第457回:低料金で使える下り最大42Mbpsのモバイル通信@nifty EMOBILE G4+Pocket WiFi GP02


 ニフティが、イー・モバイルの「EMOBILE G4」を利用した高速ワイヤレス通信サービス「@nifty EMOBILE G4」の提供を開始した。下り最大42Mbpsの通信が可能な「Pocket WiFi GP2」と定額にねんプランとの組み合わせで月額3000円強で高速なモバイル通信環境が利用可能なサービスだ。実際にサービスを利用してみたので、使用感などをご紹介しよう。

ニフティがサービス提供を開始した「@nifty EMOBILE 4G」。42Mbpsの通信サービスを3217.2円(@nifty会員)から利用できるキャンペーン期間中に「@nifty EMOBILE G4」へ加入すると、1円で入手できるモバイルルータ「Pocket WiFi GP02」

 

速くて、安くて、使えるモバイル通信環境が欲しい

 PCやタブレット、ゲーム機など、さまざまな機器を外出先でも快適にインターネットに接続したい。とはいえ、料金的には、携帯電話利用料に加えてモバイル回線の利用料を新たに支払うことになるので、なるべく安く利用できればありがたいが……そう考えている人も少なくないことだろう。

 スマートフォンの普及によって、端末からインターネットを利用し、メールやスケジュール、各種SNSなど、さまざまなサービスが利用可能になってきたが、コストを考えると、PCやタブレット、ゲーム機など、すべての端末に個別に通信環境を用意するわけにはいかない。

 そこで、以前に増して注目が集まっているのがモバイルルーターだ。ここ数年で、EMOBILE G4(下り42Mbps/上り5.8Mbps)やWiMAX(下り40Mbps/上り10Mbps)、Xi(下り37.5Mbps/上り12.5Mbps、一部屋内下り75Mbps/上り25Mbps)など、下りで40Mbps前後を実現する高速なモバイルブロードバンドサービスが数々登場してきたうえ、これらのサービスに対応した高性能なモバイルルーターのラインナップも増えてきた。

 しかも、このような競争の激化によって、キャンペーンなどによる低価格化も進んでおり、購入時にかかる端末の費用的な負担がほとんどなくなったり、契約形態によっては月額料金も3000円台前半にまで下がってきている。

 これまで、メインの携帯電話やスマートフォンに加えて、さらにモバイルルーターを用意するとなると、トータルの月額の通信費が1万円を超えることも珍しくなかったが、最近では、モバイルブロードバンドのみで3000円台、携帯電話やスマートフォンと合わせても1万円を切るレベルにまで落ちてきたというわけだ。

 中でも、現状もっともインパクトのあるサービスを提供しているのが、老舗ISPであるニフティだ。ニフティが9月1日から提供を開始した「@nifty EMOBILE G4」は、イー・モバイルのDC-HSDPA方式を採用した下り最大42Mbps、上り最大5.8Mbps(HSUPA)の高速通信が可能なサービスだが、サービス提供開始記念のキャンペーン価格は、なかなか魅力的な価格設定がなされている。

 具体的には、キャンペーン中にサービスに加入すると、販売価格3万9580円のPocket WiFi GP02の価格がわずか1円となるうえ、さらに「定額にねん」プランの月額料金も、既存の@niftyの会員は3217.2円、@nifty EMOBILE G4のみ利用の場合は3479.7円(機器到着月無料+2カ月目以降24カ月間)となる。

 本サービスでは、プロトコル制限がかけられており、P2Pプロトコルやオンラインゲーム、さらにはIP SecやPPTPなどのVPN通信が利用できないというデメリットはあるものの、本家イー・モバイルの料金(Pocket WiFi GP02利用時の初期費用が4980円、月額料金が高速モバイルキャンペーンによって3880円)よりも安い価格で利用できるのは魅力的だ。

