清水理史の「イニシャルB」
シンプルデザインで必要な機能に絞り込んだ実売1.1万円のWi-Fi 6ルーター、ASUS「RT-AX55」
2021年3月5日 10:00
ASUSから、Wi-Fi 6対応の新型ルーター「RT-AX55」が登場した。スタイリッシュになった外観も印象的だが、嬉しいのは実売1.1万円という価格だろう。付加機能を省略することで誰もが入手しやすい価格を実現している。テレワークやゲーミングでのニーズが高まってきたWi-Fi 6の入門モデルとして注目の一台だ。
すっかりイイ感じのデザインに
従来のメカメカしいイメージから一転、すっかりシンプルなデザインに生まれ変わったASUSのRT-AX55。
多角形をベースとする基本的な構成は従来モデルとも共通しているが、製品上部を構成する面がシンプルな3分割の平面になったことで、モダンな印象を受けるようになった。
ASUSのルーターは、これまで好みが分かれる個性的なデザインのものが多かったが、今回のRT-AX55は、どちらかというと万人受けする印象で、どこに設置しても違和感がない。
と言っても、2種類あるブラックとホワイトのカラーで、それぞれ全く印象が異なっている。ホワイトは優しい印象を受けるが、ブラックは、控えめになったとは言え、中央に2本あしらわれた赤のラインがしっかりと「ASUSらしさ」を主張している。
カラーバリエーションが存在するというのは、メーカー(事業部門)として余裕がある証拠とも言えるが、Wi-Fi 6の市場が普及期に入ったこと、テレワーク需要で市場が拡大傾向にあること、ゲーミング需要などでニーズが多様化していることの証拠だろう。
いずれにせよ、ASUSらしい力強いデザインが好みならブラック、シンプルな清潔感を求めるならホワイトと、ユーザーが好みに合わせて選べるようになったのは、とてもありがたいことだ。
高いコストパフォーマンスを実現
本製品の最大の特徴となるのは、高いコストパフォーマンス。もちろん、単に安いというだけのWi-Fi 6対応ルーターは、ほかにも存在するが、ASUSならではの便利な機能をなるべく維持したまま価格を削り込んできた点だ。
RT-AX55 | |
実売価格 | 1万1089円 |
CPU | Broadcom 6755(クアッドコア、1.5GHz) |
メモリ | 256MB |
Wi-Fi対応規格 | IEEE 802.11ax/ac/n/a/g/b |
バンド数 | 2 |
最大速度(2.4GHz) | 574Mbps |
最大速度(5GHz) | 1201Mbps |
チャネル(2.4GHz) | 1~13 |
チャネル(5GHz) | W52/W53/W56 |
新電波法(144ch) | ○ |
ストリーム数 | 2 |
アンテナ | 4本(外付け) |
WPA3 | ○ |
IPoE IPv6 | ○ |
セキュリティ | ○※ |
WAN | 1Gbps×1 |
LAN | 1Gbps×4 |
USB | ― |
動作モード | ルーター/アクセスポイント/リピーター/メディアブリッジ |
ファームウェア自動更新 | ― |
サイズ(幅×奥行×高さ) | 230×134×56mm |
※脆弱性保護、ウェブ&アプリケーションフィルターの各機能は非対応
本製品の無線スペックは、いずれもIEEE 802.11ax対応となる最大1201Mbps(5GHz帯)+最大574Mbps(2.4GHz帯)のデュアルバンドとなっており、スペック的にはエントリーモデルに近い構成となっている。
しかしながら、このスペックで1万円を切るモデルは、基本的に何も付加機能が搭載されていないことが多く、単に無線接続とインターネット接続ができるだけに過ぎない場合がある。
これに対して、本製品ではASUSのルーターではおなじみのトレンドマイクロの技術を使ったセキュリティ機能「AiProtection」や、プロトコルを指定して優先度を設定できるQoS(Traditional QoS)、ASUS製の対応ルーターを追加することで簡単にネットワークを拡張できるAiMeshに対応するなど、豊富な付加機能を備えている。
また、日本で昨年認可された最新の144ch(5GHz帯のW56)にも対応していたり、最新のセキュリティ方式であるWPA3もサポートしている。
こうした機能を搭載しながら、Amazon.co.jpでの実売価格は2021年2月時点で1万1089円と、非常に手に取りやすい価格が実現されている。
なお、同社には、同じく1201Mbps+574MbpsのWi-Fi 6対応ルーター「RT-AX56U」というモデルをラインアップするが、この製品と比べた場合、RT-AX55の方が1900円ほど安い価格設定になっている。
