テレワークグッズ・ミニレビュー

第52回

2台のPC間でコピペができるだと!? 多機能トラックボールMX ERGOとFlowの組み合わせがスゴすぎる

ロジクールのトラックボール「MX ERGO」の機能を使い倒してみたい

 さて、前回に引き続いて、ロジクールのトラックボール「MX ERGO」の話である。

 長年使い込んだロジクールの「M570」からMX ERGOに乗り換えたところ、写真で見るより違いが大きくて戸惑ったものの、使い始めればすっかりMX ERGOの使い勝手になじんでしまった、というのは前回お伝えした。

左が新たに購入したMX ERGO、右がこれまで使っていたM570。見た目は似ているが触ってみるとまるで別ものだ

 MX ERGOを使ってみると、どっしりとした安定感と、フィットする滑り止めされた表面、そしてなによりちょうどいい手首の角度と、とかく「手になじむ」という言葉がしっくりくるのだ。

 筆者は車好きで工具マニアでもあるのだが、例えばネプロスのラチェットやPBのドライバーなど、いい工具は手になじむし、壊れれば大けがにもなる工具において、遊びのない高い精度は、安心感を与えてくれる。MX ERGOは、まさにそうした一流工具に通じるものがある。大げさに聞こえるだろうがそれぐらい満足している。

テレワークが定着した昨今、INTERNET Watchの編集部員も、それぞれのテレワーク環境を改善すべく工夫を凝らしている。この連載では、そんなスタッフが実際に使ってオススメできると思ったテレワークグッズのレビューをリレー形式で紹介。今回は、自宅でも外出先でも仕事を快適にするかもしれない高性能トラックボールをレビューする。

意外な効果!! 2台のPCを同時に使えるぞ!!

 トラックボールの基本的な操作自体は、これまでも使っていて慣れたもの。MX ERGOでもその使い勝手は言わずもがなだ。

 加えて今まで使っていたM570よりも、カーソルの操作の精度が向上しているような気がする。前回紹介したように、ボール自体をペリックスのボールに変えていることもあるが、M570よりも遊びが減った感じで、それでいてボールの動きは滑らかなので、写真のレタッチなどでも細かい作業がしやすくなった。MX ERGOにはトラッキングの速度を変えられるプレシジョンモードボタンが用意されているが、筆者の仕事内容だと、ほとんど使うことは無さそうだ。

トラックボールのボールをペリックスのボール「PERIPRO-303」に交換。滑らかさがアップする

 そして予想以上に便利だったのが、EASY-SWITCHボタンの存在だ。要は2台のPCを登録して、それぞれ切り替えて使える機能で、もちろん、自宅ではメインPC、外出時にはサブPCのモバイルノートと、接続するPCを切り替えて使うことができる。

 切り替えができることは見れば分かるが、予想以上なのは、そのボタンの位置とレスポンスの速さだ。ボタンが押しやすい位置にある上に、切り替えも瞬時なので、2台のPCを同時に使う状況でも、パッパッと即座に切り替えができて、めちゃくちゃ便利なのだ。底面に切り替えスイッチがある「M575」だったらこうは行かなかっただろう。

押しやすい位置にあるEASY-SWITCHボタンのおかげで、頻繁に切り替えるのも苦にならない

 メインPCとサブPC、2台のPCを使い分けていると、時々2台ともPCを立ち上げて同時に作業したいシチュエーションが出てくる。たとえばデータや設定の整合性を取りたい時や、Windows Updateのタイミング、あるいは1台で重めの作業をしながら、もう1台でWeb会議を録画しつつ聞くなどなど。

 ただ、これまでだとそれが非常にやりづらかった。トラックボールのつながっていないサブPCのモバイルノートは、トラックポイントで操作するので、手が届きやすいところに置いておきたい。しかし手元にはメインPC用のキーボードもあるし、それをよけても、デスクに置くとメインPCのディスプレイが隠れてしまう。メインPCのディスプレイの横にならべれば良いが、今度は遠くて操作がしづらい。仕方がないので、使う時だけ膝の上に置いて、終わったら横に置いて、と、同時に使うというよりは交互に使っていた、という感じだ。

