清水理史の「イニシャルB」
光回線「NUROアクセス」導入で転送量制限を回避
月額1万8850円でも法人向けでは安価
2021年7月19日 06:00
仕事用に使っている筆者宅の光ファイバーとして、新たに「NUROアクセススタンダード」を導入した。
法人向けとなる最大下り2Gbpsのインターネット接続サービスで、固定IP、SLA付き、帯域確保型となる点が特徴だ。導入までのタイムラインや工事、導入結果などをレポートする。
身近になりつつある帯域制限、分散ストレージの検証であやうく対象に
筆者宅では、これまでメイン回線として最大10Gbpsの「auひかり ホーム10ギガ」、テスト用として最大1Gbpsの「フレッツ光ネクスト」の2回線を導入していたが、ここに3本目の回線として「NUROアクセススタンダード」を導入する決断をした。
きっかけは、ブロックチェーン関連の分散ネットワークのノードだ。分散ストレージの検証用に複数のノードをテストで稼働させていたのだが、これが結構な転送量(1時間あたり10GBほど)の上り帯域を使うようになり、あやうく利用中の回線事業者から帯域制限がかかりそうになった。
結果的には帯域制限はかからなかったが、今後、分散ネットワークのテストが増えてくる可能性を考えると、帯域制限をあまり気にせずに済む回線を用意しておくべきと判断したためだ。
固定回線で転送量がかかるケースは、事業者により基準が異なる場合もあるが、筆者が利用しているauひかりでは、重要事項説明書に以下のように記載されている。
「ホームタイプ、マンションミニギガタイプおよびマンションギガタイプをご利用のお客さまが1日あたり30ギガバイト以上のデータを継続的に送信(上りデータ送信)させる場合、上りデータ送信の最大速度を一定水準に制限することがあります。」
おそらく、かつてのP2Pユーザーを想定した制限の条件となるが、実際にこの条件による帯域制限が発生するかどうかはケースバイケースと言える。
日本インターネットプロバイダー協会が公表している以下の資料によると「通信の秘密の侵害」や「正当業務行為」に該当するかどうかの問題があり、かなり細かなケースで判断されていることが分かる。
なお、同協会が実施したアンケート調査によると、アンケートに回答した固定通信事業者の50%(n=14)が帯域制御を実施していて、うち71%が帯域制御の実施内容をヘビーユーザー制御と回答している。
その一方で、帯域制御が必要な状況を生じさせていると想定される主なアプリケーションとしては、「OS、ソフトウェアアップデート」と「動画/音楽」が上位に挙げられている。P2Pのような特別な用途ではなく、日常的な使い方でトラフィックでも帯域が圧迫されつつあるという現在の状況が示されている。
昨今のテレワークの普及による純粋な利用者の増加も影響しており、多数のユーザーが同時に通信を行うことで、ネットワーク全体において、通常の想定と比べて著しく大量のトラヒックが発生するケースなども想定されている。固定回線の帯域制御は、従来の特別なユーザーに対するものだけでなく、より身近なものになりつつあると言えそうだ。
法人向け回線としては安い月額1万8850円の「NUROアクセススタンダード」
込み入った話はさておき、NUROアクセススタンダードに話題を戻そう。
今回、筆者が導入した回線は、ソニービズネットワークス株式会社が法人向けに提供しているソリューションブランド「NURO Biz」の1つとして提供されている「NUROアクセス」のスタンダードプランだ。
なぜ、法人向けサービスを契約したかというと、前述した帯域制限を気にしなくて済みそうだからだ。
家庭用の回線およびプロバイダーでは、ほとんどのケースで、帯域制限が実施される可能性があることが事前説明や重要事項に記載されているが、こうした項目を読むと、法人向けのプランは対象外とされているケースも多い。
実際、今回のNUROも導入前に営業担当者と相談したが、「帯域制限がかかるケースはもちろんあるが、筆者のような使い方(前述した分散ネットワークでの使い方)などであれば、制限がかからない可能性が高く、仮に帯域請願がかかるとしても事前に相談がある」との回答を得られたため、契約に至った。
NUROアクセススタンダードは、下り最大2Gbpsのサービスで、固定IPが1つ提供され、SLA付き、かつ帯域「確保」型のサービスとなっている。
NUROアクセスには、同じく下り最大2Gbpsとなるものの帯域「保証」型の「プレミアム」と、下り10Gbpsの「NEXT 10G」というプランもある。「スタンダード」は、ラインアップの中では最も安いプランとなる。
安いと言っても、月額料金は1万8850円と家庭向けの光ファイバーサービスよりも高額だ。
しかしながら、ほかの事業者が提供している法人向けサービス、例えば1Gbpsの「フレッツ 光ネクスト ビジネスタイプ」では、月額料金が4万5210円となっており、ここにさらにプロバイダーの料金もかかることを考えると、NUROアクセススタンダードの価格はかなり安いと言える。
