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屋外配線の悩みを解決するTP-Link「SG2005P-PD」、プルボックスなしで設置でき、PoEで給電・配電も!

 ティーピーリンクジャパン(TP-Link)から、屋外対応のPoEスイッチ「SG2005P-PD」が発売された。防水、防塵、UV耐性の筐体により、屋外にそのまま設置可能となっており、PoE++のInポート×1&PoE+のOutポート×4の全5ポートが1Gbpsに対応している。これで市場想定価格1万6900円はリーズナブルだ。実際に製品を試してみた。

ティーピーリンクジャパンの「SG2005P-PD」。リーズナブルな価格ながら盛りだくさんのPoEスイッチとなっている

◆SG2005P-PDのイチ押し!
4ポートを備え最大64W供給可能、多くの場面にこれ1台で対応できる

プルボックスは不要、簡単に屋外配線ができあがる

 ティーピーリンクジャパンの「SG2005P-PD」は、手軽に使える屋外用のPoEスイッチだ。

 工場、キャンプ場、農場、駐車場、テーマパークなど、屋外にアクセスポイントや監視カメラを設置したいケースはよくあるが、こうしたケースで最大4台までの機器にネットワーク通信と電力の両方を配給することができる。

 屋外配線の方式として、昔からよく行われているのは、配線を収めるプルボックスにPoEスイッチを格納し、そこから配線するものだ。ところが本製品は、筐体がIP55の防水防塵性、UV耐性、-40~60°Cの動作温度、4KVの雷保護と、さまざまな屋外対策が施されていることから、過酷な条件下でもプルボックスなしでそのまま設置可能になっている。

 個人宅でも、さまざまな方向に監視カメラを設置したい場合に便利で、本製品さえあれば、屋内からの配線は1本のままで、屋外に最大4台までのカメラを設置することができる。

正面
背面
底面

 対応するPoEの規格は、給電用のInポートがIEEE 802.3af/at/btで、4つあるOutポートがIEEE 802.3af/atとなる。

 PoEは、いろいろな呼び方が入り乱れて分かりにくくなる場合があるので、簡単に整理しておく。簡単に言えば、規格が上がるほど利用できる電力が大きくなると考えればいい。

IEEE(標準化された規格)名称タイプ最大電力とクラス
IEEE 802.3afPoEType1最大15.4W(Class3)
IEEE 802.3atPoE+Type2最大30W(Class4)
IEEE 802.3btPoE++Type3最大60W(Class6)
IEEE 802.3btPoE++Type4最大90W(Class8)

 今回のSG2005P-PDは、自身に電力を供給するためのInポートがPoE++、他の機器に電力を供給するOutポートがPoE+に対応しており、Inポート側の電力によってOut側に供給できる最大電力(パワーバジェット)が決まる。具体的には、以下のようになる。

Inポートの電力Outポート×4の合計電力
PoE++ 90W64W
PoE++ 60W44W
PoE+ 30W19W
PoE 15.4W6W

 例えば、同社のアクセスポイントの場合、屋外用のWi-Fi 6対応モデル「EAP650-Outdoor」(2402+574Mbps)が14.7W、5MP屋外用バレット型フルカラーカメラ「VIGI C350」が10.5Wとなる。

 仮にAP1台、カメラ2台を接続した場合は、14.7W+10.5W×2台=35.7Wとなるので、PoE++(Type3 60W)で給電すれば、問題なく動作させられる計算になる。

余裕を持って使える容量、距離の延長用にも

 実際に接続してみよう。

 まずは設置だが、本製品は固定用の台座と長いタイラップが同梱されており、これを利用して簡単に支柱などに固定することができる。もちろんねじ止めも可能だが、いずれの方法でも、手軽に設置可能だ。

 設置が完了したら、給電側を接続する。本体底面の5つのポートのうち、5番目のポートが給電用のInポートとなっているので、ここにPoEインジェクターを使って給電する。

 今回はアクセスポイントを1台しか接続しないため、供給する電力はPoE+でもかまわないが、後々、複数台接続することを想定してPoE++対応のインジェクターを使用している。

 同社はインジェクターのラインアップも豊富で、2.5Gbps対応の「TL-PoE260S」(PoE+)などもあるが、今回はPoE++対応で最大60W給電可能な「TL-POE170S」を利用した。前述したように、SG2005P-PDは60W給電の場合、最大44Wの供給が可能なので、アクセスポイントに加えて、さらにカメラを2台程度接続できるだろう。

 SG2005P-PDに給電できたら、アクセスポイントやカメラなどの機器を4つあるOutポートに接続すればいい。それぞれの機器に応じた電力は自動的に構成されるので、単につなぐだけでいい。

接続例。PoE++対応インジェクターから給電し、SG2005P-PD経由でアクセスポイントに給電できる

 実際に配線する場合は、インジェクターを屋内に設置し、そのケーブルを屋外へと配線してSG2005P-PDに接続。屋外に設置したSG2005P-PDから、アクセスポイントやカメラに接続することになる。

 複数台の機器を接続する場合でも、屋内から屋外のケーブルが1本で済むのがメリットだ。

 なお、本製品はPoE機器の配線距離を延長するためにも利用できる。通常、PoEの給電距離は100m(ケーブルによっては60~70m)だが、キャンプ場や駐車場など広いエリアの中央などに機器を設置したい場合、距離が足りなくなる可能性がある。

 しかしながら、本製品を送電の中継として利用すれば、インジェクターからSG2005P-PDまで100m、SG2005P-PDから機器まで100mと、最大200mまで配線可能になる。複数台の機器を接続できるだけでなく、距離を稼ぐことができるのも本製品の魅力と言えるだろう。

 もちろん、コントローラーの「OC200」などと組み合わせることで集中管理が可能で、スマートフォンのOmadaアプリやPCのウェブブラウザーからスイッチの状況を確認できる。ポートの電力をチェックしたり、PoE Recoveryで接続されている機器を遠隔操作で電源を入れ直したりすることもできる。

 基本的には法人向け製品となるが、市場想定価格も1万6900円となっており、手に入れやすい。LANケーブルの配線処理が課題だが、これならDIYで屋外アクセスポイントやカメラの設置も十分可能だろう。

コントローラーからポートの電力を確認
電源を入れ直すこともできる
清水 理史

製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 11」ほか多数の著書がある。