イベントレポート
Slack Frontiers
Slack、外部サービスとの連携をさらに拡大、Zoomとの提携深化など
EKMやモバイル端末管理機能など、エンタープライズ向けのセキュリティ機能が今後さらに強化される
2019年4月26日 15:12
コミュニケーションツール「Slack」を展開するSlack Technologies(以下、両者をまとめてSlack)は、カリフォルニア州サンフランシスコ市の「Piers 27 & 29」において4月24日~25日(現地時間)の2日間に渡って、同社の顧客やエンジニアなどを対象にした自社イベント「Frontiers」を開催した。
2日目の25日には製品に関する基調講演が行なわれ、新たに電話会議ツール「Zoom」とのパートナーシップの拡大が発表されたほか、かねてより開発意向表明が行なわれていたEKM(Enterprise Key Management)の一般提供が開始されたこと、モバイル機器向けの新セキュリティ管理機能などが投入される計画などが、明らかにされた。
基調講演の終了後には、同社製品のロードマップを説明するセッションが行なわれ、今後開発される新機能の開発意向表明が行なわれた。
エンタープライズの各種ITサービスのハブとなっていくSlack、Zoomとの提携深化を発表
Slack Technologies CPO(最高製品責任者)のタマル・イェホシュア氏は「今回のFrontiersには重要なIT管理者や経営者などが多数参加している。Slackは、キーになるエンタープライズ向けの技術を開発することに注力している。大多数のユーザー数に対応したり、高いセキュリティを実現しており、OracleのようなIT業界のリーダー企業に支持されている」と述べ、詰めかけた企業のIT管理者や経営者に対して呼びかけて、より高度にSlackを使いこなすことで、自社の働き方改革を成し遂げて欲しいとアピールした。
次いで登壇したSlack Technologies事業開発および経営企画担当副社長のブラッド・アームストロング氏は、Slackの重要な機能であるサードパーティーのアドインについて説明した。アームストロング氏は「オープンプラットフォームになっていることが重要で、それによりSlackの顧客はいつでも自分のビジネスに最適なツールを選択し、それをSlackと連携させることができる。それが我々の顧客が生産性を上げるために重要なのだ。既にそうしたアプリは1500も提供している」と述べ、オープンプラットフォームであることがSlackの哲学だと説明した。
Slackはプラットフォームのオープン化を訴えており、Slackへの入り口をAPIとしてサードパーティーに公開している。サードパーティーのソフトウェアベンダーはそのAPIを自社のソフトウェアやサービスなどから呼び出すことで、Slackと連携する機能を実現することが可能になっている。言ってみれば、Slackがそうしたさまざまなサービスのハブとして機能するのだ。アームストロング氏はそうしたサードパーティーの具体例として、Oracle、Salesforce、Googleなどの巨大なIT企業のサービスだけでなく、OktaやLatticeなどのスタートアップ企業のサービスも紹介し、そうしたさまざまな企業とパートナーシップを結んでいることがSlackの強みだと強調した。
その上で、すでに従来からパートナーとしてSlackへの機能統合などを実現してきたビデオ会議サービスを提供するZoom Video Communications(以下、Zoom)との例を紹介し、機能統合などを実現してからSlackからの利用が12カ月で200%に増えたことなどを紹介した。アームストロング氏はそうしたZoomとの提携をさらに深めていくと述べ、すでに実現しているSlackのカレンダー機能からZoomの電話会議を予約する機能などに加えて、近い将来にはZoom Phoneと呼ばれるZoomの通話機能をSlackに統合する計画があることを明らかにした。
その上で、Slack Technologies CEOのスチュワート・バターフィールド氏と、Zoom Video Communications CEOのエリック・ユアン氏の2人を壇上に呼び、対談形式で両者のパートナーシップについての紹介を行なった。
EKMやモバイル機器向けのセキュリティ強化により、エンタープライズが安心して使えるSlackに
ついで壇上に登場したのはSlack Technologiesエンタープライズプロダクト部門責任者のイラン・フランク氏。フランク氏は、今回のFrontiersで導入された、ないしは今後導入する計画のエンタープライズ向けの新機能を紹介した。
フランク氏は「Slackを有償プランで利用している企業はすでに8万8000社を超え、Fortune 100の企業のうち65社がSlackを利用している。Enterprise Gridでは、複数のワークスペースが使え、集中管理が可能で、セキュリティやコンプライアンス管理が可能になる」と述べ、大企業向けの有料プランを利用しているユーザーは増加傾向にあり、大企業向けのエンタープライズ版(Enterprise Grid)の管理性、セキュリティ管理などに対して大企業の注目が集まっていると説明した。
フランク氏はそうしたエンタープライズ向けの機能として、新しく導入した機能に関しては「EKM(Enterprise Key Management)」「コンプライアンス認証」「モバイル機器向けセキュリティ」の3つがあると述べ、それぞれに関しての説明を行なった。
