第373回:常用かそれとも一時利用か
「VAIO X」で試す「UQ 1 Day」


 「UQ 1 Day」や「15日間WiMAXお試し利用」、さらに月額料金の下限を380円に抑えた「UQ Step」の開始など、料金プランが拡充されたことで、モバイルWiMAXサービスがより身近な存在となってきた。今回はWiMAX通信モジュール搭載PCで手軽に利用できるサービスを、ソニーの「VAIO X」を使って実際に試してみた。

多様化するモバイルブロードバンドサービス

「VAIO X」のWiMAX通信モジュール搭載モデル。WiMAXの料金プランを検証しつつ、実際に使ってみた

 3GやWiMAX、公衆無線LANサービスなど、サービス面の充実。また、外付けアダプタや通信モジュール搭載PC、バッテリー駆動型のモバイルルーターなどのハードウェアの進化。そして、2段階定額制や定額制、一時利用などの多彩な料金プランの登場……。

 改めて考えてみると、モバイルブロードバンドサービスの選択肢は固定系サービス以上に広がり、さまざまなユーザーのニーズに応えられるように多様化しつつある。その一方で、機器価格を含めた料金プランや契約期間など、若干複雑で選ぶのが難しくなってきている。

 サービス面ではエリアや速度、ハードウェア面では利用する機器の種類や台数、料金面では利用頻度に応じて選ぶのが一般的な基準となるが、現状は各サービスで特徴や使用可能な機器、料金などに違いがあり、「こういう場合はコレ」という判断が簡単にはできない。

 特に悩ましいのが料金だ。極端な話、コストさえ気にしなければ、すべてのサービスや機器を揃えて、そのときどきで最適なものを使うのが理想だが、ほとんどの時間を外で過ごすヘビーユーザーならまだしも、一般的な利用シーンでは、どの程度使うかわからないサービスに毎月料金を支払うのは大きな負担となるだろう。

 そこで、今回注目してみたのがUQ WiMAXの「UQ 1 Day」だ。サービス自体は10月1日から開始されているが、モバイルWiMAX通信モジュールを搭載したPCが増えてきた上、12月7日にはWiMAX通信モジュール搭載PCでWiMAXサービスを期間限定で使用できる「15日間WiMAXお試し利用」も開始されたことで、より身近に使える環境が整ってきた。

「UQ 1 Day」のメリットとは

 まずはサービスの概要をおさらいしておこう。「UQ 1 Day」は、WiMAXによる通信サービスを1日600円で利用できるサービスだ。

 モバイルWiMAXサービスは、これまで月額4000円前後(UQコミュニケーションズ(UQ Com)の「UQ Flat」は月額4480円)の定額制サービスが一般的であった。12月18日には、月額料金の下限を380円に抑えて、通信量に応じて4980円の上限まで課金する2段階定額制の「UQ Step」も追加されたが、どちらの場合も一定額の月額料金が必要となっている。


UQコミュニケーションズの料金ページ

 これに対して、「UQ 1 Day」の場合は月額の固定料金や初期費用は発生せず、スポット利用が可能なサービスだ。公衆無線LANサービスの1日利用権を使った経験のある人なら想像しやすいかもしれないが、「UQ 1 Day」も同様に申し込みから24時間、600円のみでWiMAXによる通信サービスが利用可能となっている。

 600円というと高いイメージを持つかもしれないが、UQ Comの定額制サービスと比較した場合、1カ月あたりの利用が7回(7日)までであれば、月額4480円の「UQ Flat」よりもお得な計算になる。

 7回という利用頻度は、決して少なくない回数だろう。例えば、毎週1回の頻度で外出先で利用したとしても、月の利用回数は4~5回で済む上、これに加えて1泊程度の出張もこなせる計算になる。

 日常的に外出先で通信するというのであれば、定額制サービスの利用がお得だが、普段はオフィスや家でPCを利用し、たまに外出するという使い方の場合、ほとんど使わない月もあるはずだ。このため、使いたい場合にだけ課金される「UQ 1 Day」のメリットは大きいだろう。

 もちろん、利用頻度の差が激しいということであれば、3G系のモバイルブロードバンドサービスなどでも採用されている2段階定額制の「UQ Step」などを利用する手もある。しかしながら、これらのプランは月額の最低料金が定められているため、まったく使わない月でもわずかながら課金されてしまう。

