清水理史の「イニシャルB」
フォルダーの参照先に注意! あと1年でサポート終了するWindows 10からWindows 11へのデータ移行
「ファイル履歴」ツールを使った手順を解説
2024年9月9日 06:00
Windows 10のEOS(End Of Support:サポート終了)となる2025年10月14日まで、あと約1年と迫ってきた。まだ猶予はあるが、PCの移行はそれなりに手間も時間もかかるので、今のうちに移行してしまうのもひとつの手だ。
今回は、Windows 10からWindows 11への設定やデータの移行について検証してみた。
設定とデータをどう移行するか?
Windows 10からWindows 11への移行に際して、課題になるのは、設定やデータをどのように移行するかだ。
もちろん、現在利用しているWindows 10のPCが、Windows 11のハードウェア要件を満たしているのであれば、現在のPCのままOSのみアップグレードするのがもっとも簡単だ。この場合、設定やデータは、基本的にそのまま引き継がれる。
しかし、Windows 11では、プロセッサーやTPMなどの要件が厳しく、PCが古い場合、そのままアップグレードができない場合もある。このため、新しいPCを購入し、古いPCから設定やデータを移行する必要がある。
設定やデータを移行する方法はさまざまだが、Microsoftが推奨しているのは、OneDriveを使った方法となる。OneDriveを利用すれば、ドキュメント、ピクチャ、デスクトップ(ビデオ、ミュージックはオプション)の主要なデータに関しては、Microsoftアカウント経由で自動的にWindows 11環境に移行できる。
しかし、OneDriveは無料プランだと容量が5GBしかない上、全てのWindows 10ユーザーが使用しているわけではない。OneDriveを完全に無効化している人もいれば、[ドキュメント]などの重要なフォルダーのバックアップのみ無効化している人もいることだろう。
また、OneDriveのバックアップ対象は、標準では[ビデオ][ミュージック][ダウンロード]、オプションで[ビデオ]と[ミュージック]となるが、それ以外のフォルダーは同期されないため、ほかのフォルダーにもデータがあるなら、別の方法で移行しなければならない。また[ビデオ]や[ミュージック]に保存されたデータは容量が大きい場合もあり、OneDriveでの同期が難しいケースもあるはずだ。
スマホのデータ移行が簡単に済む時代なのに、Windowsの移行は未だに手間がかかる状況にあるのは、何とかしてほしいところだ。
いにしえのツール「ファイル履歴」を活用する
データの移行にサードパーティー製のバックアップツールや移行ツールを使う手もあるが、Windowsの標準機能だけで移行するのであれば、「ファイル履歴」がひとつの候補となる。
ファイル履歴は、Windows 8(2012年!)から搭載されたバックアップ機能だ。Windows 10では、[設定]の[更新とセキュリティ]にある[ファイルのバックアップ]から設定が可能だが、現行のWindows 11(23H2)では、[設定]からは姿を消してしまった。
Windows 11では、コントロールパネルから起動する数少ないWindows標準機能のひとつで、今秋公開予定の24H2でも存在は確認できた。しかし、今後継続して搭載されるかも分からない古いツールとなる。
正直、ファイル履歴はOneDriveとの相性があまりよくなく、OneDriveのバックアップ機能がオンになっていると、バックアップ対象としてOneDriveフォルダーが含まれていたとしても、OneDriveフォルダーをバックアップできない場合もあり、最新のOSやアプリに対応しきれていない印象がある。
また、Windows 10のファイル履歴では任意のフォルダーをバックアップ対象として追加できたが、Windows 11ではできなくなっている。露出も機能も減りつつあり、いかにもフェードアウトしそうな機能となっている。
とはいえ、現状、ほかには適切な標準搭載のバックアップツールがないので、これに頼るしかない状況だ。
ファイル履歴を使ったデータ移行フローチャート
それでは、具体的な方法を紹介しよう。といっても、全ての手順を紹介することはできないので、流れとポイントのみ解説する。
まずは、全体の流れを把握しておこう。PCの環境は人によって異なるため、一概には言えないのだが、代表的な例を想定して、以下に流れ図を作成した。
Windowsの設定に関しては、Microsoftアカウントに紐づく情報をMicrosoftアカウントで移行し、ウェブブラウザーであるEdgeのデータもMicrosoftアカウント経由の同期で移行する。また、メールのデータは、Outlook.comなどのクラウド型のメールを使用していることを想定して、こちらもMicrosoftアカウントで移行する。
肝心のデータは、OneDriveを併用できる場合はOneDriveを使ってデータを移行し、それ以外のものをファイル履歴で移行する。
ただし、OneDriveは利用形態によって、ユーザーフォルダーの参照先と同期の方法が、4つのパターンに分かれる。具体的には、次の4パターンだ。
- OneDriveのバックアップを有効にしている場合
- OneDriveは有効だがバックアップのみ無効にしている場合
- バックアップを有効にしたままOneDriveそのものを無効にした場合
- バックアップを無効にしてからOneDriveを無効化した場合
このうち、注意が必要なのは、バックアップを無効にしている2と4のパターンだ。以下の図のように、バックアップが有効の場合と無効の場合で、[ドキュメント]などのフォルダーの参照先が変わる。
Windows 11は標準でOneDriveのバックアップが有効になっているため、移行後のWindows 11でOneDriveの設定を元のWindows 10と同じにしておかないと、移行したデータがフォルダ内に見つからなくなる(別の場所に復元されるため、気付きにくい)。
