清水理史の「イニシャルB」
近距離800Mbps! 長距離でも500Mbps! 家中を鉄壁カバーのWi-Fi 6対応メッシュ「ZenWiFi AX(XT8)」
2.5GbE対応でブリッジ接続は1Gbps超え!
2020年7月13日 06:00
ASUSから、Wi-Fi 6に対応したトライバンドメッシュWi-Fiシステム「ZenWiFi AX(XT8)」が発売された。これまで10万円クラスだったWi-Fi 6対応メッシュが、2パックで実売6万9080円と、少し安く買える上、サイズが手頃なのも特長だ。家中ほぼ500Mbpsを実現できるパフォーマンスも圧巻だ。その魅力に迫ってみた。
トライバンド対応のメッシュWi-Fiなら2つのバケツでリレーできる
メッシュと中継機はトライバンドに限る――。
ASUSから登場した「ZenWiFi AX」を実際に使ってみると、改めてこの思いが強くなる。
以前に本連載で紹介した同じくASUSのWi-Fi 5対応のメッシュシステム「ZenWiFi AC」もかなりパフォーマンスに優れた製品だったが、今回登場した「ZenWiFi AX」は、これをさらに上回る安定性とスピードを実現できる新モデルだ。
2.4GHz、5GHz-1、5GHz-2の3つの帯域を使った同時通信ができるトライバンド対応の製品で、対応規格は最新のWi-Fi 6(IEEE 802.11ax)。2.4GHz帯で最大574Mbps、5GHz-1で最大1201Mbps(80MHz幅2ストリーム)、5GHz-2で最大4804Mbps(160MHz幅4ストリーム)の通信に対応している。
ZenWiFi AX(XT8) | |
実売価格(税込) | 6万9080円(2パック) |
CPU | 1.5GHz クアッドコア |
メモリ | 512MB |
Wi-Fi対応規格 | IEEE 802.11ax/ac/n/a/g/b |
バンド数 | 3 |
最大速度(2.4GHz) | 574Mbps |
最大速度(5GHz-1) | 1201Mbps |
最大速度(5GHz-2) | 4804Mbps |
チャネル(2.4GHz) | 1-13ch |
チャネル(5GHz-1) | W52/W53 |
チャネル(5GHz-2) | W56(144ch非対応) |
ストリーム数 | 2(5GHz-1)/4(5GHz-2) |
アンテナ | 内蔵(6本) |
WAN | 2.5Gbps×1 |
LAN | 1000Mbps×3 |
Bluetooth | - |
USB | USB 3.1 Gen1×1 |
動作モード | ルーター/アクセスポイント/リピーター/ブリッジ/メッシュノード |
IPv6 | ○ |
WPA3 | ○ |
サイズ(幅×奥行×高さ) | 160×160×75mm |
メッシュWi-Fiや中継機では、アクセスポイント間の通信(バックホール)に専用の帯域を割り当てられるため、トライバンドに対応した製品が有利だ。
Wi-Fiは、基本的に同じ周波数を使って同時に通信できないので、例えば、Wi-Fi子機との接続とバックホールに、同じ周波数帯(例えば5GHz帯)を使うと、ざっくり速度が半減するし、同時接続する子機が多ければ、さらに減っていく。
デュアルバンド対応のメッシュWi-Fiや中継機だと、2.4GHz帯と5GHz帯が1つずつしかないため、速い5GHz帯を中継とWi-Fi子機との接続の両方に使うと速度の低下が避けられず、かといって電波が混雑していて使い物にならない2.4GHz帯を組み合わせると、さらに速度が低下してしまう場合があり、パフォーマンスという点では不利であった。
これに対してトライバンド対応の製品では、2系統ある5GHz帯で、それぞれ別々のチャネルを使い分けて同時通信が可能なため、Wi-Fi子機との接続に5GHz-1を割り当てつつ、同時にアクセスポイントとの中継(バックホール)に5GHz-2を使うことができる。
例えるならバケツ1個のリレー(デュアルバンド)と、バケツ2個のリレー(トライバンド)の違いのようなものだ。
こうしたことから、ASUSのWi-Fiルーター製品の中では決してハイエンドという位置付けではないZenWiFi AXの実力が、極めて高いものであることが分かる。これまで10万円クラスだった2パックのトライバンドメッシュの価格を、ギリギリ6万円台に抑えている点も優秀だ。
個人的には、スペック面だけで考えても、現時点でのベストメッシュWi-Fiルーターのトップ3に食い込める実力の持ち主という印象を受けた。
置くだけですぐできる、スマホでカンタン設定
