急遽テレワーク導入!の顛末記
「USB 3.2 Gen 2対応のSSD、接続するケーブルで転送速度に差は出るか?」――急遽テレワークを導入した中小企業の顛末記(139)
自動昇降デスク向けにロングケーブルへの買い替えを検討してみた
2023年4月17日 07:00
テレワークが広まる中で、「電動昇降デスクを購入した」という話をよく耳にするようになった。筆者も最近自宅に導入したのだがそこで問題になるのが“天板を高くしたときに、モニターケーブルなどの長さが足りなくなる”ということだ。
……この記事を書いている時点で、東京都でまん延防止等重点措置が解除されてから389日が過ぎた。
私が勤めている新宿にある中小企業では現在、各スタッフが可能な範囲でリモートによる業務を行っている。その中で、今回は長さが足りなくなったモニターケーブルとUSB延長ケーブルについて、両者をどのように買い替えるべきかを検討してみた。
4月10日(月):HDMIケーブルでもリフレッシュレート144Hzの映像表示は可能か?
IKEAの電動昇降ワークデスクを導入したことで、天板の高さをボタン1つで調整できるようになった。以前から腰痛が気になっていたので、腰に負担を感じたときは、立った状態で仕事をするようにしている。
ただ、ここで1つ問題になったのが、“机の天板を高くすると、長さが足りないケーブルがある”こと。それが、モニターケーブルとUSBの延長ケーブルだ。
このうちモニターケーブルについては、これまでPCとメインモニターをDisplayPort ケーブルでつないでいた。我が家ではデルの31.5型/4K/144Hzゲーミングモニター「G3223Q」をメインモニターとして利用しているが、高fpsなゲームも問題なくプレイできている。
で、このケーブルの代わりになりそうなものを家中から探してみたところ、Premium HDMI規格のもの、Ultra HD規格のもの、スペック不明のノンブランド製品と、3つのHDMIケーブルが見つかった。天板の高さを上げても、長さは十分に足りそうだが、問題はこれで4Kかつ高fpsな映像を映せるかということだ。
そこで、各ケーブルでPCと「G3223Q」をつなぎ、Windowsで「ディスプレイの詳細設定」画面を表示してみたところ、どのケーブルでも解像度を4K(3840×2160)に、リフレッシュレートを144Hzに設定することができた。最も認証条件が高いPremium HDMI規格でも、4K/60Hzまでしか保証していないのだが、それを上回るリフレッシュレートについても設定することは可能なようだ。
その後、実際に4K解像度でゲームをプレイしてみたのだが、DisplayPort ケーブルを使っていたときと比較して、映像のコマ落ちなどを感じることはなかった。Premium HDMIなどの規格は、あくまでも規定のスペックでの動作を保証するだけのものなので、実際にはそれを上回る映像も表示できる……ということなのだろうか? ひとまずはPremium HDMI規格のケーブルをつなげておけば、体感上は問題なくゲームがプレイできそうだ。
4月12日(水):USB 3.0スーパースピードケーブルは本当に速いのか?