何が違うのかというと、RT-AX55では、メモリ搭載量が256MBと少ない。また、USBポートが省略され、ファイル共有が利用できない。QoSもポートなどを個別に設定するTraditional QoSのみとなっている。
とは言え、LAN内でのファイル共有や外出先からのファイルアクセスなどではNASが利用されるケースも多く、必ずしもルーターで実現しなくてもいい機能だ。
デザインもそうだが、機能的にも市場のニーズに答えた製品となっていると言えそうだ。
セットアップしてみよう
ASUSのルーターは、多機能で設定項目も多いため、初めて使う人は戸惑うかもしれないが、とりあえずインターネット接続とWi-Fi設定をするだけなら、手軽に使い始めることができる。
初期設定の方法は環境によって2種類に分かれる。WAN側の上位にホームゲートウェイなどのインターネット接続可能なルーターが存在する場合は、セットアップ不要で工場出荷時のSSIDとパスワード(本体背面参照)を使って、すぐに稼働させることができる(設定画面へアクセスするIDとパスワードの出荷時設定はadmin/admin)。
一方、上位にインターネット接続可能なルーターがない場合は、ウェブブラウザーでアクセスすると「クイックインターネットセットアップ」が自動的に起動するので、ウィザードに従ってインターネット接続やWi-Fiパスワード、管理者パスワードなどを設定すればいい。
同様の設定は、PCからだけでなく、スマートフォンからも実行できるので、好みに合わせて設定するといいだろう。
なお、同梱の取扱説明書が一部最新版ではない場合もあるので、実際に購入製品をセットアップする場合は、同社のサポートページなどで最新版の取扱説明書を参照したり、FAQなども参照したりすることをお勧めする。
前述したASUSならでは機能となるAiProtectionやQoS、IPv6(DS-LiteやMAP-Eは非対応)に関しては、出荷時状態ではオフになっているので、これらは初期設定後に必要に応じて設定する。
例えば、AiProtectionをオンにすると、ルーターを通過する通信がチェックされ、フィッシングサイトなど悪質なサイトにアクセスしそうになることを防いだり、家庭内の機器がマルウェアに感染しボットとなったときに、ほかの機器への攻撃を遮断したりできる。
ネットワークカメラなど、単体でセキュリティ機能を搭載できないネットワーク機器をルーターで保護できるので、安心して利用できるだろう。
3階でも100Mbpsで通信可能
気になるスピードも十分と言えそうだ。木造3階建ての筆者宅の1階にRT-AX55を設置し、各階でiPerf3による速度を測定してみたが、1階の近距離で800Mbpsに迫る値もマークしたことに加え、最も遠い3階の端でも100Mbps以上の速度を実現できている。
マンションなど電波が通過しにくい環境では、長距離が厳しくなる可能性があるが、本製品は前述したようにAiMeshに対応しているので、必要に応じてアクセスポイントを追加することで通信範囲を拡大できる。
とりあえず単体で導入して様子を見て、電波が届かない場所があるようなら機器を追加して拡大するといった段階的な導入も可能だ。
1F | 2F | 3F入口 | 3F窓際 | ||
PC(Intel AX200) | 上り | 799 | 423 | 196 | 170 |
下り | 772 | 439 | 228 | 145 | |
iPhone 11 | 上り | 502 | 235 | 114 | 89 |
下り | 605 | 395 | 214 | 114 |
※検証環境 サーバー、CPU:Ryzen 9 3900X(3.8GHz、12コア24スレッド)、メモリ:32GB、SSD:SSD 1TB(NVMe接続)、OS:Windows 10 Wi-Fi子機:Intel AX200搭載ノートPC
機能が厳選された入門機
以上、ASUSのRT-AX55を実際に使ってみたが、デザインもシンプルで、機能や性能も十分で、しかもリーズナブルな価格と、バランスが取れた1台と言えそうだ。
USBポートやAdaptive QoSなど、ASUSならではの付加機能の一部が省略されているが、こうした機能は上級ユーザー向けなので、一般的な利用であればなくても困ることはない。それでも十分他社製品に比べれば多機能と言える。
無線性能も十分で、後からのエリア拡張も容易なので、価格を考えると無線LANルーターとしての価値は高い。コスパ重視のユーザーには、検討の価値があるだろう。
(協力:ASUS JAPAN株式会社)