 また、パケット単位の課金となるため、大きなファイルの転送や動画サービスの利用など、通信量によってはすぐに上限に達してしまうこともあり、利用日数が少なくてもコストがかかってしまうこともある。

 これらサービスをまとめると、以下の図のようなイメージになるだろう。月の利用日数も1回あたりのデータ量も多い場合は定額制サービス「UQ Flat」、メールの送受信などが中心でデータ量はさほど多くないが月の利用日数が多いこともある場合は2段階定額制サービス「UQ Step」、月の利用日数は多くはないが、1回あたりの通信量が多くなる可能性がある場合は「UQ 1 Day」が適している。


縦軸に通信量、横軸に利用日数をとって料金プランを分類してみた。通信量と利用日数のどちらを重視するかでプランを選ぶとよさそうだ

 つまり、「UQ 1 Day」と「UQ Step」は、通信量が多いのか、利用回数が多いのかによって使い分ければ良いことになる。もちろん、定額制や2段階定額サービスの場合、料金の上限が定められているので、月々のコストを一定以下に抑えたい場合にもメリットはある。「UQ 1 Day」の場合、仮に毎日使えば、単純計算で最大1万8000円前後になる場合もあるので注意が必要だ。

「VAIO X」でWiMAXを使う

 それでは、実際の使い方を見ていこう。「UQ 1 Day」は手軽に利用できるサービスだが、それでも以下のような最低限の条件はクリアしておく必要がある。


  • WiMAX通信機器を用意する
  • 電波の届く場所にいる
  • 課金のためのクレジットカードを用意する

 まずは通信機器だが、今回はソニーの「VAIO X」のWiMAX通信モジュール搭載モデルを利用した。厚さ13.9mm、重量765gのモバイルノートPCで、外出先に持ち歩いて利用するのに最適だが、改めて使ってみると非常に質感が高い。人によってはパフォーマンスが気になるかもしれないが、モバイルでのインターネット利用やメモといった用途には最適なPCだ。


Atom Zシリーズを搭載した軽量モバイルノート「VAIO X」シリーズ。写真の機種はカスタマイズ可能な「VAIOオーナーメードモデル」でWiMAX通信モジュールを搭載済みとなっている閉じるとこの薄さ。片手で楽々持てる軽さながら、細部の完成度が非常に高い

 店頭で販売されている標準仕様モデルは、NTTドコモのFOMAハイスピードに対応したワイヤレスWAN機能が搭載されているが、今回試用した「VAIOオーナーメードモデル」ではワイヤレスWANのかわりに、WiMAX通信モジュールを搭載することが可能となっている。

 WiMAXを選択した場合、無線モジュールはIEEE 802.11a/b/g/nの無線LAN機能とWiMAXに対応した「Intel WiMAX/WiFi Link 5150」に変更される。恐らく、アンテナの問題と思われるが、WiMAXとワイヤレスWANは共存できない仕様となるため、購入時にWiMAXかワイヤレスWANかを排他で選ぶ必要がある。

 この選択は実に悩ましいところで、サービスエリアを考えるとワイヤレスWANを選びたいところだが、この場合、月々の料金が発生することになる。外出先での利用頻度が高いならワイヤレスWANだが、そうでない場合は今回紹介する一時利用のプランも選べるWiMAXが便利だろう。

 機器が用意できたら、WiMAXの電波の届く場所からサインアップ手続きをする。「VAIO X」を利用した今回のケースでは、Intel製のチュートリアルプログラムが搭載されており、動画でWiMAXの概要などを確認できる。また、タスクトレイのユーティリティ(Intel PROSet/Wireless WiMAX接続ユーティリティ)を使って接続の管理やサインアップが可能となっている。


WiMAXのサービス紹介が動画で表示されるプログラムも付属していたWiMAXモデルに搭載される無線モジュールは「Intel WiMAX/WiFi Link 5150」。ユーティリティもインテル製を利用する

 ユーティリティを起動後、WiMAXをオンにすると利用可能なネットワークが検索される。ここで「UQ WiMAX」を選択して接続が完了すると、自動的に契約用の統合ポータルページが表示される。

