清水理史の「イニシャルB」
コンパクトなメッシュがWi-Fi 6に対応! 家中どこでもテレワークできるASUS「ZenWiFi AX Mini XD4」
最大1201Mbpsで家中をカバー、設定の細かさも〇
2020年12月14日 06:00
ASUSから「Zen」ブランドが冠されたWi-Fi 6対応のメッシュWi-Fi「ZenWiFi AX Mini XD4」が発売された。最大1201Mbps対応のWi-Fi 6(IEEE 802.11ax)に対応した製品で、2台以上の組み合わせで利用することで、家中の広いエリアをカバーするメッシュWi-Fiに対応した製品だ。
コンパクトでシンプルな見た目なのに、相変わらず機能は豊富でお買い得感あふれる製品に仕上がっていて、日本の市場にも適した1台だ。
中身は「ASUS」らしく、価格はリーズナブルに
今やASUSのブランドと言えば「ROG」や「TUF」の方が有名だが、個人的にはやっぱり「Zen」の方が好みだ。
何より見た目がシンプルで落ち着いたデザインなので、どこに置いても、誰が使ってもシックリくる。
それでいて、使ってみると性能が高く、機能も豊富。まさに「禅」という由来の通り、なにやら迷いの世界を超え、真理を体得したかのような印象さえ受ける。
「Zen」ブランドを冠した同社のネットワーク製品は以前から発売されており、Wi-Fi 6に対応した「ZenWiFi AX XT8」も本連載で以前に取り上げている。これはなかなかいい製品なのだが、価格は2パックで実売6万9080円と少々高めで、やや手が出しにくかった。
そんな中、新たに登場したのが、今回の「ZenWiFi AX Mini XD4(以下XD4)」だ。
速度は最大1201Mbpsで、5GHz帯と2.4GHz帯のデュアルバンドに対応と、スペック面は控えめながら、より小さく、よりシンプルになり、そして2台セットの実売価格(税別)は2万3500円となった。
余計なものをそぎ落とした姿は、より「Zen」らしいと感じられるが、この製品のいいところは、「この見た目と価格でも中身はしっかりASUS」である点だ。
上位モデルと同様、カスタマイズ性の高いユーザーインターフェースに、VPNサーバーなどの高度な機能を備える。さらに、Alexa & IFTTT連携のような個性的な機能や、コンシューマー向けルーターにセキュリティの概念を採り入れたパイオニアとも言える「AiProtection」なども、しっかりと搭載している。
メッシュWi-Fiと言っても、本製品はASUSならではの「AiMesh」システムで、同社製のモデルなら、ほかのWi-Fiチップを採用したほかシリーズの製品とも、メッシュWi-Fi構成が可能となっている。こうした柔軟性についても、1段上の完成度を誇っている。
Wi-Fi 6対応のWi-Fiルーターは、各社ともにラインアップが整い、リーズナブルな価格帯の製品が出そろってきた印象で、そろそろ買いどきが近づいていると言える。そんな中、ASUSは「Zen」という日本市場に適した製品で勝負をかけてきたわけだ。
ZenWiFi AX Mini(XD4) | |
実売価格(税別) | 2万3500円 |
CPU | クアッドコア、1.5GHz |
メモリ | 256MB |
Wi-Fiチップ(5GHz) | BCM6755 |
Wi-Fi対応規格 | IEEE 802.11ax/ac/n/a/g/b |
バンド数 | 2 |
最大速度(5GHz) | 1201Mbps |
最大速度(2.4GHz) | 574Mbps |
チャネル(5GH) | W52/W53/W56 |
チャネル(2.4GHz) | 1~13 |
ストリーム数 | 2 |
アンテナ | 内蔵 |
WPA3 | ○ |
セキュリティ | AiProtection |
WAN/LAN | 1000Mbps×1 |
LAN | 1000Mbps×1 |
USB | ― |
動作モード | RT/AP/AiMeshノード |
サイズ(幅×奥行×高さ) | 90×90×80mm |
ポート類は底面に集約し、見た目もスッキリ
それでは実機を見ていこう。
本製品は「Mini」という名前の通り、90×90×80mmと非常にコンパクトなサイズに仕上がっている。どこに設置するのにも邪魔にならないだけでなく、上下左右どの方向から見ても、スッキリと均整が取れている。
デザイン面を見ても、上部が円状のヘアライン加工がなされ、インターフェースも底面に隠されており、機械的な無骨さのない最小限のもの。LEDもロゴの下がうっすらと光るだけと控えめだ。色や点滅方法は状況に応じて変わり、オフにもできる。
個人的には「ロゴはもう少し小さめでもよかったんじゃないの?」と思えなくもないが、この手の通信機器としては、かなり好印象のデザインと言える。本体カラーも、今回メインに紹介したブラックに加え、ホワイトもラインアップされており、設置場所に合わせた選択もできる。
各種インターフェースは、前述した通り底面に配置されており、LAN×1、WAN/LAN×1のいずれもギガビット対応。電源もACアダプターを底面に接続するかたちだ。
リセットボタンやWPAボタンも底面に配置される徹底ぶりで、見た目のスッキリ感を支える細かな工夫が生きている印象だ。
同社製のWi-Fiルーターの中では比較的リーズナブルな製品なのだが、いい意味でうまく「イイモノ」感が演出されている印象だ。
2階と3階で200Mbps、安定した速度でテレワーク向きのメッシュWi-Fi構成に
今回試用したのは、2台が1組で販売されているセットで、これらをメッシュWi-Fiとして構成することで、広いWi-Fiエリアをカバーできる。
テレワークが一般化したことで、リビング以外の場所でも、Wi-Fiを、しかも安定した速度で使いたいというニーズが増えてきているが、1台のアクセスポイントだけでは、カバーできるエリアは限られる。
