生まれ変わったWindows Live

第1回:大幅に機能アップした新Windows Live
~担当者に聞くおもな強化ポイント


 Windows Liveは、マイクロソフトが無償で提供しているコンシューマー向けのソフトウェア+サービスだ。無料のウェブメールサービスWindows Live Hotmailや、メッセンジャーソフトWindows Live Messengerなどはすでに利用している人が多いだろう。

「Live おすすめパック」が「Live Essentials」に名称変更

 Windows Live Essentialsという名前がピンと来ない人も、「Windows Live おすすめパック」といえばわかりやすいかもしれない。昨年リリースされたWindows 7では、Windows Vistaまでは標準で提供されていたメールソフトが入っておらず、代わりにLiveメールが含まれる「Windows Live おすすめパック」が提供されている。

Windows Liveは、マイクロソフトが無償で提供しているウェブサービスとクライアントソフト群のこと。代表的なWindows Liveサービスとクライアントソフト

 「Windows Live おすすめパック」には、Liveメール、Live Messenger、Liveフォトギャラリー、Liveムービー メーカー、LiveWriter、Liveファミリーセーフティ、Liveツールバーが含まれている。

 この「Windows Live おすすめパック」が名称変更したのが、「Windows Live Essentials」だ。しかし、変わったのは名前だけではない。

クラウド時代のWindows Liveへ

 「Windows Live」では、マイクロソフト社内で「Wave3」と呼ばれるバージョンの製品群を2008年12月から順次リリースしてきた。その最終リリースとなるのが2009年8月の「Windows Live ムービーメーカー」正式版の公開だ。

 2008年後半から2009年夏にかけて公開された現在のWindows Live(Wave3)は、リリースされた時点では新しいモノだったが、TwitterやFacebookなどの新しいSNSが普及し、クラウドサービスが当たり前に利用される2010年の現在では、これらWave3ベースのWindows Liveは古くさいものとなりつつある。

 Microsoftが全社を挙げてクラウド対応を進める中、Windows Liveもクラウド時代に合わせた進化を遂げ、Wave3の次世代サービス「Wave4」世代のサービスへと大幅なバージョンアップを開始した。その第1弾が6月15日に公開された、「Windows Live Hotmail Wave 4」だ。

 Wave4世代のWindows Liveは、クラウド側のウェブサービス、クライアントPCにインストールするソフトウェアの2つで構成されている。

 これは、マイクロソフトが押し進めているソフトウェア+サービス(S+S)というコンセプトに従ったものだ。さらにWave4では、昨年マイクロソフトが打ち出した「3スクリーン」(PC、TV、モバイル)への対応も進めている。

 なお、Liveのウェブサービスで、Wave4世代で新しく追加されるサービスとしては、Office2010のウェブ版として登場したOffice Web Appsだけとなる。1つだけとはいえ、大きな追加だ。従来からのHotmail、SkyDriveなどのウェブサービスは、大幅に機能が向上し、使いやすくなっている。

Wave4世代のWindows Live、最大の特徴はSNSとの連携

マイクロソフト オンラインマーケティング本部Windows Live/Mobileグループ 内河 恵プロダクトマネージャー

 Windows Liveの概要を説明してきたが、今回Wave世代のWindows Liveのコンセプトなどを説明してもらうためにマイクロソフト コンシューマー&オンラインマーケティング統括本部オンラインマーケティング本部Windows Live/Mobileグループ 内河 恵プロダクトマネージャー(以下 内河氏)、同グループの宇野 誠プロダクトマネージャー(以下 宇野氏)に話を伺った。

――Wave4世代のWindows Liveの特徴は何でしょうか?