 なお、サービスエリア外で設定を試みたところ、「接続可能なWiMAXネットワークはありません」と表示された。屋内などでは電波が届きにくい場合もあるので、部屋を移動するか、屋外でサインアップすると良いだろう。ちなみに、筆者宅で試してみたところ、USB接続型のWiMAXアダプタに比べると感度が若干良いように見受けられる。このあたりは搭載ならではのメリットかもしれない。

 さて、はじめてサインアップする場合、前述の「15日間WiMAXお試し利用」が利用できるため、これを申し込んで、自宅や会社、よくいく外出先など、どれくらいのエリアでWiMAXが使えるのかを試しておくのが良いだろう。


WiMAX通信モジュール搭載PCでは、オンラインからの手続きで15日間のお試しが可能

 同じ15日間のお試しができるサービスとしては、WiMAXアダプタが貸与される「Try WiMAX」もある。しかし、こちらは申し込みから機器が発送されるまで期間がかかるほか、期間終了後の機器の返却も手間だったが、WiMAX通信モジュール搭載PCの場合、オンラインから手軽に試用できるのは大きなメリットだ。

 もちろん、15日間の試用期間が終了すれば、UQ Comの「UQ 1 Day」などのプランを利用することもできるし、他のサービス事業者と契約することも可能なので、まずは試用から始めるのが良さそうだ。

申し込み後すぐに利用可能

 「UQ 1 Day」の契約も同様に統合ポータルから設定可能だ。1日利用プラン自体は、@niftyやDIS mobile、YAMADA Air Mobile、BIC WiMAXなどでも提供されているので、料金や好みによって選ぶと良いだろう。

 申し込みは、利用者情報に加えて、課金用のクレジットカードを登録するだけと、さほど手間はかからない。申し込みが完了すると、設定情報がPCに書き込まれ、すぐにWiMAXを利用できる。申し込み開始から使えるようになるまでのトータルの時間は10分程度といったところだ。

 ポイントは、申し込み時に発行された受付番号をきちんと控えておくことだ。「UQ 1 Day」では、最後の利用から30日以内であれば、同じ申し込み情報を使って再び「UQ 1 Day」を購入することができる(申し込みから24時間が過ぎると、ユーティリティを使って接続しても統合ポータル以外にはつながらない)。この際、初回に発行された受付番号をログインIDとして利用するため、忘れないようにPCのどこかに保存しておくと良いだろう。

 ちなみに「UQ Flat」など、UQ Comのサービスをすでに契約しているユーザーの場合、同じ氏名で新規契約はできないので、既存のサービスに「UQ 1 Day」を追加することになる。

 もちろん、新たに「UQ 1 Day」を追加するのではなく、「UQ Flat」に追加機器オプションで追加した方が効率的だが、機器追加オプションは1契約につき合計3台までの機器しか登録できない。利用頻度の高い機器は機器追加オプションで、たまにしか使わない機器は「UQ 1 Day」でと使い分けるという手もあるだろう。


利用方法は簡単。まずはじめにユーティリティでWiMAXを有効にし、ネットワークを検索するUQ WiMAXを発見後、接続すると自動的に統合ポータルが表示される必要な情報を入力してサインアップ

サービスを選択申し込み完了。機器に情報が書き込まれるまでしばらく待てば接続可能になる24時間が経過すると接続できなくなる。再び接続する場合はUQのページから時間を購入する。ログインには受付番号を利用する

他のサービスとの併用にも最適

 以上、「VAIO X」のWiMAX通信モジュール搭載モデルを利用し、「UQ 1 Day」を実際に利用してみたが、かなり手軽に使えるサービスとなっており、これならWiMAXを搭載した機器が身近にたくさんあっても、使いたい時に、使いたい機器だけ契約できるので、費用を抑えることができそうだ。

 場合によっては、新たに加わった「UQ Step」をメインの契約にしておき、データ量が多くなりそうな時だけ、「UQ 1 Day」のサービスを追加して利用するという手もある。また、「UQ 1 Day」であれば、3Gサービスなどの他のサービスとの併用も効果的だろう。

 サービスエリアの広い3Gモバイルルーターなどを普段利用し、大量のデータ通信が必要なときや速度が欲しいというときだけ、WiMAXを「UQ 1 Day」で契約するというのも悪くない使い方と言えそうだ。


関連情報



2010/1/5 11:07


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。