一人暮らしのネット環境Q&A

先輩が「いらないWi-Fiルーターをあげる」と言うんだけど、もらっても大丈夫?

 Wi-Fiルーターを買おうとしたら、先輩や友達から「家にいらないWi-Fiルーターがあるから、あげるよ」と言われることがあるかもしれません。しかし、古いWi-Fiルーターや、誰かが使っていたWi-Fiルーターを使うのは危険なこともあります。今回は、そのような場合のポイントを紹介します。

古い製品、ほかの人が使っていた製品は要注意

 Wi-Fiルーターは意外と長く動作し続けることもでき、通常なら家に1台あればいいので、まだ動作する古い製品を余らせている人も少なくないでしょう。また、無料でもらえるなら、多少古くてもいいか、と思う人もいると思います。

 ですが、そうした製品は、インターネットに接続する機能には問題がなくても、セキュリティ面の危険性がある可能性が高いです。安易に人から古いWi-Fiルーターをもらって使用することは、おすすめできません。

 考えられる危険性は2点あり、特に重要なのが「製品が古くて、セキュリティに関して十分な機能を備えていない」ことです。また「ほかの人が使っていた設定をそのまま使ってしまう」ことにも注意が必要です。順に見ていきましょう。

最新のサイバー攻撃に昔のWi-Fiルーターは対応できない

 Wi-Fiルーターは、悪意を持つ攻撃者に勝手にネットワークに侵入されないための防御機能(例えば設定画面にログインするためのパスワード)や、通信内容を傍受されないための暗号化機能などを備えています。古い製品で特に問題になるのは暗号化機能で、古い方式による暗号化では、簡単に通信内容を傍受され、データを盗まれる、通信内容を改ざんされる、といったトラブルのおそれがあります。

 暗号化方式は、古い方式が容易に解読されるようになったり、より解読されにくい方式が登場したりして進化を繰り返しており、主なものでは「WEP」「WPA」「WPA2」といったものがあります。現在よく使われている中で最も新しいのは、2018年に登場した「WPA3」です。

バッファローのWi-Fiルーター「WHR-G54S」。2005年発売で、似たデザインの製品も多く登場し、よく売れた人気シリーズです。20年近く経った今でもまれに見かけますが、対応している暗号化機能はWPAで、使い続けるのは危険です

安心して使える製品の目安「DLPA推奨Wi-Fiルーター」

 あまりにも古いWi-Fiルーターが危険なのは分かったとして、どれくらいの製品なら、今使っても大丈夫なのでしょうか? これについては、警視庁・警察庁が3月末に行った注意喚起とあわせて紹介しましょう。

 3月28日に警視庁が「家庭用ルーターの不正利用に関する注意喚起」を公開し、「見覚えのない設定変更がなされていないか定期的に確認する」ことなどを求める旨を発表しました。

 これに対応するかたちで、デジタルライフ推進協会(DLPA)から、「自動ファームウェア更新機能」と「管理画面へログインするためのIDまたはパスワードの固有化(1台ごとに異なる、推測されにくいパスワードを設定する)」の2つが有効だとして、これらの機能を搭載した製品「DLPA推奨Wi-Fiルーター」の使用・買い替えを推奨するアナウンスが行われています。

 DLPAは、アイ・オー・データ機器、NECプラットフォームズ、エレコム、バッファローという国内のWi-Fiルーターのメーカー4社が加盟しており、「DLPA推奨Wi-Fiルーター」は、2019年12月以降以降に上記4社が発売した製品全てが該当します。なお、DLPA推奨Wi-Fiルーターは、現在なら5千円前後からと、安く販売されている製品もあります。

 また、4社以外の製品でも、「自動ファームウェア更新機能」と「管理画面へログインするためのIDまたはパスワードの固有化」ができるものなら、ひとまず同様の安全性は確保できると考えていいでしょう。そのうえで、暗号化機能はWPA3に対応していることが望ましいです。

 誰かがWi-Fiルーターをくれるというときには、メーカーと型番を聞き、上記に該当するかを確認するようにしましょう。

 WPA2対応なら、まだ許容範囲内だと見る向きもありますが、WPA以下はNGです。もっとも、WPA2は2010年に発表されており、それにも非対応ということはおおむね15年近く前の製品なので、もらうのもあげるのも躊躇する古さになっているかもしれません。

ほかの人が使っていたWi-Fiルーターは初期化&パスワード再設定を

 誰かからもらったWi-Fiルーターは、ケーブル類を接続したらそのまま使えるかもしれませんが、ほかの人が使っていた状態のままで使うのは危険です。必ず工場出荷時の状態に初期化し、パスワードを再設定して使うようにしましょう。

 Wi-Fiルーターをくれた先輩や友達が悪意をもって何かをすると疑うわけではありませんが、意外な誰かがパスワードを知っていたり、自分の家では問題のある設定がされたままだったりするかもしれません。

 視点を変えて、もしも誰かに不要になったWi-Fiルーターをあげようとする場合は、まず、その製品が「DLPA推奨ルーター」または同様の安全性を確保できるものかを確認しましょう。そのうえで、あげる前に初期化し、パスワードを再設定してから使うように伝えるようにしましょう。

一人暮らしを始めるにあたって、ネット環境をどうしたらいいのかよく分からない……。そんな人のために、初めての回線選びの考え方やWi-Fi設定の基礎など、一人暮らしのためのネット知識を、Q&A形式で紹介します。バックナンバーはこちら
正田 拓也