内河氏:
 Wave4世代の最大の特徴は、FacebookやMysapceなどSNS(ソーシャル ネットワーキング サービス)との連携です。Wave3をリリースした時には、インターネットの利用はメールやHP閲覧などが中心でした。しかし、ここ数年インターネットの使い方が大きく変わってきています。

 日本国内であればMixi、海外ではFacebookやMyspaceなど、SNSを代表とするコミュニケーション&共有サービスを利用する時間が増えてきています。

 多くのユーザーは、1つのSNSを利用するだけでなく、複数のSNSを利用しています。このため、SNSに頻繁にアクセスして、どんどん時間を消費してしまうことになります。1つのユーザーインタフェイスで、さまざまなSNSの情報を一括して表示、アップデートしてくれることがユーザーにとっては便利になってきています。

 そこで、Wave4世代のWindows Liveは、さまざまなSNSからの情報をWindows Liveの個人ページやLiveメッセンジャーで一括表示できるようにしました。これにより、さまざまなSNSに登録している友人の更新情報が、一括表示され、非常にわかりやすくなります。

 表示される更新情報は、単に更新されたというアラート情報だけでなく、更新されたテキストや写真などを一括して表示されます。このため、ユーザーは、Windows Liveの個人ページやメッセンジャーを見るだけで、友人の情報を簡単に知ることができます。


オンライン時に、どのようなサービスに時間を費やしているのか――現在では、SNSを利用する時間がメールよりも多くなっている

――どのSNSと連携しているのですか?

内河氏:
 SNS各社とWindows Liveを接続するためのWeb APIを規定し、公開しています。このため、SNSサービス提供者がWindows Liveとの接続に対応していただければ、すぐにでもWindows Liveと相互接続することができます。また、すでにSNS側で接続APIが公開されている場合は、マイクロソフトで接続ソフトを作って、提供している場合もあります。

 現時点では、Facebook、Myspace、食べログ、フォートラベル、Flickr、YouTubeなどとのSNS連携を提供しています。今後も各SNSと交渉して、接続できるSNSを増やしていきたいと思います。

 まだ日本の大手SNSサービスとの接続はできていませんが、SNSサービス事業者さんに協力をお願いして、今後対応したいと考えています。海外でスタンダードになっているSNSだけでなく、日本独自のサービスもできるだけサポートしたいと思っています。

 ユーザーの方にぜひ使ってみていただきたいのは、新しいメッセンジャーですね。メッセンジャーには、SNS情報を表示するエリアがあり、SNSの更新情報を一括して確認可能です。実際に使ってみると、これは非常に便利なんです。

 私たちもアーリーβ版を利用していますが、各SNSにアクセスしにいかなくても、メッセンジャーで更新情報が確認できます。メッセンジャーはもはや単なるチャットのためのアプリケーションではなく、コミュニケーションのハブとなるクライアント アプリケーションといえると思います。

現在は、Facebook、Myspaceなどに対応。今後、対応SNSはどんどん増えていくだろうWindows LiveにSNSを接続するのは非常に簡単。SNSのIDとパスワードを入れて、相互認証すればOK。プライバシーで、誰に情報を公開するのかを設定できる

――Twitterに関してはどうですか?

 現在、Twitter社と作業を進めています。すべての機能をサポートできるかどうかは、未定ですが、年内にはWindows Liveとの接続を行う予定にしています。

使いやすさにこだわった、新しいHotmail

――Hotmailの強化点について教えてください。

内河氏:
 Hotmailは、特に使いやすさにこだわりました。キーワードは、「使い捨てメールアドレス」ではなく、「ずっと使ってもらえるメール」にということです。

 現在のHotmailでも、メールの保存容量は無制限です。これに加えて、Wave4世代のHotmailでは、添付ファイル1つあたり最大50MB、さらにSkyDriveと連携することで、最大10GBの添付ファイルを送信することができます。

 ずっと使っていただくためには、迷惑メールやフィッシングメールなどの数を減らさないとダメなんです。受信トレイに、膨大な迷惑メールがあると、それだけでもウェブメールを使いたくなくなります。

 そこで、Wave4のHotmailでは、Excahnge Serverなどで採用されているSmartScreenテクノロジーを採用して、迷惑メールを激減させています。さらにHotmailでは、ユーザーごとに異なるフィルタリングを実装しています。

 ウェブメールでもフィルター機能を強化することで、迷惑メールではないダイレクトメールなどを簡単に仕分けることができます。自動的に仕分けルールを作成して、フィルタリングすることが可能です。