モニター用のケーブル問題が解決したところで、USBの延長ケーブルについても対策を検討していきたい。
これは、以前からUSBハブ替わりとして、PCの背面にあるUSB 3.2 Gen 2(最大10Gbps)ポートに、USB 3.0スーパースピード(最大5Gbps)対応の延長ケーブルをつなぎ、机の上まで伸ばしていたもの。自宅にはスーパースピード対応のケーブルがこれ1本しかないので、こちらは買い替えることになりそうだ。
こうなると、USB 3.2 Gen 2対応のUSBハブが欲しくなるが、ケーブル長の長いものが見当たらない。「それなら延長ケーブルで」と思ったのだが、今度は両コネクタがタイプAでオス/メスのものだと、転送速度が最大10Gbps対応のものはかなりお高い製品しか見つからなかった。
そこで、ふと思ったのが、「ケーブルの違いで転送速度にどのぐらいの差が出るのか?」ということ。USB 3.2 Gen 2の転送速度をフルスペックで生かせる周辺機器というと、現状ではSSDぐらいしか手元にない。そこで、ポートに直付けしたときと、USB 3.0スーパースピード対応の延長ケーブルをつないだとき、さらには自宅に転がっていたUSB 2.0時代の延長ケーブルをつないだときで、1GBの書き込みにかかる時間を計測してみた。
ポート直付け | 54秒27 |
スーパースピード対応ケーブル | 53秒79 |
USB 2.0ケーブル | 1分20秒56 |
※PCからUSBメモリにコピーする際にかかった時間を3回計測し、平均値を算出。PC側のファイルはM.2 SSDに保存。以降同様
まずは、USB 3.1 Gen 1(最大5Gbps)対応のUSBメモリを、USB 3.2 Gen 2ポートに接続してみたところ、ポート直付けとスーパースピード対応ケーブル経由でつないだ場合で速度に差は出なかった。USB 3.1 Gen 1とスーパースピード対応ケーブルは、どちらも最大データ転送速度が5Gbpsなので、転送速度に影響を及ぼさなかったようだ。
一方、USB 2.0時代の延長ケーブルを使った場合には、ここがボトルネックとなって、書き込み時間が約1.5倍に増えた。ポート直付けなどのときは16~23MB/sで推移していた転送速度も、9~16MB/sまで落ち込んでいる。
この時点で、USB 2.0時代のケーブルは購入の対象外となった。問題は3.2 Gen 2接続で真価を発揮しそうな、スーパースピード対応を上回る最大データ転送速度が10Gbpsをうたうケーブルを、「高いコストをかけてまで購入する必要があるか?」ということだ。
4月13日(木):スーパースピード対応のケーブルで問題なさそう?
仕事に一区切りがついたので、昨日に引き続いてUSB延長ケーブルの転送速度を検証することにする。今回、用意したのはUSB 3.2 Gen 2対応のSSD。手持ちの機材では唯一、USB 3.2 Gen 2に対応しており、これを使って、昨日と同じ計測を行った結果が以下の通りだ。
Gen 2ポート直付け | 2秒33 |
Gen 1ポート直付け | 3秒17 |
スーパースピード対応ケーブル | 2秒08 |
USB 2.0ケーブル | 24秒96 |
USB 3.2 Gen 2(最大10Gbps)とGen 1(最大5Gbps)の各コネクタに直付けした場合では、両者の規格の違いもあって転送速度に大きな差が出た。
その一方でUSB 3.2 Gen 2コネクタ(最大10Gbps)に、スーパースピード対応ケーブル(5Gpbs)を接続した際は、ケーブルがボトルネックになるかと思ったのだが、両者の間で転送時間に差が出なかった。
そこで、ポータブルSSDをGen 2ポートに直付けした状態でベンチマークを行った所、シーケンシャルライトが623.92MB/sと、5Gbps(=630MB/s)を下回る結果となっていた。Gen 1直付け(最大5Gbps)と、Gen 2にスーパースピード対応ケーブル(5Gbps)経由で接続した際に、転送速度に差が出た理由がちょっと分からないが……。どうやら現状の手持ちの機材を使う分には、最大データ転送速度が10Gbpsのケーブルは必要ないらしい。
これらの検証結果から考えると、今使っているスーパースピード対応ケーブルと同じメーカー製で、より長いものを購入すれば、とりあえず我が家の環境ならボトルネックになることはまずなさそうだ。自動昇降デスクの天板を上げると、足元に置いてあるPCのUSBポートが使いづらくて困っていたが、延長ケーブルを伸ばすことで、今後は周辺機器を手間なく接続できるだろう。
とある中小企業に勤める会社員、飛田氏による体当たりレポート「急遽テレワークを導入した中小企業の顛末記」。バックナンバーもぜひお楽しみください。