イベントレポート

「ワーケーション・スタートアップ!」フォーラム

JALが取り組む「休暇+業務=ワーケーション」と「出張+休暇=ブリージャー」

日本航空株式会社(JAL)のワーケーション導入事例を説明した同社執行役員・人財本部長の小田卓也氏

 7月18日に都内で開催された「ワーケーション・スタートアップ!」フォーラムでは、“ワーケーション”を導入しているさまざまな企業の取り組みが紹介された。今回はその中から、日本航空株式会社(JAL)の事例をレポートする。

週2回のテレワークなど制度化、「メールを土日に送らない」ルールの明確化も

 JALは、企業理念の1行目に「全社員の物心両面の幸福を追求する」ことを謳っており、社員ひとりひとりを大事にするという姿勢で取り組んでいる。2015年には、誰でも活躍できる生産性の高い職場への「ワークスタイル変革」という方針を打ち出した。さらに2017年には、ワークスタイル変革に本気で取り組むことを宣言し、制度面ではコアタイム無しのスーパーフレックスや週2回のテレワーク、環境面ではオフィスのフリーアドレス化や固定電話の廃止、テレビ会議の推奨、意識面では「メールを土日に送らない」「会議や退社の時間を守る」といったルールを明確化するなど、さまざまな制度の変革を行った。

 こうした中で、近年では「長く休暇を取るととその後の業務に対する不安やストレスがある」「休暇が取れないと旅行を取りやめたり、旅行のスケジュールを変更したりしている」「長めの休暇を取得しづらい」「帰省先でもテレワークを行えれば便利」という声が社員から寄せられていた。そこで新たに、休暇時に業務を認める「ワーケーション」(バケーションとワークを組み合わせた造語)と、出張時に休暇を付けられる「ブリージャー」(ビジネスとレジャーを組み合わせた造語)という制度を導入した。

「ワーケーション」と「ブリージャー」を導入

JALで行くテレワーク体験ツアーや、ワーケーションのモニターツアー実施

 ワーケーションの導入に際しては、2017年に、JALグループの間接部門の勤務者向けに意識改革のためのワークショップおよびテレワーク体験ツアーを実施し、実際に遠隔地でのテレワーク体験を行った。さらに、和歌山県と連携して、仕事と休暇を両立させながら親子で楽しむ国内ワーケーションツアー「JALで行く『親子で夏休み!行こうよ和歌山」や、ハワイ旅行での長期滞在を目的とした海外ワーケーションツアー「オンもオフも楽しむハワイ ワーケーションサポート」といった旅行商品も作った。

ワークショップや体験ツアーを実施
国内外のワーケーションツアーを商品化

 また、チームによる集中討議の機会とワーケーションを融合した取り組みとして、「合宿型ワーケーション」もスタートし、2018年4月に徳島県神山町、9月に宮城県大崎市(鳴子温泉)、9月に福岡県福岡市、2019年3月に富山県朝日町など、全国各地の自治体の協力を得て、社内のチームで訪れて仕事を行った。

合宿型ワーケーションを実施

 このほか、鹿児島県徳之島町において、富士ゼロックス鹿児島株式会社が企画する「徳之島ワーケーション実証事業」にも参画し、ワーケーションのモニターツアーを実施した。ここではJAL社員が同僚や家族とともに3泊4日で徳之島町を訪れた。ワーケーション勤務を実施する際は、指定のコワーキングスペースを利用した。その後、2019年2月に、徳之島町および富士ゼロックス鹿児島とともに東京にて報告会も実施し、地域と結び付きながらどのようなことができるかを検討した。

ワーケーションモニターツアーを実施

勤怠管理システムには「ワーケーション勤務」の選択項目も

 社内の理解促進に向けた取り組みも行っており、ワーケーションの体験ツアーを社内報で紹介したり、2017年および2018年の「テレワーク・デイズ」期間において役員によるワーケーションを実施したりした。さらに、勤怠管理システムにおいても「ワーケーション勤務」の選択項目を設置するとともに、社内イントラネットへの特設ページも開設。社員向けにワーケーションの説明や、おすすめのコワーキングスペースの情報などを掲載した。特設ページ開設から約4カ月でアクセス数は約1800件に上るという。

勤怠システムにワーケーションの選択項目を設置
社内イントラネットにワーケーションの特設ページを開設

 JALは今後もワークスタイル変革につながる取り組みを推進する方針で、今夏には北海道と愛媛県、オーストラリアにおいて、ワーケーションと地域のアクティブティを融合した企画を実施する予定だ。小田氏は、「会社の中で社員ひとりひとりがワーケーションに興味を持って自分でやってみようと思えるような環境を作り上げた上で、地域のみなさまと連携しながら実際に進めていくことが大事だと思っています」と締めくくった。

ワーケーションとアクティビティを融合した企画を実施