EKMは昨年のFrontiersで開発意向表明が行なわれた機能で、暗号化鍵を企業側が持ち、データのコントロールを自由に行なうことができる機能だ。今回は具体的なデモが行なわれ、すでに利用しているチャンネルを、暗号化鍵を利用して暗号化を行ない、特定のユーザーに対して見えないようにする様子などが公開された。「こうした機能は、政府、軍隊、セキュリティ企業などが必要としている」とのことで、その具体的なユーザー例として、金融事業を行なっているLAZARDが導入したことを明らかにした。フランク氏は「EKMは今日から一般提供を開始する」と述べ、エンタープライズ版を契約しているユーザーが今日からEKMを利用できるようになったと説明した。
コンプライアンス認証への対応では、ISO27001/27017/27018などに対応したことを明らかにしたほか、欧州ユーザーがアクセスするウェブサイトでのCookieの取り扱いなどで注目を集めているGDPRへの対応などを済ませたことを明らかにしたほか、HIPAA(Health Insurance Portability and Accountability Act)に対応したことを明らかにし、病院や製薬会社などでもSlackが活用できるようになったと述べた。
そして、モバイル機器のセキュリティに関しては、コンテンツのダウンロードやコピーの禁止、そして近日中に対応される予定のセカンダリ認証機能(Face IDや指紋認証など)、同じく近日中に対応する予定のセッションマネージメント機能を紹介し、特定のユーザーの端末からSlackのチャンネルへのアクセス権を剥奪し、端末に保存されているキャッシュをリモートで消去する様子をデモした。
次いで、Slack Technologies副社長兼グローバルカスタマーサクセス&サービス責任者のクリスティーナ・コズマウスキー氏が壇上に上がり、Oracleコーポレートアプリケーションサービス担当副社長のポール・ドネリー氏とOracle APAC/EMEA 戦略・組織担当のスージー・アブラハム氏の2人を壇上に呼んで、OracleのSlack活用を説明した。この中で、Oracleはすでに15万の従業員がSlackを使っており、現在では毎日160万のメッセージがSlackでやりとりされ、毎日1万8000ものファイルがSlack上にアップロードされているということが紹介された。導入当初は連絡のほとんどは電子メールだったが、徐々にそれが減っていき、今では電子メールよりもSlackでの連絡の方が多くなっていることが紹介された。
ロードマップのセッションでは、今後多くの機能が追加される計画と説明される
基調講演終了後にブレイクアウトセッション(基調講演などメインの講演のあとに行なわれる、より詳細な説明を行なう講演のこと)として行なわれた「Slack's product roadmap: What's coming soon」では、Slackが今後の展開を計画している新機能などについての解説が行なわれた。
Slack Technologiesスタッフ/製品主任のジェシカ・フェイン氏は、新しい言語の対応やデスクトップアプリの改善を説明した。これまでSlackは英語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、そして日本語という5カ国語に対応してきたが、新たにイギリス英語、ブラジルのポルトガル語、ラテンアメリカで使われているスペイン語という3つの言語が新たに追加された。
また、昨年のFrontiersで公開されたデスクトップアプリケーションの性能向上に関しても引き続き取り組んでおり、オフラインでもSlackのタイムラインを読めるようにキャッシュ機能の拡張、性能向上、さらにはアプリが消費するメモリ容量の削減などをターゲットとして開発を続けて行くと説明した。これらのデスクトップアプリケーションの強化は、WindowsとmacOSの両方をターゲットにしており、今後、投入される計画だ。
また、検索機能の強化(近日中に投入)、メッセージの表示方法の変更(近日中に投入)、アプリのUIの改善(すでに導入済み)、昨日の記事で紹介したワークフロービルダー(近日投入)などが紹介された。
ついで登壇したのは、Slack Technologies製品開発主任のマット・マレン氏。マレン氏は、先日発表されたOffice 365やG Suite/Gmailとのメール、カレンダー統合機能などについて説明した。「すでにクラウドストレージ上にあるファイルの内容をSlackだけで表示する機能や、カレンダーやメール同期の機能は導入されており、今後、よりインテリジェントなカレンダー機能、電子メールの内容をSlackでプレビュー表示する機能、電子メールのブリッジ機能などが導入される」と述べ、それらの機能の概要を紹介。さらに、エンタープライズ版で導入される予定の「共有チャンネル(シェアードチャネル)」などについても紹介した。
最後に登壇したSlack Technologiesプラットフォーム事業部グループ製品マネージャーのサルマン・スハリ氏は、「アナウンスオンリーチャンネル」と呼ばれる従業員へのお知らせ掲示板的に利用できる、指定した人しか書き込みができないリードオンリーのチャンネルの導入、ワークスペースの管理を自社開発のアプリなどからもできるようにするAdmin API、他アプリの管理をAPI経由で行なうことができるApp Management APIなどが近日中に投入、アナリティクスダッシュボードでカスタムプロフィールフィールドを設定できるようにする機能がすでに投入されていることなどを説明した。