イベントレポート
Pure//Accelerate 2019
Pure Storage、「モダンデータ体験」を実現する為にストレージのサービス化、クラウドとの一括管理などを提案
2019年9月19日 08:20
エンタープライズ向けストレージベンダの「Pure Storage」(ピュア・ストレージ)は、アメリカ合衆国テキサス州の州都オースティンにあるオースティン・コンベンション・センターで9月16日~9月18日(現地時間)の3日間に渡って年次プライベートイベント「Pure//Accelerate 2019」を開催している。
9月17日の午前9時からは基調講演が行なわれており、Pure Storage 会長 兼 CEO チャールズ・ジャンカルロ氏を始めとした同社幹部が登壇して同社の新製品に関する説明などが行なわれた。この中でジャンカルロ氏は「2010年代に入りサーバーは仮想化され、クラウドに置いて管理するなど進化していった。しかし、データの仮想化はまだ済んでおらず、APIや管理機能などを利用して物理ストレージを仮想化し、クラウドと連携することでモダンなデータ体験が可能になる」と述べ、サーバーというハードウェアが仮想化されて利便性が増していったように、ストレージも仮想化していく必要があると強調した。
ジャンカルロ氏はそうしたモダンデータ体験を実現したストレージでは簡単で、シームレスで持続的に成長可能な特徴を備えていると強調し、詰めかけた聴衆にPure Storageが提案するNAND型フラッシュメモリと管理機能をなどを備えたソフトウェアの導入を訴えた。
システム管理者の頭痛の種だったストレージ管理から脱却し、モダンなデータ体験を提案するPure Storage
Pure Storageが開催しているPure//Accelerate 2019は、同社が年に一回行なっている同社の顧客などを対象にした年次イベントで、同社の新製品などが発表されることが通例になっている。
Pure Storage 会長 兼 CEO チャールズ・ジャンカルロ氏は「この10月にPure Storageは10回目の誕生日を迎えることになる。この10年間に我々は中断しないアップグレード、クラウドを含めた管理機能、AIを活用した運用、常時QoS、常時暗号化などの機能を提供してきた」と述べ、同社がデータセンター向けのストレージにイノベーションを持ち込んできたことを強調した。
ジャンカルロ氏は「2010年代には物理的なサーバーは仮想化されて管理が容易になり、クラウドで管理できるようになっていった。それに合わせてストレージもクラウドや仮想化された環境で大きなデータを扱えるようになっている必要があるが、従来型のストレージではまだ十分ではない。我々はネットワーク、サーバーの仮想化に続きデータの仮想化に取り組む必要がある。APIや管理機能などを利用して物理ストレージを仮想化し、クラウドと連携することでモダンなデータ体験が可能になる」と述べ、同社がNAND型フラッシュメモリとソフトウェアを組み合わせて提供しているストレージソリューションの強みを強調した。
Pure StorageはNAND型フラッシュメモリのメーカーから購入してきたハードウェアと、自社で開発しているストレージの各種管理ソフトを組み合わせて、保守契約・サブスクリプション契約などの形で顧客に提供している。
サブスクリプション契約を選択すれば顧客は必要に応じてフラッシュメモリの容量を増やしたり減らしたりできるほか、物理的なストレージがどこ(オンプレミスかクラウドか)にあっても、1つのストレージとして扱うことができることができるので、柔軟に管理することができる
このため同社では、開発コストの多くをソフトウェア開発につぎ込んでおり、ストレージというハードウェアを提供するベンダではあるが、同社の強みはむしろそうしたソフトウェアにあると言って良い。
ジャンカルロ氏はそうした同社が提案するモダンデータ体験には「シンプルで、シームレスで、持続的な成長が可能という特徴がある。今回のPure//Accelerate 2019ではハイブリッドクラウドで、複数のストレージを使うことができ、そしてストレージをサービスとして利用することができる。次の10年はデータの管理はもっと楽になる」と述べ、顧客に対してより進んだソフトウェアを導入することで、より容易に、シームレスにデータセンターのストレージを運用できるようになると強調した。
データセンター向けストレージをサービス型として提供していくPure as-a-Service
次いで登壇したのはPure Storage 副社長 兼 主任アーキテクト ロブ・リー氏。リー氏はパブリッククラウドとして提供されるストレージと、オンプレミスやホスト型で提供されるストレージとのギャップについて説明した。
リー氏は「オンプレミスとクラウドでは異なるストレージのハードウェアや、異なる管理モデル、さらには異なるアプリケーションが使われているなどの理由で、どちらかしか選べないという現状があった」と述べ、それを埋める何かが必要だと強調し、ゲストにCapitalOne 技術フェロー ブレイン・ウォン氏を呼び、オンプレミスとパブリッククラウドの間にある隙間について語り合った。
その上で、その解決策になりうるのが、同社が開発してきたオンプレミスやホスト型のストレージと、クラウドストレージを同じように管理できる管理ツール群だと説明し、Amazon Web Services用に昨年ベータプログラムとして発表した「Cloud Block Store for AWS」などに関して説明した。