 ところがMX ERGOだと2台のPCをどちらも操作できるので、サブPCを操作しやすい位置に置いておく必要がなくなった。

 しかも、実際にやってみて気が付いたのだが、こういった時のサブPCの操作は、ファイルを移動するためのドラッグ&ドロップとか、ソフトウェアアップデートの際にボタンを押すなど、概ねの作業がトラックボール操作だけで済んでしまうのだ。

2台のPCをマルチウィンドウのように行き来できる「Flow」がスゴい

 しかもMX ERGOには、2台のPCを同時に使うのにさらに便利な機能がある。それが「Logi Options+」というアプリで使えるようになる「Flow」という機能で、なんと登録した2台のPCの間を自由にカーソル移動できるのだ。

MX ERGOを接続した2台のPCで、かつ同じネットワーク上にあると使えるFlowという機能がスゴい!!

 イメージとしてはマルチディスプレイに似ている。例えばメインPCのディスプレイの右側にサブPCを置いたとして、メインPCのカーソルを画面の右端まで移動させると、サブPCの画面左からカーソルが現れて、サブPCの操作ができるのだ。

 しかもなかなか凝っていて、2台のPCのレイアウトも設定することができる。左右だけでなく上下の配置もできるので、例えば手前のサブPCの画面上端にカーソルを動かすと奥に置いてあるメインPCのディスプレイにカーソルが出て来る、ということもできるわけだ。

イメージはマルチディスプレイと同じで、2台のPCの位置関係も変更できる。写真の状態だと、画面の下にカーソルを移動すると、もう1台のPCの上からカーソルが現れる

 もちろん実際にはマルチディスプレイとは違うので、画面を移動する際に、若干引っかかったような遅れが発生する(これについては、PC2台ともUSBレシーバー接続にするとかなり解消された。下記の動画も参照いただきたい)。さらに、例えばファイルをドラッグ&ドロップしようと思っても、移動するのはカーソルだけなので、ファイルの移動はできない。

 しかしFlowがスゴいところがこの点で、ファイルの移動こそできないものの、テキストや画像などのコピー&ペーストが2台のPC間でできてしまうのだ。

 たかがコピペと思われるかもしれないが、使ってみるとこれがめちゃくちゃ便利すぎる!!

サブPCでWeb会議したいなら、MX ERGO&Flowの組み合わせが最強

 PC2台体制だと、せっかくの資源を有効活用したくなるのがWeb会議だ。

 今はSlackやTrelloなど、部内の連絡用にさまざまなアプリが常駐している。もちろんウェブブラウザーだって常駐で、気が付けばタブがスゴい数になっていることも。そうした負荷の高い状況だと、Web会議ツールが不安定になって、肝心なところで話が聞こえなくなることもある。

 その点、サブPCをWeb会議ツール専用にしてしまえば、そうしたスペック不足の不安は軽減されるわけだ。

 というわけで、これまでにも何度か、メインPCで仕事をしつつ、サブPCでWeb会議に参加したことはあるのだが、実際にやって問題になったのが、Web会議ツールのチャット機能だった。

 たとえば打ち合わせの際に、ウェブサイトの情報を共有したい場合にも、メインPCで開いているサイトのURLを、サブPCのWeb会議ツールのチャットに貼り付けるのはとても大変なのだ。

 あるいは発表会やウェビナーで、資料の置き場所のURLがチャットで伝えられた場合なども同様だ。たった1行のURLをコピペしたいだけなのに、それが別のPCとなると一気にハードルが高くなる。

 そう、Flowを使ってたった1行のコピペができるようになるだけで、2台のPC同時利用は格段に便利になるわけだ。

Flowの設定にある「コピーと貼り付け」をオンにすることで、2台のPC間でコピペができるようになる

 加えてもう1つ、2台のPC同時利用を後押ししてくれるのが、「Logi Options+」による自由度の高いキー割り当てだ。

 これは、MX ERGOが持つボタンの内、6つのボタンに対して、さまざまな機能やショートカットコマンドを割り当てられるというもの。単にキー1つに対して1つの機能を割り当てるだけでなく、ジェスチャーといって、ボタンを押しながらトラックボールを上下左右に動かした場合に、別の機能を作動させることもできる。