また、NUROアクセスのスタンダードプランは、帯域保証ではなく帯域確保となっている。つまり、最低で10Mbpsの帯域が「確保」されるものの、保証ではない点に注意が必要だ。確実な帯域保証が必要なら、上位であるプレミアムプランの契約が必要になる(30Mbpsまたは50Mbps)。
費用としては、月額料金だけでなく工事費なども必要で、初期費用として15万円、基本工事費用として5万円がかかる。このうち、初期費用の15万円に関しては、24回の割賦払いが可能で、しかも、その割賦相当額が毎月割り引かれる仕組みなっているため、2年間の継続利用で初期費用は0円になる(つまり基本工事費の5万円のみが必要)。
申し込みから導入まで3カ月
導入までの期間はかなり長めだ。当初3カ月と言われたが、4月21日の申し込みで、開通が7月5日だったので、3カ月を少し欠けるほどであった。その際のタイムラインが以下だ。
- 4/21 担当者と打ち合わせ&オンラインでサービス説明
担当者からPDFで申し込み用紙が届くので印刷して押印してスキャンして返送 - 4/29 サポートサイト登録
マイページに登録 - 5/14 現地調査日程伺い
5/24月 13:00で仮押さえの連絡 - 5/24 13:00~13:26 現地調査
引き込み口などを確認 - 6/15 IPアドレス通知
割り当てられたIPアドレスがPDFで通知される - 6/16 工事日通知
仮押さえの工事日が通知される
工事日はNURO工事(屋外)、NTT工事、NURO工事(屋内)の3回
そのうちNTT工事日の変更を依頼したが8月以降になってしまうとのことで最終的に変更をあきらめ、仮押さえ日の通りに工事を実施 - 6/22 15:30~16:00 NURO屋外工事
回線引き込み口の近く(屋外側)にプラ板を設置
- 6/23 16:30~17:30 NTT工事
先行して午前中に家の前の電柱工事
午後に電柱から壁まで光ファイバーを敷設
- 7/5 14:45~15:30 NURO屋内工事
引き込み、スプリッター、ONU設置
期間としては長いので、余裕を持って申し込む必要があるのと、NUROの工事とNTTの工事が別々に実施されるため、その調整が必要な点には注意が必要だ。
特に、昨今のテレワーク需要でNTTの工事はかなり日程が詰まっているとのことで、工事日の変更は慎重に検討する必要があるだろう。
実質的には固定IPとDHCPの1Gbps×2回線、導入後の設定やルーターの用意は自前で
さらに、導入後の設定も、基本的には全て自分でやることになる。
屋内には、引き込まれた光ファイバーをさらに4回線に分岐するためのスプリッターが設置され(これで屋内工事だけであと3本NUROを導入できるとのこと)、そこからONUへと接続される。
ONUは1Gbps×4のRJ45対応ポートが備えられており、このうちLAN1が固定IP接続用、LAN2がDHCP接続用として提供される。つまり、最大2Gbpsの回線だが、実質的には1Gbps×2ということになる。
これは、筆者のように、テスト用やサーバー用に環境を分けて使いたいユーザーには最適だ。実際、筆者も固定IP側は公開サーバー用、DHCPはクライアント用として分けて使っている。
一般的なオフィスでも、部署単位で分けて回線を使ったり、固定IPはテレワークのVPN接続用として利用したり、2回線を負荷分散や冗長構成で使ったりといった分け方ができる。
いずれにせよ速度測定などでも、単体のクライアント上でMAX2Gbpsのスピードが出るわけではなく、トータルで2Gbpsの帯域が使えるという回線となる。
ルーターも自前で用意する必要があり、推奨環境はYAMAHAのRTXシリーズだったのだが、今回は手元にあったUbiquitiの「Edge Router ER-8」(固定IP環境用)と、こちらやこちらの記事でもレビューしている「Unifi Dream Machine」(DHCP環境用)を利用した。
IPv4に関しては、固定もしくはDHCPで構成すればいいので、家庭用のルーターを使うことも可能だが、IPv6に関しては固定IP側(ONUのLAN1側)でプレフィックスの値を「/56」に設定しなければならないので、こうした設定が可能なルーターが必要だ。
家庭用のルーターの場合、IPv6設定が自動的に構成される使用が多く、アドレスの取得方式やプレフィックスの設定ができないケースもあるので、自由度の高いルーターを用意する必要があるだろう。
まだ、開通から間もないため、混雑状況などの判断はできないが、スピードテストなどの結果は良好で、曜日や時間帯を問わず、いつ計測してもだいたい800Mbps前後の速度を確認できる。
もちろん、冒頭で触れた分散環境用のサーバーも常時稼働させているが、ブロックチェーン関連のトラフィックはここ数カ月でガクンと落ちたので、当初想定したほど負荷はかかっていない状況だ。
いずれにせよ、今のところは価格に見合う安定した通信が実現できている。今後、コンシューマー向け固定回線でトラフィック急増が課題になった場合でも、安心して利用できることを期待したいところだ。