清水理史の「イニシャルB」
指紋認証でWindows 10に“ご挨拶” 2種類の指紋認証リーダーでWindows Helloを試す
(2015/7/6 06:00)
Windows 10の注目の機能の1つとなっている生体認証機能の「Windows Hello」。本来であれば、顔や虹彩を使って認証をかけたいところだが、今回は、より手軽な指紋認証で試してみた。
7月18日追記
- 7月15日に配布が開始されたBuild 10240にてテストしたところ、上海問屋の「DN-33647」のドライバが自動的にインストールされなくなりました。
- 自己責任であれば、ES603を採用したノートパソコン(AcerのTravelmate P466Mなど)
- のドライバを流用することで動作させることは可能ですが、現時点では確実に動作するサンワサプライの「FP-RD2」の利用を推奨します。
Windows Helloの現実
ようやく見つけた。
指紋認証によるログイン自体はWindows 8.1でもサポートされていたのに、いざ対応デバイスを入手しようとすると、意外に見当たらない。
かつては、いくつかのベンダーからUSB接続の指紋認証リーダーが発売されていたものだが、OSが64bit化されるようになってからは、すっかり下火になってしまったようで、特にWindows 8.1以降のOS標準機能がサポートするWBF(Windows Biometric Framework)に対応した製品ともなると、海外製品ではいくつか見つけられるものの、国内ではめったに見かけない状況となっていた。
そんな中、入手したのが、今回採り上げる2製品。サンワサプライの「FP-RD2」と上海問屋の「DN-33647」だ。FP-RD2はamazon.co.jpでの実売価格が7000円前後(標準価格は1万1664円)、DN-33647は直販サイトでの価格が1387円とかなり開きがあるが、どちらもWindows 8.1の64bitにも対応するUSB接続の指紋認証リーダーだ。これで、Windows 10 IPの最新ビルド(Build 10162)を使って、Windows Helloの機能を試すことができる。
Windows 10の新機能として注目されている「Windows Hello」、およびアプリ側の認証基盤の「Passport」は、従来のパスワードに代わる生体認証機能だ。
どちらかというと、注目されているのは、高性能なカメラを利用して目の虹彩や顔による認証で、PCの前に座ればカメラでユーザーが認識され、自動的にサインインできるという画期的な機能となっている。
どうせならカメラで試したいところだが、これにはIntel RealSenseテクノロジーに対応したカメラやMicrosoft Kinnect v2などが必要になるうえ、ソフトウェア的にもまだ完全に対応していない状況となっている。
というわけで、現実的な選択肢となるのが、指紋認証リーダーを使った方法というわけだ。
つなぐだけでWindows Helloの設定が可能に
実際に試してみたところ、現状のBuild 10130では、PINを設定済みなのにPINの設定が要求される場合があるなど、若干、動作が不安定な部分もあったが、最新の10162を含む10130より後のBuildでは、指紋を使って快適にWindows 10にサインインできるようになった。
DN-33647、FP-RD2のいずれもドライバと各種ユーティリティが付属しているのだが、これらは利用せずに接続するだけですぐに認識される。デバイスマネージャを確認してみると、「生体認証デバイス」という項目が追加され、そこにDN-33647は「EgisTec ES603 Swipe Fingerprint Sensor」として、FP-RD2は「Validity Sensors(WBF) VFS300」として認識された。
Windowsへのサインインなど、Windowsの標準機能を使って指紋認証するには、このようにWBF対応デバイスとして認識されることが重要だ。例えば、DN-33647の場合、付属のCDに収録されているドライバを使って認識させると、「設定」の「アカウント」から「サインインオプション」を開いても、「Windows Hello」の部分に何もボタンが表示されない。必ずWBF対応のドライバが必要だ。
なお、今回は汎用的なUSB接続の指紋認証リーダーを利用したが、企業向けのノートPCなど、指紋認証リーダーを内蔵しているPCでも、同様にWBF対応ドライバを利用すればWindows Helloを利用できるはずだ。
