iNTERNET magazine Reboot
木曜コラム2 #1
今年、実感したイノベーション ベスト5
2017年12月28日 11:00
10月から、iNTERNET magazine Reboot発刊にちなんだ記事を書いてきましたが、今日から、INTERNET Watch開始時に週間で連載していた「木曜コラム」をRebootしたいと思います。改めて、よろしくお付き合いください。
今年も最後なので、この1年で、私が「すごい」と実感した出来事をお伝えしたい。いずれも、そのニュースに触れ、また体験し心が動いた出来事から選んだ。
驚愕の高騰ビットコイン
ビットコインの価値がこの1年で約20倍になった。
ビットコインは、ブロックチェーン技術が創り出した信用に裏付けられているわけだが、国や企業のような責任の所在が実在しない新しい信用にこれだけのお金が動いたのには大きな意味がある。ただそれよりもっとすごいと思ったのは、その仕組みを知らない人までも投機して、予想をはるかに上回るスピードで、はるかに上回る額に到達していることだ。お金が絡むとこれほどまでに白熱するのかと驚くが、お金がネット上(サイバー空間)で処理できるようになることのインパクトが垣間見えた。
バク宙をするロボット
ボストン・ダイナミクス製のロボットがバク宙に成功。
子供の頃、バク転ができるようになりたくて布団を重ね敷きし何日も練習したのを覚えているが、バク宙まではできなかった。私だけではなくほとんどの人ができないと思うが、それをまさかロボットがやってのけるとは。去年、囲碁チャンピョンがアルファ碁に負けたとき、我々は知性面である種の敗北感を味わったわけだが、今回は身体能力での全面敗北を予感させ、怖くもあった。これからは、ロボットとの付き合い方も考えていかなければならない。
タイファイターが後ろから飛んでくるATMOS
「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」の劇場鑑賞にて。
放映開始からのSWリアルファンなので、さっそく観てきた。3Dメガネでの立体視も完成の域に達していると思ったが、今回劇場での初体験だったドルビーATMOSによる3D音響はすごかった。3D映像と合わせて、思わず振り返ってしまいそうになる没入感。映画マトリックスの世界は本当に来るのかも知れないと思わせた。
テレビをつけてくれるスマートスピーカー
我が家はテレビ、電話、ネットをイッツコム社のお世話になっているのだが、同社はいま「インテリジェントホーム(暮らしのIoT)」を目指して、Google Homeの無料お試しサービスをやっている。係の人が自宅まで来て着けてくれるのがCATV系サービスのいいところだ。その日、家に帰ったらGoogle Homeが居座っていた。係の人がリモコンの設定をしていたと聞いたので、ひょっとしたらと思い「テレビつけて」と言ってみたら、あら不思議。赤外線のコントロールデバイスがついただけと言えばそうだが、ちょっとした感動があった。ここまで来るのには、音声認識、言語解析、クラウド、IoT、ビッグデータ処理、・・・などなど、いろいろあってのことなのだ、と深読みしなくても素直に嬉しかった。
太陽系と似た惑星系を発見したAI
NASAとグーグルは、AIを使った既存観測データの解析で新惑星を発見した。
太陽系外惑星探査機ケプラーの4年にわたる膨大な観測データをディープラーニングで分析し、新しい惑星を発見した。これにより、太陽系と同数の8個の惑星を持つ系の存在が明らかになったのだ。この成果はすごい。つまり、すでに観測していたが人間の手では分析することができなかったのを、AIが「発見」したのだ。人間とAIの付き合い方としても、とても好感が持てるではないか。今回は、約20万の天体データのうち670個を調べただけで2つの発見があったそうで、すべてを調べたらもっとすごい発見が期待できそうだ。人間とAIのコラボで宇宙の真理を探究する。いい未来だ。
以上、私の偏見も入っているが、2017年は新世紀への扉が開かれた年だったと思う。
では、よいお年をお迎えください。
(次回は2018年1月11日掲載の予定です)
井芹 昌信(いせり まさのぶ)
株式会社インプレスR&D 代表取締役社長。株式会社インプレスホールディングス主幹。1994年創刊のインターネット情報誌『iNTERNET magazine』や1996年創刊の電子メール新聞『INTERNET Watch』の初代編集長を務める。