清水理史の「イニシャルB」

ファンレス! 国内メーカー製! 新型PHY搭載! 期待の新型10Gスイッチ・エレコム「EHC-X05MA-HB」を試す
2026年8月24日 06:00
エレコムから新型のスイッチ(スイッチングハブ)「EHC-X05MA-HB」が発売された。5ポート対応の小型の製品で、実売価格は4万円前後。ファンレスで、動作時環境温度50℃と高温の環境にも対応していることが特徴だ。現在Amazon.co.jpで強い存在感を示す、中国製10Gbpsスイッチに勝てるのかを検証してみた。
新型チップ搭載? 国産メーカーの巻き返しなるか?
本連載では過去にも何度か製品を取り上げたことがあるが、現状、10Gbps対応のスイッチは、中国系の新興メーカーの製品が価格面で優位に立っている。
Xikestor、keepLiNK、FOXNEO、binardat、SODOLAなど、5ポートで2万円台前半、RJ45×4+SFP+×4構成でも2.5万円前後で購入でき、国内メーカーは価格面で厳しい戦いを強いられている。コスパで定評のあるTP-Linkでさえ、5ポートのDS105X(ファンレス)が3万円台前半だ。
そんな中、国内メーカーから相次いで10Gbps対応スイッチの新製品が発売となった。今回取り上げるエレコムが7月に「EHC-X05MA-HB」「EHC-X08MA-HB」を発表し、同じくアイオーデータからも「BSH-XG05」「BSH-XG08」、プラネックスからも「FXXG-0005EM」「FXXG-0008IM」が発売された。
このタイミングで新製品が登場した理由はわからないが、何らかの新型チップ(PHY:PHYsical layer Device)が実装可能になったのではないか? ということが推測される。 そこで実際に製品を購入し、いろいろ検証してみることにした。
消費電力や発熱など、価格以外の点で優位性を築くことができれば、中国系新興メーカーとの差を打ち出せることになるはずだ。
ややこしい型番違いを整理
と、その前に、本製品に関しては、ややこしい型番整理をしておく必要がある。
エレコムは、今回取り上げた「EHC-X05MA-HB」に加えて、「EHC-LX03-5」という、非常によく似た製品を販売している。Amazon.co.jpでの実売価格は3万2879円(8月13日時点ではクーポンもあり)で、販売サイトが異なるとは言え、ヨドバシ.comで4万800円のEHC-X05MA-HBとは価格に開きがある。
この2つの製品の違いは以下のようになる。メーカーにも問い合わせたが、スイッチとしての基本的な構成に大きな違いはないが、仕様に違いがある、との回答だった。
| EHC-X05MA-HB | EHC-LX03-5 | |
| 販路 | 量販店 | 通販専売 |
| ループ検知 | ON/OFF切り替え可能 | 常時ON |
| 動作時環境条件 | 0~50℃ | 0~40℃ |
| 保証期間 | 1年間 | 6カ月 |
| 実売価格 | 4万800円(ヨドバシ.com) | 3万2879(Amazon.co.jp) |
一応、今回の新製品のセールスポイントが「高耐熱50℃」ということなので、今回はEHC-X05MA-HBを紹介するが、一般的な家庭で使うなら、ループ検知はオンのままで問題ないし、動作時の環境温度も40℃までで問題ない。保証は1年欲しいが、6カ月でも十分と割り切れば、安い「EHC-LX03-5」を選ぶのもいい選択だ。
ハードウェア的にほぼ同じなので、実質的には保証を受けるときの使用条件と考えるいいだろう。
「熱い」と口コミで書かれるかも……
最初に断っておくと、本製品は使用中の温度が低いとは言えない。10Gbpsで負荷をかけると表面温度が46°Cを超えることもあるので、場合によっては通販サイトの口コミで「熱い」という評価になる可能性もある。
しかしながら、本製品に限らず、本体で放熱する製品というのは「そういうもの」だ。
本製品は、ファンレス、メタル筐体となっており、基板上のチップで発生した熱はヒートシンクなどを通じて本体に伝えられる。つまり、本体そのものが放熱の役割を担うので、本体が熱くなるのは設計通りだ。
そのうえで、動作に問題ないかが検証されており、特にEHC-X05MA-HBに関しては動作環境条件が50℃なので、50℃の環境に設置して動作させても問題ないことがメーカーによって確認されている。家庭で50℃を超える環境となると、真夏の窓際で空調なしのような過酷な環境だと考えられるが、それでも動作確認されているのだから、気温50℃未満の一般的な環境において、本体が「熱い」ことが原因で動作が不安定になることは少ないだろう。
