第286回:2.4GHz帯と5GHz帯の同時通信に対応
11n ドラフト2.0に準拠したコレガの無線LANルータ「CG-WLBARAGND」



 コレガからIEEE 802.11n ドラフト2.0に準拠した無線LANルータが発売された。11nモードで利用できるIEEE 802.11aとIEEE 802.11b/gの同時通信が可能であり、IEEE 802.11aのすべてのチャンネルを40MHz幅で利用できるのが特徴だ。その実力を検証しよう。





低価格な同時通信対応モデル

CG-WLBARAGND

 コレガの「CG-WLBARAGND」は、2.4GHz帯と5GHz帯の同時通信に対応したIEEE 802.11nドラフト2.0準拠の無線LANルータだ。

 これまで同時通信対応の11n準拠製品は、ハイエンド製品という位置付けということもあって価格が高めに設定されていた。例えばバッファローの「WZR-AMPG200NH」は単体で31,700円、カードセットで40,200円(いずれも標準価格)と、個人ユーザーでは手を出しにくい価格だった。

 これに対して、コレガのCG-WLBARAGNDは単体で23,100円、USBもしくはPCカードのアダプタセットモデルでも29,400円(いずれも標準価格)と価格が抑えられている。バッファロー製品の発売が2007年だったことを考えると、だいぶ価格がこなれてきたという印象だ。

 ノートPCにもIEEE 802.11nドラフト2.0準拠の無線LANが内蔵されるケースが目立つようになってきたこともあり、ようやく一般ユーザーの手にも届く製品となってきたと言えそうだ。


CG-WLBARAGNDUSB無線LANアダプタ「CG-WLUSB300AGN」




11nモードは5GHz帯のみで動作

 このように、同時通信対応の11n準拠製品としては低価格なCG-WLBARAGNDだが、1つ注意しなければならないのは11nモードの扱いだ。前述したように、CG-WLBARAGNDは2.4GHz帯と5GHz帯の同時通信に対応しているが、このうち11nモードでの通信に対応しているのは5GHz帯のみとなっている。

 つまり、2.4GHz帯のIEEE 802.11gで接続した場合の最大速度は54Mbpsであり(11bは11Mbps)、IEEE 802.11nの特徴でもある最大300Mbpsでの通信を行なうには、5GHz帯のIEEE 802.11aで接続しなければならないことになる。

 しかしながら現実問題として、無線LANの普及で2.4GHz帯が混雑してきていることを考えると、300Mbpsの通信に必要な2つ分のチャネルを確保するのは5GHz帯の方が有利であるのは確かだ。

 また、クライアント側の環境を考えた場合、IEEE 802.11n ドラフト2.0準拠のアダプタや内蔵モジュールはほぼ2.4GHz/5GHzの両対応となっている場合が多い。一部コンバータ系の子機が2.4GHz対応のみというケースはあるが、セットモデルや無線LAN内蔵PCで利用する場合であれば、どちらの帯域でも利用できるので、あまり問題にならないだろう。

 本製品で採用されている考え方、つまりハイスピードが要求される通信専用の「5GHz」、いろいろな機器を接続する互換性重視の「2.4GHz」という割り切った構成は、むしろ合理的な考え方とも言えるだろう。





ゲーム機用ネットワークを隔離できるマルチAP機能

 それでは製品を見ていこう。本体はシンプルなブラックの筐体ながら、本体上部の3本の巨大なアンテナが目立つデザインが特徴的だ。最近ではNECの製品のようにアンテナ内蔵でスッキリしたデザインも登場しつつあるが、おそらく本製品では受信感度を優先したのだろう。

 また、最近の無線LAN製品は本体にスイッチが搭載されることが多くなってきたが、本製品には若干多めに3つのスイッチが搭載されているのが特徴的だ。

 1つは本体上部に搭載されたWPSプッシュボタン設定向けのスイッチ、もう1つはルータ機能のオン/オフを切り替えるためのスイッチ、最後はマルチAP機能の有効/無効を切り替えるためのスイッチだ。前2個までのスイッチであれば、形や場所はともあれ一般的なアクセスポイントには搭載されているが、最後のマルチAP機能のオン/オフスイッチというのはなかなか珍しい。


