イベントレポート

NIMS WEEK 2019

「温度差発電」はIoT向き?5℃の温度差で70μW/cm2

10月28日から11月1日まで茨城(千現地区・並木地区・桜地区)と東京(東京国際フォーラム・東京大学 本郷キャンパス)で行われた、「NIMS WEEK 2019」。特定国立研究開発法人、物質・材料研究機構(NIMS)が実施する研究成果などの発表会で、超スマート社会に向けた材料進化の最前線がアピールされている。本レポートでは、その中で、筆者が注目したものを紹介する。

5℃の温度差で70μW/cm2、温度差発電を利用したIoTセンサー用自立電源

 超スマート社会では、IoT機器の連続駆動が重要であり、電源をどう確保するのか、メンテナンスフリーであることが重要視されている。将来日本国内で駆動するIoT機器の数が1兆個に迫るともいわれ、膨大であるため、メンテナンスフリーであるだけでなく、低コストであるのも重要だ。

 展示されていたものは、入手性の高い鉄とアルミニウム、シリコンから構成されるFe-AI-Si系温度差発電材料(FAST)。室温から200℃以下の未使用熱を活用する低温駆動型になり、また環境調和性、耐酸化性、機械特性にも優れる。

 ビスマス-テルル系化合物による熱電発電モジュールに比べてコストを1/5以下にもできるというもので、わずかな温度差でも発電可能と実装条件は緩い。5℃の温度差で70μW/cm2といった例が展示されていた。

FAST材料を使用した熱電発電モジュール。サイズは1cm角
IoT機器の試作機

 温度・湿度センサーを搭載したBluetooth Low Energy接続の通信機器の動作に成功しており、今後はさらなる性能の向上、小型化、低コストを目指す。

林 佑樹

1978年岐阜県生まれ。東京在住。ITサービスやPC、スマートフォンといったコンシューマから組み込み、CPS/IoT、製造、材料、先端科学のほか、ゲームやゲーム周辺機器のライティングも行なう。それらジャンルすべてが何かしらの技術でリンクしているのが最近のお気に入り。技術などを見る基準は「効率のいいサボりにつながるか」。フォトグラファーとしては、ドラマスチルや展示会、ポートレートをこなしつつ、先端科学研究所の撮影が多い。