 最近では、MVNOによって低価格なモバイルブロードバンドサービスを提供する企業も増えてきているが、ニフティのような信頼性の高い大手ISPによるサービスが、この価格でモバイルブロードバンドサービスを提供し始めたことは、業界的にも大いに注目されるところだ。

 

使いやすさが向上したPocket WiFi GP02

 実際に利用してみると、端末の完成度、速度、エリアなど、なかなかバランスの取れたサービスになっている印象だ。

 まず、端末となるPocket WiFi GP02だが、従来のPocketWiFiと比べると若干サイズが大きくなったものの(幅約56×高さ102×幅15.5mm)、シンプルで質感も高い製品となっている。上下のラウンドがゆるやかになった影響か、従来モデルに比べて若干スクウェアになり、カラーも従来のブラックとシルバーのツートンから、ブラック(一部グレー系のメタリック)に変更されたが、高級感があり、悪くない印象のデザインだ。

正面
背面
斜め

 重量は110gと100gを僅かにオーバーするが、持った感じは軽量で、ポケットなどに入れておいてもまったく気にならない。最近では、電力を多く消費する次世代通信サービスに対応するためか、大型バッテリーの採用によって本体サイズが大きなモバイルルーターが増えてきているが、本製品は42Mbpsという高速なサービスに対応しているわりには比較的コンパクトなサイズに収まっていると言って良いだろう。

 では、バッテリー容量が少ないのかというとそうではない。本体背面のカバーを開けると姿を現すバッテリーは、コンパクトながら2200mAh(8.2Wh)の容量となっており、カタログスペック上の連続通信時間は4.5時間となっている。

2200mAh(8.2Wh)のバッテリーを内蔵。コンパクトなサイズにうまくまとめられている

 実際に、無線LAN接続したPCから一定間隔おきにPingとHTTPGETを繰り返すベンチマークテストを実行してみたところ、17:33から計測を開始し、バッテリーがなくなる21:36まで4時間3分ほどの実動を確認した。通信環境やテスト方法によって速度は変わる可能性はあるが、42Mbpsという高速な通信を実現するモバイルルーターとしては立派な結果だ。

 もちろん、通常の利用で連続で通信し続けることはほとんどないうえ、本製品には10分間通信がないとインターネット接続や無線LANが自動的にオフになるため、実質的にはさらに長い時間の利用が可能だ。通勤通学の往復、外出時の打ち合わせなどであれば、十分な動作が可能だろう。

 使いやすさについては、かなり良い印象だ。初回の電源オン時の起動時間は若干かかるものの、液晶画面が搭載されており、電波状態や電池残量などを手軽に確認できるようになっている。無線LANに関しても、IEEE802.11b/g/n(nは最大72.2Mbpsまで)に対応しているうえ、WPSへの対応によって、WPS対応機器を利用している場合はボタンを押すだけで簡単に機器を接続することが可能だ。

 なお、無線LANのセキュリティは標準ではWEPに設定されており、取扱説明書でも手動での接続方法が紹介されているが、WPSボタンを10秒押すことでセキュリティがWPAに変更され、WPSでの接続が可能になる。WEPのまま利用することもできるが、接続の手間や安全性などを考慮すると、WPSでの接続に切り替えておいた方がいいだろう。

液晶でバッテリー残量や電波状況を確認できる

 

10Mbpsオーバーの通信が可能

 気になる通信速度だが、環境に左右される部分は大きいものの、ハマれば相当に速い。

 実際、東京西寄りの筆者宅でテストしてみたところ、最大で下り10Mbps、上り800Kbpsほどで通信できた。もちろん速度は、テストする場所によって異なり、電波が入りにくいと思われる場所では3~5Mbps程度になってしまうこともあった。

筆者宅でのテストの結果。テストする部屋にも依るが、電波状況の良い場所を選べば屋内でも10Mbps以上で通信できる

 しかしながら、コンスタントに3~5Mbpsの速度が可能となると、Webなどを閲覧している感覚はほぼ有線と変わらない印象となるうえ、映像配信サービスなどを利用しても途切れなく快適に映像を視聴することができる。

