清水理史の「イニシャルB」

最速1.55Gbpsの最強Wi-Fi 6ルーター登場! 有線も10GbEのバッファロー「WXR-5950AX12」

IPv6 IPoEも無線引っ越し機能も! 考えられる最新スペックを全て網羅

バッファローのWi-Fi 6対応ルーター「WXR-5950AX12」。10GbpsのLANポートを2つ搭載

 国内Wi-Fi機器メーカーの老舗バッファローが、ついに「最強」の称号を海外勢から奪還した。

 最大4804Mbpsの無線に加え、有線も一気に10Gbps化(しかも2ポート!)、それだけでもスゴイが、7月に施行されたばかりの新電波法や、海外勢が未対応のv6プラスやtransixなどのIPoE IPv6にも対応。アンテナは80/160MHzのデュアルスタック対応だったりと、もう「お腹いっぱい」の仕様だ。

 今回は、14インチ液晶を搭載し、1kg切りながらWi-Fi 6に標準対応するAcerの新型ノートPC「Swift 7」とともに、その実力を試してみた。

Wi-Fi 6に対応しながら、14型液晶採用で1kgを切るAcerのノートPC「Swift 7」

Wi-Fi 6(11ax)も10GbEも搭載で4万円台の驚異

 ルーターに4万円というと、普通の感覚だと、ちょっと「引く」かもしれない。

 だが、しかし。このスペックを見て欲しい。

バッファロー WXR-5950AX12RNETGEAR Nighthawk AX12 RAX120ASUS GT-AX11000
実売価格4万3780円6万398円5万9449円
CPUクアッドコア、2.2GHzクアッドコア、2.2GHzクアッドコア、1.8GHz
メモリ非公表1GB1GB
無線LANチップ非公表Qualcomm QCN5054Broadcom BCM43684
無線LANIEEE 802.11a/b/g/n/ac/axIEEE 802.11a/b/g/n/ac/axIEEE 802.11a/b/g/n/ac/ax
バンド数223
最大速度(2.4GHz)1147Mbps1.2Gbps1148Mbps
最大速度(5GHz-1)4803Mbps4.8Gbps4804Mbps
最大速度(5GHz-2)4804Mbps
チャネル(2.4GHz)1~131~131~13
チャネル(5GH-1)W52/W53/W56W52/W53/W56W52/W53
チャネル(5GH-2)W56
新電波法対応××
ストリーム数884
アンテナ外付け×4外付け×8外付け×8
DS-Lite××
MAP-E××
WAN10Gbps×11000Mbps×11000Mbps×1(デュアルWAN対応)
LAN10Gbps×1、1000Mbps×35000Mbps×1、1000Mbps×42500Mbps×1、1000Mbps×4
USBUSB 3.1×1USB 3.0×2USB 3.1×2
動作モードRT/AP/WBRT/AP/ブリッジRT/AP/MediaBdidge
バッファローのWi-Fi 6対応ルーター「WXR-5950AX12」。10GbpsのLANポートを2つ搭載する

 現状、入手可能なWi-Fi 6対応機を並べて見ると、バッファロー「WXR-5950AX12」のコスパの高さがよく分かる。

 同時利用可能な帯域こそ2バンド(2.4GHz×1、5GHz×1)と、競合製品に一歩譲る部分はあるものの、無線は現状最大の4803Mbps対応。しかも、この速度を80MHz幅×8ストリーム、もしくは160MHz幅×4ストリームのどちらでも実現できる。さらに言えば、排他の選択式ではなく両対応だ。

 有線LANに至っては、ギガビットの10倍となる10Gbps対応の10GBASE-Tを2ポート搭載。こちらも排他ではなく、LAN側もWAN側も10Gbpsに対応できる。

 2.5G、5Gというステップを一足飛びに、いきなり10Gbpsに対応したのは実に大きな英断だ。ポート単価で言えば、ポートあたり1万円と言われても不思議ではない10GBASE-Tを2ポートも搭載しているのだから、極端な話、これだけで2万円分の価値があると言っても過言ではない。

7月改正の新電波法や、各種IPoE IPv6方式に対応

 しかも、2019年7月に改正されたばかりの新電波法にも対応している。5GHz帯では、W52、W53、W56の3グループに分けられたチャネルを使えるのだが、今回の改正で新たにW56へ追加された144チャンネル(従来は140チャンネルまで)も使えるようになっている。

新電波法で追加された144チャンネルにも対応する

 そろそろ読むのに疲れた、と言われそうだが、もう少し続けさせて欲しい。

 さて、国内では、もはや主流となりつつあるv6プラスやtransixといったIPoE IPv6方式のインターネット接続サービスにも、しっかりと対応しているのだ。しかも、つなぐだけで回線種別を自動識別し、接続してくれる。

v6プラスやtransixなど、各種IPoE IPv6方式でのインターネット接続サービスもサポートする

 正直、こうした日本の細かな事情(電波法にしろIPoE IPv6にしろ)は、グローバルな販売戦略の中では軽視されがちで、最先端の無線規格に対応したWi-Fiルーターでは、対応されないことが多かった。

