清水理史の「イニシャルB」

iPhone 11はWi-Fiが3割も速いぞ! 新世代「Wi-Fi 6」環境をさっそく検証!

Wi-Fi 6唯一のトライバンド、ASUS「GT-AX11000」で実測877Mbps

 Appleから歴代13代目となる「iPhone 11/iPhone 11 Pro/iPhone 11 Pro Max」(以下iPhone 11シリーズ)が発売された。カメラ機能の充実などが主な改良点だが、個人的な注目はWi-Fi 6のサポートだ。この登場によって、今後、国内のWi-Fiルーターも本格的なWi-Fi 6時代へと突入していくことになるかもしれない。

 そこで今回は、iPhone 11とWi-Fi 6のルーターを組み合わせた速度検証を行ってみた。検証に使ったルーターはASUS「ROG Rapture GT-AX11000」。高機能なWi-Fiルーターを多数ラインアップする多い同社製品でも最上位の製品だ。

iPhone 11の登場でWi-Fi 6の存在感が高まる

 国内でWi-Fiルーターを販売するメーカーにとって新型iPhoneの発売は、よくも悪くも1つの大きな転機となりそうだ。

 国内スマートフォン市場で大きなシェアを握るiPhoneがWi-Fi 6に対応したことで、「新型iPhone向け」と銘打って、Wi-Fiルーターの買い換えが促進されるだろうことが容易に想像できる。

iPhone 11シリーズの登場で、Wi-Fiルーター市場の活性化が期待できる

 いくらWi-Fi 6が速く、たくさんのクライアントを収容できる性能を持っていたとしても、今までは、それを生かせるWi-Fi子機などの環境面は極めて限られていた。しかし、今回のiPhone 11シリーズの登場によって、その土壌が整ったことになる。

 すでに海外メーカーでは、2018年末にASUSがいち早く11axに対応したWi-Fiルーター「RT-AX88U」を発売。続いて6月には、今回の検証にも用いているトライバンド対応の上位モデル「ROG Rapture GT-AX11000」を、9月にはデスクトップPC向けのWi-Fi 6子機「PCE-AX58BT」を発売している。

ASUSが2018年末に発売したWi-Fi 6対応ルーター「RT-AX88U」
PCI Express接続のWi-Fi 6対応子機「PCE-AX58BT」

 同じく9月には、Wi-Fi 6に対応したiPhone 11が発売され、Wi-Fi Allianceによる「Wi-Fi CERTIFIED 6」の認定も開始された。これらを契機として、国内のWi-Fiルーター市場でWi-Fi 6の存在感が高まっていくことは確実だ。

iPhone 11のWi-Fiは最大1.2Gbps、2ストリームMIMOの80MHz幅

 さて、肝心のiPhone 11シリーズのWi-Fiスペックだが、現状、Appleから発表されているのは「2x2 MIMO対応IEEE 802.11ax Wi‑Fi 6」という情報のみだ。

 Wi-Fi 6の規格上の最大速度は9.6Gbpsであるが、現状、市場に存在する製品の最大速度はWi-Fiルーターが4.8Gbpsで、PCは2.4Gbpsとなる。

 iPhone 11の最大速度は、スペックシートには記載されていないものの、今回試用したASUS「GT-AX11000」に接続してみたところでは、当初の噂通り、1.2Gbpsで間違いなさそうだ。

 Wi-Fi 6対応のスマートフォンは、SamsungのGalaxy S10が先行してリリースされている。以前のレビュー記事でも確認している通り、こちらのリンク速度も同じく1.2Gbpsだった。

ASUSのWi-Fi 6対応ルーター「GT-AX11000」から、接続クライアント(iPhone11)の速度をチェック。1201Mbpsでリンクしていた

 ノートPCでは、同じWi-Fi 6対応でも通信に使用する電波の帯域幅を160MHzにすることで2.4Gbpsを実現できる製品が多いが、iPhone 11では160MHz対応は見送られている。

 これは、消費電力の問題や電波の使用効率を考えた場合に、80MHz幅の1.2Gbpsまでの対応が妥当ということなのだろう。なお、iPhone 11とiPhone XのWi-Fi周りのスペックを比較してみたので参考にして欲しい。

iPhone 11iPhone X
CPUA13 BionicA11 Bionic
ストレージ64/128/25664/256
対応規格Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax)Wi-Fi 5(IEEE 802.11ac)
MIMO2×22×2
帯域幅8080
最大速度1200866

 ちなみに、80MHz幅で2ストリームという構成自体は、旧世代のiPhone XシリーズのWi-Fi 5(IEEE 802.11ac)と同じだが、Wi-Fi 6では、変調方式に1024QAMを採用することなどで、より多くの情報を一度に伝送可能となっている。これにより、最大速度が従来の866Mbpsから、1.2Gbpsへと引き上げられているわけだ。

Wi-Fi 6対応のASUS「ROG Rapture GT-AX11000」、最大4804Mbpsを2系統で通信可能なトライバンド対応

 今回、検証に使用したASUS「ROG Rapture GT-AX11000」についても触れておこう。ゲーミングルーター「ROG Rapture」シリーズの最上位モデルであり、ゲーム向けの各種機能が搭載されるほか、5GHz帯×2+2.4GHz帯×1のトライバンド対応や、2.5Gbps対応の有線LANポートの搭載も果たしている製品だ。

