清水理史の「イニシャルB」

WiFi Analyzerを使って5GHz帯がどれくらい混雑しているかを確認してみよう

 Wi-Fi 6Eの登場で6GHz帯が解放されたが、Wi-Fiの主流はまだまだ5GHz帯となっている。今回は、そんな5GHz帯の状況を「WiFi Analyzer」アプリを使って調査する方法を紹介する。

 自宅の周辺で、5GHz帯がどれくらい混雑するようになってきたのかを判断でき、Wi-Fi 6Eを導入するかどうかの目安にもなるので、参考にしてほしい。

WiFi Analyzerで、自宅周辺のアクセスポイントやチャンネルの占有状況などを確認する

自動設定だがチェックしてみた方がいい

 「自宅のWi-Fiが、現在、どのチャンネルを使っているか?」なんてことを意識したことがある人でさえ少ないのに、「自宅の周辺でほかの人がどのチャンネルを使っているか?」なんて気にしたことがある人は、もっと少ないのではないだろうか?

 しかし、チャンネルの選択は、Wi-Fiを快適に利用するためには重要だ。例えば、隣の家で同じチャンネルを使っていた場合、干渉によってWi-Fiの速度が遅くなってしまう場合がある。

 最近のWi-Fiルーターは、自動的に空いているチャンネルを選択してくれる仕組みを搭載しているが、以下のように利用できるチャンネルは限られており、かつては空いていると言われていた5GHz帯でさえ、完全に干渉を避けることは難しくなりつつある。

 もちろん、最近追加されたWi-Fi 6Eの6GHz帯も存在するが、現状の主流はまだ5GHz帯となるため、この機会に自宅の周囲で5GHz帯がどれくらい混雑しているのか? 自宅はどのチャンネルを使っていて、ほかと干渉していないか? をチェックしておくことをお勧めする。

WiFi Analyzerを使用

 チャンネルを調査できるツールは、いくつか存在するが、今回は、有名な「WiFi Analyzer(open-source)」を利用する。

 残念ながらiOSでは、純正のAirMacツールで周囲のアクセスポイントのチャンネルや電波強度を一覧表示することはできるが、今回紹介するWiFi Analyzerのようなグラフィカルなツールは利用できないので、PCかAndroid端末を利用する必要がある。

 今回は、Android版を使って、表示される情報を詳しく見ていこう。

アクセスポイント画面

 アクセスポイント画面では、電波の届く範囲に存在するアクセスポイントの一覧が表示される。一番上が現在、接続されているアクセスポイントで、以下、信号強度の高い順(距離が近い順)に周囲のアクセスポイントが表示される。

アクセスポイントの一覧が表示される
アクセスポイントの情報を拡大したところ。RSSI、チャネルなどの詳細な情報が確認できる

チャンネルの評価画面

 画面上部で選択した周波数帯(2.4/5/6)のチャンネルの使用状況の評価が表示される。星の数が少ないチャンネルは、周囲に同じチャンネルを利用するアクセスポイントが存在するため混雑しており、干渉が発生する可能性がある。星が多いチャンネルは空いているチャンネルとなる。

チャンネルの評価とお勧めチャンネルが表示される
接続中のアクセスポイントについて、リンク速度やIPアドレスも表示される

チャンネルグラフ

 どのチャンネルをどのアクセスポイントが、どれくらい占有しているかをグラフ化したもの。縦軸が信号強度で、横軸がチャンネルとなっており、広い帯域(チャンネル)を占有し、かつ信号強度が強いほど面積が広くなる。現在接続中のアクセスポイントと、重なる部分が多いほど、干渉が発生する可能性が高くなる。

チャンネルグラフ全体の見方
5GHz帯のチャンネルグラフでは、W52+W53/W56/5.9GHz帯を切り替えられる
具体的なチャンネルの見方。現在接続されているSSIDと近隣のSSIDがどれくらい重なっているかで判断する
近隣のSSIDと重なっていなければ、干渉していないと判断できる

タイムグラフ

 横軸に時間を取って、各SSIDの信号強度が時間的にどのように変化するかを確認できる。子機の向きを変えたり、計測したまま移動すると、信号強度が変化するので、場所によってどれくらい電波状況が変わるかを判断したいときなどに利用する。

信号強度の変化を追える

具体的にどうすればいいか?

 このように、PCやAndroid端末があれば、アプリを利用することで、比較的、簡単に周囲のチャンネル状況をチェックできる。

 前述したように、最近のアクセスポイントは、起動時などに周囲のチャンネル状況をチェックして、空いているチャンネルを自動的に選択する仕様になっているが、選択範囲がW52に固定されていたり、スキャン時から周囲の状況が変化して干渉が発生したとしても設定時から変更されないままになっていたりする可能性がある。

 このため、ツールでチャンネルの状況をチェックし、空いているチャンネル(上記の例であればW56の後半)に手動で設定を変更することで、干渉を避けられる可能性がある。

 ただし、チャンネルを固定することはメリットばかりではない。

 自宅のアクセスポイントのチャンネルを固定で変更した後、周囲で同じチャンネルに固定で設定されると、アクセスポイントの自動チャンネル設定などでも干渉を避けられなくなってしまう。

 また、W53、W56の帯域は、DFSと呼ばれる機能が有効になっており、周囲で気象レーダーなどの干渉を検知すると、一定時間、通信を停止し、自動的にチャンネルを変更する仕様になっている。空いているW56を選んだとしても、地域や環境によっては、DFSによる停止に悩まされる可能性もある。

 なので、手動でチャンネルを変更する場合は、一度だけでなく、定期的にチェックし、問題がないかを確認する必要がある。ある程度の試行錯誤は必要になるだろう。

清水 理史

製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できる Windows 10 活用編」ほか多数の著書がある。