イベントレポート

Slack Frontiers

Slack、新機能「ワークフロービルダー」を年末までに提供開始、Office 365/G Suiteとの統合機能や検索機能などの拡張も発表

「シェアードチャネル」もエンタープライズ版に展開

Slack Technologies CEO スチュワート・バターフィールド氏
プロテニスプレイヤーのセレーナ・ウィリアムズ氏(左)
セレーナ・ウィリアムズ氏(左)とSlack Technologies CEOのスチュワート・バターフィールド氏が対談した。セレーナ氏はテニスプレイヤーとしてチームで取り組むことの難しさとリーダーシップなどについて語った。
昨年11月に新しくなったSlackのロゴとバターフィールドCEO。

 コミュニケーションツール「Slack」を展開するSlack Technologies(以下、両者をまとめてSlack)は、カリフォルニア州サンフランシスコ市の「Piers 27 & 29」において4月24日~25日(現地時間)の2日間に渡って、同社の顧客やエンジニアなどを対象にした自社イベント「Frontiers」を開催している。初日となった24日には、同社の共同創始者でCEOのスチュワート・バターフィールド氏と、起業家でもあり昨年の全米オープンでの大坂なおみ選手との激闘も記憶に新しい女子テニス選手のセリーナ・ウイリアムズ氏が登壇して基調講演が行なわれた。

 そのFrontiersで、Slackはいくつかの新しい発表を行なった。具体的には、昨年のFrontiersでロードマップにあることが明らかにされたEnterprise Gridでの「Shared Channels(シェアードチャネル/共有チャンネル)」の提供が今夏からベータ版として開始される予定であること、ルーティンワークの自動化をコードを書かなくても実現できる「Workflow Builder(ワークフロービルダー)」が今年の末までにベータ版として提供開始であること、先日発表されたSlackとOffice 365/Google G Suiteとの接続アドオンとしてカレンダーのスマート統合機能の提供を今年の末まで行なうこと、さらにSlackアプリケーションの検索機能が強化されたことなどが明らかにされた。

Slackの新しい機能となる「ワークフロービルダー」(出典:Slack Technologies)

(4/25 8:40更新)シェアードチャネル(共有チャンネル)に関して詳細を追記しました。タイトルも一部変更しています

組織内だけでなく、組織の外も含めて柔軟にコミュニケーションすることが可能になるSlackがいま大人気

 Slackは、2017年11月17日に日本でも正式に立ち上がった(つまり、日本語版が提供開始された)コミュニケーションツールで、クラウドベースで提供されており、ウェブブラウザー、iOS/Android/Windowsなど向けに提供されているクライアントソフトウェアを通じて利用することができる。基本的に無償で利用することができるが、スタンダード版、プラス版、エンタープライズ版という有償プランも用意されており、有償プランに移行することで、過去のデータを保存しておいて使ったりということが可能になるという仕組みになっている。

 Slackの特徴はクラウド上に展開される「ワークスペース」をベースにして、組織内や組織外も含めたユーザーが集ってコミュニケーションできるようになっている。ワークスペースには「チャネル」と呼ばれる部署、テーマごとの仮想的な小部屋を作ることが可能になっており、参加するユーザーだけを登録して全体とは分離してコミュニケーションすることができる。例えば、会社単位でワークスペースを作成し、そこに部署ごとにチャネルを作ったり、組織横断のチャネルを作る、そういう使い方が可能になっている。

 チャネルの中でもさらに分かりやすいように、1つのメッセージに対してスレッドと呼ばれる話を分岐させて、より深く話し合ったりすることが可能になっており、関係のない人はそれを読み飛ばしたりもできるし、それに参加したいと思えばスレッドに参加することもできる。また、ユーザー同士がLINEやFacebook Messenngerのようにプライベートな「ダイレクトメッセージ」をやりとりすることももちろん可能で、そうした柔軟な使い方ができるのがSlackの特徴となっている。イメージとしてはLINEのようなIM(インスタントメッセンジャー)と、FacebookやLinkedInなどのSNSが1つにまとまって、企業などで生産性を上げるためのツールとして利用されている、そうしたイメージを持っていただければいいだろう。現在、多くの大手企業も含めて導入されており、注目を集めているコミュニケーションツールの1つだ。