 筆者の場合は、ここのジェスチャー操作に「コピー」や「貼り付け」といった機能を割り当てた。こうすることで、サブPCのキーボードに触ることなく、MX ERGOの操作だけでURLをコピーしたり貼り付けたりできるようになる。

カスタムジェスチャーの設定。スクロールホイールを押しながらトラックボールを上下左右に動かすことで4つの操作が行える

 URLだけではない、なにかメッセージを書き込みたいときも、メインPCのテキストエディタなどにテキストを打って、それをサブPCにコピペすればよい。もちろんキーボードも2台切り替えができるモデルにするのがベストだが、Flowを使えば、MX ERGO1台でそれに近い環境が実現できるわけだ。

ロジクールのMX ERGOとFlowの様子(45秒)

 これまで、2台のPC同時利用は、操作しやすい場所の取り合いだったが、MX ERGOがあれば、サブPCの置き場所は自由度が高くなり、活用の機会は増えそうだ。特にWeb会議は常にサブPCに任せれば、マシンスペック不足で途中で止まってしまうようなトラブルも減らせるかもしれない。

かゆいところに手が届く、「Logi Options+」が優れもの

 ちなみに「Logi Options+」はなかなかの優れもので、キーアサインをアプリごとに自動で切り替えることもできる。

 標準でPhotoshop、Premiere Pro、Chrome、Edge、Excel、PowerPoint、Word、Teams、Zoomなどが用意されるが、それ以外にも自分の使っているアプリを登録して設定することがが可能だ。たとえば筆者の場合はLightroomをよく使うので設定している。

 キーの割り当てについては、人によって使うツールも作業内容も異なるので、これがオススメというのは言いづらいが、筆者の場合は、前述のとおり、ジェスチャー操作でコピーやペーストができるようにしたほか、スクリーンショットのためのショートカット(Windows+PrtSC)も割り当てた。また、スクロールホイールを押すだけの操作には「タスクビュー」を。親指あたりにあるプレシジョンモードボタンには「Enter」を割り当てている。

 これで、オンライン発表会中にも、トラックボールの操作だけでスクショが撮れるし、URLなどをコピーして貼り付け、Enterで決定もできるというわけだ。

 また、ZoomやTeamsでは、進む・戻るボタンでマイクのミュートやカメラのオン・オフもできるようになっているので、会議中の電話や来客にも、トラックボール操作ですぐに対応できる。

 これがPhotoshopでは、ホイールスクロールを押しっぱなしでパン操作になるし、プレシジョンモードボタンは精密モードへの切り替えにしている。Lightroomでは、ジェスチャー操作でフラグ立てやクイックコレクションへの追加、ライブラリや現像のモジュール変更などを割り当てている。

Photoshopの設定。スクロールホイールを押しっぱなしにすると手のマークになってパン操作ができる
こちらはLightroom。ジェスチャー操作でフラグ立てやモジュール変更。自動調整などをできるようにしてみた

 ちなみにこうした設定はPCごとに行わなければならないのだが、この点もよくできていて、設定は自動でクラウド上にバックアップされる。そしてほかのPCからもその設定を復元することができるのだ。つまり最初にメインPCで設定をしたら、サブPCの「Logi Options+」からメインPCの設定を復元することで、同じ仕様をコピーできるというわけ。

キーアサインは自動保存され、別のPCで保存したバックアップを読み込むこともできるので、どのPCでも同じ操作感が実現できる

 ジェスチャー操作については、まだ完全に使いこなせているわけではないし、もっといいパターンがあるかもと日々模索中だ。Flowについても、意図せずカーソルが移動してしまうこともあるので、設定を変えてCTRLを押しながらじゃないと移動できないようにした。ちなみにFlow中でもEASY-SWITCHボタンによる切り替えは可能だし、その場合もコピー&ペーストは有効になるので、結構使い勝手は快適だ。

 ということで、2台のPCを使い分けている人には、かなりオススメできるMX ERGOとFlowである。