イベントレポート

CEATEC 2020 ONLINE

CEATEC 2020 ONLINEがいよいよ開催、今年のAWARDは「富岳」とRNA検出技術

富士通・理研の「富岳」、東芝のRNA検出技術などが受賞

 CEATEC 2020 ONLINEが、2020年10月20日~23日まで、完全オンラインで開催される。開催前日となる10月19日、開催概要などについて説明した。

CEATEC 実施協議会 エグゼクティブプロデューサーの鹿野清氏

 CEATEC 実施協議会 エグゼクティブプロデューサーの鹿野清氏は、「2000年にCOM JAPANとエレクトロニクスショーを統合して誕生したCEATECは、最先端の技術と製品を国内外に情報発信する場として、映像、音響、情報通信を網羅する展示会として発展してきた。テクノロジーを活用した社会を発信する場として、豊かな社会の実現を目指し、出展者と来場者とともに歴史を積み重ねてきた。だが、21回目となる今回は、完全オンライン開催とし、これまでの20回とはまったく異なる展示会になった」としながら、「CEATEC 2020 ONLINEを、ニューノーマルとはなにかを考え、共創していくための場に位置づけたい」と語った。

 スローガンとして、「CEATEC - Toward Society 5.0 with the New Normal(ニューノーマル社会と共に歩む CEATEC)」を掲げ、オンライン上に、「ニューノーマルエリア」、「企業エリア」、「Co-Creation PARK」の3つの展示エリアを用意。「コンファレンスエリア」、「公式イベントエリア」を加えた5つのエリアで構成する。会期後も、12月31日まで、オンデマンド配信を行う。

 CEATEC実施協議会によると、CEATEC 2020 ONLINEへの出展申込数は、356社/団体となり、前年の355社/団体を1社上回った。

CEATEC 2020 ONLINE 出展申込数

 そのうち、新規出展者数は164社となり、46%を占めた。ここでも、前年の39%の構成比を上回っている。「オンライン開催と相性がいいSI企業、ソフトウェア企業の新規出展が多い」という。また、スタートアップ企業および大学、研究機関は、135社/団体。海外出展者数は71社/団体となった。「JETROの協力により、45社の海外スタートアップ企業が参加しており、そのなかには、トルコやメキシコからの初参加もある」という。

 「史上初というのは困難を伴うものである。例年以上に短い準備期間のなかで、オンライン開催を実現するための根幹となるプラットフォームを、CEATECのオリジナル版として準備を進めてきた。出展者も『オンラインだからこそ』といえるコンテンツを用意し、多種多様なコンテンツが揃った」とした。

 なお、前年のCEATEC 2019は、787社/団体が出展していたが、ここには1つの企業ブース内に共同展示をしていた企業もカウントした。だが、今回のオンライン開催においては、共同展示という制度がないために、出展申込数という数字を新たに用いた。

 また、会期中には、20万人以上の来場を目指しており、過去最高だった2007年の20万5859人を超えたいとしている。なお、CEATEC 2019の来場者数は14万4491人だった。

 CEATEC 実施協議会の鹿野エグゼクティブプロデューサーは、「オンライン開催においても、これまでと同様に、展示を『見て』、コンファレンスを『聞いて』、未来の社会を『感じて』『考えて』、共創に向けて『動き出す』というCEATEC体験をしてもらいたい。オンライン開催ならではの特徴を生かしながら、時間や場所を超えて、多くの人に来場してもらいたい」と述べた。また、「CEATECにとっても、ニューノーマル時代へのチャレンジであり、そのチャレンジは、この先を見据えた新たな総合展示会の在り方を目指す取り組みになる。出展者、来場者、協力会社と一緒になり、完全オンラインのCEATECを成功させ、そこで得られた知見を今後に反映させたい。明日からは、オンライン会場をじっくりと見ていただき、出展者のニューノーマル時代の発信に注目してほしい」と語った。