 Frontiersは、Slackが開催しているイベントの中でも最も上位に位置するプライベートイベントで、同社のロードマップや方針などが詳しく語られるイベントとなっている。昨年のFrontiersに関しては別記事『Slackが自社イベント「Frontiers」をサンフランシスコで開催 ~開幕講演でCEO バターフィールド氏が理念を語る』『Slack、読み込みを5.5倍高速化へ、年明け導入の新デスクトップアプリで~暗号化など法人向けの各種機能も実装予定』などをご参照いただきたいが、基調講演ではSlackの幹部やゲストなどが、どのようにして働き方改革を実現していくかなどに関して説明し、Slackが今後どのように進化していくかを説明するイベントとなっている。

「シェアードチャネル」をエンタープライズ版で今夏提供開始、「ワークフロービルダー」で日常業務をSlackに統合

 そうしたSlackのイベントになるFrontiersで発表されたのは、エンタープライズ版でのシェアードチャネルの今夏からの提供、ワークフロービルダーの今年末までの提供開始、Office 365やG Suiteカレンダーのスマート統合機能の今年末までの提供開始、Slackアプリケーションの検索機能の提供という4つのトピックだ。

 シェアードチャネルは、複数の組織(例えば複数の会社)が作業を行なう場合、複数のワークスペースにまたがるチャネルとチャネルを接続させて、複数の組織がワークスペースをまたいで協業することができるようにする機能だ。すでに説明した通り、Slackはワークスペース-チャネル-スレッドというかたちで階層化されており、かつ柔軟にプライバシーの設定ができるようになっているので、自社のワークスペースで展開されているチャネルを、乗り入れるかたちで活用したいというニーズがあった。

 例えば、PR会社がある企業の広報を手伝っているとする。そのときにPR会社の関係者にも自社のSlackのワークスペースに入ってもらって作業すればよいが、ユーザーの管理などが煩雑になるというデメリットもある。そこで、チャネルごと2つの組織でシェアできるようにすれば、シームレスに2つの企業間で共同作業を行なうことが可能になる。

 Slackによれば、このシェアードチャネルはエンタープライズ版(Enterprise Grid)を契約している組織に対して提供する予定で、今夏より提供が開始される予定だ。

※4/25 8:40追記
 Slack Technologies エンタープライズプロダクト部門責任者 イラン・フランク氏によれば、今回発表されたエンタープライズ版でのシェアードチャネルは、従来から提供されてきたスタンダード版やプラス版でサポートされてきたシェアードチャネルの機能をエンタープライズ版に追加するという発表になるという。フランク氏によればこのエンタープライズ版シェーアドチャネルにより、エンタープライズ版を利用している企業同士、およびエンタープライズ版とスタンダード版/プラス版間でチャネルを共有することができるという。

 これまでエンタープライズ版でシェアードチャネルの機能がサポートされなかったのは、エンタープライズのような大規模のユーザーが利用できるかどうかの確認、そしてエンタープライズの企業にとって重要なセキュリティが担保されているかの確認などが必要だったため、これまでサポートされていなかったということだった。それらを解決する目処が立ったので、エンタープライズ版でもシェアードチャネルのサポートが追加されることになった。

 なお、Slack Technologiesの日本法人となるSlack Japanによれば、今後シェーアドチャネルは日本では「共有チャンネル」と呼ぶという方針だという説明があった。本記事では初出時にシェアードチャネルとしていたので、それで統一しているが、今後日本では「共有チャンネル」という呼び方になるということを付記しておく。

「シェアードチャネル」(出典:Slack Technologies)
プログラムやアドインなしで業務を自動化する「ワークフロービルダー」

 ワークフロービルダーは、日常業務を、プログラムコードを書く必要なく簡単に自動化して、担当者の負担を減らす機能。

 Slackではこれまでも自社でプログラムを書き、それをアドインとして接続することで、機能を追加することができた。このワークフロービルダーを使うと、例えば新入社員向けのウェルカムメッセージを自動で出したり、人事の担当者とのミーティングをセットアップしたりするのを自動化することを、アドインを利用しなくても追加することができる。

