イベントレポート

Internet Week 2018

知ってましたか? 来年2月1日は「DNS flag day」、名前解決の挙動を一部変更

~今年の「DNS DAY」の話題から

「.com」の一人勝ちが続くgTLD、英国のEU離脱やGDPRの影響も

 JPRSの宇井隆晴氏による「DNS Update~ドメイン名全般~」では、TLDの推移データと解説、次回のgTLD募集に向けた動きなどに関する報告が行われた。

 宇井氏の報告の中で興味深いのは、「.com」の相変わらずの強さと、「.net」「.org」「.info」「.biz」といった2位以下の主要なgTLDの登録数はほぼ横ばいで、一部は減少しているという点である(図17~図20)。これらを見ると、ドメイン名市場は全体として拡大しているかという問いに「そうでもない」(宇井氏)とするのは当然かもしれない。

図17:全TLDでのドメイン名数
図18:登録数の多いTLD
図19:登録数の推移(gTLD)
図20:登録数の推移(gTLD/.com以外)

 また、「登録数の多いTLD」で2位となっている「.tk」(トケラウ)の登録数が目に付くが、これは「レジストリが登録数を公表していないため、2~3000万件程度の幅のある第三者推計が混在した数字」である。Verisign社の説明によれば、「.tk」のドメイン名はいったん登録されたあとは登録をやめても廃止されず、レジストリが回収して広告ビジネスに使うため、減少しないということだ。このような話を見るにつけ、ドメイン名を検討するときには、そのTLDにおける登録数よりも実際に使われている数や率を見ることが重要だと改めて感じる。TLDの信頼性評価の際は、実績を調べるべきではないだろうか。

 新gTLDは、登録数が伸びたと思ったら降下したりと、浮き沈みが大きい(図21)。なぜこのようになるのか、登録数の多いgTLDを抜き出してみたのが「新gTLD登録数の推移(TLD別)」(図22)である。どうやら、その増減は中国系レジストラの動向に大きく影響されているようだ。

図21:新gTLD登録数の推移
図22:新gTLD登録数の推移(TLD別)

 ところで、次のgTLDの募集はどのようになっているのだろうか。宇井氏は、前回の新gTLD申請の状況を整理したスライドを示し、ほぼ完了しつつあることを説明したが、次回のgTLD募集については詳細が決定しておらず、しばらく先になりそうだとした(図23、図24)。

図23:新gTLDの申請状況
図24:次回のgTLD募集に向けた動き

 宇井氏は、最後に英国のEU離脱(Brexit)の影響と、GDPRとWhoisの関係(図25)についても触れた。英国のEU離脱後、英国のみに拠点を持つ組織や英国に居住する自然人は「.eu」の登録資格を失うという方針が2018年3月に欧州委員会から発表されたことを受け、「.eu」における英国からの登録数が2018年3月から8月までの間に約4万件も減少したこと、GDPRについてはICANN理事会がgTLDを対象としたTemporary Specificationを採択したが、ccTLDではGDPRへの対応はさまざまであることなど、話題豊富な内容であった。

図25:GDPRとWhois(昨年に続き)

 日本ネットワークイネイブラー株式会社(JPNE)/DNSOPS.jpの石田慶樹氏による「ドメイン名のライフサイクルマネージメント」は、ドメイン名におけるライフサイクルマネージメントの重要性を説明するものである。

 ドメイン名のライフサイクルマネージメントが注目されるのは、使用するのをやめた(廃止した)ドメイン名が悪意のある第三者に再登録され、悪用されるケースが目立つようになったからだ。また、ドメイン名ハイジャックにより、使用中のドメイン名が乗っ取られる事例も起きている。

 DNS DAYの直前に行われた「DNS Abuseと、DNS運用者がすべきこと」[*3]でも、登録・利用しているドメイン名の状況を把握することや、組織全体のリスクマネージメントの一環として考え、対策することの重要さを扱っている。ドメイン名にはライフサイクルがあり、使っているドメイン名を安易に廃止することにはリスクがあることを再確認していただきたい(図26、図27、図28)。

図26:ドメイン名のライフサイクルマネージメント
図27:廃止した(つもりの)ドメイン名の行方
図28:ドメイン名のライフサイクルと発生するリスク

[*3]……『もし、ドメイン名が他人にハイジャックされたら? 平成の記憶から学ぶ、その手口と対策』

なお、ドメイン名のライフサイクルマネージメントとドメイン名ハイジャックに関する有用な資料が、DNSOPS.jpのサイトで公開されている。そちらも参考にしてほしい。