清水理史の「イニシャルB」
リビングのテレビ&ゲーム機接続環境をWi-Fi 6に変更
離れた2階でも330Mbpsでインターネット接続可能に!
2020年7月20日 06:00
一部で残っていた筆者宅のWi-Fi 5環境がようやく撤去された。1階の仕事部屋と2階のリビングをつなぐ基幹をWi-Fi 6化し、テレビやゲーム機などのリビングの機器のネットワーク環境はもちろんのこと、家族のスマホの接続環境までを大幅に改善した、その顛末を紹介しよう。
速度に不満はなかったが
規格上の速度は、従来のネットワークの方が高速だった。
これまで筆者宅の1階には、NECプラットフォームズの「Aterm WG2200HP」(Wi-Fi 5)が、2階にはコンセント直結タイプのTP-Link「RE650」(Wi-Fi 5)が設置され、両フロア間が4ストリーム最大1733MbpsとなるWi-Fiで接続されていた。
これに対して新しい環境では、1階がバッファローの「WXR-5950AX12」(Wi-Fi 6、最大4804Mbps)、2階がTP-Link「RE505X」(Wi-Fi 6、最大1201Mbps)となり、両フロアの間は最大1201Mbpsで接続されることとなる。
当初は、どうせなら2階にも4808Mbps対応のWi-Fi 6対応機を設置し、有線LAN超えの速度を目指そうと思ったのだが、WXR-5950AX12を2台そろえるのは予算的にも厳しい上、リビングに設置するにはサイズが大きすぎるため断念。今回はある程度速度を犠牲にし、小型で安価なRE505Xを使って2階を接続することにした。
結果的に、1階と2階の経路は従来の1733Mbpsから1201Mbpsへとスピードダウンしたものの、今回の環境では1階が4804MbpsのWXR-5950AX12となっている点が大きなポイントだ。
WXR-5950AX12は、4804Mbpsの速度を、80MHz幅8ストリームと160MHz幅4ストリームの2通りの方法で実現可能となっている。今回はこの前者を採用したことで、2階のRE505Xで80MHz幅2ストリーム(1201Mbps)を利用したとしても、まだ6ストリーム分の余裕がある。
Wi-Fi 6は、MU-MIMOやOFDMAにより、複数のWi-Fi子機を利用しても伝送効率が高く、同時通信時の速度が落ちにくい仕様になっている。このため、RE505Xの中継で1201Mbpsを利用している状態で、さらに筆者のiPhone 11(80MHz幅2ストリームの1201Mbps)や家族のiPhone 11を接続しても、速度が落ちにくいことになる(まだ2ストリーム分余裕もある)。
従来は、MAXの通信キャパシティである1733Mbps全てを中継に使っていたが、今回は中継だけでなくスマートフォンの接続先もWXR-5950AX12とし、より効率的な環境を目指したということになる。
Wi-Fi 6対応ルーターにおける4804Mbpsの最大速度や10Gbpsの有線LANについて、過剰だと考える人もいるかもしれないが、こうした中継とスマホやPCの混在環境を無理なく構成できる点も、魅力の1つと言えるだろう。
ちなみに、筆者は本コラムで、「メッシュと中継はトライバンドに限る」という主張を繰り返しているが、この考えは今も変わらない。このため、予算が許すならネットギアジャパンの「Orbi WiFi 6」か、ASUSの「ZenWiFi AX」あたりを購入した方が、はるかに効率がいい。
これは言い訳に過ぎないが、今回は、予算に全くもって余裕がなかったため、手元にあったWXR-5950AX12を流用した上、2階側も、現時点でWi-Fi 6対応中継機としては唯一の製品であるRE505Xを使わざるを得なかったことをお断りしてこう。
PS4で330Mbpsで通信可能
設置は特に問題なく完了したが、今回は1階のWXR-5950AX12が外付けタイプのアンテナを採用していたため、その向きを工夫した。
利用場所は2階となるため、WXR-5950AX12を1階のなるべく高い場所に設置し、アンテナを2階のRE505Xの設置場所へと向くように調整しておいた。
一方、2階に設置したRE505Xは、以前の本連載で紹介した通りコンセント直結タイプの製品だが、コンセント直結時にアンテナを水平方法にすると、「前へならえ」の格好となり、かなりはみ出す。
このため、今回は電源タップを使って本体が横向きになるように設置し、RE505XのアンテナもWXR-5950AX12の方向に向くように調整しておいた。