Wi-Fi 6に対応したトライバンドWi-Fiルーター、ASUS「ROG Rapture GT-AX11000」

 Wi-Fi 6ことIEEE 802.11axの最大速度は、規格上は9.6Gbps(1024QAM/160MHz幅/8ストリーム時)だが、本製品は最大4804Mbpsまでをサポートする。1024QAMの変調方式と、160MHz幅の利用は同じだが、MIMOによって多重化されるストリーム数が4までとなるためだ。

 11acと異なり、11axでは2.4GHz帯も利用可能だが、その場合の速度は最大1148Mbpsとなる。型番の“11000”は、2.4GHz帯×1、5GHz帯×2で、1148Mbps+4804Mbps+4804Mbpsの同時通信が行える点を表したものだ。

 トライバンドのメリットは、用途によって5GHz帯を使い分けられる点にある。例えば5GHz帯-1にPC、もう一方の5GHz帯-2にゲーム機といったように帯域を使い分けることで、同時通信時の干渉を避けることができる。

 ちなみに、ASUSのWi-FiルーターはメッシュWi-Fi機能「AiMesh」に対応している。同じASUSの製品との組み合わせであれば、メッシュ環境での利用も可能だ。通信経路の多いトライバンドであることは、メッシュWi-Fiを構築した場合にも大きなメリットになる。

 また、最大2.5Gbpsでの通信に対応した有線LANポートも搭載している点もポイントだ。せっかくWi-Fi 6で高速に通信ができても、1Gbpsまでの対応であれば、有線LANがボトルネックになってしまう。例えば2.5Gbpsの有線LANポートであれば、10Gbpsクラスの高速なネット回線を用いたり、LAN内にあるNASなどの機器と高速に通信できる。

ASUS GT-AX11000
実売価格5万9449円
CPUBCM4908 4コア1.8GHz
メモリ1GB
チップBroadcom BCM43684
対応規格IEEE802.11a/b/g/n/ac/ax
バンド数3
最大速度(2.4GHz)1148Mbps
最大速度(5GHz-1)4804Mbps
最大速度(5GHz-2)4804Mbps
チャネル(2.4GHz)1~13
チャネル(5GH-1)W52/W53
チャネル(5GH-2)W56
ストリーム数4
アンテナ外付け×8
WAN1000Mbps×1(デュアルWAN対応)
LAN2500Mbps×1、1000Mbps×4
USBUSB 3.1×2
動作モードRT/AP/MediaBdidge

近距離で下り877Mbps、Wi-Fi 6のiPhone 11は3割ほど高速に

 さて、それでは実際の検証結果を見ていこう。実際の転送速度だが、近距離では高速化することは確実と言える。次のグラフは、筆者宅の1階にASUS GT-AX11000を設置し、2.5Gbps LAN経由で接続したサーバー(Synology DS1517+)に対して、各階からiPerf3を実行した結果だ。

1F2F3F入口3F窓際
iPhone 11上り61342620282
下り87752827573
iPhone X上り34536518168
下り67143515778
同一フロアでのiPerf3の結果

 結果を見ると、1階や2階の結果が良好だ。同一フロアとなる1階では、Wi-Fi 5のiPhone Xの下りが671Mbpsであるのに対し、Wi-Fi 6のiPhone 11は、下り877Mbpsと3割ほど高速な値をマークしている。やはり近距離ほどWi-Fi 6の恩恵は大きく出ると言えそうだ。

 この恩恵は2階でも比較的大きく、iPhone Xの下り435Mbpsに対して、iPhone 11は528Mbpsと2割ほど高い速度で通信できている。

 しかしながら、長距離になると、このアドバンテージは次第に減少し、今回のテストで最も遠い場所では、ほとんど差が見られなくなっている。今回の結果に限っては、長距離や障害物が多い環境、干渉を受けやすい環境での性能は、ほぼ同等と言えるだろう。

高性能なASUS GT-AX11000との組み合わせでさらなる恩恵も

 今回のテストでは、Wi-Fi 6対応ルーターの中でも、5GHz帯2系統と2.4GHz帯1系統のトライバンドに唯一対応している高性能なASUS GT-AX11000を利用している。Wi-Fi 5対応の古いアクセスポイントとiPhone Xの組み合わせではもっと速度が低下してもおかしくないため、冒頭でも触れた通り、iPhone 11への機種変更を機にWi-Fi 6対応ルーターに買い換えることも検討したいところだ。

 今回は検証できていないが、Wi-Fi 6ではOFDMAの恩恵で複数端末同時接続時のパフォーマンスが向上するとされている。トライバンドに対応するルーターであれば、接続できる帯域の数が増えるため、その恩恵はさらに高まるはずだ。

 以上、簡単ではあるが、新型iPhone 11のWi-Fi 6性能を検証してみた。PC向けの160MHz幅対応製品ほど速くはないが、近距離で800Mbps、中距離で500Mbpsは十分に立派な値で、実用上は全く問題ない。順当な進化と言えそうだ。

 冒頭でも触れた通り、iPhone 11の登場で、Wi-Fiルーター市場においてWi-Fi 6の存在感が高まっていくことを大いに期待したいところだ。

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(協力:ASUS JAPAN株式会社)

清水 理史

製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できる Windows 10 活用編」ほか多数の著書がある。