 しかし、さすがは日本の老舗ベンダーであるバッファローだ。こうした機能をないがしろにすることなく、きっちりと搭載している。

 このほか、AOSSによるかんたん接続ができたり、設定に便利なセットアップカードが本体にセットされていたり、既存のWi-FiのSSIDやパスワードを引き継いで置き換えられる無線引っ越し機能が搭載されていたりと、国内ベンダーならではの親切設計も健在だ。

 例えるなら、ごはんやおかずをガッツリ大盛りにするだけでなく、きちんと小鉢や味噌汁もセットにしてくれる上、おしぼりまで出してくれるような気配りと言える。

 今回の製品は、内部構造が見える台数限定モデル「Launch Edition(WXR-5950AX12R)」も用意され、ある意味で“映える”要素もあるが、「Wi-Fi 6!」「10G!」という派手な部分だけでなく、ユーザーが実際に使うときを想定した、細々とした気配りができている点こそが、この製品の美点と言えるだろう。

向き自在な4本の外付けアンテナ、便利なスイッチ類も装備

 主な特徴は、あらかた述べてしまったが、まだいくつか紹介したい部分があるので、製品を細かくチェックしていこう。

 本体は正直大きいが、縦置きスタイルを採用しているので、壁際に追いやれば設置場所はあまり取らずに済む印象だ。

側面
背面

 デザインは、最近、ホワイト基調に移行しつつあった同社製品の中にあって、力強さを感じさせるものとなっており、ブラックに赤のアクセントが印象的だ。LEDは控えめで、本体前面の下の部分が電源オンや無線の状況を示すために白く光る程度。余計な点滅をするわけではないので、目障りな感じはない。

 アンテナは、本体上部に4本外付けになっているが、これがなかなかのスグレモノだ。

アンテナは外付け4本

 先にも少し触れたが、Wi-Fi 6の最大4804Mbpsは、2つの方法で実現できる。1つは、利用する電波の帯域を80MHz(4チャネル分)にし、MIMOによって8つのストリームを同一空間で多重化する方法。もう1つは、帯域を160MHz(8チャネル分)に拡大し、MIMOの多重化を4ストリームにする方法だ。

アンテナの可動部分が多く、いろいろな方向に調整できる

 現状、PC向けのWi-Fi 6チップは後者の160MHzに対応するが、スマートフォン向けのチップは80MHzにしか対応しない(しかもスマホは現状は2ストリームまで)。なので、スマートフォンのような80MHz対応機器が多ければ前者、PCがメインなら後者と、使い分けることになる。

 WXR-5950AX12のアンテナは、この80MHzと160MHzの使い分けが想定されたもので、それぞれの周波数帯に最適化されたデュアルスタック構成となっている。設置面積を多く確保できる外付けアンテナならではの特徴と言えそうだ。

 実際に利用する場合は、アンテナの方向を調整するのに時間を取られるが、アンテナの可動部分が複数あり、単純にクルクルと方向を変えるだけでなく、根元部分をひねるようにして、アンテナの平らな部分を通信させたい方向に向けられる、よくできた構造だ。

 インターフェース類は側面に配置されており、正面から見て右側に、LANポートとUSBポート、電源が配置されている。前述したように、10Gbpsに対応したポートは、WANとLANに1つずつ用意されている。これにより、LAN内からインターネットまで、フルに10Gbps化することが可能だ。

側面に10Gbps対応のLANポートとWANポートを備える

 反対側の左側面にはモード切替スイッチが配置されている。標準では自動判別してくれるAutoに設定されていて、手動設定にも切り替えられる。動作モードもルーターからアクセスポイント、ブリッジへと切り替え可能だ。筆者のように、モードを切り替えながらテストするようなケースでは、こうした物理スイッチの存在は実にありがたい。

有線LAN速度は「これぞ10G!」、auひかりのネット速度も7.7Gbpsと圧巻

 それでは、その実力をチェックしていこう。

 まずは、有線の実力をチェックする。10GBASE-TのLANポートに、Intel X540-T1を装着したデスクトップPCを接続。10GのWANポートには10Gbps対応のスイッチを接続し、そこに10Gbps対応のNAS(Synology DS1517+)と10Gbps対応の回線(auひかり)に接続されたホームゲートウェイ(BL1000)を接続した。

 比較対象として、WXR-5950AX12ではなく、スイッチ経由でNASに接続した場合の速度も掲載する。要するに、ルーティングがありとなしの環境での比較と考えればいい。

上り下り
WXR-5950AX12R4.548.69
スイッチ接続5.359.81
auひかりで接続した際のspeedtest.netの結果

 結果は、非常に優秀なものだ。さすがに10Gbpsとなると、ルーティングの負荷がそれなりにかかるかと思ったのだが、結果はスイッチ経由とほとんど差がなく、速度の低下はごくわずかに抑えられている。

