アニメを海外で同日配信する「Crunchyroll」、有料会員は2万人超


米Crunchyrollのクン・ガオCEO(写真)によれば、同社のスタッフは20名程度だという

 アニメーション関連の総合展示会「東京国際アニメフェア2010」が、3月25日から28日まで東京ビッグサイトで開催されている。27日と28日は一般入場が可能な「パブリックデー」で、入場料は当日一般の場合で1000円。

 クランチロール株式会社のブースでは、親会社である米Crunchyrollが展開する動画配信サービス「Crunchyroll」の概要や現況などを紹介している。「Crunchyroll」では、日本のアニメーション作品や韓国のドラマ作品などを海外向けに配信しており、ユーザー同士が交流できるSNS機能も提供する。

 月間ユニークユーザー数は600万人以上。売り上げはコンテンツホルダーとのレベニューシェア制をとっている。なお、配信プラットフォームはPC版に加えて、iPhoneアプリも用意。今後はiPadやAndroid、テレビ向けの展開も検討する。なお、サイト自体にはアクセスできるが、日本からの動画視聴には対応しない。

 2009年1月には、日本でテレビ放送したアニメ番組を、放送から約1時間後に英語字幕を付加して同日配信するサービスを開始。このサービスの利用には、月額7ドルの有料会員に入会する必要がある。

 アニメ番組自体は、放送1週間後に広告付きで無料配信されるが、クランチロールのビンセント・ショーティノ代表取締役社長によれば、サービス開始から1年で2万人を超えるユーザーが有料会員に加入しているという。有料会員では番組を広告なしで視聴できるほか、無料版のSD画質に加えて、480pまたは720pの高画質版も用意する。


Crunchyrollのサービス画面同日配信前の作品はカウントダウン画面が表示される

 同日配信を行う理由の1つとして、海外のファンが自主的に字幕を付加した動画(ファンサブ)が、インターネットを通じて不正にインターネット上に投稿されている実情が挙げられる。ショーティノ社長は、海外のアニメ関連ニュースサイト「Anime News Network」の調査結果を例に、「『NARUTO』の場合で、Crunchyrollが同日配信を開始する前の2008年と比較して、2009年にはファンサブ動画が74%減少した」と説明し、違法投稿対策につながっているとした。

 ファンサブ動画に関しては、最短14時間程度で流通。一方、Crunchyrollでは約1時間後に配信しているため、こうした点でもファンサブ動画の流通量が減っているのではないかとした。

 現在、Crunchyrollでは約150作品のアニメ作品を配信。このうち、十数作品が同日配信作品になる。ちなみに、Crunchyrollで最も人気を集めているアニメ作品は「NARUTO」。最近では「アイシールド21」や「イヴの時間」も人気だという。

 ショーティノ社長によれば、同日配信を通じて有料会員数が増加し、違法投稿対策での成果も出ていることから、日本の出版界からの理解や協力が得られているという。こうした経緯を踏まえて、3月25日には第三者割当増資の実施を発表。増資額の半分にあたる75万ドルは、テレビ東京が引き受け先となり2月中に手続きを完了済みで、残り半分は日本の出版社と交渉中だとした。

 なお、今後の展開に関して、アニメやドラマ作品などに加えて、日本のコミックのデジタル配信も検討しているという。また、日本のポップカルチャーを紹介するニュースコーナーなども強化し、「日本のポップカルチャーのポータルサイトを目指したい」とショーティノ社長は語っていた。


1月放送開始の「デュラララ!!」や「はなまる幼稚園」なども配信しているFacebookでは「NARUTO」を題材にしたソーシャルアプリも提供する

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(村松 健至)

2010/3/25 16:47