イベントレポート
Internet Week 2017
シンガポールとAPNICから見た、アジアと日本のインターネット
2017年12月15日 06:00
「向き合おう“グローバル”インターネット」をテーマに、一般社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)の主催で11月28日から12月1日まで開催された「Internet Week 2017」。その中から、いくつかのセッションの模様をお伝えする。
- がんばりすぎないルーティングとは? 日本人はギリギリ運用しすぎ?(12月1日付記事)
- IoT機器のマルウェア感染、国内で1日8000台を観測、一番の狙われどころはtelnet(12月5日付記事)
- Wi-Fiストレージ「ポケドラ」の脆弱性・出荷停止から学んだ、IoTハードウェアメーカーとしての取り組み(12月6日付記事)
- 変化するDNSとサーバー証明書の関係~「ランチのおともにDNS」より(12月8日付記事)
- 「KSKロールオーバーはまだ終わっていない」~今年の「DNS DAY」の話題から(12月13日付記事)
- シンガポールとAPNICから見た、アジアと日本のインターネット(この記事)
- 1995年ごろのAPNICやISOCや「インターネットマガジン」を振り返る(12月15日付記事)
12月1日には、Internet Weekの全体イベントといえる「IP Meeting」が開催された。その中から、「アジアと日本のインターネットを考える」と題したセッションの模様をレポートする。
このセッションでは、シンガポール在住の白畑真氏と、APNIC(Asia Pacific Network Information Centre)事務局長のPaul Wilson氏が、いずれもWebExによるインターネット中継で登場。アジア太平洋地域のインターネットの状況を語った。
白畑氏はまず、アジアのインターネット利用者数の動向を紹介した。中国が多い一方で、インドがこの5年で4倍の伸びと、中国が先行したのをインドや東南アジアが追うかたちだ。その分、日本のプレゼンスは相対的に落ちており、ユーザー数の割合が10%から6.1%になったという。
続いては、インターネット上の“地理的”な状況。アジア太平洋地域ではシンガポールと香港がハブになっており、データセンターやIXが集まっている。香港とシンガポール、東京に接続しているASの数は、だいたい同じぐらい。ただし、香港とシンガポールは自国内の接続の割合が少なく海外との接続が多いが、東京は国内の割合が多い。「日本も、もっと海外との接続が増えればハブとして活躍できるのでは」と白畑氏はコメントした。
白畑氏はまとめとして、「日本の技術者の質は高いが、英語での情報発信が少ない。プレゼンスの向上を図ると交流が増える」と語った。
Wilson氏は、アジア太平洋地域のインターネットの発展的状況について語った。特に重要性を語ったのがIXP(IXプロバイダー)だ。「IXはインターネットに決定的な影響がある。インターネット上で遠いところでは、IXが存在することがありがたい」とWilson氏。そのほかインフラ面では、DNSルートサーバーの各国への配置や、各国でのCERT(Computer Emergency Response Team)設立の支援、NOG(Network Operators Group)によるプロの間の情報共有などが語られた。
IPv6の普及動向についても、Wilson氏は解説した。IPv6は2017年時点で世界で15%ほどの普及率で、速いペースで成長している。国別では、インドが世界2位。日本は世界10位で、アジア太平洋地域では2位。世界トップ20にはマレーシアやオーストラリアも入っている。
国別のIPv6普及率は、日本が26%。インドは51%で、急速な成長が特徴だ。インドネシアはインターネットが比較的早くから使われているが、普及率は20%で、IPv6は0%。シンガポールは人口は少ないが、インターネット普及率が82%で、IPv6は6%。
Wilson氏はまとめとして、インターネットのエコシステムは依然として急速に成長していること、国や経済圏により大きな違いがあること、重要なインフラには協力が重要なことなどを述べた。