特に、本製品の場合、積極的に筐体に熱を伝える工夫がされている。ケースを開けると、基板上のチップから両端が「コ」の字型になったヒートシンクが伸びており、上部が筐体にピッタリと貼り付けられている。
実際、表面を触ると「アチッ」となる。ヒートシンクとつながっているので、「そりゃ、熱くなるわなぁ」という感じなのだが、普通のユーザーは、こうした仕組みを意識することはないので、口コミが荒れることも珍しくない。
具体的にどれくらいの温度になるのかを検証したのが、以下の写真だ。10GbpsでPCなどを接続したアイドル状態で筐体上面が46.7℃で、底面が42.7℃。iPerf3で30分ほど負荷をかけると46.6℃になった。
事実として表面はしっかり熱い。こうしたしくみは、メーカーのウェブページでもっと訴求してもいいと思うのだが、ネガティブに捉えられる可能性があることは訴求しにくいというのも理解できる。
なので、あくまでも筆者としての見解だが、「この製品は熱いが、そういうもの」だと、あらためて断っておきたい。
PHYに新型「RTL8261D」を採用
本製品は、前述したヒートシンクを簡単に外せたので、基板をチェックしてみたが、これはなかなか興味深い結果となった。
まず、コントローラー(スイッチSoC:CPU、L2/L3ハードウェア転送、MACなどを統合したチップ)だがRTL9303が搭載されていた。これは冒頭で触れた中国系新興メーカーの製品でも採用例が多いチップで、特にL3マネージドスイッチでは定番となっている。
一方で10Gbpsポートを構成するPHY(電気信号や符号化などを担当するチップ)は「RTL8261D」となっていた。
既存の10Gbpsスイッチでは「RTL8162BE」などが採用されていたが、今回のエレコム「EHC-X05MA-HB」では、PHYが最新チップに刷新されている。アイオーデータやプラネックスの製品についてはチップ構成を未確認だが、おそらく7~8月のタイミングで10Gbpsスイッチの新製品が相次いで登場した背景には、RealtekからRTL8261Dの供給が開始され、製品に使えるようになった点が影響している可能性が高い。
このチップは、詳細な情報が公表されていないが、6月に開催されたCOMPUTEX TAIPEIで展示されていたようで(他社媒体で恐縮だが、「SSDの性能と信頼性を下支えする“コントローラー”の最新動向をチェック 変わり種やPCIe 6.0を見据えた動きも(ITmedia PC USER)」を参照)、消費電力も1.46Wと抑えられているのが特徴となる。
おそらく、今回新製品をリリースした各社は、このチップの省電力性能や発熱の低さをセールスポイントとして、中国系新興メーカーの既存製品に対抗しようと考えたのだろう。
実際、EHC-X05MA-HBの最大消費電力はカタログ上が18.2Wで、実際の計測では13W前後となっている。バッファローの「LXW-10G5」が最大27.0W(注:ファン搭載)、TP-Linkの「DS105X」が21.4Wなので、製品レベルでは若干消費電力が低い(ただし、EHC-X05MA-HBと同時期に発売されたアイオーデータの「BSH-XG05」やプラネックス「FXXG-0005EM」は、最大14Wとスペック上はさらに低い)。
ただ、発熱に関しては、前述したように本体で放熱する設計になっていることで、新型PHYの恩恵が、ユーザーが実際に確認できる(肌で感じられる)差として現れにくかったと言える。
性能は問題なし
性能については問題ない印象だ。最近のスイッチで性能が問題になることは、ほとんどないのだが、iPerf3で一通りテストしてみたが、10Gbpsでの通信が可能だった。
| 測定方法 | 結果 |
| 10Gbps1系統P4転送 | 9.49Gbps |
| 10Gbps2系統同時 | 合計18.96Gbps |
| 10Gbps→1Gbps1系統 | 940Mbps |
| 10Gbps1系統双方向同時 | 合計18.87Gbps |
なので、新型チップ採用の製品であること、国内メーカー製であることが、今回のエレコムの新型スイッチのメリットで、特に今回取り上げたEHC-X05MA-HBに関しては、動作環境条件が50℃と法人向け製品並みとなっている点が、他の製品にはないアドバンテージとなっている。
このため、この点が、他社製品や同等品のEHC-LX03-5ではなく、EHC-X05MA-HBを選ぶ最大の理由となる。工場や倉庫、学校など、比較的過酷な環境で動かすことが想定されるケースでは、本製品を選ぶメリットがあるだろう。