 また、使っていて便利なのが、一括処理という機能です。この機能を使うと、受信ボックスでメールを選択すると、その差出人で仕分けして一括削除したり、一括してサブフォルダーに移動したりすることができます。同じ差出人からの迷惑メールを一括削除したり、メールマガジンを一括してサブフォルダーに整理したりできます。

 そのほか、メールに複数の写真が添付されている場合も、ダウンロードして保存してからアプリケーションで開くのではなく、Hotmail画面で簡単に表示できるようになりました。

Hotmailの強化点競合ウェブメールサービスとの比較
SmartScreen技術で、迷惑メールをシャットアウト開封前に信頼できる送信者からのメールかどうかがわかる
Hotmailで追加されたフィルターを使えば、簡単にファイルを見つけることができるスレッド表示も簡単に切り替えられる
サブフォルダーが管理できるようになった。Outlookなどと同期した場合もサブフォルダーを忠実に表示する差出人指定でメールを一括処理することも可能。このときに、同時に仕分けルールも作成できる

――ウェブ版のメッセンジャーとHotmailはどう連携しているのですか?

 Wave3でもウェブ版メッセンジャーという機能はありましたが、独立したサービスだったため、ページを切り替えると、メッセンジャーの接続が切れてしまいました。そこで、ウェブ版メッセンジャーの機能をWindows Liveのサービスと融合させています。

 例えば、Hotmailにメッセンジャーという項目があります。これは、Windows Liveのアドレス帳やSNSのアドレス帳などに登録されているユーザーのログイン状況を一目で確認することができます。さらに、メールのヘッダーにユーザーの在席情報(ステータス)を表示することができます。

 ある意味、ウェブ版のメッセンジャーは、単独のサービスというよりも、Windows Liveで提供しているさまざまなサービスのコミュニケーションハブ的な機能を備えています。

Hotmailは、ウェブ版のメッセンジャーと連携しているウェブ版メッセンジャーでは、SNSなど他のサービスの更新情報も一括して表示することができる

携帯電話、スマートフォン対応も目玉のひとつ

――いわゆる“3スクリーン(PC、TV、携帯)”という点では、携帯電話への対応はどうなっていますか?

マイクロソフト オンラインマーケティング本部Windows Live/Mobileグループ 宇野 誠プロダクトマネージャー

宇野氏:
 Wave4では、日本の携帯電話に対応しています。今までは、iアプリ版やEZアプリ版などをリリースしていましたが、Wave4ではブラウザーで閲覧できます。

 このサーバー部分は、日本国内で開発しているため、国内メーカーの携帯電話で利用できるようにしています。ユーザーの方にとって、フルブラウザーがないとアクセスできないかどうかが気になると思いますが、携帯対応の部分は日本国内で開発しているため、NTTドコモなら905シリーズ以降なら、フルブラウザではなく通常のiモードブラウザで問題なく利用できると思います。

 さすがに、10年前の携帯電話で使えるようにするのは無理ですが、多数の携帯電話に対応できるように開発をしています。

 また、6月24日に発売されたauのスマートフォンIS02に搭載されているWindows Phone 6.5.3では、メッセンジャーやメールなどの専用ソフトが用意されています。これらの専用ソフトを使っていただくうと、ブラウザー版よりも使いやすいインターフェイスでWindows Liveの各サービスが利用できると思います。

 また今回は、多くのユーザーがお使いになっているiPhoneにも対応します。6月21日(米国時間)にiPhoneアプリ「Windows Live Messenger for iPhone」がApp Storeで公開されました。もっとも、残念ながら現時点では米国、カナダ、英国、フランスに限っての公開になっていますが、このアプリを利用していただけば、iPhoneでもWindows Liveのサービスを便利に利用できるようになると思います。

SkyDriveごく自然に使えるOffice Web Appとの連携

――Office Web Appとの連携はどうなっていますか?

