープライズ向けのストレージで使われてきたものだ。速度の異なるストレージを組み合わせて階層化し、保存先を使い分けることで、高速なアクセスと大容量データの保存という異なる2つの方向性を同時に実現できる機能と言える。

 TS-453Beは、コンシューマーでも手の届く製品でありながら、QNAPならではの「Qtier 2.0」という機能を搭載し、こうしたストレージ階層化を誰もが使えるようにした画期的な製品だ。

Qtierを利用することで、SSDとHDDを組み合わせた階層化ストレージを作成できる

 仕組みとしては、「層1:超高速」「層2:高速」「層3:容量」という3つの階層に、それぞれ異なるストレージを割り当て、頻繁にアクセスされるホットデータを層1に、あまり使われないコールドデータを層3に、というように、自動的に保存先を使い分けることができる。早い話が、保存先をNASが自動的に振り分けてくれるわけだ。

 もちろん、利用者がこれを意識する必要はなく、保存先としては通常のボリュームと同じように見える。このため、ユーザーは、いつも通り共有フォルダーにデータを保存するだけでいい。このデータがとりあえず層1に保存され、スケジュール設定による階層化で別の階層に移動されたり、設定画面からのオンデマンド階層化操作で、すぐに階層化することができる。

 Qtierは、既存のボリューム(HDDで作成したRAID5ボリューム)などをアップグレードするかたちで導入する。M.2 SSDを装着した状態で、「ストレージ&スナップショット」の画面からQtierへのアップグレードを実行すると、SSDが「層1:超高速」、HDDが「層3:容量」に割り当てられる(この場合、層2はなし)。

層1:超高速と層3:容量を使い分けることで、速度と大容量を両立させることが可能

 SSDは、RAIDの構成が可能だが、筆者が試したところでは、「フォールトトレランスのあるRAIDタイプを使用する必要があります」と表示され、RAID 1しか選択できなかった。速度を期待するならRAID 0で構成したいところではあるが、キャッシュと違って、ホットデータは常に「層1:超高速」に保持されることになるので、データの安全性を考慮すると妥当なものと言えるだろう。

 なお、Qtierの利用には、4GB以上のメモリが要求される。TS-453Beには標準で4GBのメモリが搭載されているが、できれば増設しておくことをお勧めしたい。

10GbEもSSDも、選択肢はあなたにある

 以上、QNAPから新たに登場したTS-453Beを実際に使ってみたが、10GbE環境での利用にお勧めしたい製品だ。オプションカードの装着は必要となるが、QM2-2S10G1Tを使えば、10GBASE-Tへの対応だけでなく、SSDを使った柔軟なストレージ構成も可能となる。

 他社製品と同様にSSDをキャッシュとして利用するのもいいが、SSDのみで高速なフラッシュストレージを構成してもいいし、Qtierを活用した速度と容量のイイトコ取りを目指してもいい。利用シーンや環境に応じて、いろいろな使い方を選ぶことができる。

 もちろん、10GbE化はまだ時期尚早と考えるなら、とりあえずオプションカードを追加せずに1Gbpsのまま使い続けてもいい。どう使うにせよ、その選択がユーザーの側にあるというのが、TS-453Beの最大の特徴だろう。

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(協力:テックウインド)

清水 理史

製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できる Windows 10 活用編」ほか多数の著書がある。