急遽テレワーク導入!の顛末記
「iPhoneでWeb会議に参加したときのギガ消費が気になる!! ツールや参加人数で変わる?」――急遽テレワークを導入した中小企業の顛末記(154)
Zoom、Google Meet、Microsoft Teamsでそれぞれ検証してみた
2023年8月21日 07:00
前回はWeb会議に2~4台のPCが参加した際、その台数によって通信量やCPU/GPUへの負荷に変化が出るかをテストしてみた。ただ、これも以前に計測したのだが、PCとスマホを利用した場合では、同じWeb会議システムを使っていても、通信量が変化する場合がある(関連記事:「iPhoneでWeb会議に参加したらデータ通信量が10倍に!? 実はPC or iPhoneから参加するので違いあった!!」参照)。
……この記事を書いている時点で、新型コロナが5類に移行されて96日が過ぎた。
私が勤めている新宿にある中小企業では現在、各スタッフが可能な範囲でリモートによる業務を行っている。その中で、今回は複数台のPCが参加しているWeb会議に、iPhoneから参加した場合の通信量などを計測してみた。
8月7日(月):Zoomの通信量は会議の参加人数に反比例する?
Web会議における通信量の計測記事も、これで4回目。今回も可能な限り以前と同じ環境を再現した上で、昨年末に自作したデスクトップPCでWeb会議を開始。そこに、昨年末に購入したiPhone 14から参加しつつ、さらに2台のノートPCを接続して、通信量やCPU/GPU使用率の変化を計測してみた。
- 計測にはiPhone 14、自作デスクトップPC(以降1st PC)、富士通「LIFEBOOK WU-X/G2」(以降2nd PC)、ASUS「X545F」(以降3rd PC)を使用。
- 1st PCでミーティングを主催し、そこにiPhone/ノートPCから参加
- 1st PCではカメラ映像+マイク音声として、Web会議の録画データを配信
- iPhoneと2nd/3rd PCでは録画データの映像を表示したモニターをカメラで映すとともに、映像の音声をマイクで収音する
この状態でまずは、Zoomでミーティングを行ったところ、その通信量は以下のようになった。
- PC1台接続時:176.62MB
- PC2台接続時:100.78MB
- PC3台接続時:93.67MB
- PC1台接続時:173MB(上り74MB/下り100MB)
- PC2台接続時:143MB(上り73MB/下り71MB)
- PC3台接続時:154MB(上り73MB/下り81MB)
iPhoneでは接続するPCの台数が増えるほどに、通信量が減るという結果に。一方、PCでは上りの通信量は約73MBでほぼ安定しているが、下りの通信量がミーティングごとに変化している。ただ、2nd/3rd PCの通信量も合わせて確認すると、接続しているPCが2台~4台の場合、PCの通信量はおおむね150MB前後で安定するらしい。
なお、PCのみを2~4台接続した前回のテストと比べると、参加者にiPhoneがいるミーティングの方が、1st PCの通信量は全体的に20~30MBほど多くなった。
- PC1台接続時:29%
- PC2台接続時:29%
- PC3台接続時:27%
- PC1台接続時:CPU使用率11~21% GPU使用率 3D/38~39%、Video Decode/3~4%
- PC2台接続時:CPU使用率12~13% GPU使用率 3D/41~43%、Video Decode/1%
- PC3台接続時:CPU使用率11~13% GPU使用率 3D/38~39%、Video Decode/3%
一方、iPhoneのCPU使用率については、ほぼ20%台後半で安定。PCについてはiPhoneのみ参加しているときだけ、CPUの使用率グラフが上下に動き続けたが、2台目以降のPCが会議に参加すると安定した。
前回のPCのみのテストと同じように、ZoomではiPhone・PCともに接続するPCの台数が増えても、マシンへの負荷はそう変わらないらしい。なお、1st PCのCPU/GPUへの負荷についても、前回のテストとほぼ同様の結果となっている。
8月8日(火):Meetでは参加デバイスがiPhoneでもPCでも通信量は変わらない
昨日に続いて、今度はGoogle MeetについてもiPhoneとPCからミーティングに参加。それぞれの通信量を計測したところ、以下のような結果となった。
- PC1台接続時:348.01MB
- PC2台接続時:171.22MB
- PC3台接続時:209.30MB
- PC1台接続時:334MB(上り127MB/下り207MB)
- PC2台接続時:156MB(上り54MB/下り102MB)
- PC3台接続時:197MB(上り54MB/下り143MB)
前回のPCのみのテストの際には、“各ミーティングで通信量に差が出たものの、同じミーティングにおける全PCの通信量が横並び”という結果となったが、そこにiPhoneが加わっても、結果は変わらないらしい。
ただ、iPhoneとPCの1対1でのWeb会議では、過去の計測ほどではないが、通信量が跳ね上がってしまった。恐らく、主催者である1st PCで「送信時/受信時の解像度」を「自動」に設定していたため、より高解像度な映像が送受信されていたものと思われる。
そこで、iPhone側でWeb会議を主催。iPhoneのGoogle Meetアプリで「データ使用量を制限」の設定をON/OFFしたところ、通信量が以下のように変化した。
- 制限あり:41.60MB
- 制限なし:325.18MB
- 制限あり:45MB(上り29MB/下り15MB)
- 制限なし:328MB(上り123MB/下り205MB)
この結果は以前に計測したときと、ほぼ同じ内容となっている。どうやら、iPhoneで主催した際の通信量は、どのミーティングでもかなり安定しているようだ。
一方、「データ使用量を制限」の設定をON/OFF した上で、参加するPCの台数を増やしたところ、CPU/GPUへの負荷は以下のように変化した。
- PC1台接続時:31%
- PC1台接続時(iPhone主催/制限あり):30%
- PC1台接続時(iPhone主催/制限なし):30%
- PC2台接続時:30%
- PC3台接続時:30%
- PC1台接続時:CPU使用率11~21% GPU使用率 3D/30~31%
- PC1台接続時(iPhone主催/制限あり):CPU使用率 9~20% GPU使用率 3D/28%~29%
- PC1台接続時(iPhone主催/制限なし):CPU使用率 11~21% GPU使用率 3D/29~30%
- PC2台接続時:CPU使用率 11~12% GPU使用率 3D/31~32%
- PC3台接続時:CPU使用率 12~13% GPU使用率 3D/30~33%
iPhoneのCPU使用率は、全ミーティングを通してほとんど変化が見られない。iPhoneで会議を主催したり、その上で「データ使用量を制限」の設定をON/OFFしても、CPU/GPUへの負荷に変化は見られなかった。
一方、1st PCについては、iPhoneと1対1でのWeb会議を行った際だけ、CPUのグラフが上下に大きく変化した。この現象はZoomでも見られたが、PCが2台以上参加するとCPUの使用率が安定する。……高解像度な映像を送受信するために、CPUに負荷がかかっているのだろうか?
