清水理史の「イニシャルB」

ついに2.5Gbpsスイッチが税込1万円以下! 熱対策も万全なプラネックス「FX2G-05EM」

 2.5Gbps LAN市場に大きな衝撃が走りそうだ。プラネックスから登場した5ポートの2.5Gbps対応スイッチ「FX2G-05EM」は、税込価格が1万円以下と、コスパの高さで有名な海外メーカーをも圧倒する低価格を実現した製品となっている。徹底した熱対策も施されており、むしろコストがかかっているのではないかと思わせる充実度だ。その詳細に迫ってみた。

実売1万円を切った2.5Gbps対応スイッチのプラネックス「FX2G-05EM」

従来の最安機より4000円もお得

 どうやら、2.5Gbpsの普及が本格的に始まりそうだ。

 すでにデスクトップPCやマザーボード、ノートPCなどを中心に、ミドルレンジ以上の製品で2.5Gbps対応の有線LANが搭載されることが珍しくなくなってきたが、こうした機器を接続するためのスイッチも、ようやく身近な存在となってきた。

 以下は、現状、入手可能な5ポートの2.5Gbps対応スイッチ3製品を比較した表だ。

プラネックス FX2G-05EMTP-Link TL-SG105-M2バッファロー LXW-2G5
実売価格(税込)9990円1万3900円1万5168円
対応速度2500/1000/1002500/1000/1002500/1000/100
ポート数555
端子RJ-45RJ-45RJ-45
総登録MACアドレス数16000
スイッチングファブリック25Gbps25Gbps25Gbps
データ転送速度(2.5Gbps)3720238pps3720238pps18.6Mpps※1
ジャンボフレーム12KB10KB9720B
ループ検知・防止-
冷却ファンファンレスファンレスファンレス
消費電力8.6W12.11W14.1W
動作保証温度0~40度0~40度0~40度
LED常時点灯常時点灯スイッチでOFF※2
サイズ(幅×奥行×高さ)160×26×110mm209×26×126mm160×29×131mm

※1 2.5Gbps時との記述なし ※2 Powerは常時点灯

 注目すべきはその価格。これまで最安だったTP-Link「TL-SG105-M2」(税込1万3900円)も安いが、今回、プラネックスから発売された「FX2G-05EM」が、これをさらに下回り、税込9990円を実現していて、頭1つ抜けた存在となった。

 1万円以下と1万円以上、つまりケタが1つ違うというのは、それだけでも購入する際の印象がまるで違ってくるものだが、実質的な価格で考えても、競合より4000~5000円も安い価格設定がなされており、コスパの高さという点では、FX2G-05EMの圧勝というかたちとなっている。

 しかも、よくよく見ると、価格だけでなく製品としてのスペックも優秀だ。最大消費電力が1ケタ少ない8.6Wだったり本体サイズも微妙ながらライバルより小さかったりと、後発だけあって、よく練り込まれた製品に仕上がっている。

 単に安くするだけであれば、コストがかかりそうな部分を排除していけばいいわけだが、そうではなく、製品としてしっかり作り込まれている点は、高く評価したいポイントだ。

 最近では、消費者の目も肥えてきて、単に安い製品よりも、しっかりと作り込まれた製品が選ばれる傾向にあるが、FX2G-05EMは、そうした視点からもお得に映る製品と言えるだろう。

シンプルな構成

 それでは、実機をチェックしていこう。

 筐体は金属製のしっかりした構成で、RJ-45コネクタや電源コネクタなどのインターフェース類は、全て前面に配置されている。

正面
側面
背面

 電源のみ背面という配置のスイッチもよく見かけるが、全て前面の方がケーブルの取り回しや取りまとめは楽だ。

 うがった見方をすれば、全て前面だと間違って電源ケーブルを抜いてしまいそうな気もするが、LANケーブルと電源ケーブルを間違えることはほとんどないので、心配ないだろう。

 LEDは、ポートに直接搭載されるのではなく、左側にまとめて配置されるタイプとなっている(2.5Gbpsが緑、1Gbpsがオレンジ)。前述した競合のバッファロー製品では、背面のスイッチでLEDをオフにできるが、残念ながら本製品にはLEDオフの機能は用意されていない。