 ここまでの速度が実現できるのであれば、確かにひとり暮らしなどではこれだけで十分という印象だ。モバイルブロードバンドと言っても、家庭用の固定回線の代わりとして十分に使えるだろう。

 屋外の場合も状況としてはほぼ同じだ。環境によっては20Mbps近くの速度をマークできることもあるようだが、筆者がテストしたところ、新宿南口で5.8Mbps前後、千代田区三番町で10.34Mbpsとなった。

新宿南口でのテスト結果千代田区三番町近辺でのテスト結果

 DC-HSDPAは、DC(Dual cell)という名の通り、通信帯域を二重化する倍速通信となるため、これが適用されるかどうがで速度が変化する。今回のテストは、平日の午後一番という時間帯にテストしたため、アイドルタイムを狙って速度を計測すれば、さらに高速な結果も得られることだろう。

 それにしても、エリア的には、ほとんど意識せずに使えることに驚いた。高速な通信サービスの場合、サービス開始からしばらくの間は、なかなかサービスエリアが拡がらず、高い速度のメリットを享受できる場所が限られる場合があるが、本サービスではすでに比較的広いエリアで高速な通信が可能となっている。

 もちろん、全国どこでもというわけにはいかず、現状、EMOBILE G4に対応した42Mbpsのエリアは主要な都市部のみとなっているが、関東であれば、東京(西部の一部を除く)、神奈川、埼玉、千葉県西部などで利用可能になっており、以外に広いエリアで使えるようになっており、都市部で生活している場合は問題なく利用可能だ。

 前述したように、屋内での通信状況も良好で、建物の中などでも通信できるケースが多い。地下鉄などの移動中などを除いて、ほぼ利用場所には困らないという印象だ。

通信エリアはEMOBILEのサイトや@niftyの提供エリアページから確認できる。紫色の部分が42Mbpsで通信可能なエリア

 

NAS機能などの付加機能も搭載

 このほか、ユニークな機能として、背面カバーの内側にあるスロットに装着したmicroSDHCカードを接続機器で共有できる簡易NAS機能も搭載されている。

 設定画面でmicroSDHCカードの利用方法をHTTP NASモードに切り替えると、無線LANで接続したPCやタブレット、スマートフォンなどから、ブラウザを利用してmicroSDHCカード内のデータにアクセスできるようになる。

 言わば、ポータブルサーバーとでもいった機能で、外出先でも見たい文書を保存しておいたり、音楽や映像などスマートフォンに保存しておくには容量が大きなデータをこちらに保存しておくといった使い方ができる。単なる通信機器だけでなく、外部ストレージとしても使えるのも大きな魅力だろう。

microSDメモリカードスロットを搭載HTTP NASモードに変更することでブラウザからメモリカード内のデータにアクセスできる

 このように、ニフティがサービスを開始した「@nifty EMOBILE 4G」、そしてこのサービスで利用可能なモバイルルーター「Pocket WiFi GP02」を実際に試してみたが、この価格で、これだけ高速なサービスが利用できるのであれば、サブ回線として持っておくのは悪くない選択だと感じた。

 もちろん、豊富なサービスを提供するニフティのサービスとなっているため、5GBまでのメールボックスや、スパムメールブロックや迷惑メールフォルダー機能、ココログべーシンク(ブログ)サービスも無料で利用できるうえ、オプションでセキュリティサービスの「常時安全セキュリティ24(月額525円)」なども利用できる。

 また、Pocket WiFi GP02の接続方法だけでなく、パソコンやインターネットに関する相談ができるサポートサービス「@niftyまかせて365」なども利用できるので(電話や訪問サポートは有料)、はじめてインターネットを利用するようなユーザーのメイン回線として利用することも十分に可能だ。

 単に速く、安いだけでなく、ハイエンドユーザーから初心者まで、誰もが便利に、そして安心して使えることこそ、「@nifty EMOBILE 4G」の特徴と言えそうだ。


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2011/9/13 00:00


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。