それでは、製品をチェックしていこう。
外観は、従来のZenWiFiシリーズを踏襲したもの。カドが取れたやさしいイメージを持ち、「Zen」という名の通り、シンプルな美しさを持ったデザインという印象だ。
カラーは今回のモデルはホワイト(ブラックもあり)で、清潔感があり、どのようなタイプの部屋にもマッチするものだ。サイズも160×161×75mmとそこまで大きくないので、置き場所にも困らないだろう。
インターフェースは背面に集中しており、WAN×1とLAN×3の有線LANポート、USB 3.1 Gen1×1が搭載されている。
このうち、LANポートは1000Mbps対応だが、右端のWANポートは2.5Gbpsに対応している。普及が始まった10Gbpsインターネット接続を利用した際のパフォーマンス向上にも役立つようになっている。
2.5Gbps対応のWANは、アクセスポイントモードでの動作時にはLANポートとして利用することも可能なので、NASやゲーミングPCなどを高速な有線LANで接続することもできる。
設置と初期設定はPCでも行えるが、スマートフォン向けの「ASUS Router」アプリでも可能で、初期セットアップは非常に簡単だ。
工場出荷時状態では、暗号化なしのセットアップ用SSIDでZenWiFiが立ち上がるので、そのSSIDにスマートフォンを接続し、アプリを使ってウィザードを進めていく。インターネット接続(自動判定)、運用するSSIDやパスワード、管理者アカウントなどを設定するだけで、すぐに利用できる。
2パック構成の場合、2台目をメッシュノードとして構成する流れも、アプリから自動的に実行されるので、初期設定時のみ2台を近くに設置しておき、設定完了後に家庭内の好きな場所へ移動するだけでいい。
前述したように、本製品はトライバンド対応で、バックホールとして専用の帯域を利用可能だ。2系統ある5GHz帯の2つ目となる5GHz-2をアクセスポイント間の通信に利用する。
この帯域は160MHz幅で4ストリームなので、最大通信速度が4804Mbpsとなり、極めて速い。ただし、Wi-Fi子機を接続する側となる5GHz-1は80MHz幅(160MHzは非対応)の2ストリームであり、無線通信時のエンドツーエンドの最大速度は1201Mbpsとなる。
QoSやVPNなど豊富な機能でテレワークにも最適
機能面でも非常に多機能だ。
ASUS製品は、モデルやラインアップによる機能差があまり大きくない(一部ゲーミングはゲーミング用機能を搭載)点も特徴だ。本製品でも、ASUSならではの付加機能を活用できる。
具体的には、次のような機能だ。
- AiProtection
トレンドマイクロの技術を使った悪質サイトブロックや脆弱性保護(IDS/IPS)、子どもの利用時間制限、ウェブ&アプリのフィルタリングの各機能を利用できる - Adaptive QoS
端末を指定して通信を優先処理したり、ゲームやメディアストリーミングなどのカテゴリーを指定してアプリごとに通信を優先処理したりできるQoS機能 - トラフィックアナライザー
トータルの通信量や端末ごとの利用状況を把握できるモニター機能 - USBアプリケーション
USB接続したストレージのデータをLANで共有したり、外出先から参照したりできる機能。プリンター共有や、4G/3G対応のUSBドングルによるWAN接続、TimeMachineバックアップにも対応する - AiCloud 2.0
USBストレージのデータに簡単に外出先からアクセス可能にする機能。LAN上のPCにインターネットから簡単にアクセスできる「Smart Access」を活用したり、USBストレージのデータをクラウドストレージサービスの「ASUS WebStorage」と同期することもできる - Alexa&IFTTT連携
音声コマンドでルーターの設定(ゲストネットワークのオン・オフなど)ができる - VPNサーバー
PPTP/IPsec/OpenVPNによるVPNサーバー機能 - デュアルWAN
WANポートに加え、LANポート1~3のいずれかをWANに設定し、負荷分散やフェイルオーバーが可能 - 豊富な動作モード
ルーター、アクセスポイント、リピーター、メディアブリッジの各動作モードと、AiMeshノードに対応
このように、ZenWiFiはメッシュWi-Fiシステムとして優秀なだけでなく、利用できる機能も非常に豊富だ。昨今のテレワーク需要で、ネット回線やWi-Fiの環境がさかんに見直されているが、そういった面からも本製品は適した製品と言える。