この状態で、テストとして速度を計測してみたのが以下のグラフだ。リビングのテレビに接続されているPS4を利用し、以下の3パターンでインターネット接続の速度を計測してみた。
- PS4を有線でRE505Xに接続して1階へはRE505Xの5GHz帯経由で接続
- PS4内蔵の無線LAN(2.4GHz帯のIEEE 802.11nで最大150Mbps)でRE505Xに接続し、1階へは同じくRE505Xの5GHz帯経由で接続
- 1階のWXR-5950AX12にPS4の内蔵無線LANで直接接続
上り | 下り | |
有線―RE505X | 122 | 336.3 |
中継―RE505X | 8.6 | 27.2 |
無線―WXR-5950AX12 | 5.1 | 6.2 |
結果は当たり前だが、有線+RE505Xが最も速く、下りで336Mbpsで通信できた。筆者宅のPS4は初代モデルで、内蔵するWi-Fiが2.4GHz帯のみのIEEE 802.11nで、最大150Mbpsと遅いため、大差が付いた格好だ。
とは言え、仮に11ac(5GHz帯)対応のPS4 Proだったとしても、有線+RE505Xで通信した方が効率的だ。RE505Xは、デュアルバンドで5GHz帯が1系統しかないため、クライアントとの接続と中継を同時に実行できない上、接続するクライアントが増えれば中継の速度も低下してしまう。有線で接続可能な機器はなるべくRE505Xに有線で接続し、無線の同時通信が発生する頻度を低くしておくといいだろう。
SSIDをひと工夫
さて、これで一通り中継環境が整ったわけだが、最後にもうひと工夫しておいた。
前述したように、今回1階に設置したWXR-5950AX12は8ストリーム最大4804Mbpsのため、RE505Xの2ストリーム1201Mbpsの中継に使っても、帯域が豊富に余っている。
このため、Wi-Fi 6で接続できる機器は、1階はもちろん2階で使う場合も、1階のWXR-5950AX12へ接続した方が効率がいい。
実際のテスト結果を見てみよう。以下は、2階からiPhone 11を使って「speedtest.net」を使ってインターネット接続の速度を計測した結果だ。
上り | 下り | |
中継―RE505X | 205 | 180 |
無線―WXR-5950AX12 | 336 | 502 |
同じ2階のRE505Xに接続した場合は下りで180Mbpsしか出ないが、離れた1階のWXR-5950AX12に接続した場合は502Mbpsで通信できる。接続と中継で5GHz帯が重複していることが明らかにボトルネックになっていることが分かる。
中継を回避できる点、WXR-AX5950AX12の帯域が余っている点の2つの理由で、2階からでもiPhone 11などのWi-Fi 6対応機は1階のWXR-5950AX12につないだ方がいい。
このため、SSIDを以下の図のように変更した。
1階のWXR-5950AX12は特に工夫はないが、2階のRE505Xでは、2.4GHz帯の中継を無効に設定し、5GHz帯のみで中継するように設定。Wi-Fi子機接続用(拡張用)のSSIDは、これとは逆に2.4GHz帯のみを有効化し、5GHz帯は無効化してある。
要するに、RE505Xは2.4GHz帯→5GHz帯のみの中継機能は残すが、基本的には有線→5GHz帯のコンバーターとして使うことになる。
これで、同じ帯域が別々の用途で重複することもなくなり、さらにWXR-5950AX12の豊富な帯域も活用できるようになった。
ちなみに、この構成の場合、2階だけでなく、3階にいるときも1階のWXR-5950AX12に接続することになるが、次のように3階窓際の最も遠い場所でも下りで467Mbpsと爆速なので、一切心配ない。
やっぱりWi-Fi 6がいい
このように、今回は自粛期間を利用してホームネットワークの再構成に挑戦した。いろいろ試行錯誤はしたが、結果的に満足できる構成となった印象だ。
あらためてWi-Fi 6対応製品をいろいろ試してみたが、やはりハイエンドのWi-Fi 6ルーターは速いという印象だ。近距離のスピードも恐れ入るが、長距離でも速度が低下しにくく、混雑にも強い。
現状、Wi-Fi 5(11ac)対応製品が安く購入できるが、予算に余裕があるのであれば、個人的にはWi-Fi 6への移行をお勧めしたいところだ。