本体上部にWPSボタン背面にマルチAPとルータ機能のオン/オフボタン

 このマルチAPとは、いわゆるゲーム機で利用するためのもので、複数のSSIDを設定できる機能のことだ。ニンテンドーDSやPSPなどを接続するためのSSIDとして、PCとは別のセキュリティレベルのネットワークを用意できる。

 本製品では、このマルチAP機能の完成度がなかなか高く、前述したように本体背面のボタンによって機能の有効/無効を設定できるが、この設定を動的に行なうことができるようになっている。つまり、普段はボタンをオフにして無効にしておき、いざゲーム機をつなぐというときにボタンを押して機能を有効にできるのだ。

 通常は、設定しっぱなしでゲームをしないときもSSIDが見えているという製品が一般的だが、この動的に設定できるというのはなかなか便利だろう。ただし、標準は暗号化無効のため、WEPの設定をしておくことを強く推奨したい。


マルチAPの設定画面。有効無効の切り替えはスイッチで行なう仕様となっており、設定画面からは暗号化方式などの設定が可能

 マルチSSIDで接続したときのセキュリティもしっかりと確保されており、通常のSSIDに加えて追加されたSSID(セカンドSSID)で接続した場合、LANへの通信と設定画面へのアクセスが禁止されるように設定されている。これなら、小規模なオフィスなどで来客用にSSIDを開放しておくといった使い方にも対応できそうだ。

 このほか同時2セッションまでのPPPoEマルチセッション、UPnP、VPNパススルー(PPTP/L2TP)、IPv6ブリッジ、SPIなどをサポートするほか、フィルタリングサービスの「インターネット悪質サイトブロックサービスforBBルータ」も利用できる。ハードウェア的にもLAN/WANともに1000BASE-Tに対応しており、スペック的にはコストパフォーマンスの高い製品と言えるだろう。





パフォーマンスは少々ふるわず

 気になるパフォーマンスだが、筆者宅でテストした結果は以下の通りだ。最大でも70Mbps前後となっており、メーカー公称のテスト値である142Mbpsには遠く及ばなかった。テスト中の接続状況をユーティリティで監視していても、アクセスポイントから数メートルといった距離でも電波レベルがあまり高くなく、300Mbpsでリンクできなかっため、これが結果に影響した印象だ。ただし、このあたりは、テスト環境による差も影響するのであくまでも参考値と考えて欲しい。


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GET76.26Mbps55.45Mbps28.93Mbps
PUT60.96Mbps57.85Mbps24.18Mbps
※サーバーにはAMD Sempron 2600+/RAM2GB/HDD400GB搭載PCを利用。OSはWindows Home Server、IISのFTPサーバを使用
※クライアントにはLenovo ThinkPad T60(CoreDuo T2400/RAM2GB/HDD160GB)、Windows Vista
※コマンドプロンプトからFTPによるPUT/GETを実行し、極端に高い値と低い値を除いた5回の平均を計測

 なお、本製品はIEEE 802.11nドラフト2.0での通信速度が初期設定で最大144Mbpsとなっている。これはアクセスポイント側の設定で、ダブルチャンネルが無効になっていることと、ガードインターバルがLONGに設定されていることが理由だ。このため、300Mbpsでリンクさせるためには、「ダブルチャンネル」を有効に設定し、さらにガードインターバルもショートにしておく必要がある(前述したテストは設定済みの結果)。高速な通信が必要な場合は、忘れずに設定しておくようにしよう。


標準では最大144Mbpsでの通信しかできないが設定を変更すると最大300Mbpsでの通信が可能となる

 また、本製品には最大300Mbpsの40MHz幅を5GHz帯すべてのチャネルで利用できるという点があるが、テストした限りでは常に36/38chが利用され、アクセスポイント側の設定を変更しても利用チャンネルが変更されなかった。このあたりがパフォーマンスがかんばしくなかった原因とも関係があるかもしれない。


40MHz幅を11aのすべてのチャネルで設定可能。ただし、評価機では正常に設定できなかった
2.4GHzの最大速度は54Mbps




気になる点が解消されればお買い得

 このようにコレガのCG-WLBARAGNDを実際に利用してみたが、同時通信に関しての仕様を理解しておけば、機能は豊富で価格も安いのでお買い得と言える。

 ただし、今回のテストではパフォーマンス、および設定に若干の難点があったのが少々気がかりだ。今回はあくまで試用機でのテストのため、実際の製品では改善されていることを期待したい。


関連情報

2008/3/18 11:16


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。