清水理史の「イニシャルB」

バッファローが10G/2.5Gをコモディティ化! 2万円切りのスイッチや、3.4万円で10G×2ポート+2.5G×4ポートのスイッチを試す

1Gbps越えの有線LANが個人でも買いやすく

 バッファローから、2.5GBASE-Tおよび10GBASE-Tに対応した有線LAN製品が次々に発売された。光回線やNASの10Gbps化、2.5Gbpsに対応するマザーボードやゲーミングPCの登場など、1Gbpsを超える有線LAN環境が市場に登場する中で、コンシューマーから待望されていた“手頃な価格”の製品が登場した格好だ。

 こちらのインタビュー記事でも紹介している10GBASE-T×2、2.5GBASE-T×4の「LXW-10G2/2G4」、2.5GBASE-T×5の「LXW-2G5」のスイッチングハブ2製品と、2.5Gbps対応USB 3.1(Gen1)用有線LANアダプター「LUA-U3-A2G」を、実際に使ってみた。

10G×2+2.5G×4構成と、2.5G×5構成の「ちょうどいい」スイッチ2製品

 ようやく1Gbps以上の有線LAN環境を手軽に構築できるようになりそうだ。

 バッファローから登場した「LXW-2G5」と「LXW-10G2/2G4」は、2.5Gbpsや10Gbpsの通信に対応したスイッチングハブだ。

 前者の「LXW-2G5」は、全ポート2.5Gbps対応となる5ポートのスイッチングハブで、後者の「LXW-10G2/2G4」は、10Gbps×2ポート、2.5Gbps×4ポートのスイッチングハブで、Amazon.co.jp(12月2日時点)での実売価格は、前者が1万9998円。後者が3万889円(いずれも税込)と、1Gbps越えのスイッチングハブとしては、かなりお買い得な価格設定だ。

バッファローから登場した10Gbpsおよび2.5Gbpsに対応したスイッチと、USB接続LANアダプター製品群。1Gbps以上のネットワークをリーズナブルに構築できる

 1Gbps越えのスイッチングハブは、同社でも法人向けに8ポート、12ポートのマルチギガ(10G/5G/2.5G/1G)対応のモデルを販売していたが、こちらはAmazon.co.jpでの実売価格が8ポートでも税込8万円弱と、個人では手を出しにくかった。

 他社製品でも、10Gbps対応の5ポートスイッチで実売4万円台だし、10Gbps×2で2万5千円前後の製品でも、ほかのポートは1Gbpsまでの対応だったりして、「ちょうどいい」製品が存在しなかった。

 今回のバッファローの両製品は、これまで不満が多かった価格面、そして速度やポートのスペック面のバランスをうまく取った製品で、まさに「ちょうどいい」コンシューマー向けの1Gbps越えスイッチということになる。

LXW-10G2/2G4の実機をチェック高級感のあるコンパクトな筐体を採用

 まず、両製品とも金属を使った筐体を採用し、高級感のある外観に仕上がっている。色はシンプルなブラックだが、前面のパネルがヘアライン加工されており、なかなか好印象だ。ちなみに、前面のパネルはLXW-10G2/2G4の方が厚みがある上、底面の台座も、オーディオ機器のインシュレーターを思わせる大型でしっかりしたものが備え付けられており、高級感が漂っている。

 サイズは、LXW-2G5が160×29×131mm。180×33×151mmとなるLXW-10G2/2G4の方が、若干大きい。

10Gbps×2ポート、2.5Gbps×4ポートの「LXW-10G2/2G4」の正面(左)と背面(右)
2.5Gbps×5ポートの「LXW-2G5」の正面(左)と背面(右)
LXW-10G2/2G4の前面はヘアライン加工がされ、底面にはオーディオ機器を思わせる大型の台座を装備

 しかしながら、これまで入手可能だった10Gbps対応のスイッチングハブは、5ポートモデルでも8~12ポートの製品と同程度の大きさで、コンパクトという印象からはほど遠く、置き場所も選ぶ印象があった。

 LXW-10G2/2G4は、比較対象にもよるが、従来製品の約半分程度の容量となっていて、かなりコンパクトな印象がある。これなら、空いている場所に気軽に設置できそうだ。