CEATEC体験

 なお、2021年のCEATECの開催については、「来年、予定通りに東京オリンピック・パラリンピックが開催されても、幕張メッセの会場は使用できると考えている。だが、コロナが終息しても、もとに戻るのは難しい。リアルの展示会場を使用するにしても、衛生面などではかなり気を配る必要があるだろう。一方で、オンライン開催では、会期が終わってもオンデマンド配信で展示を見たり、コンファレンスを聴講できたり、リアルタイムでログデータが収集できるというメリットもある。出展企業向け説明会や報道機関向け発表会も、オンラインで実施することができる。オンラインの良さを生かしながら、リアルの展示会をどうやっていくかといったことも考えたい。ハイブリッド開催が、今後の国際展示会の指針になると考えて、来年の開催に向けた準備を進めたい」とした。

CEATEC AWARD 総理大臣賞は、富士通・理研のスーパーコンピューター「富岳」

 また、CEATEC AWARD 2020の受賞企業を発表した。

 総務大臣賞は、富士通および理化学研究所の「富岳」、経済産業大臣賞は、東芝のマイクロRNA検出技術が受賞した。

 富岳は、システムとアプリケーションを協調的に設計するCo-design(コデザイン)によって開発されたスーパーコンピューターであり、世界ナンバーワンの性能および高い電力効率と、ユーザーの利便性、使い勝手の良さを両立し、画期的な成果の創出を導くなど、世界の他のシステムに対して総合力で卓越するシステムである点が高く評価されたという。

富士通および理化学研究所 「富岳」

 また、東芝のマイクロRNA検出技術は、わずかな血液から短時間で13種類のがんを検知する技術であり、身体的負担の少ない血液検査によって転移を検査でき、がん再発の早期発見が見込めるなど、患者のQOLを改善するという点でも大きな貢献ができるという。SDGs課題の3にある「すべての人に健康と福祉を」の課題解決に貢献すると期待される点を高く評価したとしている。

東芝 マイクロRNA検出技術

 なお、部門賞は以下の通りとなった。

製品・案件名制作会社・団体等
・ニューノーマル ソリューションズ部門賞
グランプリシャープ透明ディスプレイ パーティション
準グランプリ東芝シミュレーテッド分岐マシン 東芝
・ニューノーマル社会を支える要素技術・デバイス部門賞
グランプリアルプスアルパインタッチレス操作パネル
準グランプリTDKARグラス用 超小型フルカラーレーザーモジュール
・ニューノーマル時代のデジタルまちづくり部門賞
グランプリTDKピエゾ環境発電によるホイール完結型センシング TDK
準グランプリロームIoT時代の白物家電の待機電力極小化に貢献する、業界初のゼロクロス検知IC「BM1ZxxxFJ シリーズ」
・オープン部門賞
グランプリ技術研究組合NMEMS技術研究機構、NEDOIoTネットワーク社会を支えるコインサイズの振動発電器
準グランプリ村田製作所非振動型広帯域超音波発生デバイス
・Co-Creation PARK部門賞
グランプリAIメディカルサービス、NEDO人工知能による胃がん内視鏡画像読影支援システム開発

 CEATEC AWARD 2020 審査委員会の関口和一委員長(MM総研代表取締役所長)は、「オンライン開催による応募数の減少が心配されたが、わずか1カ月の間に62件の応募があった。ポストコロナ時代を意識した応募が多かったのも今年の特徴である。総務大臣賞を受賞した理化学研究所と富士通のスパコンの富岳も、飛沫拡散のシミュレーションなどでその威力を発揮したことが評価された」とした。

 CEATEC AWARDは、CPS/IoTによるSociety 5.0の実現を促し、新たな価値と市場の創造・発展に貢献、関係する産業の活性化に寄与することを目的としており、今年で10回目。CEATEC 2020 ONLINEに展示される技術や製品、サービスなどのなかから、有識者で構成されるCEATEC AWARD 2020審査委員会が、学術的、技術的観点、市場性や将来性などの視点から、イノベーション性が高く優れていると評価できるものを審査、選考して、表彰している。