 10Gbpsのauひかりで、インターネット接続の速度を計測した結果も参考までに掲載しておく。ダウンロード7744Mbps、アップロード6464Mbpsという圧巻の値だ。10Gbps対応インターネット接続サービスでの利用も全く問題ないだろう。

近距離で1.55Gbpsと過去最速の値を記録、3Fでも400Mbps弱を維持

 続いて、無線の性能をチェックしていこう。

 今回、テストに利用したのは、Acerの14型モバイルノートPC「Swift 7」だ。従来から販売されていた製品だが、今回の新モデルでは、Wi-Fi 6対応のIntel Wi-Fi 6 AX200が搭載され、2ストリーム160MHz接続時で、最大2.4Gbpsの通信が可能となった。

Wi-Fi 6に対応しながら、14型液晶採用で1kgを切るAcerのノートPC「Swift 7」

 このノートPCは、ファンクションキーの分が1列少ない、やや独特な配列ではあるものの、重量は0.85gと、14型とは思えない軽量なPCとなっている。持ち歩きに全く気にならない重さと薄さであるにもかかわらず、CPUはCore i7-8500Yと十分で、メモリも標準で16GB、ストレージもオンボードながら512GB(NVMe接続)と、非常に高性能なモバイルノートPCだ。主な仕様は以下の通りだが、詳細なレビューが僚誌PC Watchに掲載されているので、あわせて参考にして欲しい。

Acer Swift 7 SF714-52T-A76Y/K
価格(ダイレクト価格)24万円前後
CPUCore i7-8500Y(1.5GHz)
メモリ16GB
SSD512GB(NVMe接続)
Display14インチ(1920×1080ピクセル)
グラフィックスIntel UHD Graphics 615
USBUSB 3.1 Gen2 Type-C×2(Thinderbolt 3対応)
HDMIType-Cマルチポート変換ケーブル同梱
有線LAN
Wi-FiIntel Wi-Fi 6 AX200
Bluetooth5.0
バッテリー32Wh 2770mAh 3セル(駆動時間12時間)
本体サイズ(幅×奥行×高さ)約317.9×9.95×191.5mm
重量約0.85kg
14型液晶を搭載しながらこの薄さを実現。重量も0.85gと非常に軽い

 このPCを使って、例によって、木造三階建ての筆者宅でテストしてみたのが下のグラフだ。1階にWXR-5950AX12を設置し、2階、3階の各フロアでiPerf3による速度を計測した。

上り下り
1F14401550
2F533599
3F入口404387
3F窓際9884

 結果を見ると、かなり優秀だ。近距離で下り最大1.55Gbpsをマークしていることに加え、2階で下り599Mbps、3階で下り387Mbpsと、かなりの速度を維持している。

 ただ、3階の端だけは下り84Mbpsと、十分ではあるものの若干上積みが欲しいところではある。これは、WXR-5950AX12の長距離性能というよりは、Swift 7の無線性能の影響だろう。本体サイズが限られているため、おそらくアンテナの配置にもある程度の制限があり、WXR-5950AX12の性能をフルに発揮できていない可能性がある。

 実際、近距離ではあるが、PCI-Express接続の11axアダプター(モジュールはIntel AX200)を使ってWXR-5950AX12との速度を計測してみたところ、iPerf3で最大1.7Gbpsの速度をマークすることを確認できている。Wi-Fi 6ルーターとしてのWXR-5950AX12の実力は、間違いなく現状で最強と言っていいだろう。

 なお、今回、テストの過程において、10GbpsのLANポートに接続したNASでは、ジャンボフレームを無効に設定している。WXR-5950AX12側でジャンボフレームの設定が存在しないため、機器を直結する場合は無効にしておくのが無難だ。

高速なWi-Fi 6と10GBAST-Tが手に入る上、機能が豊富で入門者や初心者にも安心

 以上、バッファローのWXR-5950AX12をAcer Swift 7とともに検証したが、新世代のルーターに相応しい完成度の製品だ。従来の11ac環境からのアップグレードはもちろん、有線LANやインターネット回線を10Gbps化することまでも前向きに検討したくなる製品だ。

 有線、無線ともに、高い性能の上、機能も豊富。今回は、あまり付加機能に触れなかったが、USBストレージの共有やアドバンスドQoSによる帯域制御、キッズタイマーによる利用制限、スケジュール機能、VPNサーバー機能(L2TP/IPSec)にも対応している。ここまでの機能を備えていれば、一般的な用途で困ることはないはずだ。

アドバンスドQoSやキッズタイマーなどの機能を搭載。VPNサーバー機能も使える

 スペックや性能面からもお勧めできるが、入門者や初心者でも安心して使える側面も備えており、誰にでもお勧めできる製品でもある。今後、長く使えることを考えても、予算さえ許せば、ぜひ検討したい1台と言えそうだ。

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清水 理史

製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できる Windows 10 活用編」ほか多数の著書がある。