 ワークフロービルダーは今年の末までに提供が開始される予定で、現在、プレビュー版が提供されており、Slackのウェブサイトからサインアップすることで、ウェイティングリストに入ることが可能だ。

「ワークフロービルダー」の画面(出典:Slack Technologies)

Office 365やG Suiteとの接続機能を拡張、検索機能も拡張されワークスペース全体の検索性が向上へ

 先日、Slackは、MicrosoftのOffice 365(コンシューマー版、ビジネス版)と、GoogleのGmail/G SuiteとSlackを接続するアドインのベータ版提供を開始したことを明らかにした。これは、Slackでコミュニケーションしていても、依然として電子メールが外部とのやりとりには使われているという現状を反映したもので、Slackのコミュニケーションの中に電子メールをフォワードしたりという機能が追加される。

 例えば、電子メールで取引先とずっとやりとりをしていたが、社内でその件に関して調整したりというシーンがあるだろう。これまでであれば、その電子メールに社内の人をCCに入れて調整したり、電子メールの内容をコピー&ペーストして調整したりということになっていただろう。しかし、このOffice 365やG Suiteとの接続ツールを入れれば、Slackから電子メールの内容を直接取ってきて、チャネルでのやりとりに貼り付けて、チャネルにいる他のユーザーとやりとりする、そうしたことが可能になる。これまでであれば、会議室に集まって電子メールの印刷したものを配布して話あっていたのが、Slack上でそれが可能になる、そう考えれば分かりやすいだろう。

 この機能はすでに4月上旬から提供(こちらのURLから導入が可能)が開始されているのだが、今回のFrontiersではさらに電子メールとSlackのブリッジ機能とカレンダー機能のスマート統合が発表された。

 電子メールとSlackのブリッジ機能は、組織が新しく雇った従業員がSlackに参加する前から新しい従業員の電子メールに対して、参加する予定のチャネルやダイレクトメッセージを転送する機能だ。電子メールからSlackのダイレクトメールを見たりすることができるので、Slackにまだ参加できていない新しい従業員もSlackでのコミュニケーションに参加できる。こちらの機能はすでに提供が開始されているが、全ての組織で利用できるようになるには今後、数カ月がかかる見通し。

電子メールとSlackのブリッジ機能。まだSlackのアカウントを持っていないユーザーでも、管理者が仮のアカウントと電子メールとを紐付けることで、Slackと電子メール間でやりとりができる(出典:Slack Technologies)

 前述のOffice 365やG Suiteへの接続機能により、Slackから自分のカレンダーにアクセスすることがすでに可能になっている。今回発表されたスマート統合機能では、あるユーザーが別のユーザーに対してミーティングのリクエストをすると、Slackがユーザー同士のカレンダーや会議室の空き状況などを参照し、お互いにとって都合の良い時間をサジェストしたりしてくれる。それをお互いが受け入れると、カレンダーに自動的にミーティングの情報が入るという仕組みが実現される。このカレンダーのスマート統合機能は、今年末までに提供を開始する予定で、今後、同社のTwitterアカウントで詳しい情報が公開される予定だ。

カレンダー機能のスマート統合(出典:Slack Technologies)

 Slackアプリの検索機能の拡張も行なわれる。現在もアプリの右上あたりに検索ボックスがあり、そこから検索することが可能になっているが、その機能が拡張され、複数のチャネルやダイレクトメッセージ、文章なども含めてワークスペース全体で検索することが可能になっている。これにより従来であれば、チャネル-スレッドと見て行かなければならなかったのが、ファイルやダイレクトメッセージも含めてより多くの情報から目的の情報へと簡単にたどり着くことが可能になる。Slackによれば、この検索機能の拡張はすでに実装されており、今後、数週間で全てのユーザーが利用できるようになる計画だ。

新しい検索機能でワークスペース全体からチャネル、文章、ダイレクトメッセージの全てから検索できるようになる(出典:Slack Technologies)