内河氏:
 HotmailとOffice Web Appは密に連携しています。例えば、HotmailにOffice文書が添付されている場合は、添付ファイルをダウンロードしてローカルに保存しなくても、Office Web Appで閲覧はもちろん、簡単な編集もできます。編集する場合は、自動的に自分のSkyDriveのエリアにダウンロードされますので、添付されている元ファイルの上書きを心配する必要もありません。

 また、Office文書を添付ファイルとして送信する場合は、メールに添付する時に、直接メールにファイル添付するのか、SkyDriveにアップロードして、本文にリンクURLだけを入れて送信するのかを選択できます。

 さらに、Hotmailに添付できるファイル容量は本文も含めて20MBまでという制限がありますが、SkyDriveでは50MBまでのファイルがアップロードできますので、添付ファイルの容量制限以上のファイルを送信することができます。

携帯電話でもWindows Liveが利用できるようにブラウザ版を開発。スマートフォンには、専用アプリを用意。Office Web AppとHotmailの連携で、メールに添付されたOffice文書をブラウザーで編集することができる。

顔認識機能やフォトレタッチ機能を盛り込んだPhoto Gallery

――Windows Live Essentialsはどのようなアップデートがされていますか?

内河氏:
 さまざまな機能アップがされていますが、Photo Galleryは簡単に写真の修正が行える機能が追加されました。これを使えば、フラッシュを焚いた際のテカリや、シワやシミなども修正できます。

 また、集合写真などの場合、こちらの写真ではこの人が横を向いてしまっているとか、人数が多いと全員がうまく写っている写真がないこともあります。そんなとき、撮影した複数の写真の同じ人を比べて、この人はこの写真から、というように良く写っている写真を選択して、全員がちゃんとこちらを向いている集合写真を合成することもできます。

 顔の自動認識機能が追加されたので、Photo Galleryに登録されている写真から同じ顔を探してきて、自動的にタグをつけることができます。具体的には、結婚パーティで思い出の動画を作るといったとき、2人の写っている写真を顔認識機能を使って拾い出して、思い出の動画を作るといった場合に非常に便利です。

 Movie Makerを使えば、ピックアップした写真から、画面切り替えエフェクトや音楽を指定する操作だけで、簡単に動画が作成できます。もちろん、文字も入れられます。作成した動画を、YouTubeなどの動画サイトに簡単にアップロードする機能も追加されました。

 Syncは、複数のPCのファイルを同期させるP2Pソフトの機能だけでなく、SkyDriveとファイルを同期させることができます。Syncは、Windows PCだけでなく、Macともファイル同期をすることもできます。

 また、ウェブブラウザーを使って、インターネット越しに、自宅のPCのデスクトップを表示して操作することもできます。つまり、Syncでは、リモートデスクトップ接続の機能がサポートされています。この機能は、以前Live Meshとして提供していたモノをSyncに融合させました。

 Windows Live Essentialsでは、このほかにも説明しきれないほどの機能アップを行っています。パブリックβが公開されたら、ぜひとも使っていただきたいと思います。

内河氏:
多くのユーザーの方にWave4世代のWindows Liveを使っていただきたいと思います。Hotmailも今までの悪い点をできるだけ改良して、ユーザーの方に使いやすいモノにしています。

 また、Windows Liveのサービス全体では、SNSだけでなく、さまざまなデジタルコミュニケーションのハブとして使えるようになっているんです。ぜひお試しいただきたいですね。

Photo Galleryは、自動顔認識機能が追加。複数の写真から、いい部分だけを集めて、いいショットを合成
SkyDriveやFacebookなどに、Photo Galleryから直接アップロードができる。Movie Makerは、テーマを使えば簡単に凝ったビデオが編集できる。
SkyDriveにアップしたビデオは、Silverlightストリーミングで公開することができる。これなら、ムービーをダウンロードさせなくてもいい。Syncは、複数PC間でファイルを同期する。
Syncのリモートデスクトップを使えば、複雑な設定なしにリモートのPCにアクセスできる。メッセンジャーには、SNSの情報も表示できる。
メッセンジャーは、HDクオリティのビデオチャットをサポート。この他、ゲーム機能も用意されている

◇   ◇   ◇

 次回からは、Windows Liveの個々のサービス、Windows Live Essentialsの個々のアプリケーションに関して、詳細に紹介していく。


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(山本 雅史)

2010/6/25 08:00