ちなみに、古いPCを廃棄したり、売却したりする場合は、「システムイメージの作成」を使ってドライブをまるごとイメージファイルとして保管しておくことをおすすめする。万が一、移行し忘れたデータがあっても、イメージファイルをマウントしてデータを抽出できる。
データ移行作業のポイント
前述の流れ図に沿って、移行作業のポイントを紹介していく。まずは古いWindows 10での作業からとなる。
STEP 1:情報を確認する
移行前の情報の確認として、Windows 10にサインインしているMicrosoftアカウントとデバイス名を確認しておく。Windows 11の初期セットアップで、同じMicrosoftアカウントでサインインし、復元するPCを選択すれば、個人用設定などの基本的な設定を自動的に移行できる。
STEP 2:データを収集する
Windowsの設定やアプリの設定、データなどの中でも必ず新しいPCに移行したいデータがある場合は、ファイルとしてエクスポートし、新しいPCでインポートできるようにしておくと安心だ。[ドキュメント]などのファイル履歴のバックアップ対象フォルダーに保存しておこう。例えば、IMEのユーザー辞書、年賀状ソフトの住所録などは、忘れがちなので確認しておくと良いだろう。
STEP 3:ファイルオンデマンドを強制ダウンロードする
OneDriveを利用している場合は、ファイルのオンデマンド(使わないファイルはダウンロードせず、ストレージ容量を節約する機能)によってオンライン上にのみ保存されているデータが存在する場合がある。このファイルを事前にPCにダウンロードしておくことで、ファイル履歴のバックアップ対象に含めることができる(Windows 10でOneDriveそのものを無効にしている場合は不要な操作)。
ただし、今回の検証時、OneDrive有効かつバックアップ無効の場合、この操作をしてもOneDriveフォルダーがバックアップ対象にならない場合もあった。原因は不明だが、OneDrive経由で復元できるので結果的には移行可能だ。
STEP 4~5:ファイル履歴のバックアップ対象を追加する
ファイル履歴を利用してデータをバックアップする。バックアップ先は、USBストレージやNASなどを利用すると良いだろう。ドライブを追加し、バックアップを手動で実行しておこう。完了後に、復元画面を表示してデータがバックアップされていることを確認しておくと安心だ。
なお、OneDriveやファイル履歴によって移行できるファイルの場所は限られている。[デスクトップ][ドキュメント][ピクチャ][ビデオ][ミュージック][ダウンロード]などの主要なフォルダー以外の場所(別ドライブなど)にデータを保存している場合は、あらかじめファイル履歴のバックアップ対象として追加しておく必要がある。
STEP 6:Windows 11の初期セットアップを行う
ここからは、移行先のWindows 11 PCでの作業となる。
Windows 11の初期セットアップを実行する。以前のPCと同じMicrosoftアカウントでサインインし、STEP 1で確認したコンピューター名のPCを指定して、Windowsの設定などを復元する。
STEP 7~8:OneDriveの設定を変更する
Windows 11では、標準でOneDriveが有効になっており、[ドキュメント][ピクチャ][デスクトップ]のバックアップもオンに設定されている。このため、起動後、しばらくするとOneDriveに保存されていたデータが自動的に同期される。必要なデータが存在することを確認しておこう。
なお、サインイン後にOneDriveの設定画面が自動的に表示されるケースもあるが、表示されなくても、手動でOneDriveの設定画面を開いて設定をWindows 10と同じにしておく。
中でも重要なのは、Windows 10でOneDriveのバックアップを無効化していた場合は、Windows 11でもバックアップを無効化しておくことだ。
前述したように、OneDriveのバックアップの有無によって[ドキュメント]などの参照先が変更される。このため、Windows 10とWindows 11でOneDriveのバックアップの設定を合わせておかないと、[ドキュメント]などの参照先が変わり、復元したデータを参照できない場合がある。
STEP 9:ファイル履歴で復元する
Windows 10でバックアップしたストレージを接続後、コントロールパネルから「ファイル履歴」を起動して、バックアップ先として接続したストレージを追加しておく。この際、忘れずに「このファイル履歴ドライブの以前のバックアップを使用します」にチェックマークを付け、既存のバックアップデータを選択しておく。
ドライブの準備ができたら、「ファイルの復元」でWindows 10のデータを開き、ファイルを復元する。Windows 11で既に文書などを作成したことがある場合は、上書きで古いバージョンに戻る場合があるので、本当に上書きしてもいいかどうかを慎重に判断して実行しよう。
OneDriveでの移行が便利だが、それだけでは完結せず
以上、Windows 10からWindows 11へと設定やデータを移行する方法を紹介した。
基本的にはOneDriveを使うのが楽だ。特にOneDriveの有料プランを利用している場合は、容量に余裕があるので、[ビデオ]や[ミュージック]も同期対象にして、移行してしまうといいだろう。ただし、結局、OneDriveだけでは移行できないデータもあるので、今回紹介したファイル履歴など、何らかのツールも併用する必要がある。
面倒なのは、Windows 10でOneDriveのバックアップを無効にしている場合だ。フォルダーの参照先が変わることを把握しておかないと、復元したデータがどこにあるのかが分からなくなってしまう場合がある。OneDriveのバックアップ有効であることが前提で、OSの機能が設計されているので、そこから外れる手順でバックアップ/復元する場合は手間がかかってしまう。
なお、環境によって異なる部分もあるので、本稿の方法が全てのケースに対応できるわけではない。データの移行漏れがないかを確認して、場合によっては手動でコピーするなどして、確実にデータを移行することが大切だ。