特にマンションなどで使う場合、いくら高性能なWi-Fi 6と言えども鉄筋コンクリートの壁に阻まれ、5GHz帯の電波が届きにくいケースが多い。メッシュWi-Fiの場合、複数台のアクセスポイントが連携してエリアをカバーできるため、こうした環境でも電波を隅々まで届けやすくなるわけだ。
実際、本製品の性能は優秀だ。以下は、木造3階建ての筆者宅で、1階と3階に本製品を1台ずつ設置した状況でiPerf3による速度を計測した結果だ。
1F | 2F | 3F入口 | 3F窓際 | ||
iPhone 11 | 下り | 508 | 225 | 224 | 178 |
上り | 711 | 267 | 260 | 235 | |
PC(Intel AX200) | 下り | 680 | 333 | 236 | 217 |
上り | 737 | 447 | 252 | 257 |
最大速度が1201Mbpsなので、近距離の速度は700Mbps前後と控えめだが、それでも有線LANに近い速度で通信できている。
特徴的なのは、2階と3階だ。いずれも、おおむね200Mbps前後で安定して通信できている。
このように、全体的に速度が平準化されるのはメッシュWi-Fiならではの特徴だ。製品によっては、中距離(2階)でさらに高い速度を実現できる製品も存在するが、メッシュWi-Fiでは、今回の結果のようにピークスピードよりも、実用的な速度を広い範囲で発揮できることが特徴となる。
これは、テレワークなどの実用環境で非常に有利だ。
2階と3階では、どの部屋にいようと、どの方向を向こうと、常に200Mbpsほどの速度が得られることになる。こうして通信が安定した環境は、ビデオ会議などのテレワークでは心強い味方と言えるだろう。
子機の位置やニーズに応じてメッシュの接続先を手動で選べるきめ細かい設定
このように、本製品はシンプルで、リーズナブルで、性能も高いメッシュWi-Fiと言える。
が、やはり筆者が「ASUSらしいなぁ」と感じたのは、設定の細かさだ。
中でも、今回一番感心したのは、設定画面から各Wi-Fi子機の接続先を手動で切り替えることができる点だ。
例えば、先のベンチマークでは2階での計測で興味深い状況が見られた。
2階で計測した2台の端末のうち、PCは1階に設置したルーターに接続され、iPhoneは3階に設置したメッシュポイントに接続された。
位置の違いで微妙に電波状況が変わり接続先が別々になったのか、AiMeshが接続を分散させる目的で意図的に接続先を分けたのかは判断できないが、これはなかなか興味深い状況だろう。
それはそれとして、ここからがASUSらしい設定の細かさなのだが、この状況で設定画面からAiMeshの管理画面を開き、接続中の端末を選択して「バインド」ボタンをクリックすると、端末を1階のルーターか、3階のメッシュポイントのどちらに接続するかを手動で設定(固定でバインド)させることができるのだ。
これまで筆者は、メッシュWi-Fiをいくつか評価してきたが、こうした手動設定ができる製品は珍しい。
何がすごいのかというと、今回のテストでもそうだったが、端末の位置によって2つあるうちどちらへ接続すべきか、という判断が微妙な地点が生じることがある。
もちろん、通常のメッシュWi-Fiでは、これを自動的に判断してくれるのだが、その判断が実情に即しているとは言い難いケースもある。
例えば、2階で使うスマートフォンはウェブサイトの閲覧が中心なので3階経由の接続でもいい(3階経由だと3階から1階への中継が入るのでロスが若干ある)が、遅延が気になるテレビやゲーム機は1階へ直接つなぎたい、というケースが考えられる。
従来のメッシュWi-Fiは全て機器任せで、ユーザーが介入する余地がなかったが、そこはさすがASUS。本商品では、ユーザーが接続先を決められるようになっているのだ。
一見、シンプルなデザインで価格もリーズナブルという製品なのに、中身はしっかりASUSなのだから恐れ入る。
このほか、冒頭でも少し触れたようにトレンドマイクロの技術を使ったセキュリティ機能「AiProtection」以外に、子どもの端末の利用時間を制限するペアレンタルコントロール機能、テレワークに活用できるPPTP/L2TP/OpenVPN対応のVPNサーバー機能、また、Alexa & IFTT連携機能が搭載されていたりと、非常に多機能だ。
もちろん、初心者でも安心して使える工夫もなされている。
初期設定はスマートフォン向けの「ASUS Router」アプリを使ってウィザード形式で簡単にセットアップできる上、ファームウェアのアップデートについても、アプリから2台の端末を一度に実行可能だ。
インターネット接続では、DS-LiteやMAP-E環境には対応しないものの、IPv6には対応しており、回線を自動的に判断してアプリから簡単に設定できる。
ASUSのルーターはハイエンドユーザーにとって嬉しい機能が満載だが、もちろん、こうした機能を全てのユーザーが求めているわけではない。ただシンプルに、本製品のデザインやサイズなどに魅力を感じて購入した人でも、使い方に困ることはないわけだ。
ASUSならではのAiMeshを誰にでも
以上、ASUSから登場した「ZenWiFi AX Mini XD4」を実際に試してみたが、完成度の高い製品と言っていいだろう。
デザイン買いしても損はないし、性能や機能に不満を覚えることはない。Wi-Fi 6やメッシュWi-Fiのメリットを十二分に享受できるASUSらしい製品と言えるだろう。価格的にも性能や機能を考慮すると決して高くない。テレワークなどをきっかけにWi-Fi環境の改善を考えている場合にお勧めできる製品と言えそうだ。
(協力:ASUS JAPAN株式会社)