実際に指紋認証でサインインするには、まずPINの設定が必要になる。サインインオプションの画面で、「暗証番号(PIN)」の設定を開始し、アカウントのパスワードの代わりに4けたのPINでサインインできるようにしておく。
Windows 10ではセットアップ時にPINの利用を勧められるが、このPINによるサインインは、Windows Helloを使うかどうかにかかわらず有効にしておくことをおすすめする。
Microsoftアカウントは、OneDriveなどどこからでもアクセス可能なクラウドサービスに関連付けられているため、マルウェアなどによって盗聴されたり、モバイル端末などで入力するところを第三者に目撃されたりすると、インターネットに接続可能な端末であれば、どこからでもアクセスできてしまう。
これに対して、PINはローカルでしか有効ではない。このため、マルウェアによってPINの入力が盗聴されたり、たまたま電車内でPINの入力を目撃されたとしても、それを使ってそのままMicrosoftアカウントでサインインされることはない。PINはあくまでもその端末上でしか有効ではないからだ。ぜひ有効にしておこう。
さて、PINでサインインできるように設定したら、いよいよWindows Helloの設定となる。「セットアップ」ボタンをクリックすると、「Windowsのご挨拶のセットアップ」というInsider Previewらしいタイトルの画面が表示されるので、画面の指示に従ってリーダーに4回ほど指紋を読み取らせればいい。設定は、たったこれだけで完了だ。
ちなみに、FT-RD2は、さすがに指紋認証リーダーとしては高価な製品だけあって、なかなか使い心地がいい。
適度に本体の重量があるので、USBケーブルの取り回しに振り回されることがあまりなく据わりがいい。また、本体背面にゴムの滑り止めが付けられているので、指紋を読み取らせるために指で表面をなぞっても、本体がほとんどブレない。読み取りの精度も高く、あまり意識せずに指でなぞっても読み取りミスなどは発生しない。製品としての完成度は高い。
一方、DN-33647は、指紋の読み取り精度は問題ないものの、本体が軽く、底面に滑り止めもないので、若干、扱いづらい。価格が安いので、これをおすすめしたいが、実際に使う場合は底面に滑り止めなどを張り付けて利用するといいだろう。
Windows 10に指紋でサインインする
実際にサインインするには何の操作もいらない。
PCの電源をオンにし、ロック画面が表示されたら、FP-RD2の表面を登録した指でなぞればいい。
ロック画面に、一瞬、「こんにちは、xxxxさん」と表示され、すぐにサインインが実行され、デスクトップが表示される。これは、実際に使ってみると、予想以上に快適だ。
指紋でさえ、こんなに楽なのだから、カメラによる虹彩認証や顔認証は、もっと快適なのだろうと想像してしまう。デスクの前に座って、少しPCのカメラに顔を向ければ、サッとデスクトップが表示されるようになるのだろう。
カメラを使った認証は、すでにXbox Oneで実用化されているので(Kinnectでユーザーを認識して自動的にMicrosoftアカウントでサインインできる)、PC側のカメラ環境さえ整えば、このようなサインイン方法の普及も早そうだ。
なお、指紋をユーザーごとに設定しておけば、ユーザーの切り替えも実にスムーズだ。ロック画面、もしくは画面スリープ中に、指紋を読み取らせれば、そのユーザーで即座にサインインしてユーザーが自動的に切り替わる。
家族で1台のPCを共有するケースで威力を発揮しそうだが、テスト用に複数のアカウントを使い分けているようなケースでは「Windows+L」に続けて指紋を読み取らせるだけで、サッとアカウントを切り替えられるので非常に便利だ。
Passportが普及すればもっと便利に
以上、上海問屋の「DN-33647」とサンワサプライの「FP-RD2」を使って、Windows 10のWindows Helloを試してみたが、指紋でも十分ではないかというくらいサインインが楽になった。
もちろん、この機能が本当の実力を発揮するのは、アプリケーションやWebアプリエーションがPassportに対応することで、業務アプリやWebサービスの利用のすべてに生体認証を使えるようになることだが、これはいつものようにデバイスの普及が先か、アプリの対応が先かという議論になるので、もう少し、時間がかかりそうだ。
対応する指紋認証リーダーさえ入手すれば、すぐに試すことができるので、一度、体験してみることをおすすめしたいところだ。