週刊Slack情報局

わたし、「ハフポスト」の副編集長ですが定時で帰ります。育休、時短勤務、リモートワーク――多様な働き方を支えるSlack

一般企業でも利用が広がっているビジネスコミュニケーションツール「Slack」。Slack Technologiesの日本法人であるSlack Japanはこのツールのことを“ビジネスコラボレーションハブ”と表現しており、あらゆるコミュニケーションやツールを一元化するものと位置付けている。本連載「週刊Slack情報局」では、その新機能・アップデート内容などを中心にSlackに関する情報をできるだけ毎週お届けしていく。

 Slackのユーザー導入事例を紹介するイベント「Why Slack!」のレポートで、前回は文藝春秋の事例を紹介した。今回は、ウェブ専門のニュースメディアである「ハフィントン・ポスト・ジャパン」(以下、ハフポスト)の事例を紹介する。

 登壇したのは、「ハフポスト日本版」副編集長の泉谷由梨子氏。同氏は「Slackはリモートワーク、育休、時短など多様な働き方をする社員をつなげてくれる絆」と表現する。

「ハフポスト日本版」副編集長の泉谷由梨子氏

育休や時短勤務は「甘え」ですか?

 ハフポストは米国で2005年に創設され、現在は15の国と地域で展開するグローバルメディアだ。日本版は2013年に朝日新聞社をパートナーとしてスタートした。ハフポストが扱うテーマは政治、経済から文化、ライフスタイルまで幅広く、SNSを介した読者が多いのが特徴だ。泉谷氏は、同メディアを説明するのに「世代」というキーワードを挙げた。

 「ハフポストはニュースメディアとしては珍しく女性読者も多いのが特徴です。私を含めて多くの従業員が読者と同世代で、『わたしたち目線』の記事を作っていこうじゃないかと。わたしたちの世代は、会社以外にも子育てや介護などいろいろな家庭の仕事を抱えています。」(泉谷氏)

「ハフポスト日本版」の読者像。SNSでの情報収集に積極的で、ニュースメディアとしては珍しく男女が拮抗している

 泉谷氏は、新卒で毎日新聞社に入社して記者として勤務したあと、シンガポールで出版社やNGOの広報に携わり、帰国してハフポストに入社した。2018年に長女の出産で育休を取得して、時短勤務として復職中に副編集長に就任。副編集長になった後も時短勤務を継続した。同社ではリモートワーク、週休3日勤務、時短勤務などさまざまな働き方をしている従業員がいるという。

 「家族が病気になったり、子どもが熱を出して保育園から呼び出しがかかったり。人によっては『そんなのは甘えだ! 記者ならバリバリ働いて当たり前だろ!』と怒られるのかもしれませんが、残念ながらそれでは、弊社のような規模のメディアでは優秀な人材は獲得できません。」(泉谷氏)

さまざまな家庭の事情と仕事の両立を実現するのは大変

企画会議も原稿チェックも全部Slackで

 泉谷氏は今も子育ての真っ最中。春に放送されたTBSのドラマにかけて「わたし、副編集長ですが定時で帰ります」と笑顔を見せる。記者や編集者というと終電までデスクに張り付いているイメージを持つ人も多いだろう。泉谷氏は自身の一日を振り返りながら「相談事や原稿のやりとりは、ほぼすべてSlackで行われる」と説明する。

泉谷氏の一日。会社にいない時間も最大限活用している

 まず目覚めたら、寝床でSlackをチェックする。Slackに他社ニュースサイトのフィードを流しているので、気になるトピックをネタ出し用のチャンネルに共有。そしてSlackに上がってくる同僚の勤怠報告をチェックしてその日の予定を決める。SlackとGoogle カレンダーを連携しているので、同僚の予定もSlackで確認できる。

 そして取材のアイデアをSlackに出し続けて、手が挙がったらその場でスレッドを立てて予定を調整する。外部のライターや代理店の担当者ともSlackでやりとりをして、細かい会議をすることなくその場で取材班と企画が完成するという。

 定時で帰宅し、子どもを寝かしつけたあとにSlackで原稿をチェックする。新聞社時代は原稿が書き上がるのをデスクが会社で待っていたが、Slackを使えば場所の制約はなくなり、会社に残る必要はない。

 「『ママタイム』と呼ばれる時間は電話やPC作業は困難で、スマホを触るくらいしかできません。『夜も働いてるじゃないか』と感じる人がいるかもしれませんが、空き時間や細切れの時間を使ってピンポイントで対応できるなら、私はそれが一番働きやすいんです。」(泉谷氏)

Slackでオフィスの「空気」を共有できる

 泉谷氏は「Slackだとネタ出しから企画、取材を始めるまでのスピードが速い」と説明する。興味のあることや雑談からスレッドが立ち「やりたい」と手が挙がり担当が決まるまで、従来の企画会議とは全くスピード感が異なるという。同氏がさらに言及したのが、オフィスの「空気」についてだ。

 「育休やリモートワークで長期間離脱すると、オフィスの“空気感”が分からなくなってしまうことがあります。それが復帰時の障害になったりもする。でもSlackなら離れていてもオフィスの空気を共有できるから、復帰するときもスムーズです。」(泉谷氏)

 泉谷氏は「働き方改革は、ただ早く帰るというだけではないはず」と指摘する。「テクノロジーを活用することで、家庭の事情があったり、制限があったりする社員でもフレキシブルかつ最大限に力を発揮して、会社を成長させる。弊社はそれがSlackと合っていました」と語り、セミナーを終えた。

西 倫英

インプレスで書籍、ムック、Webメディアの編集者として勤務後、独立。得意分野はデジタルマーケティングとモバイルデバイス。個人的な興味はキノコとVR。