徹底的な熱対策でファンレスを実現LEDとQoSの物理スイッチも装備

 さらに、ファンレスである点にも注目したい。

 筆者も自宅で他社製の10Gbps対応スイッチを利用しているが、夏場はファンの回転音が気になることが多かった。

 ファンレスのLXW-10G2/2G4、LXW-2G5は、いずれもこうした騒音とは無縁だ。金属筐体の採用と、徹底的に作り込まれた各所の熱対策(こちらのインタビュー記事参照)により、1Gbps以上の有線LAN製品では避けて通れない「熱問題」と「騒音問題」の両方を、見事にクリアしている。

 実際に1週間ほど筆者宅の実環境で、10Gbpsのインターネット接続やNASアクセスなどにLXW-10G2/2G4を使ってみたが、上部に触れると暖かさは感じるものの、「熱い」というほどの印象はなく、動作も安定していた。

 もちろん、今(12月)は気温が低いし、接続しているクライアントも少数なので、環境による部分もあるかとは思う。だが、ファンレスで静かに、しかも安定して動作してくれるのは確かなので、個人宅での利用には最適と言えそうだ。

 LEDは両モデルとも前面に配置されているが、これは背面のスイッチでオン/オフできるようになっている(PWRは点灯のまま)。ファンの音とともに、LEDの点滅は個人宅では夜間に気になるが、手軽にオフにできるようになっているのはありがたい。

 このほか、背面には両製品ともループ検知「LOOP DETECTION」のスイッチを装備するほか(標準オン)、LXW-10G2/2G4には「QoS」スイッチも追加されている。

 QoSスイッチは、オンにすることで10Gbps対応のポートを優先的に処理できるようになる。ゲーミング用途などで使う場合は、10GbpsポートにルーターとPCを接続し、このスイッチをオンにしておくと、ほかのポートの通信に邪魔されずにゲームを低遅延で楽しむことができそうだ。

背面のスイッチでLEDのオン/オフ、LOOP DETECTIONを設定可能。さらにLXW-10G2/2G4(右)には「QoS」スイッチも搭載される

USB接続で手軽にPCを2.5Gbps化できる「LUA-U3-A2G」

 続いて、2.5Gbps対応の有線LANアダプター「LUA-U3-A2G」をチェックしていこう。

 こちらは、USB 3.1(Gen1)接続で、モバイル系のノートPCなどを有線LANに対応させたり、1Gbpsの有線LANにしか対応していないデスクトップPCを2.5Gbps対応にすることができる製品だ。

USB接続の2.5Gbps対応LANアダプター「LUA-U3-A2G」

 Amazon.co.jpでの実売価格(12月2日時点)は6510円(税込)で、速度は2.5Gbpsまでの対応となるものの、1万円前後するPCIe接続の10Gbps対応NICと比べ、低価格で手に入れることができる。

 前述したスイッチングハブでも、10GbpsはルーターやNAS、ワークステーションやクリエイター向けPCと、限られた機器を接続するために利用される。一般的なPCであれば、この製品を使って2.5Gbpsで接続するのが、コスト面を考えてもお勧めだ。

 同様の製品は他社からも販売されているが、本製品のアドバンテージは熱対策とチップにある。

 多角形のデザインも特徴的だが、本製品の内部にはアルミ製のヒートシンクが採用されており、高負荷で熱くなりがちな2.5Gbpsアダプタを効率的に冷却できるようになっている。

 夏場での利用や頻繁なネットワークアクセスが発生する環境での利用を考えると、本製品の安定性は大きなメリットになりそうだ。

 また、本製品をPCに接続するとデバイスマネージャーに表示される「Realtek Gaming USB 2.5GbE Family Controller」という名前からも確認できるが、本製品で採用されているのは、Realtek製チップの上位モデルとなる。

 Realtek製チップを採用した他社製品には、QoS非対応のチップを採用しているケースもあるので、QoSに対応する本製品は、機能的に充実している。現時点ではまだ提供されていないが、将来的にQoS用ツールの提供予定もあるそうなので、ゲームもプレーが目的なら、本製品を選ぶメリットがあるだろう。