2.5Gbpsリンク時は緑、1Gbpsリンク時はオレンジになる

 寝室を兼ねたワンルームなど、LEDの点滅をなくしたい環境であれば、その分のコストを支払って別の製品を選ぶ必要がある。

 ただ、LEDは前述したようにRJ-45コネクタではなく、その横にまとめて配置されているので、ここをテープなどで覆ってしまえば、容易にLEDの光を物理的に遮断できる。

 詳しくは後述するが、本製品には後から取り付けられる厚めのゴム台座が付属しており、台座を取り除いたゴム部分の残りを少し加工すればぴったり収まり、LEDを覆うのにちょうどいいのだ。個人的には、捨てずに取っておくことをお勧めしたい。

ゴム製台座の余った部分を活用すると、LEDをうまく隠せる

念入りな熱対策

 感心したのは、本製品の熱対策がかなり凝っている点だ。

 2.5Gbps以上のスイッチは、どのメーカーの製品であっても、負荷が掛かると熱を持つ傾向がある。しかしながら、コンシューマー向け製品では、ファンを取り付けると騒音や長期使用時の故障の原因となり兼ねないため、ファンレスの設計になることが多い。

 本製品も、本体カバーを開けると巨大なヒートシンクが姿を現す設計になっており、ファンを使用せず、熱を金属筐体から放熱するかたちで冷却を行う仕組みだ。

 それだけでなく、基板の底面側には、放熱用シリコンパッド、熱拡散放熱用アルミプレート、難燃性ポリカーボネートシートの多重対策が施されており、底面からも熱を効率的に逃がす工夫がなされている。

 また、本体には先述の通り厚めのゴム足(3mm)が付属していて、これを装着すると本体を床面から離し、効率よく熱を逃がせるようにもなっている。

ケース内部。巨大なヒートシンクで放熱
底面も放熱用シリコンパッド、熱拡散放熱用アルミプレート、難燃性ポリカーボネートシートの多重対策
3mmのゴム足で底面側にも空間を確保可能

 熱対策にかなりコストがかけられている印象だ。

 試しに筆者宅にて、24時間365日連続的に外部と通信する分散ネットワークのサーバーを3ノード接続した状態で、常に高い負荷をかけ続けてみたが、こうした使い方をすると、さすがに本体は熱くなる。

 家庭でここまで負荷を掛けることはないはずなので、実用環境ではもっと温度は下がると思われるが、手で触れるとほんのり熱く感じる印象だ(手元の赤外線温度計では表面側40℃前後、背面側46℃前後)。

 とは言え、同じ環境につながっているルーター(ホームゲートウェイやルーター)も同じくらいの熱さなので、気にするほどではなさそうだ。

 むしろ、前述した放熱対策によって、しっかりと外部に熱が放出されている証明なので、これはポジティブに考えていいだろう。

 1Gbps対応スイッチのイメージのままで使うと、2.5Gbps以上のスイッチは動作時の温度の高さがどうしても気になるかもしれないが、ぶっちゃけて言えば「どれもそんなもの」なので、動作が不安定にならない限り、過剰に気にする必要はない。

 機器側でしっかり対策がなされており、設置場所の周囲にしっかり隙間を確保して気流を確保しておけば、安定した運用が可能だ。逆にファン付きであろうと、隣接する機器などによって気流が確保できなければ動作は不安定になる。

 実際、筆者宅でも、前述したサーバー環境ですでに1週間ほど運用しているが、特に問題は発生していないので、熱対策はしっかりできていると言っていいだろう。

速度も問題なし

 スイッチは、家庭で使う分には速度が問題になることはほとんどないが、念のためiPerf3による速度も計測してみた。

iPerf3の結果

 上り下りのいずれも2.44~2.45Gbpsと、ほぼ規格上のフルスピードで通信できている。フレームサイズも、1500と9000両方のジャンボフレーム環境を試してみたが、特に問題は見られなかった(FX2G-05EMはジャンボフレームの設定不要で自動認識)。

 というわけで、本製品は格安ながら、意外にコストがかかったしっかりとした製品という印象だ。

 実売9990円という価格は非常に魅力的で、競合に比べてのアドバンテージは高い。今、2.5Gbps環境を整えるなら、候補としてぜひ検討すべき製品と言えそうだ。

清水 理史

製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できる Windows 10 活用編」ほか多数の著書がある。