週刊Slack情報局

Slackが二段階認証やモバイルデバイスの管理など、企業向けの管理機能を強化

一般企業でも利用が広がっているビジネスコミュニケーションツール「Slack」。Slack Technologiesの日本法人であるSlack Japanはこのツールのことを“ビジネスコラボレーションハブ”と表現しており、あらゆるコミュニケーションやツールを一元化するものと位置付けている。本連載「週刊Slack情報局」では、その新機能・アップデート内容などを中心にSlackに関する情報をできるだけ毎週お届けしていく。

 Slack Technologiesは今月、エンタープライズ向けの新しい管理機能をいくつかリリースした。ここでは2回に分かれて発表された内容をまとめて紹介していく。

二段階認証やモバイルデバイスの管理など、セキュリティを高める3つの新機能

 同社は8月7日、Enterprise Gridプラン向けに3つのセキュリティ機能を追加した。1つめはモバイルでの二段階認証の管理機能だ。これにより管理者は、従業員がパスワードでログインしたあとに、Face IDやTouch IDなどの生体認証やアプリパスワードなどを追加で要求できるようになる。再認証を要求する時間をカスタマイズすることも可能だ。

 2つめはドメインのホワイトリスト作成ツール。これは企業のネットワーク内でアクセス可能なワークスペースを制限する機能で、誤って管理対象外のワークスペースに機密情報が共有されることを防止できる。メールの場合は宛先を間違えると社外の相手にも情報が送られてしまうが、Slackなら人為的ミスもシステムで防止できるわけだ。この機能はEnterprise Gridプランだけでなく、プラスプランでも利用できる。

 3つめはモバイルデバイスでのファイルのダウンロードとメッセージのコピーを制限する機能だ。例えば、銀行業界の企業では、モバイルデバイスから機密情報を閲覧すること自体は可能だが、管理対象外のデバイスにローカル保存することは制限するといった目的でこの機能を利用しているという。

 今後、数週間以内には、デバイスの紛失や盗難の際に、特定のユーザーに関連付けられたセッションをリモートで消去できる「セッション管理ツール」も提供される。さらに2019年末までには、Slackで共有されたリンクを管理された特定のブラウザーのみで開くよう制御できる機能、ジェイルブレイクされたデバイスの検出機能、アプリの強制アップグレード機能なども順次提供される予定だ。

アナウンス用のチャンネル管理機能とワークスペースの管理を効率化するAPIを追加

 8月15日には新機能「アナウンスチャンネル」が追加された。従来はデフォルトの「#general」チャンネルで投稿権限を制限するオプションが提供されていたが、この新機能により、どのチャンネルでも投稿権限をきめ細かく設定できるようになり、重要度が高いアナウンス用のチャンネルを読みやすい状態に保つことが可能になる。アナウンスチャンネルはEnterprise Gridプランとプラスプランで利用可能だ。

投稿権限がないユーザーがそのチャンネルを表示すると「読み取り専用」と表示される。新規投稿はできないが、スレッドへの返信や絵文字のリアクションは可能

 また、ワークスペースの作成や設定を効率化する管理者向けの新しいAPIも間もなく提供される。新しいワークスペースを作成して名前や説明を設定し、メンバーを割り当てて、アプリの承認リクエストを確認して……というのはSlack管理者の一般的なワークフローだが、大規模な組織の場合、全ての作業を手動でやっていては膨大な手間になる。

 新しいAPIを使えば、ウェブフォームに情報を入力することでそれらの設定や管理を自動化できるようになる。アプリの承認リクエストも、組織内にある全てのワークスペースをまたいで一元管理できるようになるので管理者の負担は軽くなるだろう。Slack Technologiesは、ワークスペースの作成と設定、コンテンツ、アプリなどを自動設定できるよう将来的にスクリプト化を実現するとしている。

 ここまでお伝えしてきたように、Slackは企業の管理者向けの機能を続々と追加しており、数千人、あるいはそれ以上の規模でSlackを活用する際に求められるセキュリティや管理機能に注力していることが伺える。Slack Technologiesは9月17日に国内初のカンファレンスイベントの開催も予定している。

西 倫英

インプレスで書籍、ムック、Webメディアの編集者として勤務後、独立。得意分野はデジタルマーケティングとモバイルデバイス。個人的な興味はキノコとVR。