 セットアップに関しては、付属のドライバーをインストールするのが確実だが、Windows Update経由でオンラインでドライバーをインストールすることも可能だ。無線LANなど、インターネット接続手段があるPCであれば、簡単に接続することが可能だ。

10Gbpsで9.55Gbps、2.5Gbpsとあわせ、ほぼ規格の上限で通信可能

 では、気になる速度をチェックしていこう。まずは、iPerf3による計測を実施した。

 クライアントには、Core i7 7700、メモリ16GB、Samsung 970 Evo 500GB SSDを搭載したPC(10GBASE-TはIntel X540-T1、2.5GBASE-TはLUA-U3-A2G)を利用し、サーバーにはIntel X540-T2を搭載したLinuxマシン(Core i7 4770、メモリ16GB)を搭載したマシンを使用している。これらのPCに接続したIntel X540-T1は10Gbpsのみの対応なので、2.5Gbpsでの計測の際はLXW-10G2/2G4とLXW-2G5を接続し、LXW-10G2/2G4の10Gポートを利用して計測している。

iPerfテスト
DOWNUP
LXW-10G2/2G410Gbps9.555.56
2.5Gbps2.372.3
LXW-2G52.5Gbps2.372.3
参考値1Gbps0.9520.951

 結果を見ると、クライアント側の影響で10Gbpsの上りが5.5Gbpsとなったが、10Gbps接続で9.55Gbps、2.5Gbps接続で2.37Gbpsと、ほぼ規格の上限で通信できていることが分かる。

 1Gbps接続では950Mbps程度となるため、2.5Gbpsで約2.5倍、10Gbpsで約10倍とスペック通りの速度で通信できていることが確認できた。ピークパフォーマンスは問題ないと言えそうだ。

 続いて、NASを使ったファイル転送テストを実施した。同社製の10Gbps対応4ベイNAS「TS-5410DN」を使用し、10Gbps接続時と2.5Gbps接続時で10GBのファイルをコピーしたときの時間を計測した。

ファイルコピー
NAS→PCPC→NAS
LXW-10G2/2G410Gbps3640
2.5Gbps5842
LXW-2G52.5Gbps4038
参考値1Gbps9290

 こちらは、オンメモリで動作するiPerf3と異なり、ストレージがボトルネックになるため、2.5Gbpsと10Gbpsの差はほとんどなかった。

 2.5Gbps接続でも10Gbps接続でも、10GBのファイルの転送にかかる時間は約40秒で、転送速度としては250MB/s前後で頭打ちとなってしまう。HDDの速度の上限がこれくらいになってしまうので、NAS接続では仕方のないところだ。

 ただし、1Gbps接続に比べると、2.5Gbps接続、10Gbps接続ともに転送速度は速い。1Gbps接続では10GBのファイル転送に1分30秒ほどかかるのに対して、40秒ほどで転送が完了するのだから、半分以下の待ち時間で済むわけだ。

 実際に転送してみると分かるが、この差は意外に大きい。2.5Gbpsや10Gbps接続では、コピー開始から終了までコピーの進捗画面を眺めていてもさほど苦痛ではないが、1Gbpsではなかなか進捗が進まないためイライラしてくる。

 大きなファイルを転送する機会が多い場合は、ネットワークを1Gbpsから2.5Gbpsや10Gbpsにアップグレードする意義は大きいだろう。

2.5Gでも十分、余裕があれば10Gを

 以上、バッファローの「LXW-2G5」「LXW-10G2/2G4」「LUA-U3-A2G」を実際にテストしてみたが、やはり1Gbps以上のネットワークは速い。

 10Gbpsのインターネット接続環境や10Gbps対応のNASを利用している場合、もしくは今後、利用することを検討している場合は、本製品を選ぶメリットは大きいだろう。

 個人的には、回線やNASが10Gbps対応なら、できれば「LXW-10G2/2G4」を使ってエンドツーエンドで10Gbpsという環境を作りたいところだが、上記のテストでも分かる通り、実質的には2.5Gbpsでも問題ない。

 安く済ませたいのであれば、「LXW-2G5」と「LUA-U3-A2G」の組み合わせでも十分実用的と言えそうだ。そろそろ、1Gbpsのネットワークから卒業してもよさそうだ。

清水 理史

製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できる Windows 10 活用編」ほか多数の著書がある。