そして、米国時間9月17日から、Cloud Block Store for AWSのGA(General Availability、一般提供)を開始したことを明らかにして、実際に実利用環境としてクラウドストレージとオンプレミス/ホスト型のストレージを1つのソフトウェア管理コンソールから管理が可能になったと説明した。
なお、リー氏によれば、従来はEvergreen Storageプログラムと呼ばれていた、同社のサブスクリプション型の契約モデルでサービスを契約しているユーザーであれば、そうしたCloud Block Store for AWSも本日より利用できるようになったとした。なお、Evergreen Storageプログラムの名称は今回のPure//Accelerate 2019で、今後は「Pure as-a-Service」としてサービスとして提供されていくことも同時に明らかにされた。
FlashArray//X向けの新しいモジュールとしてDirectMemoryを、低価格なFlashArray//Cを追加
リー氏の後に登壇したのはPure Storage 戦略部門副社長 マット・キックスモーラー氏。キックスモーラー氏は、主に同社のストレージ・ハードウェアについて語った。
キックスモーラー氏はデルタ航空 インフラストラクチャー担当ジェネラルマネージャ レネ・ロペス氏を壇上に呼んで、デルタ航空のような企業がコンシューマに対してサービスを提供する上で高いパフォーマンスで大容量のストレージが必要だということを議論した上で、ストレージの性能を10倍にするには、あるいはストレージの大容量のストレージをどのように実現していくかに関して説明した。
キックスモーラー氏は、フラッシュメモリの種類について説明をした。これまで一般的にNAND型フラッシュメモリに使われてきたSLC、MLC、TLCに加えて、現在ではSCM(Storage-Class-Memory、DRAMに近い性能を持つフラッシュメモリのこと、IntelのOptaneなど)やQLC(1セルで4ビットのデータを格納できるNAND型フラッシュメモリ、速度はSLC/MLCなどに比べて遅いが大容量を実現できる)などが登場してきていることを説明し、同社がそれらの新しいフラッシュメモリを採用した新しいハードウェアを発表したことを明らかにした。
1つはIntelのOptaneが採用されたDirectMemoryで、Pure Storageが提供しているFlashArray//Xの交換用モジュールとして提供され、キャッシュメモリとして利用することができる。
このDirectMemoryをFlashArray//XのSSDモジュールと交換することで利用することができる。OptaneのようなSCMは、SSDよりもレイテンシが一桁早いので、例えばインメモリデータベースのデータをキャッシュに展開して利用することで、従来よりも高速に利用することができる。
そして1つの新製品はFlashArray//Cと呼ばれる新製品だ。こちらはQLCのNANDフラッシュメモリを採用して、性能は従来のTLCベースの製品などに比べて落ちるが、大容量をより低価格で実現することができる。
あまり高速なストレージを必要としない用途のデータなどを保存しておくストレージとして利用することができると説明した。なお、キックスモーラー氏によれば、Direct MemoryもFlashArray//CCのどちらも米国時間9月17日より提供を開始すると説明した。
また、キックスモーラー氏はVMwareのVMをストレージ上に配置するのをポリシーに基づいて自動で行なう機能の新機能として、VMの位置をPure Storageのソフトウェアが最適な状態をサジェスチョンする機能「VM TEIR Recommendation Engine」をまもなく提供開始すると述べた。
ディープラーニングの学習向けに150ブレードのFlashBladeを追加、ストレージをAIで管理するPure1 Metaは機能を追加
このほか、Pure Storage FlashBlade 戦略・ソリューション担当副社長 アミー・ファウラー氏は、NVIDIAのGPUを利用したディープラーニングの学習用途向けに、FlashBladeが新たに150ブレードまで拡張できるようになったことを明らかにした。
FlashBladeは1つの4Uのラックサーバーに15個のブレードを搭載できるようになっており、従来はそれが最大で5つまで同時に利用できるようになっていた。今回Pure Storageはそれを10にまで拡大し、合計で150ブレードまで実装できるようになったので。FlashBladeでは、複数のブレードをまとめてスケールアウトして利用することが可能で、ブレード数を増やせば増やすほど帯域幅を増やすことができる。このため、大量のデータを一度に読み出す必要があるディープラーニングの学習に適しているのだ。
また、Pure Storage ワールドワイドシステムズエンジニアリング担当副社長 シャウン・ローズマリン氏はPure Storageが「Pure1 Meta」の製品名で提供しているマシンラーニングベースのAI機能について説明した。
同社がPure1 VM Analytics Proと呼んでいる製品は、VMwareのVMをどのストレージにマッピングするかを、AIが自動でストレージやネットワークを解析して決めてくれる機能。そのほかにも「Pure1 Workload Planner」などのPure1 MetaのAIにより実現される機能を説明した。