メッシュWi-Fiで家中どこでも高速なWi-Fi環境が手に入れられるだけでなく、AiProtectionで安全にインターネット接続ができる上、USBストレージ共有やVPNサーバー機能なども活用できる。非常に完成度の高い製品と言えるだろう。
遅い場所でも400Mbps超、近距離、中距離、長距離まさに隙ナシ
気になる実力だが、冒頭でも触れた通りで、相当に優秀なものだ。
以下は、木造3階建ての筆者宅の1階にルーターとして設定した1台目を、3階階段上踊り場にAiMeshノードとして設定した2台目を設置し、各フロアからiPerf3による速度を計測した結果だ。
なお、今回はZenWiFiをアクセスポイントモードで構成し、2.5Gbps対応のWANポートにiPerf3サーバーとして構成したPCを接続して値を計測している。また、Wi-Fiはスマートコネクトを無効化し、PCとiPhoneが5GHz帯のみにつながるようにして計測している。
1F | 2F | 3F入口 | 3F窓際 | ||
PC | 上り | 753 | 423 | 535 | 473 |
下り | 826 | 500 | 543 | 483 | |
iPhone 11 | 上り | 461 | 348 | 442 | 381 |
下り | 666 | 546 | 594 | 484 |
本製品は、前述したようにWi-Fi子機接続用の帯域が80MHz幅までとなるため、最大2402Mbps対応のPCでも1201Mbpsでしか接続ができない。それでも、1階での近距離の実効速度は最大826Mbpsと、非常に高速だった。
一方、長距離となる3階窓際も優秀で、PCで下り483Mbps、上り473Mbpsとなった。実は、Wi-Fi 5の対応となる従来モデル「ZenWiFi AC」では、3階窓際で600Mbpsをマークしたため、それを超えるスピードを期待したのだが、今回は測定環境の違いからか(テレワークが普及してから無線の混雑も増えた)から、そこまでの値とはならなかった。
しかしながら、3階窓際で500Mbps近い値は、従来のWi-Fi 5はもちろんのこと、Wi-Fi 6対応のハイエンド機であっても、"並"の製品では実現が難しい値だ。本製品の実力の高さを十分に証明していると言える。
また、従来のZenWiFi ACでは、近距離と長距離の結果は良かったものの、2階の値が250Mbps前後と振るわなかったが(直接1階に接続するか3階の2台目を中継するかの判断が微妙なポイントでの計測は、メッシュや中継機では速度が落ちがちだ)、今回のZenWiFi AXではこうした中距離でも、バッチリ500Mbpsオーバーを実現できている。
近距離、中距離、長距離と、まさに隙ナシの鉄壁のカバーエリアで、恐ろしいほど速いという言葉がピッタリな実力の持ち主と言える。
本製品は、アンテナが45度に搭載されているため、上下方向の通信に強いという理由も大きいが、カバレッジの広さと、速度の速さを兼ね備えた優秀な製品と言えるだろう。
また、本製品の2.5Gbpsポートを利用し、次のように1階に設置したPC1(有線)と3階に設置したPC2(有線)を無線で接続した場合の速度も計測してみた。
1階と3階とは離れた場所にあるPCであっても、2.5Gbpsの有線LANと4804Mbpsのバックホールというたっぷりの帯域のおかげで、下り1.08Mbps、上り521Mbpsと、1Gbps越えの速度が実現できている(上りが遅いのはPCのNICの影響かと思われる)。
1階から3階まで有線LANを敷設しなくても、無線でここまでの速度が実現できるのは大きな魅力だ。
有線ブリッジ | |
上り | 521 |
下り | 1080 |
非常に優秀で文句ナシにお勧め購入検討の第1候補と考えたい
以上、ASUSのZenWiFi AXを実際に試してみたが、非常に優秀で、文句ナシにお勧めできる製品と言える。
2020年7月1日時点でのAmazon.co.jpでの実売価格は2パックモデルで6万9080円(税込)なので、絶対的な価格は決して安くはない。だが、ほかのWi-Fi 6対応トライバンドメッシュ製品に比べると割安で、1パックなら実売3万4980円(税込)なので、もう少し安く購入できる。
デュアルバンドのメッシュWi-Fiは、環境によっては思ったほどの効果が出ないので、費用の割にお得感が得られないことが多いのだが、この製品に関しては、支払った費用に十分以上に見合う効果が得られるはずだ。
現時点で、メッシュ製品の購入を検討しているのであれば、その筆頭として検討する価値があるモデルと言っていいだろう。
(協力:ASUS JAPAN株式会社)