iNTERNET magazine Reboot

木曜コラム2 #8

2017年版が全文無料公開! 「インターネット白書ARCHIVES」

休刊の危機から生まれた社会貢献型コンテンツ

昨年11月に「iNTERNET magazine Reboot」を発刊したのに引き続き、かつてINTERNET Watchで週間で連載していた「木曜コラム」をRebootしました。改めて、よろしくお付き合いください。

 今月、今年版のインターネット白書(インプレスR&D刊)が発売になった。インターネット白書は1996年から毎年発行しているインターネットの動向を報告する年鑑だが、その創刊経緯については昨年末に記事にしているのでよかったら見てほしい。実は、今年版のインターネット白書が発行されると、その1年前の版はWebに全文無料公開されることになっている。このことはあまり知られていないと思うので、今週はこの「インターネット白書ARCHIVES」について解説したいと思う。

 まずは、インターネット白書ARCHIVESのサイトを見ていただきたい。

 タイトル画面の下に、2017年版から1996年版までの21刊のバックナンバーの表紙が並んでいるのが分かるだろう。

 最初の2017年版が2月15日に追加された版である。表紙をクリックすると、目次が出てきて、それぞれの記事はPDFで閲覧することができる。いまでも紙書籍版は2800円で販売されている商品なので、有料で購入していただいた読者にはいささか申し訳ない気持ちもあるが、後述する意図によりWebでの無料公開を行っている。

 もちろん検索もできる。検索窓に、たとえば「10大キーワード」と入れてみると、インターネット白書名物の巻頭特集「10大キーワードで読む○○年のインターネット」が一覧できる。この変遷を眺めるだけでもインターネットの歴史トレンドが一望でき、お役に立つことだろう。

 なぜ無料公開を始めたのかについては、いくつかの背景と経緯があってのことだった。最初の変化は経済的問題からだった。インターネット白書は創刊以来、伝統的出版手法、つまり紙の出版で書店販売を中心に行っていた。それが、2012年版を発行した際に、ついに採算割れを起こしたのだ。理由は、インターネットが安定してきたことで、従来に比べて購買ニーズが減ったことに加え、出版の経済効率が落ちてきたこともあった。それで、苦慮の末やむなく休刊を決断し、監修をお願いしてきたインターネット協会(IAjapan)の懇親会で終了の報告をした。つまり、インターネット白書は2012年版をもって終刊となる予定だったのだ。

 だがそこで、協会の方々から惜しまれる声が上がり、特に昨年インターネットの殿堂を受賞された早稲田大学の後藤滋樹先生(JPNIC理事長)から、「社会的に意義あるものなので止めないでほしい。いくらあれば続けられるのか?」という暖かい言葉をいただいたのだった。思いもよらぬ支援の声で、休刊は再検討することになった。

 その結果、それまで監修をお願いしていたIAjapan(一般財団法人インターネット協会)に加え、JPNIC(一般社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター)、JPRS(株式会社日本レジストリサービス)の各団体から資金援助をいただけることとなった。このとき同時に、同メンバーによる「インターネット白書編集委員会」も結成された。

 ちょうどこの頃、インプレスR&Dでは新しい時代の出版メソッドとして、電子出版を駆使した「NextPublishing(ネクストパブリッシング)」を開発していた。白書の出版にこのNextPublishingを使えば、コストを圧倒的に低減できる期待があった。

 これら2つの改善策で、インターネット白書は息を吹き返すことができたのだ。さらに、資金援助を受けたことと独自調査を止めたことにより、それまでより大幅に価格を下げることにも成功した。2012年版までは6800円程度(紙版税抜)だったのを2800円とし(今年度版は話題豊富で増ページのため3200円)、新たに加わった電子版はさらに1800円という低価格にした。この価格付けは、今後を担う若い方や学生さんにも読んでほしいという、編集委員会の意向を反映した結果なのである。

 前置きが長くなったが、「インターネット白書ARCHIVES」は、このときに、インターネット白書の社会的意義を改めて認識し、過去のコンテンツ資産がいつでも(在庫切れになることなく)誰もが閲覧できるように、Webで無料公開していこうという意図で作成されたコンテンツサイトなのである。書籍の発行後1年を経過した段階でWebに収録されるというレギュレーションも、この時に決めたものだ。また検索システムについては、この主旨に賛同していただいたビジネスサーチテクノロジ株式会社の支援をいただいている。

 という訳なので、ぜひ活用してほしいし、会社の若手や後輩ともシェアしてほしい。

井芹 昌信(いせり まさのぶ)

株式会社インプレスR&D 代表取締役社長。株式会社インプレスホールディングス主幹。1994年創刊のインターネット情報誌『iNTERNET magazine』や1996年創刊の電子メール新聞『INTERNET Watch』の初代編集長を務める。