8月9日(水):Teams はPCを2台以上接続すると、通信量がバラバラに
最後はMicrosoft Teamsについて検証を行ってみようと思うが、こちらもiPhone用アプリに「データ使用量を制限」という設定が用意されている。この設定はPC側で会議を主催したときも効果を発揮するようなので、そのON/OFFも含めて通信量を計測してみたところ、以下のような結果となった。
- PC1台接続時(制限あり):74.67MB
- PC1台接続時(制限なし):342.99MB
- PC2台接続時:416.69MB
- PC3台接続時:354.93MB
- PC1台接続時(制限あり):74MB(上り35MB/下り39MB)
- PC1台接続時(制限なし):339MB(上り160MB/下り179MB)
- PC2台接続時:497MB(上り208MB/下り289MB)
- PC3台接続時:396MB(上り216MB/下り180MB)
iPhoneと1st PCが1対1でWeb会議を行った場合の通信量は、Google Meetと同じように、前回の計測とほぼ同じ結果となった。iPhoneを外で使う場合は通信量が気になるものだが、その量は安定しているようなので、「制限ありなら10分で約70MB」というように、ある程度の目途を立てることができそうだ。
一方、PCの台数が2台以上に増えると、前回のPCのみのテストの際と同じように、計測結果が安定しなくなった。やはり、標準の「ギャラリー」ビューだと、なるべく多くの人を画面上に表示しようと映像をトリミングする過程で、データ量に変化が起きるのだろうか? 特に、PCを2台/3台接続した際の通信量は、今回のテストで最も多い。iPhoneでギガを節約したいなら、「データ使用量を制限」の設定を有効にしておくべきだろう。
- PC1台接続時(制限あり):14%
- PC1台接続時(制限なし):16%
- PC2台接続時:20%
- PC3台接続時:19%
- PC1台接続時(制限あり):CPU使用率9~20% GPU使用率 3D/28%、Video Encode/3~4%、Video Decode/4~5%
- PC1台接続時(制限なし):CPU使用率11~21% GPU使用率 3D/29~30%、Video Encode/9~10%、Video Decode/4~5%
- PC2台接続時:CPU使用率11~12% GPU使用率 3D/30~32%、Video Encode/17~19%、Video Decode/4~5%
- PC3台接続時:CPU使用率11% GPU使用率 3D/34~35%、Video Encode/11~12%、Video Decode/5~6%
iPhoneにおけるCPUの使用率はミーティングごとに変化し、“PCと1対1で「データ使用量を制限」をONにした時”が最も少なくなる模様。ZoomやGoogle MeetではCPUの使用率に変化がなかっただけに、Microsoft Teamsでは映像処理の方法が違っているのかもしれない。
一方、1st PCについては、ZoomやGoogle Meetと同じように、iPhoneと1対1でのWeb会議の際にCPUのグラフが大きく上下した。さらに、前回のPCのみのテストの際と同様に、映像のエンコードにもGPUを使用しており、GPUへの負荷はZoomやGoogle Meetよりも大きいと思われる。
以上の計測結果からPC1~3台が参加しているWeb会議において、iPhoneでの通信量には、各サービスで以下のような傾向がみられた。
・Zoom「接続するPCの台数が増えるほどに、通信量が減少」
・Google Meet「会議に参加している端末間で通信量が均等になるように調整。PCと1対1のWeb会議だと、通信量が跳ね上がる」
・Microsoft Teams「人数や環境によって、通信量がバラバラ。そのときどきで最もよい映像を配信(?)」
10分間での通信量については、今回の計測ではZoomが際立って少なく、次いでGoogle Meet<Microsoft Teamsの順で増加していた。ただ、以前の計測ではMicrosoft Teamsの通信量がかなり少なく、Zoomを下回っている。
Zoomの通信量は割と安定しているのだが、Google Meet とMicrosoft Teamsの通信量は、どうもそのときどきでバラつきがあるようだ。iPhoneから会議に参加する際には、どちらも通信量に制限をかける設定をした方が、ギガの節約的には安心できるかもしれない。
一方、iPhoneにおけるCPUの使用率については、Zoom とGoogle Meet が約30%なのに対して、Microsoft Teamsが最大時で20%と、ほかのサービスよりも10%近く低い結果となっていた。CPUスペックの低い端末を使っていたり、バッテリー残量が少ない場合には、Microsoft Teamsにアドバンテージがありそうだ。
とある中小企業に勤める会社員、飛田氏による体当たりレポート「急遽テレワークを導入した中小企業の顛末記」。バックナンバーもぜひお楽しみください。